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タコでもわかる静注抗菌薬の話(2022新訳)

  • 感染症科

  • 初期研修医向け
  • 抗菌薬
  • 感染症
  • 抗生剤

2,042,118

1,318

2020/11/4
2022/7/1 更新

内容

私は私自身でいたいの。たとえ、ゾーンエッジテストが陰性で、アンピシリンで黄色ブドウ球菌血症を治療することになったとしてもね。

これだけ知っていれば静注抗菌薬では(ほぼ)困らない、そんな10種類の静注抗菌薬についてタコでもわかるようにまとめてみました。 改訂しすぎて別物になりました。他のコンテンツと合わせてご利用ください。

【他のコンテンツ】

* 感染症診療のマテリアル

https://slide.antaa.jp/article/view/1f0d960faeee49f0

* サルでもわかる経口抗菌薬の話

https://slide.antaa.jp/article/view/5199820d537c41bc

* カメでもわかるCRPの話

https://slide.antaa.jp/article/view/e83a7e12c9d74d3b

* ニワトリでもわかるβ-ラクタム系以外の抗菌薬の話

https://slide.antaa.jp/article/view/a335f79d13f144ee

* ウシでもわかる真菌の話

https://slide.antaa.jp/article/view/e491e8559fc14d39

ご質問・ご意見等はtwitter(@metl63)までお寄せください。

スライド内容の転用も歓迎します。その折にはお手数ですがご一報ください。

高野哲史

公立昭和病院


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タコでもわかる静注抗菌薬の話(2022新訳)

  1. タコでもわかる 静注抗菌薬の話 2022年版

  2. この講義の目標 * 静注抗菌薬の使い⽅・使いどころを会得しよう * 頻⽤する静注抗菌薬は⾃由に使えるようになろう 研修医1年⽬の皆様 - 使⽤経験のある抗菌薬があればうまく使えていたか⾒返してみよう - 紹介する薬剤全てを今すぐ使いこなせる必要はありません - 感染症診療のロジカルさを感じてもらえれば 研修医2年⽬(以降)の皆様 - 持ち患者の投与薬剤・設計を⾒直してみよう - ER・⼊院患者で悩む時間を減らそう - ⾃分の感染症診療をよりロジカルに進化させよう

  3. 静注抗菌薬の始め方 一般認識として * 発熱してるから抗菌薬︖ * CRP/⽩⾎球数が異常だから抗菌薬︖ * とりあえず・・・抗菌薬︖

  4. 静注抗菌薬の始め方 一般認識として * 発熱してるから抗菌薬︖ よ す ? ね抗菌薬 * CRP/⽩⾎球数が異常だから ま い * とりあえず・・・抗菌薬︖ 違 ︖

  5. 静注抗菌薬の始め方 すべての感染症診療は, * * * * * 患者背景 感染臓器の検索 原因微生物の推定 抗菌薬の選択 適切な経過観察 これら全ての検討なしには始まりません 微⽣物学的検査の提出 = 起因菌同定の努⼒を

  6. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 問題です メロぺネム(meropenem) vs. セフェピム(cefepime) どっちが強いと思いますか︖その根拠は︖

  7. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 問題です アンピシリン(ampicillin) vs. メロぺネム(meropenem) どっちが強いと思いますか︖その根拠は︖

  8. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 問題です アンピシリン(ampicillin) vs. メロぺネム(meropenem) 腸球菌(特にEnterococcus faecalis)の菌⾎症 第⼀選択となるのはどちらですか︖

  9. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 問題です セフメタゾール(cefmetazole) vs. ピペラシリン・タゾバクタム (piperacillin-tazobactam) ESBLs産⽣⼤腸菌の尿路感染症 本邦において第⼀選択となり得るのはどちらですか︖

  10. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 難しいですね 第⼀選択薬であること = 抗菌⼒が⼀番強いということ ⾊々な細菌に効くということ 低い濃度でも殺菌できるということ

  11. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 勘違いせぬよう 第⼀選択薬であること = 抗菌⼒が⼀番強いということ ⾊々な細菌に効くということ 低い濃度でも殺菌できるということ

  12. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 抗菌薬に強弱はない 抗菌薬は第⼀選択薬かそうでないかをまず考える * 「第⼀選択薬である」ことには相応の理由がある - 過去の臨床成績,他薬との⽐較,時に費⽤,アクセス,その他 * 「広域抗菌薬 = 強⼒な抗菌薬」という構図は捨てる - 広域抗菌薬の無意味な延⻑投与は百害あって⼀利なし * 第⼀選択かどうか分からない場合は︖ - 成書や信頼できるWebサイトなどに早めにあたる - 薬剤感受性の縦読み(“S”の薬剤を無思慮に使うなど)をしない︕

  13. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 * * * * 症例① ⽣来健康な50代⼥性 1⽇前からの39℃台の発熱 左>右のCVA叩打痛(= 左右差あり) 尿沈渣では尿中⽩⾎球3+,尿Gram染⾊では太いグラム陰性桿菌 → 疑わしい診断名は︖

  14. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例① # 急性腎盂腎炎(疑い) * ⾎液培養(2set)・尿培養を提出 * 経験的治療としてセフトリアキソン 1g 24時間毎点滴で治療開始 * 治療3⽇⽬に尿培養・⾎液培養共に⾃然耐性のみの⼤腸菌が発育判明 (診断は急性腎盂腎炎で確かのよう) * バイタルサイン・全⾝状態とも持ち直した様⼦ → 3⽇⽬以降の治療⽅針は︖

  15. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例① まずは抗菌薬について ① ② ③ ④ 抗菌薬が効いている︕このままセフトリアキソンを継続 もっと強⼒な抗菌薬に︕メロペネムに変更 アンピシリンに変更できそうだ それ以外

  16. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 ① ② ③ ④ 症例① 抗菌薬が効いている︕このままセフトリアキソンを継続 もっと強⼒な抗菌薬に︕メロペネムに変更 アンピシリンに変更できそうだ それ以外 → アンピシリン 2g 6時間毎 点滴静注に変更した

  17. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例① 投与期間について ① ② ③ ④ ⑤ 元気になってる︕男は黙って3⽇間で終了 こういうのはキリのいい数字︕7⽇間で終了 ⼤体このくらいやろ︕10⽇間で終了 ⻑ければ⻑いほど安⼼︕14⽇間継続 それ以外

  18. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例① 投与期間について ① ② ③ ④ ⑤ 元気になってる︕男は黙って3⽇間で終了 こういうのはキリのいい数字︕7⽇間で終了 ⼤体このくらいやろ︕10⽇間で終了 ⻑ければ⻑いほど安⼼︕14⽇間継続 それ以外

  19. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 * * * * 一方,症例② ⽣来健康な50代男性 1⽇前からの39℃台の発熱 CVA叩打痛が若⼲左>右︖うーん,全然はっきりせず 尿沈渣では尿中⽩⾎球3+,尿Gram染⾊では太いグラム陰性桿菌 → 疑わしい診断名は︖

  20. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例② # 尿路感染症(D/D 急性腎盂腎炎,急性前⽴腺炎) * * * * * ⾎液培養(2set)・尿培養を提出 経験的治療としてセフトリアキソン 1g 24時間毎点滴で治療開始 治療3⽇⽬に尿培養・⾎液培養共に⾃然耐性のみの⼤腸菌が発育判明 泌尿器科医が直腸診をしたら⾶び上がるほど痛がる バイタルサイン・全⾝状態とも持ち直した様⼦ -> なるほど急性前⽴腺炎らしい︕3⽇⽬以降の治療⽅針は︖

  21. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例② まずは抗菌薬について ① ② ③ ④ 抗菌薬が効いている︕このままセフトリアキソンを継続 もっと強⼒な抗菌薬に︕メロペネムに変更︕ アンピシリンに変更できそうだ それ以外

  22. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 ① ② ③ ④ 症例② 抗菌薬が効いている︕このままセフトリアキソンを継続 もっと強⼒な抗菌薬に︕メロペネムに変更︕ アンピシリンに変更できそうだ それ以外 → 前⽴腺への移⾏性がより担保された薬剤へ変更 ・シプロフロキサシンやレボフロキサシンなどのキノロン ・ST合剤 (⼀⽅で炎症が起こっている前⽴腺では移⾏性考慮の必要なしとの意⾒あり)

  23. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例② 投与期間について ① ② ③ ④ ⑤ 元気になってる︕男は黙って3⽇間で終了 こういうのはキリのいい数字︕7⽇間で終了 ⼤体このくらいやろ︕10⽇間で終了 ⻑ければ⻑いほど安⼼︕14⽇間継続 それ以外

  24. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例② 投与期間について ① ② ③ ④ ⑤ 元気になってる︕男は黙って3⽇間で終了 こういうのはキリのいい数字︕7⽇間で終了 ⼤体このくらいやろ︕10⽇間で終了 ⻑ければ⻑いほど安⼼︕14⽇間継続 それ以外 → 〜6週間の治療を勧める意⾒あり

  25. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例① ⽣来健康な50代⼥性 感染臓器: 腎 + 菌⾎症 起因微⽣物: ⼤腸菌 最適治療薬: アンピシリン 治療期間: 10-14⽇間 症例② ⽣来健康な50代男性 感染臓器: 前⽴腺 + 菌⾎症 起因微⽣物: ⼤腸菌 最適治療薬: レボフロキサシン 治療期間: 14-42⽇間 臓器が違えば治療薬も違う,治療期間も違う 微⽣物が違えば治療薬も違う,治療期間も違う 抗菌薬を始めた時点で投与期間は⼤まかに推定・⾒積もりすること 翻って,推定するための材料集めに努めること

  26. 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例① ⽣来健康な50代⼥性 感染臓器: 腎 + 菌⾎症 起因微⽣物: ⼤腸菌 最適治療薬: アンピシリン 治療期間: 10-14⽇間 症例② ⽣来健康な50代男性 感染臓器: 前⽴腺 + 菌⾎症 起因微⽣物: ⼤腸菌 最適治療薬: レボフロキサシン 治療期間: 14-42⽇間 抗菌薬を始めるのは簡単, 終わるのは難しい 臓器が違えば治療薬も違う,治療期間も違う 微⽣物が違えば治療薬も違う,治療期間も違う 何となくでオーダしない こと! 抗菌薬を始めた時点で投与期間は⼤まかに推定・⾒積もりすること 翻って,推定するための材料集めに努めること

  27. OKですか? 薬剤の話よりも大事な話でした ご理解頂けたら, 具体的な薬剤の話をしていきましょう

  28. 慣れておくべき静注抗菌薬 その上で アンピシリン(ampicillin) アンピシリン・スルバクタム(ampicillin-sulbactam) ピペラシリン・タゾバクタム(piperacillin-tazobactam) セファゾリン(cefazolin) セフトリアキソン(ceftriaxone) セフェピム(cefepime) セフメタゾール(cefmetazole) メロペネム(meropenem) メトロニダゾール(metronidazole) バンコマイシン(vancomycin)

  29. 慣れておくべき静注抗菌薬 β-ラクタムかそうでないかでまず区別 アンピシリン ペニシリン系 アンピシリン・スルバクタム ピペラシリン・タゾバクタム カルバペネム系 メロペネム β-ラクタム系抗菌薬 非β-ラクタム系抗菌薬 セフェム系 セファゾリン セフトリアキソン セフェピム セファロスポリン系 ニトロイミダゾール系 メトロニダゾール グリコペプチド系 セフメタゾール セファマイシン系 バンコマイシン

  30. 各論行ってみましょう

  31. 慣れておくべき静注抗菌薬 アンピシリン ペニシリン系 アンピシリン・スルバクタム ピペラシリン・タゾバクタム カルバペネム系 メロペネム β-ラクタム系抗菌薬 非β-ラクタム系抗菌薬 セフェム系 セファゾリン セフトリアキソン セフェピム セファロスポリン系 ニトロイミダゾール系 メトロニダゾール グリコペプチド系 セフメタゾール セファマイシン系 バンコマイシン

  32. アンピシリン(ampicillin; ABPC) * * * * * ペニシリン系薬剤(アミノペニシリン) 半減期: 約1時間 – 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 中枢神経系への移⾏性: あり 腎機能障害時の⽤量調節: 要 / 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 近似の経⼝抗菌薬: アモキシシリン(amoxicillin; AMPC) 腎機能正常な体重50kg以上の成⼈に対し, 2.0 gを⽣⾷100 mLに溶解し2時間かけ4-6時間毎に静脈投与

  33. ん︖

  34. アンピシリン(ampicillin; ABPC) * * * * * ペニシリン系薬剤(アミノペニシリン) 半減期: 約1時間 – 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 中枢神経系への移⾏性: あり 腎機能障害時の⽤量調節: 要 / 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 近似の経⼝抗菌薬: アモキシシリン(amoxicillin; AMPC) - アモキシシリン 1回500mg 1⽇3-4回(各⾷後(+眠前))内服 腎機能正常な体重50kg以上の成⼈に対し, 2.0 gを⽣⾷100 mLに溶解し2時間かけ4-6時間毎に静脈投与

  35. アンピシリン(ampicillin; ABPC) * * * * * ペニシリン系薬剤(アミノペニシリン) 半減期: 約1時間 – 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 2時間も 中枢神経系への移⾏性: あり かけんでええやろ・・・ 腎機能障害時の⽤量調節: 要 / 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 近似の経⼝抗菌薬: アモキシシリン(amoxicillin; AMPC) - アモキシシリン 1回500mg 1⽇3-4回(各⾷後(+眠前))内服 腎機能正常な体重50kg以上の成⼈に対し, 2.0 gを⽣⾷100 mLに溶解し2時間かけ4-6時間毎に静脈投与

  36. 投与設計について β-ラクタム系抗菌薬は点滴時間を延⻑するのがベター (ペニシリン,セフェム,カルバペネム) 投与時間を伸ばすとT>MICを稼げる = 治療効果が⾼まる可能性がある しばしば投与薬剤量を節約できる - 患者の薬剤暴露量減 + 薬剤費⽤減 点滴時間を伸ばすことにお⾦は掛からない(⼿間は掛かるのでスタッフの理解を得ること) 内科的緊急疾患を疑う場合(=急速に⾎中濃度を⾼める必要のある時) は除く - 敗⾎症性ショック,細菌性髄膜炎の初回投与時など 投与間隔は⾎中半減期の4倍の時間を⽬安とする - 半減期が1時間未満ならば4時間毎投与(penicillin G) - 半減期が2時間程度ならば8時間毎投与(cefepimeなど) - 半減期が6時間以上ならば24時間毎投与(ceftriaxone)

  37. 投与設計について 慣習的に「抗菌薬は1日2回投与」の病院もゴマンとある・・・ それ,患者の不利益になっていませんか? - 投与量の不⾜に起因する治療効果不良 - 乏しい治療効果の中で無駄に晒される副作⽤リスク - 中途半端な薬物濃度に晒されることでの薬剤耐性誘導 患者にベストな感染症治療を提案できる素地を構築しましょう

  38. 投与時間について(参考) 1g x3 1時間かけての点滴より 1g x3 2時間かけての点滴時間の方が MIC 16mcg/mLを達成している時間が長い(↓) meroTam: https://ds-pharma.jp/medical_content/learning/merotam/html/member/index.html パラメータをいじって遊んでみてください

  39. 閑話休題

  40. アンピシリン・スルバクタム(ampicillin-sulbactam; ABPC/SBT) * ペニシリン系とβ-ラクタマーゼ阻害剤の合剤(βL+βLI) * 半減期: 約1時間 – 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 * 中枢神経系への移⾏性: 原則使⽤しない(スルバクタムは移⾏しにくい) * 腎機能障害時の⽤量調節: 要 / 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 * 近似の経⼝抗菌薬: アモキシシリン/クラブラン酸 (amoxicillin-clavulanate; AMPC/CVA) - アモキシシリン 500mg + クラブラン酸125mg 1⽇3回(各⾷後)内服 - 肝障害と下痢には留意: 恐らくクラブラン酸による - Acinetobacter baumanii感染症治療時のde-escalation不可 腎機能正常な体重50kg以上の成⼈に対し, 2.0 gを⽣⾷100 mLに溶解し2時間かけ4-6時間毎に静脈投与

  41. アンピシリン・スルバクタム(ampicillin-sulbactam; ABPC/SBT) * Acinetobacter baumanii のほとんどがスルバクタムに感受性を持つ - このとき⼀回投与量は本剤12gとの記載もあるが,保険適⽤外かつ副作⽤のリスクも増⼤ - 迷ったら専⾨家に相談. * コラテラル・ダメージ(= 正常細菌叢の撹乱)への意識を - 正常細菌叢の修復には時間がかかる - コラテラル・ダメージの⼤きい薬剤の無⽤な投与はなるべく短期に留めるか,避ける * 広域スペクトルで⾮常に便利だが,兎⾓乱⽤されやすい(poor menʼs carbapenem) - 伝家の宝⼑「とりあえずスルバシリン」 - 2019年末は供給問題もあったし,いつまた起こるか分からない - 「エンピリック療法で選択し菌種同定されてもそのまま」はいかがなものか → 普段から適切な薬剤変更ができるようなトレーニングを * 誤嚥性肺炎の治療に「妥当」であっても「最適」ではないかもしれない - ⼝腔内の嫌気性菌が産⽣するβ-lactamaseに安定の薬剤は少なくない (セフトリアキソンなど) - 誤嚥性肺炎に脊髄反射でアンピシリン・スルバクタムを投与しない

  42. ピペラシリン・タゾバクタム(piperacillin-tazobactam; TAZ/PIPC) * 抗緑膿菌ペニシリン(ウレイドペニシリン)とβ-ラクタマーゼ阻害薬の合剤 - 超広域スペクトル → 経験的治療薬の代表格 → ただし,継続が絶対必要なケースは少ない.適切なde-escalationを︕ - 緑膿菌の治療に使うのはむしろ稀.感受性によりセフタジジム等へ変更する. * 中枢神経系への移⾏性: 原則使⽤しない * 半減期: 約1時間(0.9時間) – 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 * 低カリウム⾎症,肝障害,腎障害などに留意 - 腎障害は特にバンコマイシンの併⽤時は注意,可能なら併⽤を避ける → テイコプラニン(中枢神経不可),ダプトマイシン(肺炎不可),リネゾリドなどへの変更を検討 * 腎機能障害時の⽤量調節: 要 / 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 腎機能正常な体重50kg以上の成⼈に対し, 4.5 gを⽣⾷100 mLに溶解し2時間かけ6時間毎に静脈投与

  43. セファゾリン(cefazolin; CEZ) * β-ラクタム系 - セファロスポリン系薬剤 * ⻩⾊ブドウ球菌(MSSA※1に限る)に対する第⼀選択薬 * * * * - 最重要.本法において本薬剤に勝る抗MSSA治療薬はない. - ただし中枢神経に移⾏しないためMSSA髄膜炎の治療はできない 半減期: 約1.8時間 – ペニシリン系よりやや⻑い 腎機能障害時の⽤量調節: 要 / 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 ⽪膚軟部組織感染症や尿路感染症の標的治療薬として重⽤ 近似の経⼝抗菌薬: セファレキシン(cephalexin; CEX) - 複合顆粒が⾮常に便利(服薬回数が2回/⽇と少ない) - セファレキシン顆粒 1回1g(⼒価) 1⽇2回内服 腎機能正常な体重50kg以上の成⼈に対し, 2.0 gを⽣⾷/5%ブドウ糖液100 mLに溶解し2時間かけ8時間毎に静脈投与 ※1: MSSA ‒ Methicillin-Susceptible Staphylococcus aureus

  44. セフトリアキソン(ceftriaxone; CTRX) * セファロスポリン系薬剤 * 中枢神経系への移⾏性: あり * 半減期: 6時間前後 - ⾮常に⻑い.外来抗菌薬静注療法 (OPAT)が可能. (Outpatient Parenteral Antimicrobial Therapy) * 意外とよくある副作⽤と同時投与禁の輸液種に注意 - 2g/⽇以上の投与でしばしば起こる偽胆⽯ → ⾒つかったら投与中⽌を検討 - 結晶析出の可能性あり,カルシウムを含む輸液との同時投与不可 * 腎機能障害時の⽤量調節: 不要 / 肝機能障害時の⽤量調節: 要 - ただし具体的にどのような場合に減量するか⼀貫した基準なし - 現実的にはスペクトルの同⼀なセフォタキシムへ変更が妥当か 体重50kg以上の成⼈に対し, 2.0 gを⽣⾷/5%ブドウ糖液100 mLに溶解し24時間毎に静脈投与

  45. セフェピム(cefepime; CFPM) * 緑膿菌活性のあるセファロスポリン系薬剤 * 中枢神経系への移⾏性: あり – 中枢神経感染症における有⼒な選択肢 - 特に腎機能障害例で「セフェピム脳症」のリスク → 投与中は必ず神経学的所⾒(意識状態)を追う.疑えば頭部MRIも検討 * 半減期: 約2時間 * 腎機能障害時の⽤量調節: 要 / 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 - 上記脳症のリスクのため投与設計は特に慎重に⾏う.不安なら薬剤師へ相談する. * AmpC型β-ラクタマーゼに安定 - Enterobacter sp, Citrobacter freundii, Klebsiella aerogenesなどへの第⼀選択 - カルバペネム・スペアリング・エージェントとして重要なポジション → 感受性が確認できたらカルバペネムからde-escalationする

  46. セフメタゾール(cefmetazole; CMZ) * セファマイシン系薬剤 (≠セファロスポリン(セフォチアム・セファクロル)) * 偏性嫌気性グラム陰性桿菌(Bacteroides 属など)に活性あり - セファロスポリン系(セファゾリン・セフトリアキソン・セフェピム)との相違点 * ⽶国で上市されていない(⽶国ではcefotetan, cefoxitin) - 臨床のエビデンスがそこまで豊富ではない.教科書にもしばしば記載がない - ⼀⽅で本邦では耐性菌治療薬として⾮常に重要な薬剤 → ESBLs※2に対して安定である (のうち本邦で最もメジャーなCTX-M) ESBLs産⽣腸内細菌⽬細菌感染症の標的治療薬のひとつ バイタルサインの異常など臨床的不安定性があればメロぺネムを優先 * 中枢神経系への移⾏性: なし * 半減期: 約1.5時間 * 腎機能障害時の⽤量調節: 要 / 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 ※2: ESBLs ‒ Extended-Spectrum β-lactamases 体重50kg以上の成⼈に対し,2.0 gを⽣⾷/5%ブドウ糖液100 mLに溶解し6時間毎に静脈投与

  47. メロぺネム(meropenem; MEPM) * β-ラクタム系 - カルバペネム系薬剤 * 中枢神経系への移⾏性: あり * 半減期: 約1時間 * ESBLs,AmpC型β-ラクタマーゼに対して安定 - これらの存在を疑う場合の経験的治療薬として⽤いる → 標的治療薬として必須の状況は稀.漫然と使い続けないこと → 可及的早期にde-escalationすることが前提になければならない * 腎機能障害時の⽤量調節: 要 / 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 * バルプロ酸との併⽤禁忌(→ バルプロ酸の⾎中濃度低下) 体重50kg以上の成⼈に対し, 1.0 gを⽣⾷/5%ブドウ糖液100 mLに溶解し2時間以上かけ8時間毎に静脈投与 (中枢神経感染症を視野に⼊れる場合は2.0g/dose)

  48. メロぺネム(meropenem; MEPM) * β-ラクタム系 - カルバペネム系薬剤 * 中枢神経系への移⾏性: あり * 半減期: 約1時間 * ESBLs,AmpC型β-ラクタマーゼに対して安定 極めて特殊な薬剤 です - これらの存在を疑う場合の経験的治療薬として⽤いる 手放しで処方する薬剤では到底ありません → 標的治療薬として必須の状況は稀.漫然と使い続けないこと 「なんだかよく分からないけど・・・」「良くならないから・・・」 → 「重症だから・・・」「メロペンなら安心・・・」 可及的早期にde-escalationすることが前提になければならない だめです 「培養出しそびれたけど・・・」「なんとなく・・・」 * 腎機能障害時の⽤量調節: 要 / 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 * バルプロ酸との併⽤禁忌 (→ バルプロ酸の⾎中濃度低下) 広域抗菌薬の影に耐性菌あり - カルバペネム耐性緑膿菌の誘導,カルバペネム耐性腸内細菌⽬細菌の選択 体重50kg以上の成⼈に対し, 染⾊体性にカルバペネム耐性の細菌の台頭 (Stenotrophomonas maltophiliaなど) 1.0 -gを⽣⾷/5%ブドウ糖液100 mLに溶解し2時間以上かけ8時間毎に静脈投与 (中枢神経感染症を視野に⼊れる場合は2.0g/dose)

  49. メロぺネム(meropenem; MEPM) * β-ラクタム系 - カルバペネム系薬剤 * 中枢神経系への移⾏性: あり * 半減期: 約1時間 * ESBLs,AmpC型β-ラクタマーゼに対して安定 極めて特殊な薬剤 です - これらの存在を疑う場合の経験的治療薬として⽤いる ⽌むを得ない事情でカルバペネム系薬剤を選択する場合 → 標的治療薬として必須の状況は稀.漫然と使い続けないこと 感染臓器の再評価 → フォーカスの特定 → 可及的早期にde-escalationすることが前提になければならない * 微生物学的検査検体の採取努力 腎機能障害時の⽤量調節: 要 / 肝機能障害時の⽤量調節: (喀痰・尿・胆汁など) 不要 * バルプロ酸との併⽤禁忌(→ バルプロ酸の⾎中濃度低下) - 判然としなければ血液培養2セット(以上)を最低限提出 体重50kg以上の成⼈に対し, 投与期間を前もって決める・早期にde-escalation 1.0 gを⽣⾷/5%ブドウ糖液100 mLに溶解し2時間以上かけ8時間毎に静脈投与 (中枢神経感染症を視野に⼊れる場合は2.0g/dose) 不勉強な医師が処方するカルバペネムほど恐ろしいものはない 本当にその患者にとって最良の選択肢かを普段以上に吟味すること

  50. 慣れておくべき静注抗菌薬 アンピシリン ペニシリン系 アンピシリン・スルバクタム ピペラシリン・タゾバクタム ここまでよろしいでしょうか? カルバペネム系 メロペネム β-ラクタム系抗菌薬 非β-ラクタム系抗菌薬 セフェム系 セファゾリン セフトリアキソン セフェピム セファロスポリン系 ニトロイミダゾール系 メトロニダゾール グリコペプチド系 セフメタゾール セファマイシン系 バンコマイシン

  51. 慣れておくべき静注抗菌薬 アンピシリン ペニシリン系 アンピシリン・スルバクタム ピペラシリン・タゾバクタム 次はβ-ラクタムと少し役割の違う薬剤です カルバペネム系 メロペネム β-ラクタム系抗菌薬 非β-ラクタム系抗菌薬 セフェム系 セファゾリン セフトリアキソン セフェピム セファロスポリン系 ニトロイミダゾール系 メトロニダゾール グリコペプチド系 セフメタゾール セファマイシン系 バンコマイシン

  52. メトロニダゾール(metronidazole; MNZ) * ニトロイミダゾール系薬剤 - 名前に馴染みがないが,偏性嫌気性グラム陰性菌治療で最も信頼できる薬剤 * 中枢神経系を含め全⾝隈なく分布する * 静注薬は薬価が⾼め → 経⼝薬は安価なので経⼝投与可能なら経⼝薬へステップダウンを * 嫌酒効果あり(ジスルフィラム様効果) - ⼊院中は問題にならないが退院後内服継続する場合は要禁酒指導 * 腎機能障害時の⽤量調節: ⾼度なら要 /肝機能障害時の⽤量調節: ⾼度なら要 - Child-Pugh分類Cで50%減量との推奨あり.迷ったら成書を参照したり薬剤師に尋ねる. * “メトロニダゾール脳症”に注意が必要 → 疑ったら投与中⽌ - 構⾳障害,歩⾏障害,四肢の協調運動障害が多い1).投与中は神経学的所⾒を追うこと - 頭部単純MRI T2/FLAIRにおける⻭状核に両側対称性の⾼信号が特異的 腎機能正常な体重50kg以上の成⼈に, 1回500mgを1⽇3回30分かけて静脈投与(溶解済みなので溶解液不要) 1) Caspar GS, et al.; Metronidazole-induced encephalopathy: a systematic review, Journal of Neurology (2020) 267:1–13

  53. バンコマイシン(vancomycin; VCM) * グリコペプタイド系薬剤 - 「抗グラム陽性球菌薬」と認識する.MRSA専⽤ではない︕ * 中枢神経系への移⾏性: あり * TDM(therapeutic drug monitoring)が必要な薬剤の代表格 - 副作⽤(特に腎機能障害)予防に必須.投与設計(投与量・投与間隔・トラフ測定間隔)は薬剤師にも相談する - 従来トラフ値がTDM指標だったがAUC/MIC>400に置き換わりつつある → 施設の⽅針に従う.トラフを使⽤する場合は10-15mcg/mL⽬標(MRSAの場合は15-20mcg/mL) * 副作⽤のモニタが重要 - レッドネック症候群: 急速に⾎中濃度が上がった際のヒスタミン遊離により起こる. → 投与時間を延⻑する.よほど⼤量でなければ2時間かけておけば誤ることは少ない - 腎機能障害: ⾼トラフ値がリスク.TAZ/PIPCとの併⽤で頻度上昇する2), 3)との報告あり → 腎機能障害例などで本薬が使いにくい場合は代替薬について専⾨家へ相談すること 2) Blair M., et al., Nephrotoxicity from Vancomycin Combined with Piperacillin-Tazobactam: A Comprehensive Review, Am J Nephrol 2021;52:85‒97 3) Lindsey D., et al., Comparison of the Incidence of Vancomycin-Induced Nephrotoxicity in Hospitalized Patients with and without Concomitant Piperacillin-Tazobactam, Pharmacotherapy 2014;34(7):670‒676.

  54. OKですか?

  55. まとめ * 絶対覚えるべき静注抗菌薬は少ない ○ アンピシリン ○ セフェピム ○ アンピシリン・スルバクタム ○ セフメタゾール ○ ピペラシリン・タゾバクタム ○ メロぺネム ○ セファゾリン ○ メトロニダゾール ○ セフトリアキソン ○ バンコマイシン * 治療最適化のための努力を - 問診,身体診察,微生物学的検査検体の提出(抗菌薬投与前に) - 抗菌薬投与はノーリスクではない ‒ 投与しないに越した事はない * 「最適治療」が「最適治療」たる所以を考えよう * 抗菌薬投与を始める前に可能な限り投与期間を決める

  56. い ま し タコでもわかる 静注抗菌薬の話 お 2022年版

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