テキスト全文
敗血症の定義と診断基準の概要
#3. 世界では
3秒に1人が
敗血症で命を落とす
世界敗血症同盟(GSA:Global Sepsis Alliance)
#4. 敗血症での死亡 ●毎年3100万人が罹患
特に高所得国での罹患率が上昇
Crit Care 2015; 19:21
●死亡率
敗血症 25-30%
敗血症性ショック 40-50%
Lancet Respir Med 2014; 2
#5. 目次 ①ER編
1.敗血症の定義と診断
2.敗血症の治療総論
3.敗血症治療のピットフォール
②ICU編
1.ショックの認識と生理学
2.治療の各論
③敗血症×α おまけ編
Sepsis-1からSepsis-3までの進化
#6. ①ER編
1.敗血症の定義と診断
2.敗血症の治療総論
3.敗血症治療のピットフォール
②ICU編
1.ショックの認識と生理学
2.治療の各論
③敗血症×α おまけ編 目次
#7. 敗血症の定義 ●敗血症≒菌血症の時代を経て
定義は改訂されてきた
1991年 Sepsis-1
2001年 Sepsis-2
2016年 Sepsis-3
202年 Sepsis-3を踏襲(New!)
#8. Sepsis-1 ●1991年 米国の専門家達により提案
「感染による全身性炎症反応症候群 (SIRS)」
※SIRS:上記状態のうち2つ以上を満たした場合 感染症が疑われ、SIRSの基準を満たすもの=敗血症
その中で臓器障害を伴うもの=重症敗血症
#9. Sepsis-1に対する疑問や問題点 ●簡便で広く定着したが…
●SIRSは敗血症に対して感度は高い
一方で特異度が低い…
●入院患者の約半数は入院中一度は
SIRSの2項目陽性に
Am J Respir Crit Care Med. 2015 ;192(8)
#10. SIRS基準は敗血症患者の8人に1人を見逃している NEJM 2015 March 17 online first
#11. Sepsis-2 ●2001年 欧州・米国の専門家達より提言
「感染に起因する全身症状を伴った症候群」
【診断基準】
●24項目のチェックリスト
※項目数規定なし
【診断】
・敗血症
・重症敗血症
・敗血症性ショック
の3種類
#12. Sepsis-2に対する疑問や問題点 ●とにかくめんどくさい…
・何項目以上で診断というカットオフが存在しない
・そのうえ診断精度も大して向上しなかった
→簡便で客観的なSepsis-1が使われ続けた
#13. Sepsis-3
「感染に対する生体反応が調節不能な状態となり,
重篤な臓器障害が引き起こされる状態」
引用)日本版敗血症診療ガイドライン 2024
【診断基準】
感染症もしくは
感染症の疑いあり
+
SOFAスコア
2点以上の急上昇
#14. Sepsis-3
「感染に対する生体反応が調節不能な状態となり,
重篤な臓器障害が引き起こされる状態」
引用)日本版敗血症診療ガイドライン 2024
【診断基準】
感染症もしくは
感染症の疑いあり
+
SOFAスコア
2点以上の急上昇
日本版敗血症診療ガイドライン2024でも
敗血症の定義はSepsis-3を踏襲している
quick SOFAの重要性と使用法
#15. Sepsis-3に対する疑問や問題点 ●やっぱりめんどくさい…
●一般病棟やERで早期発見する方法ってない…?
☞quick SOFAが提唱された
#16. quick SOFA
日本版敗血症診療ガイドライン2020 ●意識状態の変化
●RR 22 /min 以上
●sBP 100 mmHg以下
2つ満たせば敗血症疑い
#17. 敗血症○✕クイズ
q-SOFA<2なら感染症ではない?
#19. ●意識状態の変化
●RR 22 /min 以上
●sBP 100 mmHg以下
2つ満たせば敗血症疑い quick SOFA
日本版敗血症診療ガイドライン2020 診断基準ではない
あくまでスクリーニング
#20. quick SOFA単独使用の推奨度↓
世界敗血症診療ガイドライン(SSCG2021) 敗血症/敗血症性ショックのScreening
qSOFAを単独で使用しないことを推奨
(Strong recommendation, moderate-quality evidence)
※ SIRS, NEWS, MEWSなどと比較
#21. 日本版敗血症診療ガイドライン 2024
におけるquickSOFAの記載 qSOFAは感度が低い可能性が指摘されており
SIRSやNEWSといったスコアを含めた知見を
整理することは臨床において有用である
#22. ERにおけるquick SOFA
敗血症診断の感度は32%との報告も
Scand J Trauma Resusc Emerg Med. 2017;25:56
SOFAはそもそも臓器障害を評価するツール
quick SOFAは臓器障害をスクリーニング quick SOFAの立ち位置を再確認 感染症かどうかを判断するツールではない!
感染症を疑う際の問診ポイント
#23. 敗血症診断の流れ
日本版敗血症診療ガイドライン2020
#24. いつ感染を疑う? 発熱? CRP上昇? 感染を早期に疑うのが大切!でも…
#25. 38.3℃以上
※根拠なし
Guidelines for evaluation of new fever in critically ill adult patients:
2008 update from the American College of Critical Care Medicine
and the Infectious Diseases Society of America 37.8℃以上(単回)
37.2℃以上(複数回)
1.1℃以上↑(ベースラインから)
※口腔温
Clinical practice guideline for the evaluation of fever
and infection in older adult residents of long-term care facilities 発熱の定義は様々…
#26. 38.3℃以上
※根拠なし
Guidelines for evaluation of new fever in critically ill adult patients:
2008 update from the American College of Critical Care Medicine
and the Infectious Diseases Society of America 37.8℃以上(単回)
37.2℃以上(複数回)
1.1℃以上↑(ベースラインから)
※口腔温
Clinical practice guideline for the evaluation of fever
and infection in older adult residents of long-term care facilities 高齢者の1/3は発熱が目立たない
Emerg Med Clin North Am. 2016 34(3)
#27. 高齢者の感染症は発熱がないことが多い 「老いた、ボケたは感染症!」
お:嘔吐
感染症では化学受容体が刺激される
い:息切れ
q-SOFAの頻呼吸に注目
た:立てない、倒れやすい、だるい
全身倦怠感は重要なサイン
ボケた:意識変容
中枢性疾患や低血糖、慢性硬膜下血腫との鑑別
引用)Dr.林の高齢者救急・急変お助け本 ─高齢者が好きになる 臓器非特異的な症状の急性経過(数時間~数日)
➡発熱がなくても感染症を鑑別に(低体温も)
引用)レジデントノート 羊土社 Vol.23 No.13 2021
#28. CRPやPCTって診断に有用じゃないの…?
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ1-6 CRP、PCT、P^SEP、IL-6は単独で高い診断精度は示されていない…
バイオマーカー単独による敗血症診断は一般的に困難
#29. 高齢者の感染症を見抜くには… 悪寒戦慄と経口摂取量も大事
菌血症の可能性
悪寒戦慄の存在>40℃以上の発熱
経口摂取が8割以上あれば否定的 J Hosp Med. 2017:12
#30. 感染症を疑う際の問診ポイント ①前医での抗生剤投与・処方の有無
②直近の入院歴
③敗血症での入院歴
再度罹患しやすく死亡率も高い(免疫抑制状態の遷延…)
【再入院のリスク】
・長期間の抗生剤投与
・経静脈栄養・退院時の貧血
Crit Care Med.2016;20:93
④増悪因子(DM,LC,HT,ステロイド,癌)
⑤流行の感染症(ワクチン接種歴含む)
敗血症診断の流れと初期治療
#31. 感染源の検索 Commonな部位
機能/構造異常のある部位
#32. 日本のICU入院 敗血症患者の内訳 引用) Crit Care ,22: 322,2018
画像引用)レジデントノート 羊土社 Vol.23 No.13 2021 肺炎・腹腔内感染症
尿路感染症・軟部組織感染症で9割を占める
#33. 機能/構造異常をチェック ●あるはずのものがない
・嚥下機能・排尿機能・⽪膚バリア
・脾臓摘出後
●ないはずのものがある
・結⽯・腫瘍・創傷
・カテーテル等の⼈⼯物
#34. 決め打ちしすぎない Top
to
bottom
アプローチで診察を
#35. 参考 Top to bottomアプローチの例 画像引用)レジデントノート 羊土社 Vol.23 No.13 2021
#36. 身体診察のPit Fall ●見えないカバーされている部分
●ドレッシングされている創部やカテ
●パルスオキシメーターで隠れている指
(感染性心内膜炎)
●痰やドレーンの廃液を見ない
●時間節約のためにシステマティックな身体診察を行わない
●圧がかかる部位
(後頭部、踵、仙骨部仙骨部、臀部)を見ない
●眼底検査や直腸骨盤診察をしない
(患者の尊厳に常に配慮しながら)
#37. 感染源検索と画像検査
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ1-7 ●画像検査の第一選択はエコー検査が多い
●経胸壁に比べ経食道エコーの方がIEの診断制度↑
●壊死性軟部感染症は外科的切開が最重要!
#38. まとめ 感染と臓器障害を疑ったら
日本版敗血症診療ガイドライン 2024 迅速評価と初期治療バンドル(後述)を行う
敗血症性ショックのメカニズムと治療
#39. 目次 ①ER編
1.敗血症の定義と診断基準
2.敗血症の治療総論
3.敗血症治療のピットフォール
②ICU編
1.ショックの認識と生理学
2.治療の各論
③敗血症×α おまけ編
#40. 敗血症は
内科的エマージェンシー
なぜ治療を急ぐのか
#41. 初回抗菌薬投与が1時間遅れる毎に
死亡率が増加(平均7.6%) Crip Care Med. 2006 ;34(6) 適切な抗菌薬投与と死亡率 適切な抗菌薬投与まで
時間と死亡のリスク
#42. 初期治療バンドル
日本版敗血症診療ガイドライン 2024 敗血症を疑った際には,直ちに開始
#43. 敗血症性ショックのメカニズムは複合的 画像引用)レジデントノート 羊土社 Vol.23 No.13 2021 心原性 血液分布異常性 循環血液量減少性
#44. 敗血症性ショック まずは輸液負荷 画像引用)レジデントノート 羊土社 Vol.23 No.13 2021 心原性 血液分布異常性 循環血液量減少性 輸液負荷
#45. 初期輸液速度と輸液量
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ3-5 ●循環血漿量の適正化を目標
●晶質液30ml/kg以上を3時間以内
●Lac値・輸液反応性を見ながら いつからをNAdを併用するか明確な根拠はないが…
過剰輸液の害を考慮しつつ遅延なく!
#46. 好気性・嫌気性代謝の生化学 嫌気性代謝=Lac↑
Lac↑は酸素需要供給バランスの破綻を示唆する可能性 スライド画像)広島大学病院 演者作成
抗生剤投与のタイミングと選択
#47. 循環の指標としての乳酸値 ●乳酸値をモニターしたほうが院内死亡率が低い Am J Respir Crit Care Med 2010;182 外科的(ST) 経皮的(PT) 乳酸値が下がらない
≒ショックの遷延
#48. 乳酸値モニタリングについて
世界敗血症診療ガイドライン(SSCG2021) ●成人敗血症ではLacをモニタリング
(Weak recommendation, low-quality evidence)
Lacは敗血症の最終診断に関与
●Lac高値 を下げるように治療介入
(Weak recommendation, low-quality evidence)
#49. 敗血症における血液培養
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ1-4 ●抗生剤投与前に2セット以上提出
1セットあたり20-30mlを採取
血液培養の陽性率:5-13% コンタミ率:20-56%
●セットの数を増やせば感度は上昇
1セット:約80% 2セット:約89% 3セット:約98%との報告あり
●基本は2セット提出(IEのみ3セット)
引用:日本版敗血症診療ガイドライン2020
#50. 感染が疑われる部位から培養検体を採取
●喀痰培養(肺炎の補助診断に)
吸引痰:菌数は105CFU/ml以上で感度76%・特異度68%
肺炎によるARDS・患者の免疫力低下している時BAL検体提出検討
●尿培養(UTIの補助診断に)
再発性や難治性の場合は抗菌薬を2-3日休薬して提出を検討
●髄液培養(髄膜炎の補助診断に)
時間がかかる場合は抗菌薬投与優先
抗菌薬投与前の陽性率70-80% 投与後50%以下 敗血症における各種培養検体について
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ1-5
#51. 抗生剤加療は1時間以内…?
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ2- 2 敗血症・敗血症性ショックと認識した後
抗菌薬は可及的早期に開始するが
必ずしも1時間以内という目標を
用いないことを弱く推奨する
●全死亡に関する効果推定値は低い
●薬剤が不要な患者に十分な評価がなされる前に
投与が行われる可能性がある
#52. 急いで抗生剤加療をするのが強調 一方、世界では…
世界敗血症診療ガイドライン(SSCG2021)
#53. 極論ですが…ERでの抗生剤投与は
これだけは押さえておく!! 引用:内科救急のロジック
#54. 経験的抗菌薬の選択
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ2-3 疑わしい感染巣ごとに患者背景や各種検査所見での
原因微生物の推定臓器移行性と耐性菌の可能性を
考慮し選択する
▶J-SSCG2024のスマホアプリが有用
輸液管理と血圧維持の重要性
#55. 経験的抗菌薬選択にGram染色は有用?
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ2-1 経験的抗菌薬を選択するうえで
Gram染色検査を利用することを弱く推奨
#56. 各感染症の経験的治療について
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ2-3 疑わしい感染巣ごとに、患者背景、疫学や迅速微生物診断法に基づいて原因微生物を推定し、臓器移行性と耐性菌の可能性を考慮して選択
●個別性高い…CQ2-3の表が参考に
特定できたら標的治療!▶Table2-3-2
特定できたらde-escalation(CQ2-9)
#57. 経験的治療+αの加療
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ2-4,5 ●カルバペネム系抗菌薬
ESBL産生菌・耐性緑膿菌 /アシネトバクターが推定されるとき
●抗MRSA抗菌薬
保菌リスク(DM・透析・COPD・心不全などの医療暴露)
感染巣、患者背景などで考慮
#58. 高リスクの時はMRSAのカバーが推奨!
世界敗血症診療ガイドライン(SSCG2021) 【MRSAリスク】
・MRSA感染既往・最近の入院歴
・コロニー形成(鼻腔培養など)の既往
・最近の抗菌薬静注使用歴
・再発性皮膚感染症/慢性創傷
・デバイス留置中・血液透析中
#59. βラクタム系は持続投与…?
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ2-7 持続投与もしくは投与時間の延長
を弱く推奨
●17つのRCTのメタ解析で死亡率減少
●初回ボーラス投与後維持投与が
SSCG2021でも推奨
#60. グリコペプチド系は持続投与…?
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ2-7
持続投与もしくは投与時間の延長
を行わないことを弱く推奨
●PK/PDの観点からは有用…?しかし
●3つのRCTのメタ解析で死亡率増加
副作用は減少
#61. TDMを活用した用量調整は…?
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ2-7 活用を弱く推奨
●Therapeutic Drug Monitoring
(治療薬モニタリング)の略
●血中薬物濃度を測定し、そのデータを基に
薬剤の投与量を適正化
●薬物の有効性を最大化し、副作用を最小限に
抑えるのが目的
#62. 敗血症○✕クイズ
1時間バンドルを達成すればOK?
ショックの診断基準と治療介入
#64. 敗血症バンドルの図解 引用:Medicina Vol.58
No.4 2021増刊号
#65. 敗血症バンドルの図解 引用:Medicina Vol.58
No.4 2021増刊号 この中にソースコントロールは
含まれていない!
#66. 感染源を同定後、可能な限り速やかにソースコントロールを実施
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ1-8 外科的(ST) 経皮的(PT) デバイス感染ならデバイスを抜く
膿瘍ができてるならドレナージする
創部感染なら洗浄する
※感染性膵壊死は待機的介入が◎ CQ1-8参照 ●流れが詰まる・よどむ
閉塞性腎盂腎炎・閉塞性化膿性胆管炎/胆嚢炎
●菌の供給源がある
カテーテル感染症・感染性⼼内膜炎・消化管穿孔
●血流がない(壊死や膿瘍)
壊死性筋膜炎・深頸部膿瘍・膿胸・肺膿瘍
#67. 目次 ①ER編
1.敗血症の定義と診断基準
2.敗血症の診断・治療総論
3.敗血症治療のピットフォール
②ICU編
1.ショックの治療総論
2.治療の各論
③敗血症×α おまけ編
#69. 敗血症性ショックの診断基準
日本版敗血症診療ガイドライン2024 敗血症の診断基準を満たしたうえで
「十分な輸液負荷にもかかわらず、
平均血圧を65mmHg以上に保つ
ために循環作動薬を必要とし、
かつ血中乳酸値が2mmol/Lを
超えるもの」
…???
#70. ショック≠血圧低値 バイタルサインのみでショックを判断しない スライド画像)広島大学病院 演者作成
敗血症における循環指標の評価
#71. ショックは3つの窓で見抜く! スライド画像)広島大学病院 演者作成
#72. 循環の指標としてのCRTは有用
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ3-1 ●CRT(capillary refilling time)
⇒毛細血管際充満時間
●乳酸値よりも早期の指標として有用!
●CRT延長は小児では脱水や重症感染症の予測に有用
●ICU入室患者群で血圧安定後のCRT延長(4.5秒以上)は
臓器障害のリスクとなる
Packard A ,et al Capillary refill time :Is it still useful clinical sign?
Anesth Analg, 113 :120-123 ,2011 Lima A ,et al :The prognostic value of the subjective assessment of peripheral perfusion in critically ill patients. Crit Care Med, 37:934-938, 2009
#73. 敗血症とCRTについて 年齢・体温・気温の影響を受けるため、
再現性が低いことを忘れずに… ●敗血症性ショックでの初期蘇生終了後6時間後の
CRT延長は14日後の死亡率の強い予測因子となる
●敗血症性ショックにおける蘇生中の正常化までの時間は
CRTで2時間 / 乳酸値で6時間である Ait-Oufella H, et al : Capillary refill time exploration during septic shock.
Intensive Care Med, 40:958-964, 2014 Hernandez G, et al : Evolution of peripheral vs metabolic perfusion parameters during septic shock resuscitation.
A clinical-physiologic study. J Crit Care, 27: 283-288, 2012
#74. 循環の指標としてのmottling(網状皮斑) ●mottling(網状皮斑)は敗血症や重症患者にみられ
膝や肘から始まり時に耳や指にも広がる 外科的(ST) 経皮的(PT) レジデントノート vol.20 No8 (増刊) 2018年
Ait-Oufella H ,et al :Motting score predicts survival in septic shock. Intensive Care Med, 37 :801-807, 2011
#75. 【ショックの治療介入】
①臓器灌流を維持(MAP 65mmHg以上)
②酸素供給量を増やす ③酸素需要量を減らす ショックとは酸素需給バランスの破綻 スライド画像)広島大学病院 演者作成
#76. 【ショックの治療介入】
①臓器灌流を維持(MAP 65mmHg以上)
②酸素供給量を増やす ③酸素需要量を減らす まずは血圧を維持 スライド画像)広島大学病院 演者作成
#77. 血圧がなければ末梢へ酸素を届けられない
臓器灌流を規定する血圧=MAP(平均動脈圧) 臓器灌流 意識してますか…? スライド画像)広島大学病院 演者作成
#78. 平均血圧 心拍出量 血管抵抗 1回心拍出量×心拍数
(前負荷・心収縮力・後負荷) まずは平均血圧(MAP)を維持 スライド画像)広島大学病院 演者作成
輸液負荷と昇圧薬の使用法
#79. 心拍出量↑ 血管抵抗 1回心拍出量↑×心拍数
(前負荷↑・心収縮力・後負荷) 輸液の目的は平均血圧の維持 輸液負荷 スライド画像)広島大学病院 演者作成
#80. 敗血症性ショック まずは輸液負荷 画像引用)高場章宏 編 レジデントノート 羊土社 Vol.23 No.13 2021 心原性 血液分布異常性 循環血液量減少性 輸液負荷
#81. 初期輸液速度と輸液量
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ3-5 ●循環血漿量の適正化を目標
●晶質液30ml/kg以上を3時間以内
●Lac値・輸液反応性を見ながら
#82. 初期輸液蘇生に不応の敗血症はどこで管理?
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ1-9 集中治療が行える場所で管理する!
#83. 輸液
世界敗血症診療ガイドライン(SSCG2021) MAP65mmHg以上 動的指標を用いて(SSCG2021)
Bentzer P ,et al :Will This Hemodynamically Unstable Patient Respond a Bolus of Intravenous Fluids? JAMA, 316 :1298-1309, 2016
#84. 輸液
輸液反応性と診断特性に注目 PLR(半座位⇒頭部フラット+下肢45°挙上)が有用
自己輸血(約300ml)に相当 CO上昇=輸液反応性あり
#85. 十分な輸液負荷は大切だが… 大量輸液負荷
に伴う
静水圧性肺水腫
#86. 敗血症に対する昇圧薬
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ3-7 第一選択:ノルアドレナリン
第二選択:バゾプレシン ドパミン?
ノルアドレナリンのほうが28日死亡率を有意に
改善させ、合併症(特に不整脈)を減少させた。
敗血症に対する治療戦略のまとめ
#87. 初期輸液速度と輸液量
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ3-5 ●循環血漿量の適正化を目標
●晶質液30ml/kg以上を3時間以内
●Lac値・輸液反応性を見ながら いつからをNAdを併用するか明確な根拠はないが…
輸液負荷の害を考慮しつつ遅延なく!
#88. 輸液負荷に加え血管収縮薬の併用! 画像引用)高場章宏 編 レジデントノート 羊土社 Vol.23 No.13 2021 心原性 血液分布異常性 循環血液量減少性 輸液負荷 血管収縮薬
#89. ノルアドレナリンは末梢静脈路から早期投与OK
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ3-6 ●末梢からのカテコラミン投与 比較的安全
0.1-0.2γ程度までで1-2日であれば許容
Ballieu P, et al: J Intensive Care Med; 36: 101, 2021
●なるべく肘窩の近くの肘静脈など
大きな末梢静脈からの投与を
Evans Laura, et al: Critical Care Medicine: Vol.49 Issue 11 1063-143, 2021
#90. 具体的なアクションプランの一例 画像引用)三谷雄己, みんなの救命救急科 中外医学社出版
#92. 目次 ①ER編
1.敗血症の定義と診断基準
2.敗血症の診断・治療総論
3.敗血症治療のピットフォール
②ICU編
1.ショックの認識と生理学
2.治療の各論
③敗血症×α おまけ編
#93. 初期輸液速度と輸液量
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ3-5 ●循環血漿量の適正化を目標
●晶質液30ml/kg以上を3時間以内
●Lac値・輸液反応性を見ながら
#94. 大量輸液負荷➡うっ血性肺水腫 輸液負荷をすベきとはいうものの… スライド画像)広島大学病院 演者作成 ICU敗血症性ショック患者(1L負荷後)
輸液制限(中央値1798ml)vs標準輸液(中央値3811ml)
大きな転機に差なし
(※secondary outcome 標準輸液群で腎障害/虚血合併症が多い傾向)
➡輸液制限で死亡率は増加しない
Meyhoff TS, et al. N Engl J Med. 2022 30;386
輸液反応性の評価と管理
#95. 心拍出量 1回心拍出量 ×心拍数 心拍出量を増やすには…? 前負荷・心収縮力・後負荷 輸液負荷 強心薬 輸液反応性をチェック スライド画像)広島大学病院 演者作成
#96. MAP65mmHg以上 上限の規定なし(SSCG2016)
Bentzer P ,et al :Will This Hemodynamically Unstable Patient Respond a Bolus of Intravenous Fluids? JAMA, 316 :1298-1309, 2016 輸液するかどうか 輸液反応性を参考に
#97. ICUでの輸液戦略
SVV・PPVとは? MAP65mmHg以上 上限の規定なし(SSCG2016)
引用)ブラッシュアップ 敗血症
#98. ICUでの輸液戦略
SVV・PPVとは? MAP65mmHg以上 上限の規定なし(SSCG2016)
引用)Michard F.Anesthesiology. 2005:103 419-28 , ブラッシュアップ 敗血症
#99. 引用)Bentzer P ,et al :JAMA, 316 :1298-1309, 2016 輸液するかどうか 輸液反応性を参考に
#100. 輸液反応性をPLRで見てみよう… 画像引用)高場章宏 編 レジデントノート 羊土社 Vol.23 No.13 2021 意外と難しい…
#101. そもそも輸液反応性があれば輸液負荷すべき…? スライド画像)広島大学病院 演者作成
#102. そもそも輸液反応性があれば輸液負荷すべき…? スライド画像)広島大学病院 演者作成
DIC診断と治療の原則
#103. 輸液反応性≠輸液負荷 真に輸液が必要かどうかは
循環不全の有無で判断!
①循環不全を疑う所見
⇩
②輸液反応性の評価
⇩
③輸液負荷 スライド画像)広島大学病院 演者作成
#104. 低用量ステロイド
世界敗血症診療ガイドライン(SSCG2021)
Hydrocortisone
50mg×4回/日 or 200mg/日持続投与 ●ショックの離脱は早まるが、28日死亡率は改善しない
●ショックに陥ってから6時間以内の投与開始で
28日死亡率が改善するかもしれない
●ショックではない敗血症患者への投与では、
ショックの発生率や死亡率を改善しなかった Early initiation of low-dose corticosteroid therapy in the management of septic shock.
Crit Care 2012:16:R3
#105. 敗血症患者のHRコントロールは…?
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ3-10 ●初期蘇生輸液でコントロール困難な
頻脈に対して短時間作用型
β1受容体遮断薬の投与を弱く推奨
HR95以上の患者群に介入し、従来治療群に対し
死亡減少・ICU滞在日数減少を有位に認めた
※徐脈・徐脈性不整脈に注意
#106. PCTを指標とした治療終了は…?
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ2-11 敗血症に対する抗生剤治療において、PCTを指標とした治療終了を行う
ことを弱く推奨する
●転機を悪化させることなく抗菌薬投与日数を
短縮できないかという視点からの臨床疑問
●RCT16論文でのNMA
28日死亡率低下
抗菌薬投与日数短縮
#107. 注意!PCTによる抗生剤加療開始は…?
世界敗血症診療ガイドライン(SSCG2021)
抗菌薬開始の指標としてPCTを使用しない
(Weak recommendation, very low quality of evidence)
※メタアナリシスで長期死亡率・再入院率・非入院日数有意差なし
※バイオマーカー単独による敗血症診断は一般的に困難
(J-SSCG2024)
#108. 免疫グロブリン静注(IVIG)について
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ6-1 敗血症に対してIVIG投与を行わないことを弱く推奨
※劇症型溶血性レンサ球菌感染症のような特殊病態に応じた
適応判断を否定するものではない
#109. 血糖管理
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ6-3 目標:144-180mg/dL 2009年 NICE-SUGAR study
(集中治療領域の血糖管理における最大規模のRCT)
●血糖値≦180mg/dLで病院死亡率・感染症発生率 ↓
※144mg/dL以下を目標にすると、低血糖が増える
●測定方法 採血や血液ガスがベター
毛細管血を利用した簡易血糖測定は
測定誤差が大きく低血糖を見過ごすリスクあり
#110. 輸血考慮の基準 【RBC】
Hb7g/dL以下 or 活動性出血時
【FFP】
出血傾向 or 外科的処置時
+
INR≧2.0 or APTT≧(正常値)×2
【PC】
Plt≦1万/μL or 出血傾向+ Plt≦5万/μL
PMX-DXPの有用性と推奨
#111. 敗血症におけるDIC診断
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ5-1,2 DICと鑑別すべき疾患(TTP, HUS, HIT)は必ず除外
➡抗凝固による有害事象のリスク↑ 線溶抑制型>>線溶亢進型 急性期DIC診断基準
日本救急医学会
早期診断できるが特異度△ overt-DIC診断基準
国際血栓止血学会
診断のタイミング遅くなるが
より詳細に評価可能 煩雑 簡便
#112. 抗凝固による合併症との兼ね合いを考慮 ●DIC治療の原則は原疾患への治療介入
【敗血症DICに対する治療薬】
アンチトロンビン(CQ5-3):弱く推奨
トロンボモジュリン(CQ5-4):弱く推奨
タンパク分解酵素阻害薬(CQ15-6):行わないことを弱く推奨
#113. 期待されたビタミン療法… ビタミンC :1.5g 6時間ごと ×4日
ヒドロコルチゾン :50mg 6時間ごと ×7日
ビタミンB1 :200mg 12時間ごと ×4日 ●NFkB活性化の抑制
●炎症性サイトカインのdown-regulation
●血管内皮のtight junctionを増加 ●ビタミンC→シュウ酸
(腎負荷)への代謝を抑制 C B
#114.
大量ビタミンC療法は行わないことを弱く推奨
ICU昇圧剤を要する敗血症患者
ビタミンC静脈投与群>プラセボ群
28日後の死亡 or 臓器不全のリスク
Lamontagne F, et al. N Engl J Med. 2022 23;386(25) 敗血症における大量ビタミンC療法
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ6-2
#115. RRT(腎代替療法)の適応
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ4-1
#116. 血液浄化方法を選択する上での
評価項目 循環動態不安定な敗血症性ショックの場合CRRTが多い
#118. PMX-DXPの有用性を検証したstudy 第1弾 EUPHAS study (2009年)
第2弾 ABDO-MIX study (2015年)
第3弾 EUPHRATES study(2018年)
最新の敗血症診療ガイドラインの紹介
#119. PMX-DXPの有用性を検証したstudy 第1弾 EUPHAS study (2009年)
第2弾 ABDO-MIX study (2015年)
第3弾 EUPHRATES study(2018年) 350,000円 どの試験でも、28日死亡率に有意差なし
#120. 世界でのPMXの推奨は…?
世界敗血症診療ガイドライン(SSCG2021) polymyxin Bを使用した血液浄化を
行わないことを提案
(Weak recommendation; low quality of evidence)
#121. 敗血症における急性血液浄化
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ4-2~4 ●早期の腎代替療法は行わないことを弱く推奨
●間欠的or持続的はどちらでもOK
▶循環動態が不安定な場合は持続的に
●血液浄化量は国際的な標準値(20-25ml/kg/hr)
よりも増やさないことを強く推奨
#122. 発熱を伴う敗血症の解熱療法
日本版敗血症診療ガイドライン2024 CQ6-4 ●解熱療法(物理的、あるいは薬物的)
●死亡率やICU退室などの重要転帰は改善なし
●感染症合併症の発生率が増加する可能性は否定できない
●解熱のためのスタッフの仕事量増加やコスト増加 ●微生物に対する抵抗性が増す
(=好中球・MΦ・NK細胞の活性化細菌増殖の抑制) ●患者本人の不快感
●酸素消費の増大
→心肺機能へ負荷
●ミトコンドリアなどの
細胞機能障害が生じうる 害 利
#123. 目次 ①ER編
1.敗血症の定義と診断基準
2.敗血症の診断・治療総論
3.敗血症治療のピットフォール
②ICU編
1.ショックの認識と生理学
2.治療の各論
③敗血症×α おまけ編
#124. 便利なスマホアプリあります…!
「日本版敗血症診療ガイドライン2024 (J-SSCG2024)」アプリ版 iOS Android