テキスト全文
ウシでもわかる真菌の話の概要と目標
#1. ウシでもわかる真菌の話 2021年版 - 総論と薬剤各論,侵襲性カンジダ症を中心としたメジャーな真菌症まで - 程度の
#2. この講義の目標 * 「真菌・真菌症とはなんぞ?」に回答できるようにする
* 真菌治療薬の名前と抗真菌スペクトラムを把握する
* 侵襲性カンジダ感染症のマネジメントの概略を把握する 基本事項から とどのつまり「カビ」の話です
真菌の構造と分類に関する詳細
#4. 真菌の構造と分類 真菌はどちらかというとヒトの細胞に近い
#5. 真菌の構造と分類 真菌はどちらかというとヒトの細胞に近い
#6. 真菌の構造と分類 真菌はどちらかというとヒトの細胞に近い 構造の違いを薬剤の作用点として活用する
#9. 真菌の構造と分類 カンジダを押さえておけば及第点では・・・と 日本にはいない 世代を意識すると役に立つ事が・・・あまりない(かも) 次はお薬方面 1, 3-β-DGが多い 1, 3-β-DGが少ない 1, 3-β-DGが少ない / マンナンを有する ※1,3-β-DG = 1,3-β-D glucan
抗真菌薬の分類と作用機序
#11. 抗真菌薬の分類 [アゾール系]
* ミコナゾール(経口用ゲル・クリームなど)
* フルコナゾール(経口・静注)
* イトラコナゾール(経口 – 錠剤・液剤)
* ボリコナゾール(経口・静注)
* ポサコナゾール(経口・静注) イミダゾール トリアゾール [エキノキャンディン系]
* ミカファンギン(静注) * カスポファンギン(静注) [ポリエン系]
* アムホテリシンB リポソーム製剤(静注) / デオキシコール酸塩(静注) [ピリミジン誘導体]
* フルシトシン(経口) 抗真菌薬は少ない(当社比)
#12. [アゾール系]
* ミコナゾール(経口用ゲル・クリームなど)
* フルコナゾール(経口・静注)
* イトラコナゾール(経口 – 錠剤・液剤)
* ボリコナゾール(経口・静注)
* ポサコナゾール(経口・静注) イミダゾール トリアゾール [エキノキャンディン系]
* ミカファンギン(静注) * カスポファンギン(静注) [ポリエン系]
* アムホテリシンB リポソーム製剤(静注) / デオキシコール酸塩(静注) [ピリミジン誘導体]
* フルシトシン(経口) 抗真菌薬の分類 抗真菌薬は少ない(当社比)
#13. [アゾール系]
* ミコナゾール(MCZ)
* フルコナゾール(FLCZ)
* イトラコナゾール(ITCZ)
* ボリコナゾール(VRCZ)
* ポサコナゾール(PSCZ) [エキノキャンディン系]
* ミカファンギン(MCFG) * カスポファンギン(CPFG) [ポリエン系]
* アムホテリシンB リポソーム製剤(L-AMB) / デオキシコール酸塩(AMPH-B) [ピリミジン誘導体]
* フルシトシン(5-FC) 略号(苦虫を噛み潰したような顔) 抗真菌薬の分類
#14. 抗真菌薬のスペクトラム 簡易的なもの 薬剤の各論へ
#15. 分類 [アゾール系]
* ミコナゾール(経口用ゲル・クリームなど)
* フルコナゾール(経口・静注)
* イトラコナゾール(経口 – 錠剤・液剤)
* ボリコナゾール(経口・静注)
* ポサコナゾール(経口・静注) イミダゾール トリアゾール [エキノキャンディン系]
* ミカファンギン(静注) * カスポファンギン(静注) [ポリエン系]
* アムホテリシンB リポソーム製剤(静注) / デオキシコール酸塩(静注) [ピリミジン誘導体]
* フルシトシン(経口) 各論へ
アゾール系抗真菌薬の特徴と使用法
#16. * 作用機序: エルゴステロール合成阻害 = 細胞膜の障害
- 細胞膜のシトクロム p450 14α-デメチラーゼの阻害
* 剤形: 経口(錠・カプセル・液剤など)・静注
– 経口薬の生体利用率は(ITCZを除き)概ね良好
* 組織移行性は髄液を含め(ITCZを除き)良好
* 薬物相互作用を必ず確認すること – アゾールに限らず多い
* 副作用は多くないが使用時は要チェック アゾール系 主な薬剤: フルコナゾール(FLCZ),イトラコナゾール(ITCZ),
ボリコナゾール(VRCZ),ポサコナゾール(PSCZ) 「セファロスポリン的」?
#17. * 抗真菌スペクトラム:
酵母様真菌 ± 糸状真菌
- FLCZは酵母様真菌(Candida, Cryptococcus属)のみ
- ITCZは FLCZ +Aspergillus
- VRCZは ITCZ +Fusarium (L-AMBと併用)
- PSCZはVRCZ +Mucor アゾール系 主な薬剤: フルコナゾール(FLCZ),イトラコナゾール(ITCZ),
ボリコナゾール(VRCZ),ポサコナゾール(PSCZ) 「セファロスポリン的」? 糸状真菌
#18. アゾール系 – フルコナゾール(ジフルカン / プロジフ) * いわばアゾールの「基本形」
* 経口・静注ともあり
- 静注用は輸液不可の少ない「ホスフルコナゾール(F-FLCZ)」が優先か
- F-FLCZは高価(静注用400mg 19,071円 vs. 錠剤400mg 906円)
* 副作用が少ない
– 長期投与も比較的安心
- 稀だが肝障害や皮疹には留意
* 腎機能低下時の用量調節: 要
* 肝機能低下時の用量調節: 不要
#19. * FLCZの効かない・効きづらいCandida を押さえる
- 必ず菌種同定・感受性結果を参照すること
* 現時点では「感受性のあるCandida 属用薬剤」で良い
- 余裕があればCryptococcus にも活性があることを覚えておく アゾール系 – フルコナゾール(ジフルカン / プロジフ) 効きづらい: Candida glabrata, auris
効かない: Candida krusei (FLCZに自然耐性)
#20. アゾール系 – イトラコナゾール(イトリゾール) * スペクトラムは優秀
- Aspergillus をスペクトラムに収める貴重な経口薬
- Histoplasma, Blastomyces など輸入真菌症の一部にも使用可能
* 経口のみ(静注は販売終了) – 使うなら液剤か
- 錠剤は腸管吸収率が悪く食直後内服が遵守されにくい
- カプセルはコーラやオレンジジュースでの服用が望ましい
- 本来はTDMが理想,でも日本では難しい
* 陰性変力作用あり – 心不全に注意
* 他にも消化管障害・QTc延長のような種々の副作用
* 薬物相互作用も一際目立つ めんどうくさい
ポリエン系とエキノキャンディン系の抗真菌薬
#21. * 「好中球減少が予想される」患者に
対する予防投与が添付文書上も許可
* 既に投与され安定している患者では
無理に変える必要はない
* ただし副作用・相互作用・薬物動態から「使いやすい薬剤」ではない
ことは恐らく間違いない
- 「試験管内では優れていても実臨床では微妙」な薬剤の好例
- 更に好中球減少患者全てにAspergillus の予防が必要かも議論が必要
- 本剤を敢えて用いる「機会」は少なく「動機」も乏しい
投与の要否を慎重に吟味する アゾール系 – イトラコナゾール(イトリゾール)
#22. * アゾールの「発展形」と言えそう
- Aspergillus 症の第一選択薬
- FLCZが苦手とするCandida krusei などにも有効
- Mucor など接合菌は活性なし
* 経口・静注ともあり
- 静注用は添加剤(シクロデキストリン)が蓄積するためCCr <50mL/min では経口に切り替えるか他薬へスイッチする
- 経口薬は空腹時(食後2時間など)に内服
* TDMが必要(保険適用範囲で検査可能)
- 投与5〜7日目に測定,高トラフ値は肝障害リスク
(- 日本人では代謝が遅延する例(CYP2C19変異体)が15-20%存在する) アゾール系 – ボリコナゾール(ブイフェンド)
#23. * 薬物相互作用と副作用(肝障害・一過性視力障害・稀に
幻覚・幻視) に留意
* 腎機能低下時の用量調節: 内服では不要,静注では要
* 肝機能低下時の用量調節: 要
アゾール系 – ボリコナゾール(ブイフェンド) * 抗真菌スペクトラム:
酵母様真菌 + 糸状真菌(Fusarium を含む)
- つまりFLCZ + 糸状真菌
- Aspergillus に対する第一選択薬(最も重要)
- FLCZの苦手とするCandida krusei にも安定
#24. * アゾールの中では最も広い抗真菌スペクトラム
- VRCZに加えMucor, Rhizopus など一部の接合菌すらカバー
* 経口・静注ともあり
アゾール系 – ポサコナゾール(ノクサフィル) * 「好中球減少が予測される血液悪性腫瘍患者」の深在性
真菌症予防の適応になっていることが重要
- 投与期間や中止条件についても明記されている
* 侵襲性肺アスペルギルス症の第一選択薬は
もしかするとVRCZからPSCZに置き換わるかも?
#25. 分類 [アゾール系]
* ミコナゾール(経口用ゲル・クリームなど)
* フルコナゾール(経口・静注)
* イトラコナゾール(経口 – 錠剤・液剤)
* ボリコナゾール(経口・静注)
* ポサコナゾール(経口・静注) イミダゾール トリアゾール [エキノキャンディン系]
* ミカファンギン(静注) * カスポファンギン(静注) [ポリエン系]
* アムホテリシンB リポソーム製剤(静注) / デオキシコール酸塩(静注) [ピリミジン誘導体]
* フルシトシン(経口) 各論へ
#26. * 作用機序: 1→3-β-D-glucanの合成阻害
= 細胞壁の合成阻害
* 剤形: 静注のみ
* 組織移行性は良好だが,原則髄液移行性はなし
- ただし尿路への移行性は不良
- Candida眼内炎は治療できない -> L-AMB, FLCZなど エキノキャンディン系 主な薬剤: ミカファンギン(MCFG – ファンガード)
カスポファンギン(CPFG – カンサイダス) 「タゾバクタム・ピペラシリン」的?
#27. * 抗真菌薬にしては重篤な副作用や薬物相互作用が少ない
- そのせいで臨床においては投与の閾値が低い = 不適切使用されがち
- 菌種同定・感受性結果が判明し可能ならばFLCZ等にstep down
* 腎機能低下時の用量調節: 不要
* 肝機能低下時の用量調節: 要(カスポファンギンのみ)
- Child-pugh分類 grade B以上で減量 エキノキャンディン系 主な薬剤: ミカファンギン(MCFG – ファンガード)
カスポファンギン(CPFG – カンサイダス) 「タゾバクタム・ピペラシリン」的?
#28. * 抗真菌スペクトラム:
Candida + Aspergillus
- 両者で大きなスペクトラムの差はない
- FLCZが不得手なC. krusei, C.glabrata にも有効
◎ 侵襲性カンジダ感染症のempiric therapyに
- 一方でCandida parapsilosis 等はブレイクスルーの報告あり
- Candida guilliermondii は耐性
- Aspergillus には単剤で使用することは少ない エキノキャンディン系 「タゾバクタム・ピペラシリン」的? 主な薬剤: ミカファンギン(MCFG – ファンガード)
カスポファンギン(CPFG – カンサイダス) (paradoxical effect)
#29. 分類 [アゾール系]
* ミコナゾール(経口用ゲル・クリームなど)
* フルコナゾール(経口・静注)
* イトラコナゾール(経口 – 錠剤・液剤)
* ボリコナゾール(経口・静注)
* ポサコナゾール(経口・静注) イミダゾール トリアゾール [エキノキャンディン系]
* ミカファンギン(静注) * カスポファンギン(静注) [ポリエン系]
* アムホテリシンB リポソーム製剤(静注) / デオキシコール酸塩(静注) [ピリミジン誘導体]
* フルシトシン(経口) 各論へ
#30. * 作用機序: エルゴステロールの直接的障害 = 細胞膜の破壊
- 他の抗真菌薬が静菌的であるのに対し,多くの場合殺菌的に作用する
* 剤形: 静注のみ(消化管カンジダ症に対するシロップあり)
* 髄液への移行性あり(一方で尿路への移行性が芳しくない)
* デオキシコール酸塩は重篤で不可逆的な腎障害が必発
→ リポソーム製剤を優先する(それでも副作用は多い)
- 腎機能障害,低K,低Mg血症,肝機能障害,消化管障害など ポリエン系 抗真菌薬界のカルバペネム 主な薬剤:
アムホテリシンB リポソーム製剤(L-AMB – アムビゾーム)
アムホテリシンB デオキシコール酸塩(AMPH-B – ファンギゾン)
真菌症の定義と深在性真菌症の概要
#31. * 抗真菌スペクトラム: ヒトに病原性をもつほぼ全ての真菌
→ ポリエン系が無効の真菌を把握する
* ただし先述の通り副作用も避け難く,いわば「諸刃の剣」 ポリエン系 抗真菌薬界のカルバペネム 主な薬剤:
アムホテリシンB リポソーム製剤(L-AMB – アムビゾーム)
アムホテリシンB デオキシコール酸塩(AMPH-B – ファンギゾン) 酵母様真菌: Candida lusitaniae, Candida auris
糸状真菌: Aspergillus terreus, Aspergillus flavus,
Scedosporium spp. (文献によってはFusarium spp.)
など
#32. 分類 [アゾール系]
* ミコナゾール(経口用ゲル・クリームなど)
* フルコナゾール(経口・静注)
* イトラコナゾール(経口 – 錠剤・液剤)
* ボリコナゾール(経口・静注)
* ポサコナゾール(経口・静注) イミダゾール トリアゾール [エキノキャンディン系]
* ミカファンギン(静注) * カスポファンギン(静注) [ポリエン系]
* アムホテリシンB リポソーム製剤(静注) / デオキシコール酸塩(静注) [ピリミジン誘導体]
* フルシトシン(経口) 各論へ
#33. * 作用機序: DNA合成阻害 – 時間依存性 = 頻回投与する
* 剤形: 経口のみ
* 髄液への移行性あり
* 腎機能障害者では血中濃度上昇により副作用が起きやすい
- 骨髄抑制,消化管障害など
- 催奇形性があるため妊婦には禁忌
* 腎機能障害時の用量調節: 要
* 肝機能障害時の用量調節: 不要 ピリミジン誘導体 主な薬剤: フルシトシン(5-FC – アンコチル) 使い方は「アミノグリコシド的」?
#34. ピリミジン誘導体 主な薬剤: フルシトシン(5-FC – アンコチル) * 抗真菌スペクトラム:
Cryptococcus (+ Candida )
Cryptococcus 髄膜炎でのL-AMBとの併用治療が有名
Candida 属は感受性があっても単剤で治療することはない (「おかず」的.併用が必要なことも多くない)
#37. 真菌症とは? * 真菌を原因微生物とする感染症
* 深在性 – 体内の各臓器に起こった真菌感染症全般
と
表在性
皮膚糸状菌症・白癬(ほとんどがTrichophyton (白癬菌)属),
皮膚・口腔カンジダ症,皮膚アスペルギルス症など
致命的になることはごく稀
に分ける
#38. 真菌症とは? * 真菌を原因微生物とする感染症
* 深在性 – 体内の各臓器に起こった真菌感染症全般
と
表在性
皮膚糸状菌症・白癬(ほとんどがTrichophyton (白癬菌)属),
皮膚・口腔カンジダ症,皮膚アスペルギルス症など
致命的になることはごく稀
に分ける 今回はこちらの話
深在性真菌症のリスク因子と診断の難しさ
#39. 深在性真菌症とは? * 体内の各臓器に起こった真菌感染症全般
* 特に幹細胞移植患者や免疫不全者で問題となりやすい
* 広域抗菌薬投与も重要なリスクファクター(特にカンジダ)
- 好中球減少状態: 急性骨髄性白血病,抗癌化学療法など
- 細胞性免疫不全: AIDS,ステロイド投与,慢性腎臓病など
- 解剖学的構造の破綻: CVC留置,肺結核罹患後など 免疫不全因子の複合により深在性真菌症が起こる (一口に言うのは難しい)
#40. 深在性真菌症とは? * 深在性真菌症は増加している
- 医学の発展
・ 臓器・骨髄移植
・ 抗癌化学療法
・ 抗菌薬などの使用量増加
・ 膠原病・リウマチ性疾患患者に対する専門性の高い治療
・ 患者の高齢化
・ 真菌(症)自体の検査・診断・治療の進歩
#43. 深在性真菌症を一言で言うと・・・難しい 診断をつけにくい – 特異的な症状がない,血液培養の陽性率が高くない
菌種同定・感受性結果がすぐには返ってこない(外注のことも多い)
治療薬が患者に与える負担が大きい – 副作用,高額な薬価
治療が必要な患者は既に厳しい全身状態であることも多い
治癒したかどうかの判定も難しい,しばしば治癒しきらず再発する
診断学でも治療学でも一手間かかる
#44. 深在性真菌症の何を知っておけばよいか? では「真菌症のプロ」以外の人が
侵襲性カンジダ感染症の診断基準
#45. では「真菌症のプロ」以外の人が 1. 深在性真菌症のよくあるケース(病原体と感染臓器)
2. 深在性真菌症を疑うべき状況
3. 真菌を治療対象にしなくてよいケース
4. 最低限の治療選択肢 深在性真菌症の何を知っておけばよいか? ざっくりこんな意識でいては,ほしいのですが・・・ 全員が習熟しなければならない領域ではないが
最低限は知っておかないと正しく診断できない
#46. では「真菌症のプロ」以外の人が 1. 深在性真菌症のよくあるケース(病原体と感染臓器)
2. 深在性真菌症を疑うべき状況
3. 真菌を治療対象にしなくてよいケース
4. 最低限の治療選択肢 深在性真菌症の何を知っておけばよいか? ざっくりこんな意識で 全員が習熟しなければならない領域ではないが
最低限は知っておかないと正しく診断できない これでもまだ難しい!
#47. では「真菌症のプロ」以外の人が 1. 深在性真菌症のよくあるケース(病原体と感染臓器)
2. 深在性真菌症を疑うべき状況
3. 真菌を治療対象にしなくてよいケース
4. 最低限の治療選択肢 深在性真菌症の何を知っておけばよいか? ざっくりこんな意識で 全員が習熟しなければならない領域ではないが
最低限は知っておかないと正しく診断できない これでもまだ難しい! とりあえずカンジダ!
#48. 侵襲性カンジダ感染症 * 表在性感染症としては女性生殖器と口腔粘膜が主な標的
* 深在性感染症としては血流感染症(= 侵襲性カンジダ感染症)が最多
- カンジダは全身臓器に感染を来し得る!
- ただし肺(カンジダ肺炎)は極めて稀 – 喀痰のカンジダを過度に虐げない! 概略
#49. 侵襲性カンジダ感染症 * 大原則は「無菌検体からのカンジダの検出」による
- 皮膚や消化管に常在 -> 喀痰・便・尿からでても普通は無視
* 最も手近なのは血液培養だが,陽性率は高くない
- 陽性になった場合は必ず治療する = コンタミはない
* 疑わしい時はpre-emptive therapy(先行治療) を検討
- Candida scoreなどを参考に(後述)
診断
#50. 侵襲性カンジダ感染症 [Candida score]
* 前向きコホート観察研究
* 好中球減少のないICU滞在7日以上の入院患者で,
* 3点以上をカットオフとすると
陽性的中率13.8%, 陰性的中率97.7% 診断 ・ 経静脈栄養 – 1pt. ・外科手術後 – 1pt.
・ 複数部位のカンジダ定着 – 1pt.
・ 重症敗血症 – 2pt. Crit. Care Med. (2006) vol.34: 730-7
侵襲性カンジダ感染症のマネジメント
#51. 侵襲性カンジダ感染症 [β-D-グルカン]
* 後ろ向き研究
* β-D-グルカン値 30 pg/mLをカットオフとすると
侵襲性カンジダ感染症の陽性的中率70%, 陰性的中率98% 診断 Clin. Infect. Dis. 2008; 46: 1864-70 * β-D-グルカンは偽陽性となる要因を頭に入れておく ・血液透析でのセルロース膜の使用 ・アルブミンやグロブリン製剤投与
・キノコ類の摂取 ・手術などでのガーゼの使用 ・溶血
・多発性骨髄腫 ・一部の抗癌剤使用 ・サルファ剤 真菌別にすると
#52. 侵襲性カンジダ感染症 診断 真菌感染症だからといってβ-D-グルカンが上がるわけではない
#53. 真菌の構造と分類 実はここにリンクする 日本にはいない 1, 3-β-DGが多い 1, 3-β-DGが少ない 1, 3-β-DGが少ない / マンナンを有する ※1,3-β-DG = 1,3-β-D glucan
#54. 侵襲性カンジダ感染症 以前出したスライド 有性世代毎にβ-D-グルカンが上昇するかどうか予想できる なんだやっぱり役に・・・いや別にそこまで立たない
#55. では 実際に侵襲性カンジダ感染症に出会ったら
どうするか考えてみましょう
#56. 侵襲性カンジダ感染症 * 血液培養で「酵母様真菌が陽性」になったら
* empiric therapyの開始
* 血管内デバイスの除去
* 遠隔病巣の検索(脳・肝・心臓・眼球など)
* 治療開始後24-48時間に血液培養の再検 マネジメント
#57. 侵襲性カンジダ感染症 * 血液培養で「酵母様真菌が陽性」になったら
* empiric therapyの開始
* 血管内デバイスの除去
* 遠隔病巣の検索(脳・肝・心臓・眼球など)
* 治療開始後24-48時間に血液培養の再検 マネジメント
#58. 侵襲性カンジダ感染症 * 多くのガイドライン・教科書が
初期治療薬としてキャンディン系を推奨
- non-albicans への効果を十分担保するため
- 既にアゾール系薬剤が投与されていた場合アゾール同士の交差耐性の懸念も
* 菌種同定(・感受性判明)後は可能ならばstep downを検討
- 多くはFLCZへstep downできるかどうか
- 結果到着までは時間がかかるので忘れない!
マネジメント ◎ ミカファンギン 100mg, 24時間毎
◎ カスポファンギン 初回70mg, 以降50mg, 24時間毎
#60. 侵襲性カンジダ感染症 * 血液培養で「酵母様真菌が陽性」になったら
* empiric therapyの開始
* 血管内デバイスの除去
* 遠隔病巣の検索(脳・肝・心臓・眼球など)
* 治療開始後24-48時間に血液培養の再検 マネジメント
症例研究と抗真菌薬の選択に関する考察
#61. 侵襲性カンジダ感染症 * 血液培養で「酵母様真菌が陽性」になったら
* empiric therapyの開始
* 血管内デバイスの除去 – これはまあ分かる
* 遠隔病巣の検索(脳・肝・心臓・眼球など)
* 治療開始後24-48時間に血液培養の再検 マネジメント
#62. 侵襲性カンジダ感染症 * 血液培養で「酵母様真菌が陽性」になったら
* empiric therapyの開始
* 血管内デバイスの除去
* 遠隔病巣の検索(脳・肝・心臓・眼球など)
* 治療開始後48時間に血液培養の再検 マネジメント
#63. 侵襲性カンジダ感染症 * 血液培養で「酵母様真菌が陽性」になったら
* empiric therapyの開始
* 血管内デバイスの除去
* 遠隔病巣の検索(脳・肝・心臓・眼球など)
* 抗真菌薬開始後48時間に血液培養のフォローアップ マネジメント ひとつひとつ丁寧に覚える必要はないので
今は眺めてください 基本難しいので全例有識者へ相談する
#64. 侵襲性カンジダ感染症 * まず,肺炎や尿路感染症は極めて稀!
- 特に肺炎は「造血幹細胞移植患者で稀にある」レベル
- 尿培養や喀痰培養のカンジダを安易に治療対象にしない
- ただし敗血症性肺塞栓で肺病変が証明されることはある
マネジメント
#65. 侵襲性カンジダ感染症 網膜炎 / 眼内炎
* 患者ADLに直結する合併症
* 播種性カンジダ感染症の20-50%に合併
* 血液培養でカンジダが発育したら必ず眼科へ相談
- この際1週程度空けて合計2-3回診察を受けること
* 治療期間は4-6週間の静注薬投与
- FLCZまたはL-AMB(中枢神経系にも移行する薬剤)
- 時にAMPHの硝子体内注射や硝子体切除も
* 逆に眼内炎からカンジダ菌血症を鑑別できる事もある マネジメント – 網膜炎/眼内炎 比較的高頻度でADLを大きく損なうので
とりあえずこれだけは覚える
#66. 侵襲性カンジダ感染症 2. 感染性心内膜炎
* 塞栓症状がある時や持続菌血症を呈する時に強く疑う
* MCFGまたはL-AMB投与と共に弁置換術が原則
- 抗真菌薬は弁置換後6週間の投与,時にそれ以上
- 手術を行っても死亡率が高い
- 感受性があればFLCZでも・・・
- ・・・
マネジメント – 感染性心内膜炎 レジメンの設定が難しいので有識者へ相談
#67. 侵襲性カンジダ感染症 3. 敗血症性肺塞栓
* 持続菌血症の場合にIEと共に考慮する
* 造影CTなどで証明される
* 時に血管手術が必要になることがある マネジメント – 敗血症性肺塞栓
#68. 侵襲性カンジダ感染症 4. 肝脾カンジダ症
* 特に発熱性好中球減少症(FN)患者で多い
* 発熱,腹痛,肝脾腫,ALP増加など
* 腹部造影CTで肝脾に低吸収領域が多発
- 病変が消失するまで抗真菌薬を投与 マネジメント – 肝脾カンジダ症
#69. 侵襲性カンジダ感染症 5. 二次性腹膜炎
* 腸管穿孔の術後
- カンジダは腸管に常在している
* 疑った場合カテーテルがあれば抜去・入れ替え
- カテーテルの抜去だけでも消失することがある マネジメント – 二次性腹膜炎
#70. 侵襲性カンジダ感染症 6. 骨髄炎
* 播種性カンジダ感染症の一表現としては脊椎に後発
- 腰背部痛に留意しMRIで診断
- 直達性(外傷や褥瘡など)でも起き得る
* 長期の抗真菌薬投与(6ヶ月-12ヶ月) マネジメント – 骨髄炎
#71. 侵襲性カンジダ感染症 7. 中枢神経感染症
* 髄液検査で証明
- 脳外科術後や外傷が契機に起こることもある
* L-AMB + 5-FCで治療 マネジメント – 中枢神経感染症
#72. 侵襲性カンジダ感染症 * 血液培養で「酵母様真菌が陽性」になったら
* empiric therapyの開始
* 血管内デバイスの除去
* 遠隔病巣の検索(脳・肝・心臓・眼球など)
* 治療開始後24-48時間に血液培養の再検 マネジメント
#73. 侵襲性カンジダ感染症 * 血液培養で「酵母様真菌が陽性」になったら
* empiric therapyの開始
* 血管内デバイスの除去
* 遠隔病巣の検索(脳・肝・心臓・眼球など)
* 治療開始後24-48時間に血液培養の再検
- 合併症が何もなければ最後の培養陰性ボトルの
提出日から最低14日間治療
- 血液培養の再検が治療期間の規定に必要
- 再度陽性になったら同じインターバルで反復 マネジメント
#76. 症例 70代・男性
急性骨髄性白血病に対し化学療法中.中心静脈カテーテル(右内頸静脈)挿入中.化学療法day6から好中球<500/mcLとなり本日day13であるが,朝から38℃を超える発熱あり,血液検査ではCRP増加,PCT正常範囲.FNとして血液培養2セットを提出の上予防的に投与されていたレボフロキサシンからセフェピムにescalationした.ショックはなし.身体診察上も異常所見なし.
day16(培養3日目)に血液培養1/2セット(好気ボトルのみ=つまり1本だけ)から酵母様真菌が発育したと細菌検査室から連絡あり. コンタミ?真の起因菌?
#77. 症例 70代・男性
急性骨髄性白血病に対し化学療法中.中心静脈カテーテル(右内頸静脈)挿入中.化学療法day6から好中球<500/mcLとなり本日day13であるが,朝から38℃を超える発熱あり,血液検査ではCRP増加,PCT正常範囲.FNとして血液培養2セットを提出の上予防的に投与されていたレボフロキサシンからセフェピムにescalationした.ショックはなし.身体診察上も異常所見なし.
day16(培養3日目)に血液培養1/2セット(好気ボトルのみ=つまり1本だけ)から酵母様真菌が発育したと細菌検査室から連絡あり. 真の起因菌!次の一手は?
#78. 症例 70代・男性
急性骨髄性白血病に対し化学療法中.中心静脈カテーテル(右内頸静脈)挿入中.化学療法day6から好中球<500/mcLとなり本日day13であるが,朝から38℃を超える発熱あり,血液検査ではCRP増加,PCT正常範囲.FNとして血液培養2セットを提出の上予防的に投与されていたレボフロキサシンからセフェピムにescalationした.ショックはなし.身体診察上も異常所見なし.
day16(培養3日目)に血液培養1/2セット(好気ボトルのみ=つまり1本だけ)から酵母様真菌が発育したと細菌検査室から連絡あり. 真の起因菌!次の一手は? CVカテーテルの抜去
抗真菌薬の開始
眼科へコンサルテーション
血液培養の再検
#79. 症例 70代・男性
急性骨髄性白血病に対し化学療法中.中心静脈カテーテル(右内頸静脈)挿入中.化学療法day6から好中球<500/mcLとなり本日day13であるが,朝から38℃を超える発熱あり,血液検査ではCRP増加,PCT正常範囲.FNとして血液培養2セットを提出の上予防的に投与されていたレボフロキサシンからセフェピムにescalationした.ショックはなし.身体診察上も異常所見なし.
day16(培養3日目)に血液培養1/2セット(好気ボトルのみ=つまり1本だけ)から酵母様真菌が発育したと細菌検査室から連絡あり. 真の起因菌!次の一手は? CVカテーテルの抜去
抗真菌薬の開始
眼科へコンサルテーション
血液培養の再検
#80. 症例 70代・男性
急性骨髄性白血病に対し化学療法中.中心静脈カテーテル(右内頸静脈)挿入中.化学療法day6から好中球<500/mcLとなり本日day13であるが,朝から38℃を超える発熱あり,血液検査ではCRP増加,PCT正常範囲.FNとして血液培養2セットを提出の上予防的に投与されていたレボフロキサシンからセフェピムにescalationした.ショックはなし.身体診察上も異常所見なし.
day16(培養3日目)に血液培養1/2セット(好気ボトルのみ=つまり1本だけ)から酵母様真菌が発育したと細菌検査室から連絡あり. 薬剤の選択は? セフェピムのまま様子見
メロぺネムへescalation
ミカファンギンの追加
アムホテリシンBの追加
#81. 症例 70代・男性
急性骨髄性白血病に対し化学療法中.中心静脈カテーテル(右内頸静脈)挿入中.化学療法day6から好中球<500/mcLとなり本日day13であるが,朝から38℃を超える発熱あり,血液検査ではCRP増加,PCT正常範囲.FNとして血液培養2セットを提出の上予防的に投与されていたレボフロキサシンからセフェピムにescalationした.ショックはなし.身体診察上も異常所見なし.
day16(培養3日目)に血液培養1/2セット(好気ボトルのみ=つまり1本だけ)から酵母様真菌が発育したと細菌検査室から連絡あり. 薬剤の選択は? セフェピムのまま様子見
メロぺネムへescalation
ミカファンギンの追加
アムホテリシンBの追加
#82. 症例 70代・男性 AML化学療法中のFN(ショックなし)
ミカファンギンの投与を開始した.CVカテーテルは抜去し一時的に末梢カテーテルを挿入した。相変わらず発熱以外のバイタルサインは意識状態含め安定.初回から48時間空けて提出した血液培養2セットは培養5日目でも陰性,眼科も1回目の診察では眼病変は証明されず,経胸壁心エコーでは感染性心内膜炎を疑う所見は認めなかった.
数日後に血液培養の酵母様真菌はCandida parapsilosisと同定され,FLCZ,VRCZ,MCFG,L-AMBいずれも感性を示した.
抗真菌薬は変更する? FLCZ 2. VRCZ 3. MCFG 4. L-AMB
#83. 症例 抗真菌薬は変更する? FLCZ 2. VRCZ 3. MCFG 4. L-AMB 70代・男性 AML化学療法中のFN(ショックなし)
ミカファンギンの投与を開始した.CVカテーテルは抜去し一時的に末梢カテーテルを挿入した。相変わらず発熱以外のバイタルサインは意識状態含め安定.初回から48時間空けて提出した血液培養2セットは培養5日目でも陰性,眼科も1回目の診察では眼病変は証明されず,経胸壁心エコーでは感染性心内膜炎を疑う所見は認めなかった.
数日後に血液培養の酵母様真菌はCandida parapsilosisと同定され,FLCZ,VRCZ,MCFG,L-AMBいずれも感性を示した.
#84. 症例 抗真菌薬の投与期間は?(培養陰性ボトルの提出日から起算) 最低14日間 2. 6週間 3. 6ヶ月 4. 12ヶ月 70代・男性 AML化学療法中のFN(ショックなし)
ミカファンギンの投与を開始した.CVカテーテルは抜去し一時的に末梢カテーテルを挿入した。相変わらず発熱以外のバイタルサインは意識状態含め安定.初回から48時間空けて提出した血液培養2セットは培養5日目でも陰性,眼科も1回目の診察では眼病変は証明されず,経胸壁心エコーでは感染性心内膜炎を疑う所見は認めなかった.
数日後に血液培養の酵母様真菌はCandida parapsilosisと同定され,FLCZ,VRCZ,MCFG,L-AMBいずれも感性を示した.
#85. 症例 抗真菌薬の投与期間は?(培養陰性ボトルの提出日から起算) 最低14日間 2. 6週間 3. 6ヶ月 4. 12ヶ月 70代・男性 AML化学療法中のFN(ショックなし)
ミカファンギンの投与を開始した.CVカテーテルは抜去し一時的に末梢カテーテルを挿入した。相変わらず発熱以外のバイタルサインは意識状態含め安定.初回から48時間空けて提出した血液培養2セットは培養5日目でも陰性,眼科も1回目の診察では眼病変は証明されず,経胸壁心エコーでは感染性心内膜炎を疑う所見は認めなかった.
数日後に血液培養の酵母様真菌はCandida parapsilosisと同定され,FLCZ,VRCZ,MCFG,L-AMBいずれも感性を示した.
#86. 抗真菌薬のスペクトラム 現時点では
Candida 属: MCFG,感受性あればFLCZ / VRCZ
Aspergillus 属: VRCZ
Cryptococcus 属: 髄膜炎はL-AMB + 5-FC,またはFLCZ
その他: L-AMBで初期治療,菌種同定され可能なら最適化
#87. ウシでもわかる真菌の話 2021年版 - 総論と薬剤各論,侵襲性カンジダ症を中心としたメジャーな真菌症まで - 程度の おしまい