#4.
4 NTMの概論と診断についてはスライド前編を参照ください スライド前編
#5.
5 1 2 3 いつ、誰に治療を行うべきか くすりのはなしと薬剤感受性試験 難治例への対応 INDEX
#6.
6 1 2 3 いつ、誰に治療を行うべきか くすりのはなしと薬剤感受性試験 難治例への対応 INDEX
#7.
7 いつ、だれに治療を開始すべきか? いつ、誰に治療を行うべきか Daley CL, et al. Clin Infect Dis. 71(4):e1-e36, 2020 治療を開始すべき 1)喀痰塗抹陽性
2)空洞病変を有する それ以外は「総合的に判断」 ・症状の程度
・予後不良因子(後述)
・検出菌の種類
・治療薬への不耐/毒性
・免疫不全の有無
・その患者における治療優先度 etc
#8.
8 肺MAC症の 臨床的予後不良因子 いつ、誰に治療を行うべきか ① 年齢、性別、併存疾患 ② 低栄養、るいそう ③ 画像所見 ④ 炎症 男性
高齢 広がり
空洞 血清アルブミン
Body Mass Index CRP
ESR ESR: erythrocyte sedimentation rate Yamazaki Y, et al. AJRCCM.160: 1851-1855, 1999.
Hayashi M, et al. AJRCCM. 185(5): 575-583, 2012.
Gochi M, et al. BMJ Open. 5:e008058, 2015.
#9.
9 参考:BACESスコアリスク因子が増えると予後不良:早めに治療を提案 B いつ、誰に治療を行うべきか A C E S AJRCCM.203(2):230-6, 2021
J Infect Chemother. 29(10):1005-7, 2023 BMI<18.5kg/m2 Age≧65yo Cavity(空洞性病変) ESR>15(男性)
>20(女性) Sex(男性) ・・・CRPで代用してもよいかも(>0.3mg/dL)
#10.
10 いつ、治療始める?
(非空洞、塗抹陰性) いつ、誰に治療を行うべきか 客観的指標はない 免疫抑制薬の使用 胸部レントゲンで
わかるような
悪化所見 日常生活に差し支える
呼吸器症状
全身症状(体重減少)
#11.
11 小括 その1 いつ、誰に治療を行うべきか 空洞例、塗抹陽性例以外についてどのような症例に治療を行うべきかについてはまだまだ研究課題の一つ
#12.
12 1 2 3 いつ、誰に治療を行うべきか くすりのはなしと薬剤感受性試験 難治例への対応 INDEX
#13.
13 MACの治療に使用される主な薬剤と有害事象・注意点 有害事象) 胃腸症状、味覚異常、CYP3A4阻害、QT延長
注意) 単剤使用による薬剤耐性 CAM
クラリスロマイシン くすりのはなしと薬剤感受性試験 有害事象) アレルギー、血球減少、視神経障害
注意) マクロライド耐性化を減らすため、MICに関わらず併用する EBエタンブトール 有害事象) 肝障害、血球減少、胃腸症状、CYP3A4誘導
注意) 尿がオレンジ色になる RFP
リファンピシン 有害事象) 聴力障害、腎障害、過敏症状
注意) 注射のみ TDMを実施する AMKアミカシン 有害事象) 胃腸症状、味覚異常、QT延長
注意) 単剤使用による薬剤耐性 AZM
アジスロマイシン
#14.
14 エタンブトール視神経障害 くすりのはなしと薬剤感受性試験 EBはマクロライド耐性を予防するために併用されることが多い(MICに関わらず)
霧視、視野障害、視力低下
機序不明
投与前の眼科診察、開始後も定期的な眼科診察が必要
投与開始版半年〜1年(中央値)程度は注意
低用量(12.5-15mg/kg以下)で発症率が少ない(>10mg/kgギリギリをねらう)
週3回投与の方が出現頻度が少ない
治療・予防に亜鉛が有効かも? 日本結核・非結核性抗酸菌症学会 非結核性抗酸菌症対策委員会
エタンブトール(EB)による視神経障害に関する見解
Int J Tuberc Lung Dis. 22(12):1505-1510, 2018
Int J Tuberc Lung Dis. 20(2):261-4, 2016
Infection. 50(4):879-887, 2022
#15.
15 標準治療 くすりのはなしと薬剤感受性試験 成人肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解−2023年改訂. 結核, 2023 空洞なし
非重症 空洞あり
高度のNB型 MAC 空洞あり
高度のNB型 A法:連日投与
CAM 800mg or AZM 250mg
EB 10-15mg/kg(最大750mg)
RFP 10mg/kg(最大600mg) B法:週3日投与
CAM 1000mg or AZM 500mg
EB 20-25mg/kg(最大1000mg)
RFP 600mg A法+治療初期(3-6ヶ月)に以下を併用する
・SM 〜15mg/kg(最大1000mg) 週2-3回筋注
・AMK 15mg/kg連日 or 15-25mg/kg 週3回点滴 TDMで調節
(50歳以上では8-10mg/kg (最大500mg) 週2-3回 TDMで調節 A法にいずれかを併用する
・ALIS 590mg/日 吸入
・SM筋注
・AMK点滴 外科治療も考慮
#16.
16 リファンピシン(RFP)は本当に必要か? くすりのはなしと薬剤感受性試験 M.aviumに対するRFPのMICは、黄色ブドウ球菌や結核菌と比較して高い上、他の薬剤との症状効果が乏しい
十分なAUC/MICを得るために必要なRFPの量は現行のレジメンをはるかに上回る
CYP3A4を強く誘導し、マクロライドの血中濃度を下げてしまう
マクロライド+EBでも同等の治療効果が得られる可能性がある
2剤よりも3剤併用の方が培養陰性化は達成しやすい(上2つの研究も同様) Eur Respir J. 63(5):2302210, 2024 Ann Am Thorac Soc.11(1):23-9, 2014
Antimicrob Agents Chemother. 64(1):e01787-19, 2019 J Microbiol Immunol Infect.57(1):164-174,2024 現在進行中の臨床試験の結果を待ちたいが(MAC2v3)
培養陰性例・軽症例では2剤治療も有望
#17.
17 CAMにする?AZMにする? くすりのはなしと薬剤感受性試験 国際ガイドラインでは忍容性、薬物相互作用の少なさ、内服薬剤の錠剤の少なさ、内服回数の少なさ、治療効果の同等性などを踏まえ、CAMよりAZMが推奨されている
特にCAMと比べ、RFPによるCYP3A4阻害の影響が小さいことから、3剤レジメンでは選択しやすい(AZM+EB+RFP)
2剤レジメンでどちらが優れているのかはまだエビデンスが不十分(CAM+EB vs. AZM+EB)
個人的には、MAC症では新規治療はほぼAZMレジメンM. abscessusを除く比較的稀なNTMではCAMを使用することが多い(使用経験が少ないため) Clin Infect Dis. 71(4):e1-e36, 2020
#18.
18 リポソーム化アミカシン吸入療法(ALIS) くすりのはなしと薬剤感受性試験 2021年5月 薬価収載(2023年2月時点で42408.40円 高額療養費制度の利用!)
アミカシン注射薬の問題点(肺へ分布しにくい、腎毒性、耳毒性)を吸入液剤とすることで克服した
主要評価項目である投与6ヵ月目までの喀痰培養陰性化率は、ALIS+標準治療群で29.0%(65/224)、標準治療群で8.9%(10/112)と介入群で優位に改善していた
主な副作用は嗄声(40.6%)、気管支痙攣(21.5%)、過敏性肺臓炎(2.7%)、耳鳴り(8.1%)など
専用のネブライザであるラミラ®️ネブライザシステムを使用(毎日分解洗浄・消毒が必要+週に1度超音波洗浄器での洗浄)
いくつか障壁はあるものの、「もう手がなかった」患者さんの選択肢が一つ増えた AJRCCM. 198(12):1559-1569, 2018 インスメッド合同会社
https://arikayce.jp/about/indication/
#19.
19 リポソーム化アミカシン吸入療法(ALIS) くすりのはなしと薬剤感受性試験 嗄声・発声障害は比較的よくみられる有害事象
吸入後のうがい、トローチの他、吸入時間の変更(夜に吸入する・朝食前に吸入する)ことも有効である→喘息で吸入ステロイドの有害事象を軽減するのと同じ考え方 インスメッド合同会社
https://arikayce.jp/about/indication/ Int J Tuberc Lung Dis. 27(11):872-873,2023 有害事象の頻度・程度によっては、一時的に投与間隔を延長(2日に1回など)することも検討してもよいが、治療中に AMK耐性を生じるケースもあるので注意
AMK耐性が生じないか、定期的な培養検査と感受性検査が必要 Ann Am Thorac Soc.21(3):526-529,2024
#20.
20 MABSの治療に使用される主な薬剤と有害事象・注意点 有害事象) 胃腸症状、味覚異常、CYP3A4阻害、QT延長
注意) 単剤使用による薬剤耐性 CAM
クラリスロマイシン くすりのはなしと薬剤感受性試験 有害事象) βラクタム系に共通なもの(アレルギー、下痢、肝障害)
注意) 投与日数に上限あり 有害事象) 皮膚の色調変化(魚鱗癬)、QT延長
注意) 原則として初期から投与する(定常状態に達するまで144日*) 有害事象) 聴力障害、過敏症状
注意) TDMを実施する AMKアミカシン 有害事象) 胃腸症状、味覚異常、QT延長
注意) 単剤使用による薬剤耐性 AZM
アジスロマイシン IPM/CSイミペネム/シラスタチン CFZ
クロファジミン *Antimicrob Agents Chemother. 66(8):e0044122, 2022
#21.
21 標準治療 くすりのはなしと薬剤感受性試験 成人肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解−2023年改訂. 結核, 2023 マクロライド
感受性 マクロライド
耐性 MABS IPM/CS(最大90日)
AMK 15mg/kg
CAM or AZM
CFZ 100mg/日 M. kansasii CAM 800mg
EB 10-15mg/kg(最大750mg)
RFP 10mg/kg(最大600mg) 3剤以上、連日点滴 4w 4剤以上、連日点滴 4w〜 2剤以上 2剤以上 AMK(週3回~最大6ヶ月)
CAM or AZM
CFZ IPM/CS(最大90日)
AMK 15mg/kg
(CAM or AZM)
CFZ 100mg/日 AMK(週3回~最大6ヶ月)
CAM or AZM
CFZ 保険未承認
TGC
LZD
STFX 保険未承認
TGC
LZD
STFX 保険未承認
LZD
STFX 保険未承認
LZD
STFX
#22.
22 薬剤感受性検査 ブロスミックRGM ®️CAMの誘導耐性を確認(14日) ブロスミックSGM ®️
(従来のブロスミックNTM ®️から徐々に置換)
MACでは主にCAMとAMKの感受性を確認 迅速発育菌
(RGM)
ex. MABS 遅発育菌
ex. MAC くすりのはなしと薬剤感受性試験 菌名が判明しても、最適な治療薬は決まらない
MICを測定して、薬剤の効果を推定する必要がある 問題点
1)感受性結果の解釈(EB耐性だからEB使用しない)
2)間違ったプレートが選択されている(結核用のプレートの誤用)
#23.
23 いつまで治療するべき? 菌陰性化から最低1年間 ・治療後再燃/再感染の問題
・18ヶ月程度は治療を行うべきかもしれない
・個々の症例で判断 IDSA/ATS
ガイドライン 実際 くすりのはなしと薬剤感受性試験 Daley CL, et al. Clin Infect Dis. 71(4):e1-e36, 2020 Furuuchi K, et al. Chest.157:1442-1445, 2020
Kim J-Y, et al. Clin Infect Dis. 77(1):120-126, 2023
#24.
24 支持療法 くすりのはなしと薬剤感受性試験〜おまけ〜 対症療法 副作用
マネジメント 運動・栄養療法
#25.
25 支持療法 くすりのはなしと薬剤感受性試験〜おまけ〜 対症療法 痰去痰薬抗菌薬治療の適応は乏しいが、気管支拡張症に準じた少量マクロライド療法が行われることがある (※ただし、安易なCAMの使用は将来的に治療が必要となった場合に薬剤耐性で治療困難となる可能性があるためエリスロマイシンを推奨)
血痰トラネキサム酸 大量喀血時には気管支動脈塞栓術(BAE)
咳デキストロメトルファンリン酸コデイン
#26.
26 少しだけ脱線〜漢方薬〜 くすりのはなしと薬剤感受性試験〜おまけ〜 肺NTM症 肺気虚
疲れやすい、ボソボソ喋る、水っぽい痰 補中益気湯 人参養栄湯 脾気虚
胃もたれ、下痢、手足がだるい、白苔べったり 六君子湯 真武湯 既存治療でうまくいかない、次の一手として 肺陰虚
空咳、口が乾く、血痰 麦門冬湯 滋陰降火湯
#27.
27 支持療法 くすりのはなしと薬剤感受性試験〜おまけ〜 副作用
マネジメント 薬物アレルギーEBやRFPで多い代替薬を用いるか、減感作療法を試す
EB視神経障害前述の通り機序不明だが、EBによる亜鉛キレートが関連している可能性がある低亜鉛血症を合併している場合には亜鉛補充を行う
味覚障害背景に低栄養、ビタミンや微量元素欠乏がある場合にはビタミンや亜鉛の補充を試みることも
#28.
28 支持療法 くすりのはなしと薬剤感受性試験〜おまけ〜 運動
栄養療法 慢性呼吸器疾患患者は疾患進行に伴う身体活動の低下、体力の低下、息切れの増加という悪循環を示し、その結果、さらに活動性が低下していくまたこうした結果、社会活動への参加が減り、社会的孤立やうつ病をきたす可能性もある
肺NTM症においても、しばしばはるいそう、サルコペニアを合併する
これらに対する適切なエビデンスのある介入方法はないが、基本的には他の慢性呼吸器疾患と同様の対応が求められる
J Thorac Dis. 14(9): 3575–3597, 2022 呼吸リハビリテーション(有酸素運動、レジスタンストレーニング、etc)
低栄養状態への介入、栄養指導
#29.
29 小括 その2 治療(抗菌薬治療、支持療法)の問題点 治療は多剤併用療法が基本
EBの副作用マネジメントが重要(投与量・眼科受診)
最近はAZMファーストの流れ
2剤vs.3剤はこれから決着 軽症例なら2剤治療も
薬剤耐性が問題 適切な感受性検査の選択と解釈
治療期間は個々の症例で判断
#30.
30 1 2 3 いつ、誰に治療を行うべきか くすりのはなしと薬剤感受性試験 難治例への対応 INDEX
#31.
31 標準治療が困難なとき 難治例への対応 EBは副作用発現頻度が最も多い
しかし、EBを含まないマクロライドレジメンやマクロライド単剤療法はマクロライド耐性を生む BMC Infect Dis.22(1):580, 2022 J Infect Dis. 176(5):1225-32,1997
Am J Respir Crit Care Med.174(8):928-34, 2006
Ann Am Thorac Soc.13:1904-1911,2016 積極的な治療が困難と考えられるケースでは少量エリスロマイシン投与を検討する(将来的に治療を行うことも想定し、CAM/AZMは使用しない)
どうしても副作用のためEB等標準治療が困難である場合には、専門家への相談を考慮すべき(減感作やAMKなど) 絶対にマクロライドはEBと併用!
#32.
32 マクロライド耐性の場合 難治例への対応 基本的に治療は難しくなる EB、RFPにAMKを併用など
少量EMを併用することも
AMKが使用しにくいケースなどで、フルオロキノロンを選ぶこともある→ただし、フルオロキノロンの併用は予後を改善しない可能性 Ann Am Thorac Soc.13:1904-1911,2016 アミノグリコシドの使用、手術療法など集学的な治療が奏効する可能性があるため、マクロライド耐性例は全例専門家へ相談することが望ましい
#33.
33 予期しない病勢進行で考えること
まずは胸部CT、培養検査(一般・抗酸菌) 難治例への対応 症状増悪
画像所見の悪化 細菌・ウイルス感染の合併 NTM症の悪化 アスペルギルス症
の合併 一般菌培養 抗酸菌培養
再検 培養
アスペルギルス抗体 実は腫瘍ということも... 薬剤耐性やアスペルギルス合併例は専門家に相談することが望ましい
#34.
34 一般菌の定着・増悪 難治例への対応 緑膿菌などが定着する症例があり、呼吸器症状が増悪する原因となり得る1番:黄色ブドウ球菌 2番:緑膿菌 BMJ Open Respir Res. 1(1):e000050,2014 おそらく2つのパターン
・気管支拡張症にNTMが感染した・NTM治療中・後に気管支拡張症の要素が大きくなった
診断時に一般菌培養陽性:標準治療を開始する可能性が低く、気管支拡張症の増悪を発症する可能性が高い Respir Med. :219:107417,2023 こうした症例では気管支拡張症としての治療が優先されうる
(NTMはおとなしいことも多い)
#35.
35 実にやっかいなアスペルギルス 難治例への対応 アレルギー性肺アスペルギルス症(ABPA)や慢性肺アスペルギルス症(CPA)を合併
アスペルギルス抗体陽性肺NTM症患者の死亡率は高い
空洞を有する症例以上に予後不良(右図)
最大の問題はマクロライド(CAM)とアゾール系抗真菌薬(VRCZ, ITCZ, PSCZ, ISCZ)が併用禁忌であること(CYP3A4阻害)通常はアスペルギルスを先行して治療する Respir Med. 166:105955, 2020 Intern Med.0836-22, 2023 doi: 10.2169/internalmedicine ・・・・
#36.
36 小括 その3 難治例への対応 病勢進行時には1)画像検査2)一般菌(真菌含む)、抗酸菌培養、薬剤感受性試験
マクロライド耐性、アスペルギルス合併例は治療選択が難しいため、基本的に専門家へ
#37.
37 最も大事なことは、
難治化し治療が長期化する前に
適切な治療を行うこと 信頼できるお近くの専門家をみつけることが
一番大事かもしれません 最後に・・・