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感染症診療のマテリアル

投稿者プロフィール
高野哲史
Award 2020 受賞者

医療法人社団東光会戸田中央総合病院

198,553

866

概要

高野さん。恥をかいちゃったわよ。ひどい恥をかきました。顔から火が出る、などの形容はなまぬるい。学会会場をころげ廻って、わあっと叫びたい、と言っても未だ足りない。...

 

 

新初期研修医の先生や感染症診療に興味を持って取り組もうと思っている先生方に向けて、感染症診療の原則から主な静注・経口抗菌薬についての各論を簡潔にまとめました。初学者必読のまさに「マテリアル」です。

 

各論は各薬剤1ページに収まるように構成しましたので、病棟でサッと引くためのアンチョコとしても利用できるように工夫しましたので、是非お持ちのスマートフォンにAntaaのアプリを入れて頂き、困った時にめくってもらえるたら嬉しいです。

 

**2026年の改訂**

・各薬剤の投与設計を削除しました:

感染症治療の個別性は年々上昇してきており、スライド内で個別の事例について網羅するのが困難であるため、エラーが起きないよう投与設計は一括で不掲載としました。

 

・スライドのレイアウトを整頓しました:

見やすくなったと思います。

 

・その他、誤字・脱字など微細な修正を行いました。

 

【他のコンテンツ】

* サルでもわかる経口抗菌薬の話

https://slide.antaa.jp/article/view/5199820d537c41bc

* タコでもわかる静注抗菌薬の話

https://slide.antaa.jp/article/view/e097b2a75e264a01

* カメでもわかるCRPの話

https://slide.antaa.jp/article/view/e83a7e12c9d74d3b

* ニワトリでもわかるβ-ラクタム系以外の抗菌薬の話

https://slide.antaa.jp/article/view/a335f79d13f144ee

* アナグマでもわかるフルオロキノロンの話

https://slide.antaa.jp/article/view/067106f6aebb4bf8

* ウシでもわかる真菌の話

https://slide.antaa.jp/article/view/e491e8559fc14d39

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スライド内容の転用も歓迎します。その折にはお手数ですがご一報ください。

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テキスト全文

感染症診療の基本と誤解

#1.

新初期研修医のための 感染症診療のマテリアル (2026年版) 戸田中央総合病院 感染症内科・感染対策管理室 済生会横浜市東部病院 総合内科(非常勤) 高野 哲史

#2.

誰のためのスライド? / 医師国家試験レベルの症例問題で 「〜系抗菌薬」を選択できるレベルの新初期研修医の皆様 // 感染症は広域抗菌薬を使っておけば⼤きな問題はない と思っている医師・看護師・薬剤師の皆様 /// その他感染症診療をイチからガッチリ押さえたい皆様

#3.

目次 / 総論 - 感染症診療によくある勘違い - 感染症診療の基本姿勢 - 実際の現場で初期研修医はどう振舞うべきか︖ // 各論 - 静注抗菌薬 9種類 - 経⼝抗菌薬 6種類 /// 付録 - ⼿元に⽤意すべき書籍とアプリ,その他

初期研修医の実践と姿勢

#4.

目次 / 総論 - 感染症診療によくある勘違い - 感染症診療の基本姿勢 - 実際の現場で初期研修医はどう振舞うべきか︖ // 各論 - 静注抗菌薬 9種類 - 経⼝抗菌薬 6種類 /// 付録 - ⼿元に⽤意すべき書籍とアプリ,その他

#5.

総論: 感染症診療によくある勘違い / ⼈体は無菌である: 誤り - ⽪膚表⾯にすら常在菌が存在する - さらに種々の免疫不全素因により微⽣物を保菌する事は稀ではない 【細胞性免疫不全】加齢,免疫抑制薬投与,糖尿病,HIV感染症など 【液性免疫不全】脾摘後,多発性⾻髄腫など 【好中球減少状態】抗癌化学療法など 【正常解剖構造の破綻】カテーテル挿⼊,尿閉,胆⽯,腸管穿孔など - 腸管内に数百兆個の腸内細菌叢が存在する(便の半分は菌およびその死骸)

#6.

総論: 感染症診療によくある勘違い // 培養で同定された微⽣物は100%原因菌である: 誤り - 保菌はしばしば感染症の原因微⽣物と判別できない - その臓器に感染症を起こす微⽣物かどうかを知っている必要がある 【尿培養・喀痰培養】 【⾎液培養(1セットのみの場合)】 Candida属 Cutibacterium属 ⻩⾊ブドウ球菌 Corynebacterium属 CNS(coagulase-negative Staphylococci) Bacillus属 /// 微⽣物は抗微⽣物薬を使わなければ駆逐できない: 誤り - 抗微⽣物薬は宿主の免疫⼒をアシストするに過ぎない -「抗微⽣物薬の必要性の評価」と共に「解消可能な免疫障害の評価」を

#7.

総論: 感染症診療によくある勘違い //// 感染症診療ができる=抗微⽣物薬を使⽤できる: 誤り - 処⽅するなら誰でもできる: 特別な資格は不要 - 感染症診療の適切性を⾼めるための⾻格部分の理解が必要 - 抗微⽣物薬を使⽤しない選択ができることも同等に重要 //// では,感染症診療ができるということ,とは︖ - ⽬の前の患者を感染症だと認識すること - 感染症は微⽣物が特定の臓器に起こすセオリー(定⽯)を理解する

#8.

総論: 感染症診療の基本姿勢 / 「感染症に対して抗菌薬を使⽤するのではない」ことを理解 - 抗菌薬には基本,「特定の細菌を殺す作⽤」しかない - 感染症の治癒は抗菌薬の間接的な効果を⾒ているに過ぎない // 感染症治療は常に⼆段構えである - 初期治療: 原因微⽣物不明の段階で⾏う,⼀時しのぎ的な治療 - 標的治療: 原因微⽣物が判明した後に⾏う,最適な治療 初期治療を標的治療に変更するために必要なのは?

#9.

総論: 感染症診療の基本姿勢 / 治療最適化のための準備を怠らない︓微⽣物学的検査 - 抗菌薬開始前の微⽣物学的検査(グラム染⾊・培養など)はもはや鉄則 - 抗菌薬の投与を受けた後の微⽣物学的検査結果は必ずしも信⽤できない // 特定の臓器における・特定の微⽣物による感染症の治療薬を選ぶ - 最良の(=特異的な)治療であるかどうかを常に考える - 最良かどうかを決めるのは医療者ではなく,データである

#10.

総論: 実際の現場で初期研修医はどう振舞うべきか? / 上席医師に楯突かないこと - 上席医師との関係性は研修⾃体の質に直結する - 上級医の抗菌薬の選択や投与設計を盲信しない → なぜこの薬剤を選択したのか︖なぜこの投与設計なのか︖を考える - 絶対に変更したほうがいいケースでは相談を 限られた時間で一番快適に・効率よく勉強できる環境の確保を

静注抗菌薬の種類と注意点

#11.

目次 / 総論 - 感染症診療によくある勘違い - 感染症診療の基本姿勢 - 実際の現場で初期研修医はどう振舞うべきか︖ // 各論 - 静注抗菌薬 9種類 - 経⼝抗菌薬 6種類 /// 付録 - ⼿元に⽤意すべき書籍とアプリ,その他

#12.

目次 重要・静注抗菌薬 9種類 アンピシリン ピペラシリン・タゾバクタム セフトリアキソン セフメタゾール バンコマイシン アンピシリン・スルバクタム セファゾリン セフェピム メロぺネム 重要・経⼝抗菌薬 6種類 アモキシシリン セファレキシン ドキシサイクリン アモキシシリン・クラブラン酸 レボフロキサシン ST合剤

#13.

目次 / 総論 - 感染症診療によくある勘違い - 感染症診療の基本姿勢 - 実際の現場で初期研修医はどう振舞うべきか︖ // 各論 - 静注抗菌薬 9種類 - 経⼝抗菌薬 6種類 /// 付録 - ⼿元に⽤意すべき書籍とアプリ,その他

主要な静注抗菌薬の詳細

#14.

静注抗菌薬の一般注意 時間依存性抗菌薬はできれば点滴時間を延⻑する / 代表例はβ-ラクタム系抗菌薬(ペニシリン,セフェム,カルバペネム) // 投与時間を延⻑するだけで効果指標となるTime Above MICを延⻑できる - 同じ総投与量でも⾼い殺菌効果を引き出せる可能性がある - 患者の不要な薬剤曝露量減にも⼀役買う /// 緊急疾患を疑う状況(=急速に⾎中濃度を⾼める必要のある時)ではこの限りではない - 敗⾎症性ショックや細菌性髄膜炎の初回投与時,開放⾻折の予防抗菌薬など. とにかく早く⾎中濃度を上げる = 治療開始する.場合によっては点滴ではなく静注する • //// あらかじめ病棟スタッフや上級医の理解を獲得しておくこと 「抗菌薬はどれも1日2回投与」のような伝統的な慣習を迎合しない! メロペン血中濃度シミュレーション&Time Above MIC計算ソフト

#15.

静注抗菌薬の一般注意 推算CCrをいちいち計算し最適な投与設計を⾏う 推算CCr(男性): (140-年齢) x 体重 72 x ⾎清クレアチニン • * ⼥性はこの値に x0.85 * 算出された値に従い抗菌薬投与設計を⾏う * 計算式を覚えるのが⾯倒ならアプリを⼀つ⼊れておく

#16.

アンピシリン(ampicillin: ABPC) * β-ラクタム系抗菌薬 - ペニシリン系 - ペニシリンアレルギーに留意 << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GPC: 肺炎球菌(侵襲性肺炎球菌感染症,髄膜炎を含む) → 初回・2回⽬投与時要観察 連鎖球菌(劇症型溶連菌感染症を含む), - 安全域も広い → 安易に投与量を減らさない * 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 - 1回投与量を増やすか投与回数を Enterococcus faecalis GPR: リステリア GNR: 大腸菌,Proteus mirabilis 増やすかで悩んだら投与回数を増やす * * * * * 中枢神経系への移⾏性: 有 腎機能障害時の⽤量調節: 要 • 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 妊婦への投与: 可 溶解液: ⽣⾷ 100mL(5%ブドウ糖液はなるべく避ける) * 同スペクトルの経⼝薬: アモキシシリン

#17.

アンピシリン・スルバクタム(ampicillin-sulbactam: SBT/ABPC) * ペニシリン系 + β-ラクタマーゼ - ペニシリンアレルギーに留意 → 初回・2回⽬投与時要観察 * 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 - 1回投与量を増やすか投与回数を * * * * 増やすかで悩んだら投与回数を増やす << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GPC: Enterococcus faecalis (極稀.アンピシリンでよい) GNR: 大腸菌, Proteus mirabilis, Klebsiella pneumoniae, Klebsiella oxytoca, Acinetobacter baumannii, 偏性嫌気性菌(特にBacteroides属), 動物咬傷の原因菌(Pasteurella multocida など) 中枢神経系への移⾏性: 有 腎機能障害時の⽤量調節: 要 * 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 妊婦への投与: 可 • 溶解液: ⽣⾷ 100mL(5%ブドウ糖液はなるべく避ける) * 極めて広域スペクトルの抗菌薬 - ”コラテラル・ダメージ(= 正常細菌叢への影響)”が⼤きい → 安易に使⽤しないこと * 同スペクトルの経⼝薬: アモキシシリン・クラブラン酸 → Acinetobacterは不可

#18.

ピペラシリン・タゾバクタム(piperacillin-tazobactam: TAZ/PIPC) * ペニシリン系 + β-ラクタマーゼ - ペニシリンアレルギーに留意 * * * * * * * * → 初回・2回⽬投与時要観察 << 第一選択となる可能性がある微生物 >> なし 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 中枢神経系への移⾏性: 有 「カルバペネムをスペアするための初期治療抗菌薬」 腎機能障害時の⽤量調節: 要 と理解する!漫然と使い続けないこと. 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 妊婦への投与: 可 溶解液: •⽣⾷または5%ブドウ糖液 100mL 特徴的な副作⽤: 低カリウム⾎症 同スペクトルの経⼝薬: なし * 超絶広域スペクトルの抗菌薬 - ”コラテラル・ダメージ(= 正常細菌叢への影響)”が⼤きい → 安易に使⽤しないこと

#19.

セファゾリン(cefazolin: CEZ) * β-ラクタム系抗菌薬 – セファロスポリン系 * 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 - 1回投与量を増やすか投与回数を 増やすかで悩んだら投与回数を増やす * 中枢神経系への移⾏性: 低 << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GPC: 黄色ブドウ球菌(MSSA) とりあえずはMSSAの第一選択薬である事を 覚えておけばOK GNR: 大腸菌,Proteus mirabilis, Klebsiella pneumoniae, K. oxytoca - 髄膜炎には使⽤できない * * * * * 腎機能障害時の⽤量調節: 要 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 妊婦への投与: 可 • 溶解液: ⽣⾷または5%ブドウ糖液 100mL 同スペクトルの経⼝薬: セファレキシン おまけ 肺炎球菌の治療には原則⽤いない 腸球菌には効果がない(セフェム全般に共通)

#20.

セフトリアキソン(ceftriaxone: CTRX) * β-ラクタム系抗菌薬 – セファロスポリン系 * 時間依存性抗菌薬 << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GPC: 肺炎球菌(特にペニシリン耐性株) - 半減期が⻑い(6-8時間)ため通常24時間毎投与でOK - 場合によっては外来通院点滴治療(OPAT)も可能 * 中枢神経系への移⾏性: ⾼ * 腎機能障害時の⽤量調節: 不要 * 肝機能障害時の⽤量調節: 原則不要 - エビデンスなし.Child-pugh Cなら半量など︖ * * * * - 同効薬で腎排泄のセフォタキシムへの変更が無難 • 連鎖球菌属(Streptococcus spp.) GNR: Haemophilus influenzae, Salmonella sp. 大腸菌などの腸内細菌目細菌 GNC: Moraxella catarrhalis 透析患者にも投与量調節不要. 腸球菌には無効(セフェム全般)だが, Enterococcus faecalisの感染性⼼内膜炎には アンピシリンと併⽤で使⽤する場合がある. 妊婦への投与: 可 溶解液: ⽣⾷または5%ブドウ糖液 100mL 特徴的な副作⽤: 偽胆⽯,好中球減少,脳症(稀) 同スペクトルの経⼝薬: 実質なし

セファロスポリン系抗菌薬の特徴

#21.

セフェピム(cefepime: CFPM) * β-ラクタム系抗菌薬 – セファロスポリン系 * 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 - 1回投与量を増やすか投与回数を * * * * 増やすかで悩んだら投与回数を増やす 中枢神経系への移⾏性: ⾼ 腎機能障害時の⽤量調節: 要 妊婦への投与: 可 特徴的な副作⽤: セフェピム脳症 - 意識障害・神経症状の出現があれば原則中⽌ • - 他薬より投与設計を丁寧 / デリケートに 分からなければ薬剤師や専⾨家へ依頼する * AmpC過剰産⽣に対し最も安定 - 当該菌種に安易にカルバペネムを使い続けない - 感受性があればde-escalationを試みること << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GNR: 緑膿菌, Morganella morganii, Providencia spp., Serratia marcescens, Citrobacter freundii, Enterobacter cloacae Klebsiella aerogenes * 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 * 溶解液: ⽣⾷または5%ブドウ糖液 100mL * 同スペクトルの経⼝薬:なし

#22.

セフメタゾール(cefmetazole: CMZ) * β-ラクタム系抗菌薬 – セファマイシン系 - 偏性嫌気性GNR(Bacteroides属など)に効果あり * 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 - 1回投与量を増やすか投与回数を * * * * * * 増やすかで悩んだら投与回数を増やす << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GNR: 大腸菌,Klebsiella pneumoniae, K. oxytoca, Proteus mirabilis, Bacteroides sp. など 特にESBLs産生株のカルバペネム・スペアに 中枢神経系への移⾏性: 低 腎機能障害時の⽤量調節: 要 * 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 妊婦への投与: 可 溶解液: •⽣⾷または5%ブドウ糖液 100mL 同スペクトルの経⼝薬:なし ESBLsに対し安定 - 当該菌種に安直にカルバペネムを使わない.臨床経過に問題がなく,感受性があればde-escalationを試みること - ただし,第⼀選択薬はカルバペネムであることも同時によくわきまえておく

バンコマイシンの使用と注意点

#23.

メロペネム(meropenem: MEPM) * β-ラクタム系抗菌薬 – カルバペネム系 - とにかく濫⽤しない.年に数回使うものと考える. * 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 << 第一選択となる可能性がある微生物 >> 第一選択薬として使用し続けなければならない ケースはほとんどない. - 1回投与量を増やすか投与回数を * * * * 増やすかで悩んだら投与回数を増やす 中枢神経系への移⾏性: 有るが低い(3-10%) 腎機能障害時の⽤量調節: 要 * 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 妊婦への投与: 可 特徴的な副作⽤: 痙攣 • - 関連して,バルプロ酸との併⽤禁忌 * 溶解液: ⽣⾷または5%ブドウ糖液 100mL * 同スペクトルの経⼝薬:なし * ESBLsやAmpC型β-ラクタマーゼに対し安定

#24.

バンコマイシン(vancomycin: VCM) * グリコペプチド系抗菌薬 << 第一選択となる可能性がある微生物 >> - 「抗グラム陽性菌薬」として認識する GPC: 黄色ブドウ球菌(MRSA), Enterococcus faecium, * 中枢神経系への移⾏性: 有 ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP), * Therapeutic Drug Monitoring(TDM)が必要 ほとんどのグラム陽性菌 - 投与設計は必ず薬剤師の先⽣⽅と相談すること * 妊婦への投与: 不可 * 溶解液: 適宜 * 特徴的な副作⽤: レッドネック症候群,腎障害 - レッドネック症候群は投与速度を緩めることで解消できる.投与量に関わらず2時間投与を勧める. • - 腎障害はピペラシリン・タゾバクタムとの併⽤時にリスクが上昇するのでなるべく併⽤を避ける * 同スペクトルの経⼝薬: 経⼝剤形があるが⽤途が全く異なるため実質なし

経口抗菌薬の選択と注意点

#25.

目次 / 総論 - 感染症診療によくある勘違い - 感染症診療の基本姿勢 - 実際の現場で初期研修医はどう振舞うべきか︖ // 各論 - 静注抗菌薬 9種類 - 経⼝抗菌薬 6種類 /// 付録 - ⼿元に⽤意すべき書籍とアプリ,その他

#26.

経口抗菌薬の一般注意 ⼤きく分けて「外来診療可能な場合」と「静注後の維持期治療」で利⽤価値 * 経⼝抗菌薬へのステップダウンにより⼊院を避けられる・⼊院期間の短縮が⾒込める - 早期退院による⼊院医療費の削減,患者の無⽤なADL低下の防⽌ * いつ静注薬→経⼝薬へステップダウンできるか︖ -「経過良好」かつ「下痢嘔吐なし」かつ「経⼝摂⾷可」かつ「妥当な経⼝薬有り」が条件 - 迷ったらCOMS criteria: 全て満たせば経⼝薬OK C Clinical improvement observed • 臨床症状が改善している O Oral route is not compromised 経口投与が嘔吐・吸収障害・絶食・嚥下障害・意識障害・下痢で妨げられることなく、適切な経口抗菌薬の選択肢がある M Markers showing trend towards normal 下記のパラメータが正常値まで改善しつつある 24時間以上解熱(>36℃かつ<38℃) かつ下記 (1) - (4)を2つ以上満たさない 1) 脈拍数 >90bpm,2) 呼吸数 >20 /分,3) 血圧が不安定,4) 白血球数 <4,000 /mcLまたは>12,000 /mcL S Specific indication/deep seated infection requiring prolonged i.v. therapy 静注抗菌薬の長期間治療が必要な疾患(IE、髄膜炎、骨・関節の感染症)ではない

#27.

アモキシシリン(amoxicillin: AMPC) * β-ラクタム系抗菌薬 - ペニシリン系 - ペニシリンアレルギーに留意 → 初回・2回⽬投与時要観察 * 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 * * * * * * << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GPC: 肺炎球菌(副鼻腔炎,中耳炎など) 連鎖球菌(A群溶連菌咽頭炎(GAS)など), Enterococcus faecalis GNR: 大腸菌,Proteus mirabilis,インフルエンザ桿菌 バイオアベイラビリティ: 90%程度 中枢神経系への移⾏性: 原則無し 主な標的臓器: 腎機能障害時の⽤量調節: 要 顔周り(中⽿・副⿐腔・⼝腔内・咽喉頭) 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 妊婦への投与: 可 同スペクトルの静注薬: アンピシリン

フルオロキノロン系抗菌薬の特性

#28.

アモキシシリン・クラブラン酸(amoxicillin-clavulanate: CVA/AMPC) * ペニシリン系 + β-ラクタマーゼ - ペニシリンアレルギーに留意 → 初回・2回⽬投与時要観察 * 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 * 中枢神経系への移⾏性: 原則無し << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GPC: Enterococcus faecalis (極稀.アモキシシリンでよい) GNR: 大腸菌・Proteus mirabilis・Klebsiella pneumoniae・ Klebsiella oxytoca の一部,インフルエンザ桿菌の一部 偏性嫌気性菌(特にBacteroides属), 動物咬傷の原因菌(Pasteurella multocida など) * 腎機能障害時の⽤量調節: 要 * 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 * 妊婦への投与: 可 * 極めて広域スペクトルの抗菌薬 - ”コラテラル・ダメージ(= 正常細菌叢への影響)”が⼤きい: 安易に使⽤しないこと * 本邦の製剤はクラブラン酸の割合が多く下痢しやすい: 「オグサワ処⽅」を覚えておく * 同スペクトルの静注薬: アンピシリン・スルバクタム

#29.

セファレキシン(cephalexin: CEX) * β-ラクタム系抗菌薬 – セファロスポリン系 * * * * * * * * 時間依存性抗菌薬 = 頻回投与 バイオアベイラビリティ: 90%以上 中枢神経系への移⾏性: 低 腎機能障害時の⽤量調節: 要 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 妊婦への投与: 可 同スペクトルの静注薬: セファゾリン ⻑時間作⽤型剤形(複合顆粒)が⾮常に便利 << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GPC: 黄色ブドウ球菌(MSSA) とりあえずはMSSAの第一選択薬である事を 覚えておけばOK GNR: 大腸菌,Proteus mirabilis, Klebsiella pneumoniae, K. oxytoca 主な標的臓器: ⽪膚・軟部組織,尿路 参考1: セファクロル(類薬)について 添付文書上の投与上限量や抗菌スペクトラム,アレルギーの頻度でセファレキシンに見劣りするのでセファレキシンの採用がない場合を除 いてセファクロルの処方を勧めない. 参考2: 経口第3世代セファロスポリンについて とりあえず自分には縁のない薬剤として留める.「これでなければならないケース」が思い浮かばないどころか,「これじゃないほうがい いケース」の方が多い可能性すらある.

#30.

レボフロキサシン(levofloxacin: LVFX) * フルオロキノロン(ニューキノロン)系 * 濃度依存性抗菌薬 = 単回⼤量投与 * バイオアベイラビリティ: 90%以上 * 中枢神経系への移⾏性: ⾼ * 腎機能障害時の⽤量調節: 要 * 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 * 妊婦への投与: 不可 * ⼩児への投与: 原則不可 * 特徴的な副作⽤: ⼤動脈解離・瘤,腱障害 * 同スペクトルの静注薬: 静注⽤あり << 第一選択となる可能性がある微生物 >> 非常に少ない Legionella属,Salmonella属 基本はβ-ラクタム系薬不可時のalternative choice 主な標的臓器: 全⾝どこでも * Mg, Fe, Al, Znなどの2価金属イオンとキレート形成するため 併用する場合は内服時間を2時間程度ずらすよう指導する 参考: レボフロキサシンは結核症に対する二次抗結核薬である とにかく安易に使用しない.結核症に対するキノロン投与は一時 的な症状改善をもたらし抗酸菌塗抹もしばしば陰性化するため診断 を遅らせ患者の予後も悪化させる.公衆衛生的にも感染性をもつ結 核患者の隔離が遅れるのは大きな問題である.可能な限り処方を 避ける.安易なキノロンの処方は無知の証拠である.

テトラサイクリン系とST合剤の概要

#31.

ドキシサイクリン(doxycycline: DOXY) * テトラサイクリン系 * 濃度依存性抗菌薬 * バイオアベイラビリティ: 90%以上 * 中枢神経系への移⾏性: 低 * 腎機能障害時の⽤量調節: 不要 * 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 * 妊婦への投与: 不可 * ⼩児への投与: 原則不可(特に8歳未満) << 第一選択となる可能性がある微生物 >> Mycoplasma pneumoniae, Treponema pallidum ほか 一般感染症以外に広いスペクトル 基本はβ-ラクタム系薬不可時のalternative choice 主な標的臓器: ⽪膚・軟部組織,下気道など * ドキシサイクリン・ミノサイクリンとも投与設計は同一 * Mg, Fe, Al, Znなどの2価金属イオンとキレート形成 するため併用する場合は内服時間を2時間程度ずらす よう指導する * 特徴的な副作⽤: めまい・ふらつき,⽇光過敏,⾊素沈着,⾷道炎 * 同スペクトルの静注薬: ミノサイクリン

#32.

ST合剤(sulfamethoxazole-trimethoprim: SMX/TMP) * * * * * * * * 葉酸代謝阻害薬 バイオアベイラビリティ: 90%以上 中枢神経系への移⾏性: ⾼ 腎機能障害時の⽤量調節: 要 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 妊婦への投与: 不可 同スペクトルの静注薬: 静注⽤あり 副作⽤(しばしば起こる.対処法を押さえておく): << 第一選択となる可能性がある微生物 >> GPR: Nocardia spp.の一部 GNR: Stenotrophomonas maltophilia 真菌: Pneumocystis jirovecii (大量投与) 原虫: Toxoplasma sp. (大量投与.予防薬として使用) 主な標的臓器: 尿路,顔周り,下気道 消化管障害(下痢・悪⼼・嘔吐)– ⽤量依存性である.可能なら減量を検討 ⾼カリウム⾎症 – ACE阻害薬.ARBとの併⽤に注意.カリウム交換樹脂の使⽤を検討 ⾎清クレアチニン上昇 – 必ずしも腎障害を意味しない.軽度なら容認 ⽪疹,肝障害,⾻髄抑制(特に⾎⼩板減少),⽇光過敏など

付録: 書籍とアプリの推奨

#33.

目次 / 総論 - 感染症診療によくある勘違い - 感染症診療の基本姿勢 - 実際の現場で初期研修医はどう振舞うべきか︖ // 各論 - 静注抗菌薬 9種類 - 経⼝抗菌薬 6種類 /// 付録 - ⼿元に⽤意すべき書籍とアプリ,その他

#34.

付録 [⼿元にあるとよい書籍] / ⾼野哲史(2024). 理論から攻める 合格点の感染症診療.⽇経BP - 総論極振り.細かいことは⼀切ナシ,感染症診療の根幹部分の理解に超絶コミットする⼀冊. // 感染症診療の⼿引き編集委員会(2021).新訂第4版 感染症診療の⼿引き.シーニュ - 薄さ・⼩ささと裏腹な内容の濃さ.しかも安い.とりあえず持ち歩くならこれ. 各疾患の最短の抗菌薬投与期間など痒いところに⼿が届くエキスパートオピニオンも豊富. /// ⾼野哲史(2024).レジデントのための これだけ抗菌薬.⽇本医事新報社 • - 300⾴ほどのボリュームながら,レジデント〜⾮専⾨医までずーっと使える内容.わかりやすい. 「感染症診療が出来る,って抗菌薬が使えることと同義じゃないよね」が分かる⼀冊.

#35.

付録 [⼿元にあるとよいアプリ,その他] / Johns Hopkins Antibiotics Guide - サブスク3,600円(2022年4⽉現在)だが登録の価値⾼い.無料トライアルあり. コンテンツも充実しアップデートも頻繁.病棟で重宝すること間違い無い. // UpToDate - 感染症領域に限らず臨床医学全般の最新エビデンスのまとめ. 個⼈契約は⾼額なので⼿を出しにくいが,所属病院で契約があればラッキー. 細かくカテゴライズされているため教科書的な利⽤もおすすめ. • /// Sanford guide update版(https://www.sanfordguide.com) - ⾔わずと知れた「熱病」.頻繁にアップデートされるため書籍版よりも圧倒的におすすめ. 有料になった(2026年4⽉現在).

#36.

おしまい


高野哲史さんのインタビュー

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