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感染症診療のマテリアル

投稿者プロフィール
高野哲史
Award 2020 受賞者

社会福祉法人恩賜財団済生会支部神奈川県済生会横浜市東部病院

152,368

604

概要

高野さん。恥をかいちゃったわよ。ひどい恥をかきました。顔から火が出る、などの形容はなまぬるい。学会会場をころげ廻って、わあっと叫びたい、と言っても未だ足りない。...

新初期研修医の先生や感染症診療に興味を持って取り組もうと思っている先生方に向けて、感染症診療の原則から主な静注・経口抗菌薬についての各論を簡潔にまとめました。初学者向けに作ったつもりですが、結果的に幅広い習熟度の先生方で役立つ出来になったかなと思います。

各論は各薬剤1ページに収まるように構成し、投与設計もかなり詳細に記載しましたので、病棟でサッと引くためのアンチョコとしても利用できるように工夫しましたので、是非お持ちのスマートフォンにAntaaのアプリを入れて頂き、困った時にめくってもらえるたら嬉しいです。

【他のコンテンツ】

* サルでもわかる経口抗菌薬の話

https://slide.antaa.jp/article/view/5199820d537c41bc

* タコでもわかる静注抗菌薬の話

https://slide.antaa.jp/article/view/e097b2a75e264a01

* カメでもわかるCRPの話

https://slide.antaa.jp/article/view/e83a7e12c9d74d3b

* ニワトリでもわかるβ-ラクタム系以外の抗菌薬の話

https://slide.antaa.jp/article/view/a335f79d13f144ee

* アナグマでもわかるフルオロキノロンの話

https://slide.antaa.jp/article/view/067106f6aebb4bf8

* ウシでもわかる真菌の話

https://slide.antaa.jp/article/view/e491e8559fc14d39

ご質問・ご意見等はtwitter(@metl63)までお寄せください。

スライド内容の転用も歓迎します。その折にはお手数ですがご一報ください。

本スライドの対象者

研修医/専攻医

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テキスト全文

感染症診療のマテリアルの概要と目的

#1.

新初期研修医のための 感染症診療のマテリアル

#2.

誰のためのスライド? * 医師国家試験で感染症っぽい症例問題に 「抗菌薬投与」を選択できるレベルの新初期研修医の皆様 * 「ペニシリン系」,「カルバペネム系」のような 「〜系抗菌薬」くらいは分かる新初期研修医の皆様 * 感染症は広域抗菌薬を使っておけば⼤きな問題はない と思っている医師・看護師・薬剤師等の先⽣⽅ * その他感染症診療をイチからガッチリ抑えたい 医師・看護師・薬剤師等の先⽣⽅

#3.

目次 各項目1ページに収まる様にしているので少々ゴチャついています すみません [ 総論 ] * なぜ感染症に抗微⽣物薬(抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬等)を使⽤するか︖ * なぜ抗微⽣物薬を【適切に】使⽤するのか︖ * 実際の現場で初期研修医はどう振舞うべきか︖ [ 各論 ] * 静注抗菌薬 10種類 アンピシリン,アンピシリン・スルバクタム,タゾバクタム・ピペラシリン,セファゾリン, セフトリアキソン,セフェピム,セフメタゾール,メロぺネム,メトロニダゾール,バンコマイシン * 経⼝抗菌薬 8種類 アモキシシリン,アモキシシリン・クラブラン酸,セファレキシン,レボフロキサシン, ドキシサイクリン/ミノサイクリン,ST合剤,メトロニダゾール,バンコマイシン [ 付録 ] * ⼿元に⽤意すべき書籍とアプリ,その他

抗微生物薬の使用理由と適切な使用法

#4.

目次 総論からザカザカいきましょう [ 総論 ] * なぜ感染症に抗微⽣物薬(抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬等)を使⽤するか︖ * なぜ抗微⽣物薬を【適切に】使⽤するのか︖ * 実際の現場で初期研修医はどう振舞うべきか︖ [ 各論 ] * 静注抗菌薬 10種類 アンピシリン,アンピシリン・スルバクタム,タゾバクタム・ピペラシリン,セファゾリン, セフトリアキソン,セフェピム,セフメタゾール,メロぺネム,メトロニダゾール,バンコマイシン * 経⼝抗菌薬 8種類 アモキシシリン,アモキシシリン・クラブラン酸,セファレキシン,レボフロキサシン, ドキシサイクリン/ミノサイクリン,ST合剤,メトロニダゾール,バンコマイシン [ 付録 ] * ⼿元に⽤意すべき書籍とアプリ,その他

#5.

総論 なぜ感染症に抗微生物薬(抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬等)を使用するか? よくある勘違い ⼈体は無菌である → 種々の免疫障害により微⽣物を保菌する事は稀ではない そもそも腸管内に数百兆個の腸内細菌叢が存在する(便の半分は菌やその死骸) 培養で微⽣物が出たら必ず原因菌なので駆逐しなければいけない → 保菌があると培養検査で発育し,しばしば起因菌と判別できない まず「その臓器に感染症を起こす微⽣物かどうか」を知る必要がある 培養検査で発育しただけで原因菌でない事も多々ある 微⽣物は抗微⽣物薬を使わなければ死ぬことはない 【細胞性免疫障害】 加齢,免疫抑制薬投与, 糖尿病,HIV感染症など 【液性免疫障害】 脾摘後,多発性⾻髄腫など 【好中球減少状態】 抗癌化学療法など 【正常解剖構造の破綻】 カテーテル挿⼊,尿閉, 胆⽯,腸管穿孔など 【尿培養・喀痰培養】 Candida属 ⻩⾊ブドウ球菌 【⾎液培養(1セットのみの場合)】 Cutibacterium属 Corynebacterium属 CNS(coagulase negative Staphylococci) Bacillus属 など → 抗微⽣物薬は「宿主の免疫⼒で解決できない感染症」の治療をアシストするだけ 「抗微⽣物薬の必要性の評価」と共に「解消可能な免疫障害の評価」を 低栄養 不要なカテーテル 褥瘡ケア など 「感染している臓器は何か」「(推定)原因微生物は何か」「抗微生物薬が必要か」 感染症を疑うならば必ず考える.経験がない・考えて解らないなら成書を調べる.

#6.

総論 なぜ抗微生物薬を【適切に】使用するのか? 感染症診療は「三⽅よし」 近江商⼈の⾔葉. 売り⼿よし = 医療者が満⾜する - 最⼤の治療効果を得られる・末⻑くその薬剤を使⽤できる 買い⼿よし = 患者が満⾜する - 病気がよく治る・副作⽤で悩まない 世間良し = 病院・医療環境が満⾜する - のちの患者に耐性菌リスクを残さない ⾔い換えれば この意識が⾮常に重要. ⼀⽅で実臨床でこれまで 永らく蔑ろにされてきた概念. 後世の患者を巻き込み無⽤な 耐性菌リスクに晒さない. ⼤前提を⼤前提とするために 薬剤の適応や副作⽤,移⾏性, 最適な投与期間などの知識を もつことが必要. 「最⼤の効果」「最⼩の副作⽤」「最⼩の耐性菌誘導」醍醐味でもある. ⼤前提を成⽴させるために次の5要素を必ず検討する が感染症治療の⼤前提である. 「患者背景」「感染臓器」「原因微⽣物」「治療薬選択」「治療計画」 目の前の患者が治癒しても次の患者に耐性菌を伝播させればそれは治療失敗である. 感染症診療は目の前の患者の治療だけに捉われ過ぎてはならない.

初期研修医の実践的な振る舞いと注意点

#7.

総論 まず 実際の現場で初期研修医はどう振舞うべきか︖ 上級医に楯突かない 関係が悪くなってしまうと研修⾃体の質が下がります → 感染症診療が得意でない医師は⼭ほどいます 上級医の抗菌薬の選択や投与設計(投与量・投与感覚・投与期間)が 適切かどうか逐⼀懐疑的に検討するのが重要 感染症領域に限らず,です. なのに感染症診療ができると 思い込んでいる医師も 残念ながら少なくありません. なので先⽣が指導する時に ちゃんと出来ればよいのだと 割り切って,その上級医は そっとしておきましょう. これが⼀番⼒になります. → 絶対に変えた⽅がいいケースでは上級医と相談 (薬剤耐性や臓器移⾏性(特に髄液)の問題で効果が期待できない抗菌薬を投与している場合, 投与禁忌に該当するなど転帰を⼤きく変え得る等) 微⽣物学的検査(塗抹・培養検査)の閾値を低く 感染症は微⽣物が同定されて薬剤感受性が判明してナンボです → 感染臓器を同定したらその臓器に特異的な検体提出を⼼がける 微⽣物学的検査なしに抗微⽣物薬投与の選択肢はない 例外的状況はある. 肺炎球菌尿中抗原検査では 薬剤感受性は分からない = 最適な抗微⽣物薬を選択でき ない. 限られた時間で一番快適に,効率よく勉強できる環境の確保を.

#8.

目次 各論に入っていきます [ 総論 ] * なぜ感染症に抗微⽣物薬(抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬等)を使⽤するか︖ * なぜ抗微⽣物薬を【適切に】使⽤するのか︖ * 実際の現場で初期研修医はどう振舞うべきか︖ [ 各論 ] * 静注抗菌薬 10種類 アンピシリン,アンピシリン・スルバクタム,タゾバクタム・ピペラシリン,セファゾリン, セフトリアキソン,セフェピム,セフメタゾール,メロぺネム,メトロニダゾール,バンコマイシン * 経⼝抗菌薬 8種類 アモキシシリン,アモキシシリン・クラブラン酸,セファレキシン,レボフロキサシン, ドキシサイクリン/ミノサイクリン,ST合剤,メトロニダゾール,バンコマイシン [ 付録 ] * ⼿元に⽤意すべき書籍とアプリ,その他

#9.

静注抗菌薬の一般注意 時間依存性抗菌薬はできれば点滴時間を延⻑する * 代表例はβ-ラクタム系抗菌薬(ペニシリン,セフェム,カルバペネム) * 投与時間を延⻑するだけで効果指標となるTime Above MICを延⻑できる - 同じ投与量でも⾼い殺菌効果を引き出せる可能性がある - 患者の不要な薬剤曝露量減にも⼀役買う * 緊急疾患を疑う状況(=急速に⾎中濃度を⾼める必要のある時)ではこの限りではない - 敗⾎症性ショックや細菌性髄膜炎の初回投与時,開放⾻折の予防抗菌薬など. とにかく早く⾎中濃度を上げる.場合によっては点滴ではなく静注する * あらかじめ病棟スタッフや上級医の理解を獲得しておくこと 「抗菌薬はどれも1⽇2回投与」の 伝統的な慣習を迎合しない︕ メロペン血中濃度シミュレーション&Time Above MIC計算ソフト

#10.

静注抗菌薬の一般注意 いちいち推算CCrを計算し最適な投与設計を⾏う 推算CCr(男性): (140-年齢) x 体重 72 x ⾎清クレアチニン * ⼥性はこの値に x0.85 * 算出された値に従い抗菌薬投与設計を⾏う * 計算式を覚えるのは⾯倒なのでアプリを⼀つ⼊れておく(付録参照)

静注抗菌薬の種類と投与設計

#11.

アンピシリン ‒ampicillin<ABPC>* β-ラクタム系抗菌薬 - ペニシリン系 - ペニシリンアレルギーに留意 → 初回・2回⽬投与時要観察 - 安全域も広い → 安易に投与量を減らさない * 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GPC: 肺炎球菌(侵襲性肺炎球菌感染症,髄膜炎を含む) 連鎖球菌(劇症型溶連菌感染症を含む), Enterococcus faecalis GPR: リステリア GNR: 大腸菌,Proteus mirabilis - 1回投与量を増やすか投与回数を 増やすかで悩んだら投与回数を増やす * * * * * * CCr(mL/min) 投与設計 BW >40kg BW 40kg 中枢神経系への移⾏性: 有 >50 2g, 6時間毎 1g, 6時間毎 腎機能障害時の⽤量調節: 要 10-50 2g, 8時間毎 1g, 8時間毎 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 <10 1g, 8時間毎 1g, 12時間毎 妊婦への投与: 可 血液透析患者 1-2g, 12時間毎 1g, 12時間毎 溶解液: ⽣⾷ 100mL(5%ブドウ糖液はなるべく避ける) * 感染性心内膜炎や細菌性髄膜炎では最大2g, 4時間毎. この時の投与量調節は専門家へ相談すること 同スペクトルの経⼝薬: アモキシシリン * 透析患者へ投与する場合,透析日は透析後に投与する.

#12.

アンピシリン・スルバクタム * ペニシリン系 + β-ラクタマーゼ - ペニシリンアレルギーに留意 → 初回・2回⽬投与時要観察 * 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 - 1回投与量を増やすか投与回数を * * * * * 増やすかで悩んだら投与回数を増やす 中枢神経系への移⾏性: 有 腎機能障害時の⽤量調節: 要 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 妊婦への投与: 可 溶解液: ⽣⾷ 100mL(5%ブドウ糖液はなるべく避ける) * 極めて広域スペクトルの抗菌薬 ‒ampicillin/sulbactam<ABPC/SBT><< 第一選択となる可能性がある微生物 >> GPC: Enterococcus faecalis (極稀.アンピシリンでよい) GNR: 大腸菌, Proteus mirabilis, Klebsiella pneumoniae, Klebsiella oxytoca, Acinetobacter baumanii, 偏性嫌気性菌(特にBacteroides属), 動物咬傷の原因菌(Pasteurella multocida など) CCr(mL/min) >30 BW >40kg 投与設計 3g, 6時間毎 15-30 3g, 8時間毎 <15 1.5g, 8時間毎 血液透析患者 1.5-3g, 12時間毎 BW 40kg 1.5g, 6時間毎 1.5g, 8時間毎 1.5g, 12時間毎 1.5g, 12時間毎 * 透析患者へ投与する場合,透析日は透析後に投与する. - ”コラテラル・ダメージ(= 正常細菌叢への影響)”が⼤きい → 安易に使⽤しないこと * 同スペクトルの経⼝薬: アモキシシリン・クラブラン酸 → Acinetobacterは不可

#13.

ピペラシリン・タゾバクタム ‒piperacillin/tazobactam<TAZ/PIPC>* ペニシリン系 + β-ラクタマーゼ - ペニシリンアレルギーに留意 * * * * * * * * → 初回・2回⽬投与時要観察 << 第一選択となる可能性がある微生物 >> なし 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 中枢神経系への移⾏性: 有 「カルバペネムをスペアするための初期治療抗菌薬」 と理解する!漫然と使い続けないこと. 腎機能障害時の⽤量調節: 要 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 投与設計 CCr(mL/min) 妊婦への投与: 可 BW >40kg BW 40kg >40 4.5g, 6-8時間毎 2.25g, 6時間毎 溶解液: ⽣⾷または5%ブドウ糖液 100mL 20-40 4.5g, 8時間毎 2.25g, 8時間毎 特徴的な副作⽤: 低カリウム⾎症 <20 2.25g, 6時間毎 2.25g, 12時間毎 同スペクトルの経⼝薬: なし * 超絶広域スペクトルの抗菌薬 血液透析患者 2.25g, 12時間毎 * 透析患者へ投与する場合,透析日は透析後に投与する. - ”コラテラル・ダメージ(= 正常細菌叢への影響)”が⼤きい → 安易に使⽤しないこと

#14.

セファゾリン ‒cefazolin<CEZ>* β-ラクタム系抗菌薬 – セファロスポリン系 * 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 - 1回投与量を増やすか投与回数を 増やすかで悩んだら投与回数を増やす * 中枢神経系への移⾏性: 低 * * * * * - 髄膜炎には使⽤できない 腎機能障害時の⽤量調節: 要 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 妊婦への投与: 可 溶解液: ⽣⾷または5%ブドウ糖液 100mL 同スペクトルの経⼝薬: セファレキシン おまけ 肺炎球菌の治療には原則⽤いない 腸球菌には効果がない(セフェム全般に共通) << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GPC: 黄色ブドウ球菌(MSSA) とりあえずはMSSAの第一選択薬である事を 覚えておけばOK GNR: 大腸菌,Proteus mirabilis, Klebsiella pneumoniae, K. oxytoca CCr(mL/min) >35 投与設計 BW >40kg 2g, 8時間毎 BW 40kg 1g, 6-8時間毎 10-35 2g, 12時間毎 1g, 8-12時間毎 <10 1-2g, 24時間毎 1g, 24時間毎 血液透析患者 1g, 24時間毎 * 透析患者へ投与する場合,透析日は透析後に投与する.

セファロスポリン系抗菌薬の特徴と使用法

#15.

セフトリアキソン ‒ceftriaxone<CTRX>* β-ラクタム系抗菌薬 – セファロスポリン系 * 時間依存性抗菌薬 - 半減期が⻑い(6-8時間)ため24時間毎投与でOK - 場合によっては外来通院点滴治療(OPAT)も可能 * 中枢神経系への移⾏性: ⾼ * 腎機能障害時の⽤量調節: 不要 * 肝機能障害時の⽤量調節: 要︖ - エビデンスなし.Child-pugh Cなら半量など︖ - 同効薬で腎排泄のセフォタキシムへの変更が無難 * 妊婦への投与: 可 * 溶解液: ⽣⾷または5%ブドウ糖液 100mL * 特徴的な副作⽤: 偽胆⽯,脳症(稀) * 同スペクトルの経⼝薬: 実質なし << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GPC: 肺炎球菌(特にペニシリン耐性株) 黄色ブドウ球菌(MSSA)髄膜炎 GNR: Haemophilus influenzae, Salmonella sp. 諸々のGNRによる髄膜炎 GNC: Moraxella catarrhalis CCr(mL/min) 非髄膜炎 髄膜炎 BW >40kg 投与設計 2g, 24時間毎 BW 40kg 1g, 24時間毎 2g, 12時間毎 透析患者にも当然容量調節不要. 腸球菌には無効(セフェム全般)だが, Enterococcus faecalisの感染性⼼内膜炎には アンピシリンと併⽤で使⽤する場合がある.

#16.

セフェピム ‒cefepime<CFPM>* β-ラクタム系抗菌薬 – セファロスポリン系 * 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 GNR: 緑膿菌, Morganella morganii, - 1回投与量を増やすか投与回数を * * * * Providencia sp., Serratia marcescens, 増やすかで悩んだら投与回数を増やす 中枢神経系への移⾏性: ⾼ 腎機能障害時の⽤量調節: 要 妊婦への投与: 可 特徴的な副作⽤: セフェピム脳症 - 意識障害・神経症状の出現があれば原則中⽌ - 他薬より投与設計を丁寧 / デリケートに 分からなければ薬剤師や専⾨家へ依頼する * AmpC過剰産⽣に対し最も安定 - 当該菌種に安易にカルバペネムを使い続けない - 感受性があればde-escalationを試みること << 第一選択となる可能性がある微生物 >> Acinetobacter baumannii (ABPC/SBTを優先), Citrobacter freundii, Enterobacter cloacae * 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 * 溶解液: ⽣⾷または5%ブドウ糖液 100mL * 同スペクトルの経⼝薬:なし CCr(mL/min) >60 30-60 10-30 <10 血液透析患者 投与設計 発熱性好中球減少症など BW >40kg BW 40kg 2g, 8-12時間毎 1g, 6時間毎 1g, 8時間毎 2g, 12時間毎 1g, 8時間毎 1g, 12時間毎 1g, 8時間毎 1g, 12時間毎 1g, 24時間毎 1g, 24時間毎 1g, 12時間毎 0.5g, 12時間毎 0.5g, 24時間毎 * 透析患者へ投与する場合,透析日は透析後に投与する.

#17.

セフメタゾール ‒cefmetazole<CMZ>* β-ラクタム系抗菌薬 – セファマイシン系 - 偏性嫌気性GNR(Bacteroides属など)に効果あり * 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 - 1回投与量を増やすか投与回数を * * * * * * * 増やすかで悩んだら投与回数を増やす 中枢神経系への移⾏性: 低 腎機能障害時の⽤量調節: 要 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 妊婦への投与: 可 溶解液: ⽣⾷または5%ブドウ糖液 100mL 同スペクトルの経⼝薬:なし ESBLsに対し最も安定 << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GNR: 大腸菌,Klebsiella pneumoniae, K. oxytoca, Proteus mirabilis, Bacteroides sp. など 特にESBLs産生株のカルバペネム・スペアに CCr(mL/min) >50 10-50 <10 血液透析患者 投与設計 BW >40kg 1g, 6時間毎 1g, 8-12時間毎 BW 40kg 1g, 6-8時間毎 1g, 12時間毎 1g, 24時間毎 * 透析患者へ投与する場合,透析日は透析後に投与する. - 当該菌種に安直にカルバペネムを使わない.臨床経過に問題がなく,感受性があればde-escalationを試みること - ただし,第⼀選択薬はカルバペネムであることも同時によくわきまえておく

#18.

メロぺネム ‒meropenem<MEPM>* β-ラクタム系抗菌薬 – カルバペネム系 << 第一選択となる可能性がある微生物 >> - とにかく濫⽤しない.年に数回使うものと考える. 第一選択薬として使用し続けなければならない * 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 - 1回投与量を増やすか投与回数を * * * * * 増やすかで悩んだら投与回数を増やす 中枢神経系への移⾏性: 有るが低い(3-10%) 腎機能障害時の⽤量調節: 要 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 妊婦への投与: 可 特徴的な副作⽤: 痙攣 - 関連して,バルプロ酸との併⽤禁忌 ケースはほとんどない. CCr(mL/min) >50 25-50 10-25 <10 血液透析患者 * 溶解液: ⽣⾷または5%ブドウ糖液 100mL * 同スペクトルの経⼝薬:なし * ESBLsやAmpC型β-ラクタマーゼに対し安定 投与設計 BW >40kg BW 40kg 1g, 6-8時間毎 0.5g, 6時間毎 0.5-1g, 12時間毎 0.5-1g, 24時間毎 0.5g, 12時間毎 0.5g, 24時間毎 1g, 8-12時間毎 0.5g, 8時間毎 0.5g, 24時間毎 * 髄膜炎では2g, 8時間毎の投与が必要である. * 透析患者へ投与する場合,透析日は透析後に投与する.

経口抗菌薬の種類と使用上の注意

#19.

メトロニダゾール ‒metronidazole<MNZ>* ニトロイミダゾール系抗菌薬 << 第一選択となる可能性がある微生物 >> - 偏性嫌気性GNR(Bacteroides属など)治療薬として信頼 GNR: Bacteroides sp. に代表される偏性嫌気性菌, Clostridioides difficile * 中枢神経系への移⾏性: 有 * 腎機能障害時の⽤量調節: ⼀応要 * 肝機能障害時の⽤量調節: 要 * * * * - Child-Pugh class Cであれば半量にする 妊婦への投与: 可(妊娠初期は不可) 溶解液: 溶解済のため不要 特徴的な副作⽤: 脳症,嫌酒効果 同スペクトルの経⼝薬: 経⼝⽤あり CCr(mL/min) 10 <10 血液透析患者 投与設計 BW >40kg BW 40kg 500mg, 6-8時間毎 500mg, 12時間毎 * 透析患者へ投与する場合,透析日は透析後に投与する. * 嫌気性菌活性のないセファロスポリンやフルオロキノロンと併⽤する * Clostridioides difficile infection(CDI)に対しては単剤で使⽤する(経⼝・静注共に可)

#20.

バンコマイシン ‒vancomycin<VCM>* グリコペプタイド系抗菌薬 - 「抗グラム陽性菌薬」として認識する * 中枢神経系への移⾏性: 有 * Therapeutic Drug Monitoring(TDM)が必要 - MRSA感染症に対してはトラフ値を15-20mcg/mLに - それ以外ではトラフ値を10-15mcg/mLに << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GPC: 黄色ブドウ球菌(MRSA), Enterococcus faecium, ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP), ほかごく一部を除くグラム陽性菌 - 効果指標をAUC/MIC 400-600とする向きがあるが,施設の検査体制に合わせる → AUC/MICを効果指標に⽤いた⽅が腎障害の頻度が低かった * 妊婦への投与: 不可 * 溶解液: 適宜 * 特徴的な副作⽤: レッドネック症候群,腎障害 - レッドネック症候群は投与速度を緩めることで解消できる.投与量に関わらず2時間投与を勧める. - 腎障害はピペラシリン・タゾバクタムとの併⽤時にリスクが上昇するのでなるべく併⽤を避ける * 同スペクトルの経⼝薬: 経⼝剤形があるが⽤途が全く異なるため実質なし

#21.

目次 つづいて経口薬です [ 総論 ] * なぜ感染症に抗微⽣物薬(抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬等)を使⽤するか︖ * なぜ抗微⽣物薬を【適切に】使⽤するのか︖ * 実際の現場で初期研修医はどう振舞うべきか︖ [ 各論 ] * 静注抗菌薬 10種類 アンピシリン,アンピシリン・スルバクタム,タゾバクタム・ピペラシリン,セファゾリン, セフトリアキソン,セフェピム,セフメタゾール,メロぺネム,メトロニダゾール,バンコマイシン * 経⼝抗菌薬 8種類 アモキシシリン,アモキシシリン・クラブラン酸,セファレキシン,レボフロキサシン, ドキシサイクリン/ミノサイクリン,ST合剤,メトロニダゾール,バンコマイシン [ 付録 ] * ⼿元に⽤意すべき書籍とアプリ,その他

経口抗菌薬の投与設計と注意点

#22.

経口抗菌薬の一般注意 ⼤きく分けて「外来診療可能な場合」と「静注後の維持期治療」で利⽤価値 * 経⼝抗菌薬へのステップダウンにより⼊院を避けられる・⼊院期間の短縮が⾒込める - 早期退院による⼊院医療費の削減,患者の無⽤なADL低下の防⽌ * いつ静注薬→経⼝薬へステップダウンできるか︖ - 静注後の維持治療に使⽤する場合にはトータルの治療期間の半分は静注薬を使⽤する -「経過良好」かつ「下痢嘔吐なし」かつ「経⼝摂⾷可」かつ「妥当な経⼝薬有り」が条件 - 迷ったらCOMS criteria →全て満たせば経⼝薬OK C Clinical improvement observed 臨床症状が改善している O Oral route is not compromised 経口投与が嘔吐・吸収障害・絶食・嚥下障害・意識障害・下痢で妨げられることなく、適切な経口抗菌薬の選択肢がある M Markers showing trend towards normal 下記のパラメータが正常値まで改善しつつある 24時間以上解熱(>36℃かつ<38℃) かつ下記 (1) - (4)を2つ以上満たさない 1) 脈拍数 >90bpm,2) 呼吸数 >20 /分,3) 血圧が不安定,4) 白血球数 <4,000 /mcLまたは>12,000 /mcL S Specific indication/deep seated infection requiring prolonged i.v. therapy 静注抗菌薬の長期間治療が必要な疾患(IE、髄膜炎、骨・関節の感染症)ではない

#23.

アモキシシリン ‒amoxicillin<AMPC>* β-ラクタム系抗菌薬 - ペニシリン系 - ペニシリンアレルギーに留意 * * * * * * * → 初回・2回⽬投与時要観察 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 バイオアベイラビリティ: 90%程度 中枢神経系への移⾏性: 原則無し 腎機能障害時の⽤量調節: 要 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 妊婦への投与: 可 同スペクトルの静注薬: アンピシリン 主な標的臓器: 顔周り(中⽿・副⿐腔・⼝腔内・咽喉頭) << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GPC: 肺炎球菌(副鼻腔炎,中耳炎など) 連鎖球菌(A群溶連菌咽頭炎(GAS)など), Enterococcus faecalis GNR: 大腸菌,Proteus mirabilis,インフルエンザ桿菌 CCr(mL/min) >50 10-50 <10 血液透析患者 投与設計 500mg, 1日3回(朝昼夕食後) 500mg, 1日2回(朝夕食後) 500mg, 1日1回(食後) * 透析患者へ投与する場合,透析日は透析後に投与する. * GAS咽頭炎には500mg, 1日2回(朝夕食後)でOK

#24.

アモキシシリン・クラブラン酸‒amoxicillin/clavulanate<AMPC/CVA>* ペニシリン系 + β-ラクタマーゼ - ペニシリンアレルギーに留意 * * * * * → 初回・2回⽬投与時要観察 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 中枢神経系への移⾏性: 原則無し 腎機能障害時の⽤量調節: 要 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 妊婦への投与: 可 << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GPC: Enterococcus faecalis (極稀.アモキシシリンでよい) GNR: 大腸菌・Proteus mirabilis・Klebsiella pneumoniae・ Klebsiella oxytoca の一部,インフルエンザ桿菌の一部 偏性嫌気性菌(特にBacteroides属), 動物咬傷の原因菌(Pasteurella multocida など) CCr(mL/min) 500mg, 1日3回(朝昼夕食後) * 極めて広域スペクトルの抗菌薬 >50 - ”コラテラル・ダメージ(= 正常細菌叢への影響)”が⼤きい → 安易に使⽤しないこと * 本邦の製剤はクラブラン酸量が多く下痢しやすい - 投与時はアモキシシリンと同時投与(所謂「オグサワ」) 投与設計 (本剤375mg1錠 + 別途アモキシシリン250mg) 750mg, 1日2回(朝夕食後) (本剤375mg1錠 + 別途アモキシシリン500mg) 10-50 <10 血液透析患者 500mg, 1日2回(朝夕食後) (本剤375mg1錠 + 別途アモキシシリン250mg) 500mg, 1日1回(食後) (本剤375mg1錠 + 別途アモキシシリン250mg) * 透析患者へ投与する場合,透析日は透析後に投与する. * 同スペクトルの静注薬: アンピシリン・スルバクタム

#25.

セファレキシン ‒cephalexin<CEX>* β-ラクタム系抗菌薬 – セファロスポリン系 * * * * * * * * 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 バイオアベイラビリティ: 90%以上 中枢神経系への移⾏性: 低 腎機能障害時の⽤量調節: 要 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 妊婦への投与: 可 同スペクトルの静注薬: セファゾリン ⻑時間作⽤型剤形(複合顆粒)が⾮常に便利 参考1: セファクロル(類薬)について 添付文書上の投与上限量や抗菌スペクトラム,アレルギーの頻度でセ ファレキシンに見劣りするのでセファレキシンの採用がない場合を除い てセファクロルの処方を勧めない. 参考2: 経口第3世代セファロスポリンについて 「絶対必要なタイミング」は恐らく5年に1回もないので,とりあえず 自分には縁のない薬剤として留める.筆者も未だ一度も処方経験がない. << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GPC: 黄色ブドウ球菌(MSSA) とりあえずはMSSAの第一選択薬である事を 覚えておけばOK GNR: 大腸菌,Proteus mirabilis, Klebsiella pneumoniae, K. oxytoca CCr(mL/min) 投与設計 >30 500mg, 1日4回(朝昼夕食後+眠前) 10-30 500mg, 1日3回(朝昼夕食後) <10 血液透析患者 500mg, 1日2回(朝夕食後) 250mg, 1日2回(朝夕食後) * 透析患者へ投与する場合,透析日は透析後に投与する. 主な標的臓器: ⽪膚・軟部組織,尿路

特定の抗菌薬の使用法と副作用

#26.

レボフロキサシン ‒levofloxacin<LVFX>- * フルオロキノロン(ニューキノロン)系 << 第一選択となる可能性がある微生物 >> * 濃度依存性抗菌薬 = 単回⼤量投与 非常に少ない * バイオアベイラビリティ: 90%以上 * 中枢神経系への移⾏性: ⾼ Legionella属,Salmonella属 * 腎機能障害時の⽤量調節: 要 * 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 基本はβ-ラクタム系薬不可時のalternative choice CCr(mL/min) >50 * 妊婦への投与: 不可 20-50 * ⼩児への投与: 原則不可 * 特徴的な副作⽤: ⼤動脈解離・瘤,腱障害 * 同スペクトルの静注薬: 静注⽤あり <20 とにかく安易に使用しない.結核症に対するキノロン投与は一時 的な症状改善をもたらし抗酸菌塗抹もしばしば陰性化するため診断 を遅らせ患者の予後も悪化させる.公衆衛生的にも感染性をもつ結 核患者の隔離が遅れるのは大きな問題である.可能な限り処方を 避ける.安易なキノロンの処方は無知の証拠である. 500mg, 1日1回(食後) 初回500mg, 以降250mg, 1日1回(食後) 血液透析患者 参考: レボフロキサシンは結核症に対する二次抗結核薬である 投与設計 初回500mg, 以降250mg, 2日に1回(食後) 500mg, 2日に1回(食後) * 透析患者へ投与する場合,透析日は透析後に投与する. * Mg, Fe, Al, Znなどの2価金属イオンとキレート形成するため 併用する場合は内服時間を2時間程度ずらすよう指導する 主な標的臓器: 全⾝どこでも

#27.

ドキシサイクリン ‒doxycycline<DOXY>- / * テトラサイクリン系 ミノサイクリン ‒minocycline<MINO>- << 第一選択となる可能性がある微生物 >> * 濃度依存性抗菌薬 Mycoplasma pneumoniae,ほか * バイオアベイラビリティ: 90%以上 一般感染症以外に広いスペクトル * 中枢神経系への移⾏性: 低 * 腎機能障害時の⽤量調節: 不要 基本はβ-ラクタム系薬不可時のalternative choice 肺炎球菌の多くは感受性であり,ペニシリンの使用 が難しい患者では処方検討の価値あり * 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 * 妊婦への投与: 不可 * ⼩児への投与: 原則不可(特に8歳未満) * 特徴的な副作⽤: めまい・ふらつき,⽇光過敏 * 同スペクトルの静注薬: 静注⽤あり 主な標的臓器: ⽪膚・軟部組織,下気道など CCr(mL/min) 投与設計 - 1回100mg, 1日2回(朝夕食後) (食道潰瘍の予防のため大量の水で服用) 血液透析患者 * ドキシサイクリン・ミノサイクリンとも投与設計は同一 * Mg, Fe, Al, Znなどの2価金属イオンとキレート形成 するため併用する場合は内服時間を2時間程度ずらす よう指導する

#28.

ST合剤 ‒trimethoprim/sulfamethoxazole<SMX/TMP>* * * * * * * 葉酸代謝阻害薬 バイオアベイラビリティ: 90%以上 中枢神経系への移⾏性: ⾼ 腎機能障害時の⽤量調節: 要 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 妊婦への投与: 不可 同スペクトルの静注薬: 静注⽤あり * 副作⽤(よく起こる.対処法を押さえておく): << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GPR: Nocardia sp.の一部 GNR: Stenotrophomonas maltophilia 真菌: Pneumocystis jirovecii (大量投与) 原虫: Toxoplasma sp. (大量投与.予防薬として使用) CCr(mL/min) >30 10-30 投与設計(トリメトプリム換算) 160mg, 1日2回(朝夕食後) <10 80mg, 1日2回(朝夕食後) 原則避ける 悪⼼・嘔吐・下痢 – ⽤量依存性である.可能なら減量を検討 血液透析患者 ⾼カリウム⾎症 – ACE阻害薬.ARBとの併⽤に注意.カリウム交換樹脂の使⽤を検討 ⾎清クレアチニン上昇 – 必ずしも腎障害を意味しない.軽度なら容認 GFRは理論上変化しないので疑えば蓄尿GFRを確認 ⽪疹,肝障害,⾻髄抑制(特に⾎⼩板減少),⽇光過敏など 主な標的臓器: 尿路,顔周り,下気道

#29.

メトロニダゾール ‒metronidazole<MNZ>* ニトロイミダゾール系抗菌薬 << 第一選択となる可能性がある微生物 >> - 嫌気性GNR(Bacteroides属など)治療薬として最も信頼 GNR: Bacteroides sp. に代表される偏性嫌気性菌, GPR: Clostridioides difficile * バイオアベイラビリティ: ほぼ100% * 中枢神経系への移⾏性: 有 * 腎機能障害時の⽤量調節: ⼀応要 * 肝機能障害時の⽤量調節: 要 - Child-Pugh class Cであれば半量にする * 妊婦への投与: 可(妊娠初期は不可) * 特徴的な副作⽤: 脳症,嫌酒効果 * 同スペクトルの経⼝薬: 静注⽤あり CCr(mL/min) 10 <10 血液透析患者 投与設計 BW >40kg BW 40kg 500mg, 6-8時間毎 500mg, 12時間毎 * 透析患者へ投与する場合,透析日は透析後に投与する. * 嫌気性菌活性のないセファロスポリンやフルオロキノロンと併⽤する * Clostridioides difficile infection(CDI)に対しては単剤で使⽤する(経⼝・静注共に可) 主な標的臓器: 全⾝どこでも

感染症診療に役立つ書籍とアプリの紹介

#30.

バンコマイシン ‒vancomycin<VCM>* グリコペプタイド系抗菌薬 - 静注⽤と全く⽤途が異なる.混同しないこと * * * * * * バイオアベイラビリティ: 0% 中枢神経系への移⾏性: 無し 腎機能障害時の⽤量調節: 無し 肝機能障害時の⽤量調節: 無し 妊婦への投与: 可 同スペクトルの経⼝薬: 実質なし << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GPR: Clostridioides difficile CCr(mL/min) - 投与設計 1回125mg, 1日4回(朝昼夕後+眠前) 血液透析患者 * 実質的にClostridioides difficile infection(CDI)専⽤である - 10⽇間の投与を⾏い治療効果判定を⾏う - 重症症例・再発を繰り返す症例ではフィダキソマイシンへの変更が検討される → 専⾨家へ相談する 主な標的臓器: CDIのみ

#31.

目次 ラスト,おまけです [ 総論 ] * なぜ感染症に抗微⽣物薬(抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬等)を使⽤するか︖ * なぜ抗微⽣物薬を【適切に】使⽤するのか︖ * 実際の現場で初期研修医はどう振舞うべきか︖ [ 各論 ] * 静注抗菌薬 10種類 アンピシリン,アンピシリン・スルバクタム,タゾバクタム・ピペラシリン,セファゾリン, セフトリアキソン,セフェピム,セフメタゾール,メロぺネム,メトロニダゾール,バンコマイシン * 経⼝抗菌薬 8種類 アモキシシリン,アモキシシリン・クラブラン酸,セファレキシン,レボフロキサシン, ドキシサイクリン/ミノサイクリン,ST合剤,メトロニダゾール,バンコマイシン [ 付録 ] * ⼿元に⽤意すべき書籍とアプリ,その他

#32.

付録 [⼿元にあるとよい書籍] * ⼤曲貴夫(2007). ホントのところがよくわかる感染症診療のベーシックアプローチ.⽂光堂 - 絶版だがAmazonで購⼊可能.病棟で感染症症例を受け持つ前に必ず⼀周読みたい⼀冊. 感染症診療の⼤原則を明快に理解できる良書.感染症に興味があろうとなかろうと必ず読みたい. * ⽮野晴美(2011).感染症まるごと この⼀冊.南⼭堂 - ⾮専⾨医であればこの本の内容を理解していれば⼤きなミスは⽣じ得ない.細菌学・薬理学の 両⽅からのアプローチで記載されており,⽂字通り「この⼀冊」で完結できる仕様. * 岡 秀昭(2021).感染症プラチナマニュアル Ver. 7 2021-2022.MEDSi - 病棟でのアンチョコとしても座学ででも使いやすい.簡潔にまとまっておりリファレンスも豊富. 2021年までは毎年改定されていたが今後は不明. * 感染症診療の⼿引き編集委員会(2021).新訂第4版 感染症診療の⼿引き.シーニュ - 薄さ・⼩ささと裏腹な内容の濃さ.しかも安い.とりあえず持ち歩くならこの⼀冊. 各疾患の最短の抗菌薬投与期間など痒いところに⼿が届くエキスパートオピニオンも豊富.

#33.

付録 [⼿元にあるとよいアプリ,その他] * Johns Hopkins Antibiotics Guide - サブスク3,600円(2022年4⽉現在)だが登録の価値⾼い.無料トライアルあり. コンテンツも充実しアップデートも頻繁.病棟で重宝すること間違い無い. * UpToDate - 感染症領域に限らず臨床医学全般の最新エビデンスのまとめ.個⼈契約は まあまあ⾼額なので⼿を出しにくいが,所属病院で契約があればラッキー. 細かくカテゴライズされているため教科書的な利⽤もおすすめ. * CCr計算機 - 複数あるのでApp store/google playで検索して気に⼊ったものをひとつ⼊れておくと良い. * Sanford guide update版(https://www.sanfordguide.com) - ⾔わずと知れた「熱病」.頻繁にアップデートされるため書籍版よりも圧倒的におすすめ. 有料だがPfizer Pro経由で個⼈情報を提供すれば無料で使⽤可能(2022年4⽉現在).

#34.

おしまい ご質問・ご意見は Twitter: @metl63 / mail: ak.takano.39@showa-gh.jp までお気軽にお寄せください.


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