テキスト全文
COVID-19の流行状況とデータ #1.
COVID-19ワクチン UPDATE2024年度秋冬シーズン 神戸市立医療センター中央市民病院 感染症科 黒田浩一 2024年10月作成 #2.
COVID-19の流行状況 2024年9月 厚労省によるCOVID-19の発生状況 オミクロン株と流行中の変異株 2024年度のCOVID-19ワクチン接種の概要 ワクチン接種の目的と効果 #13.
XBB.1.5対応1価ワクチンの効果 N Engl J Med. Published online May 29, 2024. doi:10.1056/NEJMc2402779 感染予防効果
:50%程度(3-4か月)
入院・死亡予防効果
:50-70%(5か月まで確認) インフルエンザワクチンとの比較とWHOの推奨 #14.
ワクチン株と流行株が一致するかどうかで効果が変わる
一致した場合の感染予防効果(症候性感染予防効果)は、40-60%
免疫の持続時間は、6か月程度(1シーズン)
肺炎などのインフルエンザ関連合併症を減らす(高齢者・施設入所者)
インフルエンザに関連した入院を減らす(高齢者・施設入所者)
COPD患者の急性増悪、冠動脈疾患のある患者の心血管イベントを減らす
若年成人の休職期間を短縮
COVID-19ワクチンとの違い:副反応少ない・コストが安い(補助なしでも3,000~5,000円) MMWR Recomm Rep 2016;65:1-54, NEJM 1995;333:889-893. Cochrane Database Syst Rev. 2018;2:CD001269
Cochrane Database Syst Rev. 2018;2:CD004876. N Engl J Med. 2017;377:534-43
Clin Infect Dis. 2019 May 17;68(11):1798-1806. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2019;68:135-9
Clin Infect Dis. 2019 Feb 2. doi: 10.1093/cid/ciz075. Cochrane Database Syst Rev. 2010:CD004876 インフルエンザワクチンとの比較 Fluワクチンの効果は
COVID-19ワクチンと
同程度である
一方で
コストは安い
副反応は少ない 2024年度秋冬シーズンのワクチン株 接種対象者と接種の意義 #20.
重度の基礎疾患のない若年(65歳未満)の医療従事者はどう考えればよい?
- 接種者個人に対する効果(感染予防効果を期待して接種する)
重症化リスクは極めて低い(0.1%未満)ため、重症化予防の観点からは意義が小さい
- 接種者の周囲(患者・同僚など)への間接的な効果
- 副反応(発熱、頭痛、悪寒、倦怠感、休務の必要性)
- コスト
を検討した上で、ひとりひとりが判断する(個別性が高いため全員に当てはまる正解はない)
※ 職員のワクチン接種者が多いほど、院内クラスター発生リスクは低下する
→ 院内感染対策の観点からは、接種が推奨される
※ 一部の病院では、職員に対するワクチン接種費用の一部~全額を負担予定である VI. 2024年度秋冬接種はどうなる?どうする? 新しいレプリコンワクチンの特性 #23. 臨床試験では、起源株対応ワクチンによる初回免疫・追加免疫、BA.5対応2価ワクチンよる追加免疫が評価され、臨床効果と免疫原性が確認されている
起源株対応の1価ワクチンの追加接種において、接種3か月後・6か月後の中和抗体価は、ファイザーワクチン(コミナティ®)の約2倍であった
JN.1対応1価ワクチンの免疫原性はマウスの実験で証明されている
副反応:ファイザーワクチンと同等と報告されている、ただし10万人に数名程度に発生する副反応についてのデータはまだ不十分である(心筋炎、ギラン・バレー症候群などの頻度は不明)
保存:冷凍 -20℃(長期間)、冷蔵2~8℃(1か月)
1バイアル:16人分...(適応は18歳以上) コスタイベ®(Meiji Seika)に関する情報 特定項目製品情概要(コスタイベ). https://www.meiji-seika-pharma.co.jp/medical/product/vaccine/kostaive/pdf/KO0001.pdf [最終アクセス 2024.10.9] レプリコンワクチンの臨床試験と安全性 #24.
初回綿系(2回接種):レプリコンワクチン(起源株) vs プラセボ
第3相試験では約16000名が対象となった(各群約8000名) ※心筋炎の報告なし レプリコンワクチンの初回接種のエビデンス Nat Commun. 2024;15(1):4081. doi:10.1038/s41467-024-47905-1 #25.
3回以上のmRNAワクチン接種歴のある者を対象として、ARCT-154またはBNT162b2
(いずれも起源株)を接種したところ、前者で有意に起源株・BA.5などに対する中和抗
体価が高く、かつ長期間
維持された レプリコンワクチンの追加接種のエビデンス Lancet Infect Dis. 2024
DOI: 10.1016/S1473-3099(24)00615-7 #26.
「レプリコンワクチンへの懸念(危険?)」を(特にSNS上で)表明する人が多いのは、レプリコンワクチンが、ウイルスの複製に関与する一部の遺伝要素を利用して、体内でRNAを増幅させることによって免疫応答を引き起こすワクチンで、「自己増殖型RNAワクチン」と呼ばれているためと思われる。
「自己増殖」という単語から、「体内で増殖して大きな問題が生じるのではないか」、「ヒトの遺伝子に悪影響を及ぼすのではないか」、「ウイルスを排泄するようになるのではないか(viral shedding, 「シェディング」=ウイルスに感染した人の体からウイルスが体外に排出される現象)」、などの懸念があるのではないかと思われる。 「レプリコンワクチンへの懸念」の背景 #27. レプリコンワクチンの細胞内メカニズム 適正使用ガイド(コスタイベ). https://www.meiji-seika-pharma.co.jp/medical/case/pdf/KO0020.pdf [最終アクセス 2024.10.9] 標的抗原であるスパイク蛋白(ウイルスの全ゲノムではない)をコードするRNAと、そのRNAを体内で増幅するための酵素(レプリカ―ゼ)をコードする遺伝子を組み込んだ構造をしている。
体内に入ったあと、短い期間(マウスの実験では14日以内)、スパイク蛋白をコードするRNAを、ヒトの細胞内器官を使用して複製する。
このワクチンの利点としては、少量のRNAを体内に投与するだけで、従来のワクチンと同等かそれ以上の免疫原性が期待される点が挙げられる。 #28.
細胞内メカニズムからわかるように、このワクチンを投与しても、スパイク蛋白をコードするRNAが体内で自己複製(増幅)されるだけであるため...
1. ワクチンRNAを鋳型としてDNAが作られることはない
2. ワクチンRNAがヒトのDNAに組み込まれることはない
3. ウイルスが体外で排泄されることはない(sheddingを引き起こさない)
注意点:10万人に数名程度に発生する副反応についてのデータはまだ不十分である(心筋炎、ギラン・バレー症候群などの頻度は今後明らかになると思われる) レプリコンワクチンは危険なのか? #29.
中和抗体価の上昇が、従来のワクチンよりも長期間維持される(年1回の定期接種で十分な効果が期待できるかもしれない)
約16000例の臨床研究で一般的な安全性は確認されているが、10万人に数名しか発生しない稀な副反応に関するデータは不足している(心筋炎の頻度など)
2024年現在、1バイアル16人分の製剤として販売されているため、利便性に欠けるため、あえて選択する医療機関は少ないと思われる(1バイアル1~2名分の製剤が販売されれば、採用する医療機関は増加するかもしれない) レプリコンワクチンの要点 #30.
2024年9月現在、JN.1の子孫系統であるKP.3系統が流行している
COVID-19流行当初から毎年冬季(12月~2月)には、大きな流行が起こっている
COVID-19ワクチンの効果
- 感染予防効果:50%弱(3~4か月程度)
- 重症化予防効果(入院・死亡):50~70%(6か月以上)
高齢者や免疫不全のある人は、年1回(秋冬)のワクチン接種が推奨される
医療従事者は、接種者個人への効果・接種者の周囲(患者)への間接的な効果・副反応(発熱、頭痛など)・コスト(自己負担額、所属機関からの補助の有無など)を考慮して接種するか、(院内感染対策の観点からは接種が推奨されますが)個別に判断する COVID-19ワクチンのまとめ