タコでもわかる静注抗菌薬の話

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高野 哲史

公立昭和病院

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逆にこれだけ知っていれば静注抗菌薬では(ほぼ)困らない、そんな10種類の静注抗菌薬についてタコでもわかるようにまとめてみました。

【更新連絡(7/24)】
わかりにくい表現を何箇所か修正しました。

【他のコンテンツ】
* サルでもわかる経口抗菌薬の話 2021年版
(https://slide.antaa.jp/article/view/5199820d537c41bc)
* タコでもわかる静注抗菌薬の話 2021年版
これ
* カメでもわかるCRPの話 2021年版
(https://slide.antaa.jp/article/view/e83a7e12c9d74d3b#46)

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タコでもわかる静注抗菌薬の話

逆にこれだけ知っていれば静注抗菌薬では(ほぼ)困らない、そんな10種類の静注抗菌薬についてタコでもわかるようにまとめてみました。 【更新連絡(7/24)】 わかりにくい表現を何箇所か修正しました。 【他のコンテンツ】 * サルでもわかる経口抗菌薬の話 2021年版 (https://slide.antaa.jp/article/view/5199820d537c41bc) * タコでもわかる静注抗菌薬の話 2021年版 これ * カメでもわかるCRPの話 2021年版 (https://slide.antaa.jp/article/view/e83a7e12c9d74d3b#46) ご質問・ご意見等はtwitter(@metl63)までお寄せください。

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タコでもわかる静注抗菌薬の話

1. タコでもわかる静注抗菌薬の話 2021年版
2. この講義の目標 * 静注抗菌薬の使い方・使いどころを会得しよう * 頻用する静注抗菌薬だけを知っておこう * 実際の症例を交えて,使う感覚を養おう
3. この講義の目標 研修医1年目の皆様 - 使用経験のある抗菌薬があればうまく使えていたか見返してみよう - 紹介する薬剤全てを今すぐ使いこなせる必要はありません - 感染症診療のロジカルさを感じてもらえれば 研修医2年目(以降)の皆様 持ち患者の投与薬剤・設計を見直してみよう - ER・入院患者で悩む時間を減らそう - 自分の感染症診療をよりロジカルに進化させよう
4. 一般認識として * 発熱してるから抗菌薬? * CRP/WBCが高いから抗菌薬? * 「とりあえず」抗菌薬? 静注抗菌薬の始め方
5. 一般認識として * 発熱してるから抗菌薬? * CRP/WBCが高いから抗菌薬? * 「とりあえず」抗菌薬? 静注抗菌薬の始め方 違いますよね?
6. すべての感染症診療は, これらの検討なしには始まりません 微生物学的検査の提出 = 起因菌同定の努力を * 患者背景 * 感染臓器の検索 * 原因微生物の推定 * 抗菌薬の選択 * 適切な経過観察 静注抗菌薬の始め方
7. meropenem vs. cefepime 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 問題です どっちが強いと思いますか?
8. ampicillin vs. cefepime 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 問題です どっちが強いと思いますか?
9. ampicillin vs. meropenem 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 問題です どっちが強いと思いますか?
10. ampicillin vs. meropenem 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 問題です 腸球菌(特にEnterococcus faecalis)の菌血症 第一選択となるのはどちらですか?
11. cefmetazole vs. piperacillin-tazobactam 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 問題です ESBLs産生大腸菌の菌血症 第一選択となる(なり得る)のはどちらですか?
12. 「第一選択薬であること」 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 難しいですね・・・ ということですか? とは 「抗菌力が一番強いということ」
13. 抗菌薬に強い・弱いはありません 解剖学的構造(≒臓器)・微生物に対し 最良の抗菌薬を選択するのみ 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 違いますね それ以外の基準は(原則)ありません 例えば
14. * 生来健康な50代女性 * 1日前からの39度代の発熱 * 左>右のCVA叩打痛(= 左右差あり) * 尿沈渣では尿中白血球3+,尿Gram染色では太いグラム陰性桿菌 -> 疑わしい診断名は? 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例①
15. # 急性腎盂腎炎(がこの時点では最も疑わしい) * 血液培養(2set)・尿培養を提出 * 経験的治療としてセフトリアキソンを投与開始 * 尿培養・血液培養共に自然耐性のみの大腸菌が発育 (診断は急性腎盂腎炎で確かのよう) * 投与3日目には解熱し,かなり状態は持ち直した様子 -> 3日目以降の治療方針は? 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例①
16. まずは抗菌薬について ① 抗菌薬が効いている!このままセフトリアキソンを継続 ② もっと早く良くしたい!メロペネムに変更! ③ 感受性通りに!アンピシリンに変更! ④ それ以外 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例①
17. まずは抗菌薬について ① 抗菌薬が効いている!このままセフトリアキソンを継続 ② もっと早く良くしたい!メロペネムに変更! ③ 感受性通りに!アンピシリンに変更!(セファゾリンでもOK) ④ それ以外 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例①
18. 次に投与期間について ① 元気になってる!男は黙って3日間で終了 ② こういうのはキリのいい数字!7日間で終了 ③ 大体このくらいやろ!10日間で終了 ④ ここは慎重に!14日間で終了 ⑤ それ以外 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例①
19. 次に投与期間について ① 元気になってる!男は黙って3日間で終了 ② こういうのはキリのいい数字!7日間で終了 ③ 大体このくらいやろ!10日間で終了 ④ ここは慎重に!14日間で終了 ⑤ それ以外 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例① さらに治療期間を短縮できないかという議論もあります
20. * 生来健康な50代男性 * 1日前からの39度代の発熱 * CVA叩打痛が若干左>右?うーん,全然はっきりせず * 尿沈渣では尿中白血球3+,尿Gram染色では太いグラム陰性桿菌 -> 疑わしい診断名は? 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例②
21. # 尿路感染症(がこの時点では最も疑わしい) * 血液培養(2set)・尿培養を提出 * 経験的治療としてセフトリアキソンを投与開始 * 尿培養・血液培養共に自然耐性のみの大腸菌が発育 * 泌尿器科医が直腸診をしたら飛び上がるほど痛がる * 投与3日目には解熱し,かなり状態は持ち直した様子 -> なるほど急性前立腺炎らしい!3日目以降の治療方針は? 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例②
22. まずは抗菌薬について ① 抗菌薬が効いている!このままセフトリアキソンを継続 ② もっと早く良くしたい!メロペネムに変更! ③ 感受性通りに!アンピシリンに変更! ④ それ以外 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例②
23. まずは抗菌薬について ① 抗菌薬が効いている!このままセフトリアキソンを継続 ② もっと早く良くしたい!メロペネムに変更! ③ 感受性通りに!アンピシリンに変更! ④ それ以外 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例②
24. まずは抗菌薬について ① 抗菌薬が効いている!このままセフトリアキソンを継続 ② もっと早く良くしたい!メロペネムに変更! ③ 感受性通りに!アンピシリンに変更! ④ それ以外 -> 前立腺移行性の良いレボフロキサシンが良い選択肢 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例② 経過が良ければ許容
25. 次に投与期間について(レボフロキサシンの場合) ① 元気になってる!男は黙って3日間で終了 ② こういうのはキリのいい数字!7日間で終了 ③ 大体このくらいやろ!10日間で終了 ④ ここは慎重に!14日間で終了 ⑤ それ以外 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例②
26. 次に投与期間について ① 元気になってる!男は黙って3日間で終了 ② こういうのはキリのいい数字!7日間で終了 ③ 大体このくらいやろ!10日間で終了 ④ ここは慎重に!14日間で終了 ⑤ それ以外 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例②
27. 症例① 生来健康な50代女性 感染臓器: 腎 + 菌血症 起因微生物: 大腸菌 最適治療薬: アンピシリン 治療期間: 10日間 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例② 生来健康な50代男性 感染臓器: 前立腺 + 菌血症 起因微生物: 大腸菌 最適治療薬: レボフロキサシン 治療期間: 10-14日間(以上) 臓器が違えば治療薬も違う,治療期間も違う 微生物が違えば治療薬も違う,治療期間も違う 抗菌薬は始めた時点で大まかに投与期間を推定できます 逆に,せっかく推定できるんだから推定するための材料集めをしてほしい
28. そのために * 患者背景 * 感染臓器の検索 * 原因微生物の推定 * 抗菌薬の選択 * 適切な経過観察 静注抗菌薬の始め方 最大の効果,最小の副作用,最少の耐性菌誘導 大原則
29. そのために * 患者背景 * 感染臓器の検索 * 原因微生物の推定 * 抗菌薬の選択 * 適切な経過観察 静注抗菌薬の始め方 最大の効果,最小の副作用,最少の耐性菌誘導 まとめると 抗菌薬を始めるのは簡単, 終わるのは難しい 「何となく」でオーダするな!
30. OKですか? ぶっちゃけ薬剤の話よりもここまでの話の方が大事ですよ
31. 具体的な薬剤の話をしていきましょう OKなら
32. その上で 慣れておくべき静注抗菌薬 アンピシリン アンピシリン-スルバクタム ピペラシリン-タゾバクタム セファゾリン セフトリアキソン セフェピム セフメタゾール メロペネム メトロニダゾール バンコマイシン
33. ついでに 慣れておくべき静注抗菌薬 アンピシリン アンピシリン-スルバクタム ピペラシリン-タゾバクタム セファゾリン セフトリアキソン / セフォタキシム セフェピム セフメタゾール メロペネム メトロニダゾール バンコマイシン もし余力があれば, ペニシリンG セフタジジム クリンダマイシン アジスロマイシン レボフロキサシン テイコプラニン
34. 慣れておくべき静注抗菌薬 アンピシリン<ビクシリン®︎> アンピシリン-スルバクタム<ユナシンS®,スルバシリン®,ピシリバクタ®> ピペラシリン-タゾバクタム<ゾシン®︎,タゾピペ配合静注用︎®> セファゾリン<セファメジンα®︎> セフトリアキソン<ロセフィン®︎> セフェピム<マキシピーム®︎> セフメタゾール<セフメタゾン®︎> メロペネム<メロペン®︎> メトロニダゾール<アネメトロ®︎> バンコマイシン<バンコマイシン塩酸塩®︎> 代表的な商品名だけ,チラと
35. 細かく分けると 慣れておくべき静注抗菌薬 バンコマイシン アンピシリン アンピシリン-スルバクタム ピペラシリン-タゾバクタム ペニシリン系 グリコペプチド系 セファゾリン セフトリアキソン セフェピム メロペネム メトロニダゾール セフェム系(セファロスポリン + セファマイシン) セフメタゾール カルバペネム系 ニトロイミダゾール系
36. 簡単に 慣れておくべき静注抗菌薬 アンピシリン アンピシリン-スルバクタム ピペラシリン-タゾバクタム セファゾリン セフメタゾール セフトリアキソン セフェピム メロペネム メトロニダゾール バンコマイシン β-ラクタム系薬剤 β-ラクタム系以外
37. βL系から 慣れておくべき静注抗菌薬 アンピシリン アンピシリン-スルバクタム ピペラシリン-タゾバクタム セファゾリン セフメタゾール セフトリアキソン セフェピム メロペネム メトロニダゾール バンコマイシン β-ラクタム系薬剤 β-ラクタム系以外
38. アンピシリン(ampicillin) * ペニシリン系薬剤 * 腎排泄 * 半減期: 約1時間 – 時間依存性抗菌薬 * 中枢神経系への移行性あり * ペニシリンアレルギーに留意 * アモキシシリン(amoxicillin)へのステップダウンが可能 腎機能正常な体重50kg以上の成人に対し, 2.0 gを生食100 mLに溶解し 2時間かけ6時間毎に静脈投与
39. ん?
40. アンピシリン(ampicillin) * ペニシリン系薬剤 * 腎排泄 * 半減期: 約1時間 – 時間依存性抗菌薬 * 中枢神経系への移行性あり * ペニシリンアレルギーに留意 * アモキシシリン(amoxicillin)へのステップダウンが可能 腎機能正常な体重50kg以上の成人に対し, 2.0 gを生食100 mLに溶解し 2時間かけ6時間毎に静脈投与
41. アンピシリン(ampicillin) * ペニシリン系薬剤 * 腎排泄 * 半減期: 約1時間 – 時間依存性抗菌薬 * 中枢神経系への移行性あり * ペニシリンアレルギーに留意 * アモキシシリン(amoxicillin)へのステップダウンが可能 腎機能正常な体重50kg以上の成人に対し, 2.0 gを生食100 mLに溶解し 2時間かけ6時間毎に静脈投与 2時間も かけんでええやろ・・・
42. 投与時間について 投与時間を伸ばすだけで T>MICを稼げる 時に投与薬剤量を節約できる = 患者の薬剤暴露減 = 薬剤費用減 meroTam: https://ds-pharma.jp/medical_content/learning/merotam/html/member/index.html
43. 投与時間について 時間依存性抗菌薬は点滴時間を長くすることを勧めます (例外: 血中半減期の長いセフトリアキソン) ただし,内科的緊急疾患を疑う状況(敗血症性ショック・ 急性細菌性髄膜炎など)では必ずしもこの限りではない
44. 投与間隔について 投与間隔は半減期の4倍の時間が一つの目安 慣習的に「抗菌薬は1日2回投与」の病院もゴマンとある・・・ ですが,時に患者の不利益になり得ます - 半減期が1時間未満ならば4時間毎投与(penicillin G) - 半減期が2時間程度ならば8時間毎投与(cefepimeなど) - 半減期が6時間以上ならば24時間毎投与(ceftriaxone) - 投与量不足によるそもそもの治療効果不良 - 十分な治療効果は無いのに晒される副作用リスク - 中途半端な濃度に晒されることでの薬剤耐性誘導 大原則に反する
45. 投与間隔について 時に投与薬剤量を節約できる = 患者の薬剤暴露減 = 薬剤費用減 少ない用量で高容量よりも 効果が高い(かも),ならばやらない手はない - 病棟スタッフの抵抗感を如何に取り除くか meroTam: https://ds-pharma.jp/medical_content/learning/merotam/html/member/index.html
46. アンピシリン・スルバクタム (ampicillin-sulbactam) * ペニシリン系とβ-ラクタマーゼ阻害剤の合剤(βL+βLI) * 腎排泄 * 半減期: 約1時間 * 中枢神経系への移行性あり(sulbactamは微妙) * ペニシリンアレルギーに留意 * アモキシシリン/クラブラン酸(amoxicillin-clavulanate) へのステップダウンが可能 (clavulanateは肝排泄 – 肝障害に留意) 腎機能正常な体重50kg以上の成人に対し, 3.0 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ6時間毎に静脈投与
47. アンピシリン・スルバクタム (ampicillin-sulbactam) * Acinetobacter が時に感受性を持つ - sulbactamが作用する(がsulbactam単剤は存在しない)   このときは腎機能正常な体重50kg以上の成人に対し, 9.0-12.0g(6-12 vials)を各回4時間かけ8時間毎に静脈投与 (3.0g(sulbactam 1g)を1日4回投与でもいいのかも・・・)   当然ながら保険適応外(1日18 vials) * コラテラル・ダメージ(= 正常細菌叢の撹乱)に留意 (いわゆる「横隔膜より下の嫌気性菌」に活性をもつ薬剤全て)
48. アンピシリン・スルバクタム (ampicillin-sulbactam) * その抗菌スペクトルから非常に便利だが, 兎角乱用されやすい(poor men’s carbapenem) -「とりあえずスルバシリン」 - 2019年末,供給問題にもなった -> また起こり得る問題.その時どうする? - エンピリック療法で選択して,菌種同定されてもそのまま,はいかがなものか * 誤嚥性肺炎の治療に「最適」かはかなり疑問 - 口腔内の嫌気性菌でβ-lactamaseを産生する菌種は多くはない - 文献により複数の推奨薬(アンピシリン・スルバクタム,セフトリアキソンなど)   (クリンダマイシンなんかも使えそうです)
49. ピペラシリン・タゾバクタム (piperacillin-tazobactam) * ペニシリン系薬剤とβ-ラクタマーゼ阻害薬の合剤 * 緑膿菌活性を持つペニシリン系薬剤(ウレイドペニシリン) * 腎排泄 * 中枢神経系への移行性あり * 半減期: 約1時間(0.9時間) * ペニシリンアレルギーに留意,ほか低カリウム血症なども 腎機能正常な体重50kg以上の成人に対し, 4.5 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ6時間毎に静脈投与 なんと持続投与も可能(溶液中の安定性が高い) -> 成書を参考に
50. ピペラシリン・タゾバクタム (piperacillin-tazobactam) * 兎角乱用されやすい * 「絶対必要!」な瞬間は実は多くない * 緑膿菌が関与している場合は臓器にもよるが ピペラシリン単剤やセフタジジムでもよい * ESBLsにも比較的安定だが,第一選択にはならない * AmpC型βLには分解される - どちらもたとえ感受性があっても原則使用しない (緑膿菌はβL産生株が多くない)
51. セファゾリン(cefazolin) * セファロスポリン系薬剤 * 黄色ブドウ球菌に対する第一選択薬 * 腎排泄 * 中枢神経系への移行性なし * 半減期: 約1.8時間 – ペニシリン系より長い 腎機能正常な体重50kg以上の成人に対し, 2.0 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ8時間毎に静脈投与 1.0 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ6時間毎に静脈投与
52. セフトリアキソン(ceftriaxone) * セファロスポリン系薬剤 * 肝・胆道排泄 * 中枢神経系への移行性あり * 半減期: 6時間前後 * 偽胆石,血球減少の副作用が比較的多い 体重50kg以上の成人に対し, 2.0 gを生食100 mLに溶解し1時間かけ24時間毎に静脈投与 年齢 >70歳または体重50kg未満ならば1.0 gに減量
53. セフェピム(cefepime) * セファロスポリン系薬剤 * 腎排泄 * 緑膿菌活性を持つ * 中枢神経系への移行性あり – 中枢神経感染症への安定した効果 * AmpC型βLに安定 * 半減期: 約2時間 * 脳症リスクあり(セフェピム脳症) – 長期投与時は留意 体重50kg以上の成人に対し, 1.0 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ6時間毎に静脈投与 2.0 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ8時間毎に静脈投与
54. セフメタゾール(cefmetazole) * セファマイシン系薬剤 (≠いわゆる第2世代セファロスポリン) * 腎排泄 * 臨床使用されている国は少ない(海外ではcefotetan, cefoxitin) * 中枢神経系への移行性なし * ESBLsに対しても安定(ただし1st lineで使えるかはケースバイケース) * 半減期: 約1.1-1.6時間 – 文献により差あり * 偏性嫌気性菌(Bacteroides など)に活性あり 体重50kg以上の成人に対し, 1.0 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ6時間毎に静脈投与 2.0 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ8時間毎に静脈投与 = セフォチアム セファロスポリン系薬剤と差別化できる
55. メロペネム(meropenem) * カルバペネム系薬剤 * 腎排泄 * 日本で創薬 * 中枢神経系への移行性あり * 半減期: 約1時間 * ESBLs,AmpC型βLに対しても安定 体重50kg以上の成人に対し, 1.0 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ8時間毎に静脈投与 0.5 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ6時間毎に静脈投与
56. メロペネム(meropenem) 極めて特殊な薬剤です 手放しで処方する薬剤では到底ありません 「なんだかよく分からないけど・・・」「良くならないから・・・」 「重症っぽいから・・・」「メロペンなら安心・・・」 「培養出しそびれたけど・・・」「なんとなく・・・」 そんな先生方の首をいずれ絞めることになるでしょう - カルバペネム耐性の誘導 - 染色体性にカルバペネム耐性の細菌の台頭 Stenotrophomonas maltophilia など
57. メロペネム(meropenem) 止むを得ない事情でカルバペネム系薬剤を選択する前に 不勉強な医師が処方するカルバペネムほど恐ろしいものはありません 諸刃の剣であることをよく自覚し, 本当にその患者にとって最良の選択肢かを普段以上に吟味すること - 感染臓器の再評価 - 微生物学的検査の再検(血液・喀痰・尿・胆汁・・・など) - 投与期間を前もって見積もる ちなみにカルバペネム系薬剤の使用実績は病院毎にカウント(監視)されています 逆にいうと不勉強な医師からの処方が多い・・・と言えるかも
58. もう少し 慣れておくべき静注抗菌薬 アンピシリン アンピシリン-スルバクタム ピペラシリン-タゾバクタム セファゾリン セフメタゾール セフトリアキソン セフェピム メロペネム メトロニダゾール バンコマイシン β-ラクタム系薬剤 β-ラクタム系以外
59. メトロニダゾール(metronidazole) * ニトロイミダゾール系薬剤 * 適応が極めて狭かった(原虫感染症)が, 嫌気性菌に適応が通ったことでようやく日の目を * 腎排泄 * 中枢神経系への移行性が非常に高い(ST,chloramphenicolと並ぶ) * 静注薬は薬価が高め – 経口薬は安価 * 短期投与でも脳症のリスク * 内服薬あり(フラジール内服錠250mg) * 嫌酒薬としての作用あり
60. メトロニダゾール(metronidazole) 【適応症】 嫌気性菌の関与する感染症(胆道感染症,脳・腹腔内膿瘍など) 軽症のCDI(Clostridioides difficile infection) 腎機能正常な体重50kg以上の成人に, 1回500mgを1日3回1時間かけて静脈投与 (ボトル製剤なので溶解液不要)
61. バンコマイシン (vancomycin) * グリコペプタイド系薬剤 * 腎排泄 * 中枢神経系への移行性あり * TDM(therapeutic drug monitoring)が必要な薬剤の代表格 - 副作用(特に腎機能障害)の予防の観点から - 長期投与では血球減少にも留意 - 病棟薬剤師に依頼して投与設計してもらうと良い * piperacillin-tazobactamとの併用で 腎機能障害の頻度が上がります
62. バンコマイシン (vancomycin) 【適応症】 いわゆる「抗MRSA薬」ですが, 「抗グラム陽性菌薬」と認識するとよい - ブドウ球菌,腸球菌,レンサ球菌,Clostridioides などなど 普通はトラフ値10-15 mcg/mLになるよう設計 MRSA菌血症などの場合は15-20 mcg/mLになるよう設計 (緊急の投与は(特殊な状況を除き)1gでOK) 投与には必ず十分な時間をかけること(2時間投与がおすすめ) -> red person症候群を防ぐため
63. OKですか?
64. まとめ * 絶対覚えるべき静注抗菌薬は少ない ・アンピシリン ・アンピシリン/スルバクタム ・ピペラシリン/タゾバクタム ・セファゾリン ・セフトリアキソン ・セフェピム ・セフメタゾール ・メロペネム ・メトロニダゾール ・バンコマイシン * 治療最適化のための努力を - 問診,身体診察,微生物学的検査検体の提出(抗菌薬投与前に) - 抗菌薬投与はノーリスクではない * 「最適治療」が「最適治療」たる所以を考えよう * 抗菌薬投与を始める時は終わる時を想像できる時だけ
65. タコでもわかる静注抗菌薬の話 2020年版 おしまい