タコでもわかる静注抗菌薬の話

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高野 哲史

2020/11/04
(2021/10/01 更新)

高野 哲史

公立昭和病院

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逆にこれだけ知っていれば静注抗菌薬では(ほぼ)困らない、そんな10種類の静注抗菌薬についてタコでもわかるようにまとめてみました。

【更新連絡(2021/10/1)】
「研修医1年目も半分終わったし、なんか抗菌薬勉強しようかな」というエライ初期研修医の皆様のために(?)、大幅な加筆・訂正・記載方法の変更を行いました。
*排泄経路の記載を「腎機能・肝機能による調節の要否」に改め、より臨床で使いやすくしました。
*各薬剤のESBLs, AmpC型β-ラクタマーゼに対するポジショニングの記載をより詳細なものにしました。
* セフトリアキソンの項を一新しました。
* セフェピムの項で特にセフェピム脳症・投与設計についての記載を中心にガイドラインや最近のトピックに即した内容に改めました。
* メトロニダゾールの項で、用量調節についての記載を詳細に改めました(以前の記載で腎排泄と記載していましたが、主たる排泄経路は肝胆道でした。すみません)。
*バンコマイシンの項を一新しました。

【他のコンテンツ】
* サルでもわかる経口抗菌薬の話
https://slide.antaa.jp/article/view/5199820d537c41bc
* タコでもわかる静注抗菌薬の話
https://slide.antaa.jp/article/view/e097b2a75e264a01
* カメでもわかるCRPの話
https://slide.antaa.jp/article/view/e83a7e12c9d74d3b
* ニワトリでもわかるβ-ラクタム系以外の抗菌薬の話
https://slide.antaa.jp/article/view/a335f79d13f144ee
* アナグマでもわかるフルオロキノロンの話
https://slide.antaa.jp/article/view/067106f6aebb4bf8
* ウシでもわかる真菌の話
https://slide.antaa.jp/article/view/e491e8559fc14d39

ご質問・ご意見等はtwitter(@metl63)までお寄せください。
スライド内容の転用も歓迎します。その折にはお手数ですがご一報ください。

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タコでもわかる静注抗菌薬の話

逆にこれだけ知っていれば静注抗菌薬では(ほぼ)困らない、そんな10種類の静注抗菌薬についてタコでもわかるようにまとめてみました。 【更新連絡(2021/10/1)】 「研修医1年目も半分終わったし、なんか抗菌薬勉強しようかな」というエライ初期研修医の皆様のために(?)、大幅な加筆・訂正・記載方法の変更を行いました。 *排泄経路の記載を「腎機能・肝機能による調節の要否」に改め、より臨床で使いやすくしました。 *各薬剤のESBLs, AmpC型β-ラクタマーゼに対するポジショニングの記載をより詳細なものにしました。 * セフトリアキソンの項を一新しました。 * セフェピムの項で特にセフェピム脳症・投与設計についての記載を中心にガイドラインや最近のトピックに即した内容に改めました。 * メトロニダゾールの項で、用量調節についての記載を詳細に改めました(以前の記載で腎排泄と記載していましたが、主たる排泄経路は肝胆道でした。すみません)。 *バンコマイシンの項を一新しました。 【他のコンテンツ】 * サルでもわかる経口抗菌薬の話 https://slide.antaa.jp/article/view/5199820d537c41bc * タコでもわかる静注抗菌薬の話 https://slide.antaa.jp/article/view/e097b2a75e264a01 * カメでもわかるCRPの話 https://slide.antaa.jp/article/view/e83a7e12c9d74d3b * ニワトリでもわかるβ-ラクタム系以外の抗菌薬の話 https://slide.antaa.jp/article/view/a335f79d13f144ee * アナグマでもわかるフルオロキノロンの話 https://slide.antaa.jp/article/view/067106f6aebb4bf8 * ウシでもわかる真菌の話 https://slide.antaa.jp/article/view/e491e8559fc14d39 ご質問・ご意見等はtwitter(@metl63)までお寄せください。 スライド内容の転用も歓迎します。その折にはお手数ですがご一報ください。

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タコでもわかる静注抗菌薬の話

1. タコでもわかる静注抗菌薬の話 2021-22年版
2. この講義の目標 * 静注抗菌薬の使い方・使いどころを会得しよう * 頻用する静注抗菌薬は自由に使えるようになろう
3. この講義の目標 研修医1年目の皆様 - 使用経験のある抗菌薬があればうまく使えていたか見返してみよう - 紹介する薬剤全てを今すぐ使いこなせる必要はありません - 感染症診療のロジカルさを感じてもらえれば 研修医2年目(以降)の皆様 持ち患者の投与薬剤・設計を見直してみよう - ER・入院患者で悩む時間を減らそう - 自分の感染症診療をよりロジカルに進化させよう
4. 一般認識として * 発熱してるから抗菌薬? * CRP/WBCが高いから抗菌薬? * 「とりあえず」抗菌薬? 静注抗菌薬の始め方
5. 一般認識として * 発熱してるから抗菌薬? * CRP/WBCが高いから抗菌薬? * 「とりあえず」抗菌薬? 静注抗菌薬の始め方 違いますよね?
6. すべての感染症診療は, これらの検討なしには始まりません 微生物学的検査の提出 = 起因菌同定の努力を * 患者背景 * 感染臓器の検索 * 原因微生物の推定 * 抗菌薬の選択 * 適切な経過観察 静注抗菌薬の始め方
7. meropenem vs. cefepime 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 問題です どっちが強いと思いますか?
8. ampicillin vs. cefepime 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 問題です どっちが強いと思いますか?
9. ampicillin vs. meropenem 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 問題です どっちが強いと思いますか?
10. ampicillin vs. meropenem 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 問題です 腸球菌(特にEnterococcus faecalis)の菌血症 第一選択となるのはどちらですか?
11. cefmetazole vs. piperacillin-tazobactam 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 問題です ESBLs産生大腸菌の菌血症 第一選択となる(なり得る)のはどちらですか?
12. 「第一選択薬であること」 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 難しいですね・・・ ということですか? とは 「抗菌力が一番強いということ」
13. 抗菌薬に強い・弱いはありません 解剖学的構造(≒臓器)・微生物に対し 最良の抗菌薬を選択するのみ 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 違いますね それ以外の基準は(原則)ありません 例えば
14. * 生来健康な50代女性 * 1日前からの39度代の発熱 * 左>右のCVA叩打痛(= 左右差あり) * 尿沈渣では尿中白血球3+,尿Gram染色では太いグラム陰性桿菌 -> 疑わしい診断名は? 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例①
15. # 急性腎盂腎炎(がこの時点では最も疑わしい) * 血液培養(2set)・尿培養を提出 * 経験的治療としてセフトリアキソンを投与開始 * 尿培養・血液培養共に自然耐性のみの大腸菌が発育 (診断は急性腎盂腎炎で確かのよう) * 投与3日目には解熱し,かなり状態は持ち直した様子 -> 3日目以降の治療方針は? 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例①
16. まずは抗菌薬について ① 抗菌薬が効いている!このままセフトリアキソンを継続 ② もっと早く良くしたい!メロペネムに変更! ③ 感受性通りに!アンピシリンに変更! ④ それ以外 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例①
17. まずは抗菌薬について ① 抗菌薬が効いている!このままセフトリアキソンを継続 ② もっと早く良くしたい!メロペネムに変更! ③ 感受性通りに!アンピシリンに変更!(セファゾリンでもOK) ④ それ以外 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例①
18. 次に投与期間について ① 元気になってる!男は黙って3日間で終了 ② こういうのはキリのいい数字!7日間で終了 ③ 大体このくらいやろ!10日間で終了 ④ ここは慎重に!14日間で終了 ⑤ それ以外 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例①
19. 次に投与期間について ① 元気になってる!男は黙って3日間で終了 ② こういうのはキリのいい数字!7日間で終了 ③ 大体このくらいやろ!10日間で終了 ④ ここは慎重に!14日間で終了 ⑤ それ以外 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例① さらに治療期間を短縮できないかという議論もあります
20. * 生来健康な50代男性 * 1日前からの39度代の発熱 * CVA叩打痛が若干左>右?うーん,全然はっきりせず * 尿沈渣では尿中白血球3+,尿Gram染色では太いグラム陰性桿菌 -> 疑わしい診断名は? 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例②
21. # 尿路感染症(がこの時点では最も疑わしい) * 血液培養(2set)・尿培養を提出 * 経験的治療としてセフトリアキソンを投与開始 * 尿培養・血液培養共に自然耐性のみの大腸菌が発育 * 泌尿器科医が直腸診をしたら飛び上がるほど痛がる * 投与3日目には解熱し,かなり状態は持ち直した様子 -> なるほど急性前立腺炎らしい!3日目以降の治療方針は? 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例②
22. まずは抗菌薬について ① 抗菌薬が効いている!このままセフトリアキソンを継続 ② もっと早く良くしたい!メロペネムに変更! ③ 感受性通りに!アンピシリンに変更! ④ それ以外 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例②
23. まずは抗菌薬について ① 抗菌薬が効いている!このままセフトリアキソンを継続 ② もっと早く良くしたい!メロペネムに変更! ③ 感受性通りに!アンピシリンに変更! ④ それ以外 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例②
24. まずは抗菌薬について ① 抗菌薬が効いている!このままセフトリアキソンを継続 ② もっと早く良くしたい!メロペネムに変更! ③ 感受性通りに!アンピシリンに変更! ④ それ以外 -> 前立腺移行性の良いレボフロキサシンが良い選択肢 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例② 経過が良ければ許容
25. 次に投与期間について(レボフロキサシンの場合) ① 元気になってる!男は黙って3日間で終了 ② こういうのはキリのいい数字!7日間で終了 ③ 大体このくらいやろ!10日間で終了 ④ ここは慎重に!14日間で終了 ⑤ それ以外 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例②
26. 次に投与期間について ① 元気になってる!男は黙って3日間で終了 ② こういうのはキリのいい数字!7日間で終了 ③ 大体このくらいやろ!10日間で終了 ④ ここは慎重に!14日間で終了 ⑤ それ以外 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例②
27. 症例① 生来健康な50代女性 感染臓器: 腎 + 菌血症 起因微生物: 大腸菌 最適治療薬: アンピシリン 治療期間: 10日間 狭域抗菌薬と広域抗菌薬 症例② 生来健康な50代男性 感染臓器: 前立腺 + 菌血症 起因微生物: 大腸菌 最適治療薬: レボフロキサシン 治療期間: 10-14日間(以上) 臓器が違えば治療薬も違う,治療期間も違う 微生物が違えば治療薬も違う,治療期間も違う 抗菌薬は始めた時点で投与期間は大まかに推定できます 逆に,せっかく推定できるんだから推定するための材料集めをしてほしい
28. そのために * 患者背景 * 感染臓器の検索 * 原因微生物の推定 * 抗菌薬の選択 * 適切な経過観察 静注抗菌薬の始め方 最大の効果,最小の副作用,最少の耐性菌誘導 大原則
29. そのために * 患者背景 * 感染臓器の検索 * 原因微生物の推定 * 抗菌薬の選択 * 適切な経過観察 静注抗菌薬の始め方 最大の効果,最小の副作用,最少の耐性菌誘導 まとめると 抗菌薬を始めるのは簡単, 終わるのは難しい 「何となく」でオーダするな!
30. OKですか? ぶっちゃけ薬剤の話よりもここまでの話の方が大事ですよ
31. 具体的な薬剤の話をしていきましょう OKなら
32. その上で 慣れておくべき静注抗菌薬 アンピシリン アンピシリン-スルバクタム ピペラシリン-タゾバクタム セファゾリン セフトリアキソン セフェピム セフメタゾール メロペネム メトロニダゾール バンコマイシン
33. ついでに 慣れておくべき静注抗菌薬 アンピシリン アンピシリン-スルバクタム ピペラシリン-タゾバクタム セファゾリン セフトリアキソン / セフォタキシム セフェピム セフメタゾール メロペネム メトロニダゾール バンコマイシン もし余力があれば, ペニシリンG セフタジジム クリンダマイシン アジスロマイシン レボフロキサシン テイコプラニン
34. 慣れておくべき静注抗菌薬 アンピシリン<ビクシリン®︎> アンピシリン-スルバクタム<ユナシンS®,スルバシリン®,ピシリバクタ®> ピペラシリン-タゾバクタム<ゾシン®︎,タゾピペ配合静注用︎®> セファゾリン<セファメジンα®︎> セフトリアキソン<ロセフィン®︎> セフェピム<マキシピーム®︎> セフメタゾール<セフメタゾン®︎> メロペネム<メロペン®︎> メトロニダゾール<アネメトロ®︎> バンコマイシン<バンコマイシン塩酸塩®︎> 代表的な商品名
35. 細かく分けると 慣れておくべき静注抗菌薬 バンコマイシン アンピシリン アンピシリン-スルバクタム ピペラシリン-タゾバクタム ペニシリン系 グリコペプチド系 セファゾリン セフトリアキソン セフェピム メロペネム メトロニダゾール セフェム系 セフメタゾール カルバペネム系 ニトロイミダゾール系 セファロスポリン系 セファマイシン系 非β-ラクタム系抗菌薬 β-ラクタム系抗菌薬
36. 各論行ってみましょう
37. β-ラクタム系から 慣れておくべき静注抗菌薬 バンコマイシン アンピシリン アンピシリン-スルバクタム ピペラシリン-タゾバクタム ペニシリン系 グリコペプチド系 セファゾリン セフトリアキソン セフェピム メロペネム メトロニダゾール セフェム系 セフメタゾール カルバペネム系 ニトロイミダゾール系 セファロスポリン系 セファマイシン系 非β-ラクタム系抗菌薬 β-ラクタム系抗菌薬
38. * ペニシリン系薬剤(アミノペニシリン) * 半減期: 約1時間 – 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 * 中枢神経系への移行性あり * ペニシリンアレルギーに留意 * 腎機能障害時の用量調節: 要 / 肝機能障害時の用量調節: 不要 * 対応する経口抗菌薬: アモキシシリン(amoxicillin) 腎機能正常な体重50kg以上の成人に対し, 2.0 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ6時間毎に静脈投与 アンピシリン(ampicillin)
39. ん?
40. * ペニシリン系薬剤(アミノペニシリン) * 半減期: 約1時間 – 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 * 中枢神経系への移行性あり * ペニシリンアレルギーに留意 * 腎機能障害時の用量調節: 要 / 肝機能障害時の用量調節: 不要 * 対応する経口抗菌薬: アモキシシリン(amoxicillin) 腎機能正常な体重50kg以上の成人に対し, 2.0 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ6時間毎に静脈投与 アンピシリン(ampicillin)
41. * ペニシリン系薬剤(アミノペニシリン) * 半減期: 約1時間 – 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 * 中枢神経系への移行性あり * ペニシリンアレルギーに留意 * 腎機能障害時の用量調節: 要 / 肝機能障害時の用量調節: 不要 * 対応する経口抗菌薬: アモキシシリン(amoxicillin) 腎機能正常な体重50kg以上の成人に対し, 2.0 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ6時間毎に静脈投与 アンピシリン(ampicillin) 2時間も かけんでええやろ・・・
42. 投与時間について 投与時間を伸ばすだけで T>MICを稼げる 時に投与薬剤量を節約できる = 患者の薬剤暴露量減 = 薬剤費用減 meroTam: https://ds-pharma.jp/medical_content/learning/merotam/html/member/index.html
43. 投与時間について 時間依存性抗菌薬は点滴時間を延長するのがベター - 代表例はβ-ラクタム系抗菌薬(ペニシリン,セフェム,カルバペネム) 内科的緊急疾患を疑う状況(=急速に血中濃度を高める必要のある時)では 必ずしもこの限りではない - 敗血症性ショック,細菌性髄膜炎の初回投与時など
44. 投与間隔について 投与間隔は血中半減期の4倍の時間が一つの目安 慣習的に「抗菌薬は1日2回投与」の病院もゴマンとある・・・ ですが,時に患者の不利益になり得ます - 半減期が1時間未満ならば4時間毎投与(penicillin G) - 半減期が2時間程度ならば8時間毎投与(cefepimeなど) - 半減期が6時間以上ならば24時間毎投与(ceftriaxone) - 投与量不足によるそもそもの治療効果不良 - 十分な治療効果は無いのに晒される副作用リスク - 中途半端な濃度に晒されることでの薬剤耐性誘導 大原則に反する
45. 投与間隔について 投与薬剤量を節約できる = 患者の薬剤暴露量減 = 医療費削減 低用量で高用量よりも効果が高い(かも) - 直接病棟スタッフの理解を得ることも重要 meroTam: https://ds-pharma.jp/medical_content/learning/merotam/html/member/index.html
46. ここまでよろしいですか? 各論に戻ります
47. * ペニシリン系とβ-ラクタマーゼ阻害剤の合剤(βL+βLI) * 半減期: 約1時間 – 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 * 中枢神経系への移行性あり(sulbactamは微妙) * ペニシリンアレルギーに留意 * 腎機能障害時の用量調節: 要 / 肝機能障害時の用量調節: 不要 * 対応する経口抗菌薬: アモキシシリン/クラブラン酸 (amoxicillin-clavulanate) - クラブラン酸よる肝障害には留意 腎機能正常な体重50kg以上の成人に対し, 3.0 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ6時間毎に静脈投与 アンピシリン・スルバクタム (ampicillin-sulbactam)
48. * Acinetobacter baumanii の多くが感受性を持つ - スルバクタムが作用する(がスルバクタム単剤は存在しない)   このとき一回投与量は最大12g(8vials)との記載もあるが・・・ - 保険適用外かつ副作用のリスクも増大する - 迷ったら専門家に相談,自験例では通常の3gでもよいかな,という印象 * コラテラル・ダメージ(= 正常細菌叢の撹乱)に留意 (いわゆる「横隔膜より下の嫌気性菌」に活性をもつ薬剤全て) - 正常細菌叢の修復には時間がかかる - コラテラル・ダメージの大きい薬剤の無用な投与はなるべく短期か,避ける アンピシリン・スルバクタム (ampicillin-sulbactam)
49. * その抗菌スペクトルの広さから非常に便利だが, 兎角乱用されやすい(poor men’s carbapenem) -「とりあえずスルバシリン」 - 2019年末,供給問題にもなった -> また起こり得る問題.その時どうする? - 「エンピリック療法で選択し菌種同定されてもそのまま」はいかがなものか * 誤嚥性肺炎の治療に「最適」かはかなり疑問 - 口腔内の嫌気性菌でβ-lactamaseを産生する菌種は多くはない - 文献により複数の推奨薬(アンピシリン・スルバクタム,セフトリアキソンなど)   アンピシリン・スルバクタム (ampicillin-sulbactam)
50. ピペラシリン・タゾバクタム (piperacillin-tazobactam) * ペニシリン系薬剤とβ-ラクタマーゼ阻害薬の合剤 * 緑膿菌活性を持つペニシリン系薬剤(ウレイドペニシリン) * 中枢神経系への移行性あり * 半減期: 約1時間(0.9時間) – 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 * ペニシリンアレルギーに留意,ほか低カリウム血症,肝障害など留意 * 腎機能障害時の用量調節: 要 / 肝機能障害時の用量調節: 不要 腎機能正常な体重50kg以上の成人に対し, 4.5 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ6時間毎に静脈投与
51. ピペラシリン・タゾバクタム (piperacillin-tazobactam) * 経験的治療(empiric therapy)の雄 - 広大なスペクトラム,処方制限のある病院も多くない * しかし絶対必要な瞬間は実は多くない - 菌種同定・感受性検査結果が判明したらde-escalationを検討する - 緑膿菌感染症には感受性があればセフタジジムなどへ * 多剤耐性傾向のグラム陰性桿菌にも感受性を示す事がある -「ESBLs(extended-spectram β-lactamase)」や「AmpC」など - この場合は仮に感受性を示したとしても,特に重症例では使用しない
52. セファゾリン(cefazolin) * セファロスポリン系薬剤 – ペニシリンに比べて安全性が高いと言われる * 黄色ブドウ球菌に対する第一選択薬 * 中枢神経系への移行性なし – 黄色ブドウ球菌の髄膜炎の治療は不可 * 半減期: 約1.8時間 – ペニシリン系より長い * 腎機能障害時の用量調節: 要 / 肝機能障害時の用量調節: 不要 腎機能正常な体重50kg以上の成人に対し, 2.0 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ8時間毎に静脈投与 (1.0 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ6時間毎に静脈投与)
53. * セファロスポリン系薬剤 * 中枢神経系への移行性あり * 半減期: 6時間前後 – 非常に長い * 偽胆石の出現およびその発作や長期投与では骨髄抑制に留意 - 偽胆石の多くは2g/日を超える投与の継続で起こる * 腎機能障害時の用量調節: 不要 / 肝機能障害時の用量調節: 要 - ただし具体的にどのような場合に減量するか一貫した基準なし - 現実的に肝障害判明時はスペクトラムの同一なセフォタキシムへ変更が妥当か セフトリアキソン(ceftriaxone)
54. セフトリアキソン(ceftriaxone) 体重50kg以上の成人に対し, 2.0 gを生食100 mLに溶解し1時間かけ24時間毎に静脈投与 - 年齢 >70歳または体重50kg未満ならば1.0 gに減量を検討 - その長い半減期から外来抗菌薬静注療法(OPAT)が可能 (Outpatient Parenteral Antimicrobial Therapy) * 非常に広い抗菌スペクトル,投与方法の簡便さからかなり頻用される - 市中肺炎,細菌性髄膜炎,またメトロニダゾールとの併用で腹腔内感染症など - 習熟すべき抗菌薬であると同時に,より厳密な適正使用を目指すべき
55. * セファロスポリン系薬剤 * 緑膿菌活性を持つ * 中枢神経系への移行性あり – 中枢神経感染症における有力な選択肢 - 移行性が良すぎるためか特に腎機能障害例で「セフェピム脳症」のリスク - 投与中は必ず神経学的所見を追う.疑えば頭部MRIも検討 * 半減期: 約2時間 * AmpC型βLに安定 - メロぺネムと並びこれらを産生するグラム陰性桿菌への治療選択肢 * 腎機能障害時の用量調節: 要 / 肝機能障害時の用量調節: 不要 セフェピム(cefepime)
56. セフェピム(cefepime) 体重50kg以上の成人に対し, 1.0 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ8時間毎に静脈投与 - 投与設計は特に慎重に!不安ならば薬剤師へ尋ねる (重篤なFNや細菌性髄膜炎を疑う場合は) 体重50kg以上の成人に対し, 2.0 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ8時間毎に静脈投与 - 1.0 g, 6時間毎も選択肢か(= 総投与量は4g/日 =2g/日少なくなる)
57. * セファマイシン系薬剤 (≠いわゆる第2世代セファロスポリン) * 偏性嫌気性菌(Bacteroides 属など)に活性あり - セファロスポリン系(セファゾリン・セフトリアキソン・セフェピム)との相違点 * 臨床使用されている国は少ない(海外ではcefotetan, cefoxitin) - 治療のエビデンスがそこまで豊富ではない * 中枢神経系への移行性なし * 半減期: 約1.5時間 – 文献により差あり * 腎機能障害時の用量調節: 要 / 肝機能障害時の用量調節: 不要 = セフォチアム セフメタゾール(cefmetazole)
58. * ESBLsに対して安定である - 1st lineで使えるかはケースバイケース - 軽症〜中等症のESBLs産生腸内細菌目細菌感染症における優れた治療薬 - バイタルサインの異常など臨床的不安定性があればメロぺネムを優先する 体重50kg以上の成人に対し, 1.0 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ6時間毎に静脈投与 セフメタゾール(cefmetazole)
59. * カルバペネム系薬剤 * 中枢神経系への移行性あり * 半減期: 約1時間 * ESBLs,AmpC型β-lactamaseに対して最も安定 - これらの存在を疑う場合の経験的治療薬として用いる - 逆に他の薬剤で代用できる場合はなるべく早期にde-escalation * 腎機能障害時の用量調節: 要 / 肝機能障害時の用量調節: 不要 体重50kg以上の成人に対し, 1.0 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ8時間毎に静脈投与 (0.5 gを生食100 mLに溶解し2時間かけ6時間毎に静脈投与) メロぺネム(meropenem)
60. 極めて特殊な薬剤です 手放しで処方する薬剤では到底ありません 「なんだかよく分からないけど・・・」「良くならないから・・・」 「重症っぽいから・・・」「メロペンなら安心・・・」 「培養出しそびれたけど・・・」「なんとなく・・・」 そんな先生方の首をいずれ絞めることになるでしょう - カルバペネム耐性の誘導(緑膿菌や腸内細菌目細菌) - 染色体性にカルバペネム耐性の細菌の台頭 Stenotrophomonas maltophilia など メロぺネム(meropenem)
61. 止むを得ない事情でカルバペネム系薬剤を選択する前に 不勉強な医師が処方するカルバペネムほど恐ろしいものはありません 本当にその患者にとって最良の選択肢かを普段以上に吟味すること 感染臓器の再評価 微生物学的検査の再検(血液・喀痰・尿・胆汁・・・など) 投与期間を前もって見積もる・早期にde-escalation 不適切な処方は不勉強な医師から生まれる メロぺネム(meropenem)
62. もう少しです 慣れておくべき静注抗菌薬 バンコマイシン アンピシリン アンピシリン-スルバクタム ピペラシリン-タゾバクタム ペニシリン系 グリコペプチド系 セファゾリン セフトリアキソン セフェピム メロペネム メトロニダゾール セフェム系 セフメタゾール カルバペネム系 ニトロイミダゾール系 セファロスポリン系 セファマイシン系 非β-ラクタム系抗菌薬 β-ラクタム系抗菌薬
63. メトロニダゾール(metronidazole) * ニトロイミダゾール系薬剤 * 適応が極めて狭かったが,現在は「抗嫌気性菌薬」として非常に有力 - かつては一部の原虫症にしか適応がなかった * 中枢神経系への移行性が非常に高い(ST,chloramphenicolと並ぶ) * 静注薬は薬価が高め – 経口薬は安価なので経口可能なら経口薬(フラジール内服錠など)へ * 短期投与でも脳症のリスク(メトロニダゾール脳症)
64. * ジスルフィラム様効果(嫌酒効果)あり - 投薬中・投薬後数週は飲酒を避ける様に指導 * 腎機能障害時の用量調節: 高度なら要 /肝機能障害時の用量調節: 高度なら要 - Child-Pugh分類Cで50%減量 - 成書を参照すること 腎機能正常な体重50kg以上の成人に, 1回500mgを1日3回30分かけて静脈投与(ボトル製剤なので溶解液不要) - 静注用は高価であるため経口可能であれば経口薬へ切り替える - 意識変容の有無や神経学的所見を追うこと(脳症のモニタリングのため) メトロニダゾール(metronidazole)
65. バンコマイシン (vancomycin) * グリコペプタイド系薬剤 = 抗グラム陽性球菌薬 ≒ 抗MRSA薬 * 中枢神経系への移行性あり * TDM(therapeutic drug monitoring)が必要な薬剤の代表格 - 副作用(特に腎機能障害)の予防の観点から - 長期投与では血球減少にも留意 - 投与設計(投与量・投与間隔・トラフ測定間隔)は病棟薬剤師にも相談を - 通常,トラフは10-15mcg/mL(MRSA菌血症などでは15-20mcg/mL) * 副作用のモニタが重要 - 特に腎機能障害 – 高トラフ値で頻発 - ピペラシリン・タゾバクタムとの併用で腎機能障害の頻度上昇 * 腎機能障害例など使いにくい場合はテイコプラニンやダプトマイシンを - それぞれの組織移行性を確認すること(例: ダプトマイシンは肺感染症を治療できない)
66. OKですか?
67. まとめ * 絶対覚えるべき静注抗菌薬は少ない ○ アンピシリン ○ セフェピム ○ アンピシリン・スルバクタム ○ セフメタゾール ○ ピペラシリン・タゾバクタム ○ メロぺネム ○ セファゾリン ○ メトロニダゾール ○ セフトリアキソン ○ バンコマイシン * 治療最適化のための努力を - 問診,身体診察,微生物学的検査検体の提出(抗菌薬投与前に) - 抗菌薬投与はノーリスクではない – 投与しないに越した事はない * 「最適治療」が「最適治療」たる所以を考えよう * 抗菌薬投与を始める前に投与期間を決める
68. タコでもわかる静注抗菌薬の話 2021-22年版 おしまい