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慢性肺アスペルギルス症の病型と特徴
#1. 病型 アスペルギルス症まとめ • • • • • • • • リスク因子 造血幹細胞移植 好中球減少 抗癌化学療法 免疫調整薬/免疫抑制薬使用 ICU入室 COPD/気管支拡張/ARDS インフルエンザ/RSV感染後 SARS-CoV2感染 Non Invasive Invasive 診断ツール • • • • 組織 培養 血清 or BALのGM抗原 βDグルカン (非特異的) Infect Dis Clin N Am 35 (2021) 415–434 Extra Pulmonary 特徴 治療 アスペルギローマ 肺空洞病変に菌塊を形成 多くは無症状だが喀血など症状があれば治療 外科的切除 喀血時は塞栓術や 抗真菌薬 ABPA 喘息症状 IgEと好酸球上昇/アスペルギルスIgG抗体陽性 慢性化すると気管支拡張を呈する ITCZ±ステロイド CPPA 慢性に進行するアスペルギルス症 咳嗽や喀血を呈し結核類似の症状を呈する IPA 幹細胞移植後や好中球減少者に好発 halo sign/air crescent signが特徴的 非特異的な浸潤影なども呈する 気管気管支 アスペルギルス症 肺移植後に好発 胸痛や喀血を呈し気管支鏡所見で診断 痰培養では定着と感染の鑑別困難 副鼻腔炎 分生子の直接定着や肺から波及し発症 要耳鼻科コンサルト ムコール症と要鑑別 眼病変 副鼻腔や肺から波及し発症 虹彩炎/眼周囲炎/眼内炎など呈する 要眼科コンサルト 骨髄炎 肺や副鼻腔から波及し発症 脊椎/頭蓋骨/副鼻腔周囲/顎に好発 中枢神経病変 肺や副鼻腔から波及し発症 髄液検査では診断困難 頭蓋内に腫瘤性病変を呈する 1st: VRCZ 2nd: L-AMB サルベージ: ITCZ CPFG etc 外科的切除 1st: VRCZ 2nd: L-AMB サルベージ: ITCZ CPFG etc
#2. アスペルギルス 代表菌種 A. fumigatus 分離頻度 50-67% 特長 アスペルギルス症で最多 侵襲性の病態が多い 副鼻腔炎/皮膚感染症 A. flavus A. terreus A. niger 8-14% 3-5% 5-9% アフラトキシンを産生 - 急性中毒の原因 - 発癌性あり 増加傾向 アムホテリシンB耐性 侵襲性の病態は稀 外耳道炎といった表皮の感染が多い ✓ グラム陽性に染まる糸状菌 ✓ Y字形 (45度)に分岐 ✓ 土壌、環境、腐敗した野菜 など自然界に偏在 ✓ 人体への曝露は避けられない ✓ 胞子を吸入することで人体内 に侵入 ✓ 感染臓器は「肺」が最多
#3. 急速進行性のアスペルギルス 一定の免疫抑制者や衰弱者で 発症 週単位で増悪 CCPAの未治療者で発生 2葉に及ぶ肺組織の線維化と 空洞化 不可逆的 治療後 慢性化 Chronic Cavitary Pulmonary Aspergillosis Subacute Invasive Aspergillosis 未治療 Chronic Fibrosing Pulmonary Aspergillosis 増悪 3ヶ月以上続く症状・画像異常 慢性炎症によって 無気肺、隔壁を伴う空洞影を 形成 アスペルギローマを合併 doi:10.3390/jof2020018
慢性肺アスペルギルス症の重症化リスクと診断方法
#4. 慢性肺アスペルギルス症の重症化リスク 糖尿病 低栄養 アルコール過剰 加齢 長期ステロイド使用 長期免疫抑制剤使用 COPD 放射線治療 非結核性抗酸菌感染症 HIV doi:10.3390/jof2020018
#5. 慢性肺アスペルギルス症の診断 症状、3ヶ月以上続く画像異常所見、抗原・抗体検査や培養検査等でアスペルギルスを証明すること 症状 画像所見 抗原/抗体検査 組織/培養検査 アスペルギローマ 空洞内のfungus ball 上葉に好発 血清 or BAL ガラクトマンナン抗原 喀痰/BALの培養 呼吸困難感 CCPA 胸膜肥厚 肥厚した隔壁のある 空洞を伴う浸潤影 アスペルギルスIgG抗体 肺組織の生検 胸痛 CFPA 無気肺形成 空洞を伴う線維化像 SAIA 数日~数週単位で 空洞化する浸潤影 air crescent sign 湿性咳嗽 喀血 発熱 喀痰/BAL/組織のPCR
アスペルギルスに対する抗真菌薬の治療法と併用の有用性
#6. アゾール系 CPA治療薬 ITCZ エキノキャンディン系 VRCZ PSCZ MCFG ポリエン系 CPFG L-AMB 一般名 イトラコナゾール ボリコナゾール ポサコナゾール ミカファンギン カスポファンギン リポソーマル アムホテリシンB 商品名 イトリゾール ブイフェンド ノクサフィル ファンガード カンサイダス アムビゾーム 点滴・内服 点滴・内服 点滴・内服 点滴 点滴 点滴 肝臓 肝臓 肝臓 肝臓 肝臓 肝臓 剤形 代謝経路 CCPA治療 1st 2nd - - - - SAIA治療 - 1st - - - 2nd 他剤使用不可時に 単剤で使用 IA/SAIAの併用薬 副作用が少ない IA/SAIAの 第二選択薬 静菌的作用で 侵襲病態への単剤 使用は非推奨 発熱、腎障害 etc 副作用が多い 特長 副反応/注意点 CCPAの 第一選択薬 IA/SAIAの 第一選択薬 予防投与で使用 他剤使用不可時に 単剤で使用 IA/SAIAの併用薬 副作用が少ない カプセルは空腹時 内服 腎障害時の点滴は 避ける 要TDM 腎障害時の点滴は 避ける 点滴は要CVC 腎障害時の点滴は 避ける 静菌的作用で 侵襲病態への単剤 使用は非推奨
#7. アスペルギルスに対する抗真菌薬の併用は有用か? 侵襲性肺アスペルギルス症 ➢ VRCZ vs VRCZ+anidulafungin キャンディン系 ➢ 血液腫瘍, 幹細胞移植後患者を対象 VRCZやL-AMBとSynergy ➢ 454人対象のRCT 拮抗作用なし *in vitro ➢ 1st outcome: 治療6週目の死亡率 ➢ 単剤 vs 併用=27.5% vs 19.3% (95% CI, -19~1.5, p=0.087) https://doi.org/10.7326/M13-2508 ルーチンの併用は推奨されないが症例毎に要検討