テキスト全文
代替薬時代の感染症外来の概要 #1.
“代替薬時代”の感染症外来 高野 哲史 COI開⽰ スライド作成者に開⽰すべきCOI関係にある企業などはありません #2.
2024年12月16日版: 薬剤の供給状況は時時刻刻と変化します. スライド利用に際してはご承知おきの上ご活用ください. #3.
executive summery / 経口抗菌薬はまず「標的臓器-抗菌薬」で理解 // 代替薬も基本のルールは同様である 感染症診療の基礎知識と原則 #4.
おしながき / 感染症診療の基礎知識 // “代替薬時代”のための経口抗菌薬 #5.
おしながき / 感染症診療の基礎知識 // “代替薬時代”のための経口抗菌薬 #6.
感染症診療の基礎知識 感染症診療にはどんなものが必要ですか︖ #7.
感染症診療の基礎知識 感染症診療にはどんなものが必要ですか︖ いろいろ #8.
感染症診療の基礎知識 感染症診療にはどんなものが必須ですか︖ 感染症診療の理路と原則の詳細 #9.
感染症診療の基礎知識 感染症診療にはどんなものが必須ですか︖ 理路 と 原則 #10.
感染症診療の基礎知識 感染症診療にはどんなものが必須ですか︖ 理路 と 原則 #11.
感染症診療の基礎知識 感染症診療の理路 - 5つの要素 患者背景の把握 感染臓器の同定 原因微生物の同定 抗微生物薬( 抗菌薬)の選択 適切な治療方針とフォローアップ #12.
感染症診療の基礎知識 感染症診療にはどんなものが必須ですか︖ 理路 と 原則 #13.
感染症診療の基礎知識 感染症診療の原則 - 治療薬3つの条件患者の感染症を最大限治療可能であること= 最大の治療効果 起こりうる副作用が最小であること= 最小の有害事象 耐性菌の誘導を最小限に抑えること= 最小の耐性菌誘導(選択圧) + コスト,投与の簡便さ,アクセスの良さ など #14.
感染症診療の基礎知識 感染症診療の原則 - 近江商⼈の「三⽅よし」売り手よし = 医療者が満足する - 治療効果が高い・手に入りやすい 買い手よし = 患者が満足する - 治療効果が高い・副作用で悩まない 世間よし = 社会貢献になる - 未来の患者に耐性菌リスクを残さない #15.
感染症診療の基礎知識 常にこの理路と原則を意識する すると,⾃ずと最適な治療⽅針が浮かび上がる 経口抗菌薬の種類と選定基準 #16.
おしながき / 感染症診療の基礎知識 // “代替薬時代”のための経口抗菌薬 #17.
“代替薬時代”のための経口抗菌薬 経⼝抗菌薬って何種類くらいありますか︖ #18.
“代替薬時代”のための経口抗菌薬 経⼝抗菌薬って何種類くらいありますか︖ ペニシリン系︓ベンジルペニシリンベンザチン⽔和物<バイシリンG顆粒>,アンピシリン⽔和物<ビクシリン>,スルタミ シリントシル酸塩⽔和物<ユナシン>,バカンピシリン塩酸塩<ペングッド>,アモキシシリン<サワシリン,パセトシン>, アモキシシリン/クラブラン酸<オーグメンチン,クラバモックス>,アンピシリン/クロキサシリン<ビクシリンS>セフェ ム系︓セファレキシン<ケフレックス,ラリキシン>,セフロキサジン<オラスポア>,セファクロル <ケフラール>,セフ ロキシムアキセチル<オラセフ>,セフォチアムヘキセチル<パンスポリン>,セフィキシム<セフスパン>,セフカペンピ ボキシル<フロモックス>,セフジトレンピボキシル<メイアクト>,セフジニル<セフゾン>,セフチブテン<セフテム>, セフテラムピボキシル<トミロン>,セフポドキシムブロキセチル<バナン>ペネム系(≠カルバペネム系)︓ファロペネム< ファロム>,テビペネムピボキシル<オラペネム>マクロライド系︓エリスロマイシン<エリスロシン>,クラリスロマイシ ン<クラリス>,アジスロマイシン<ジスロマック>,ジョサマイシン<ジョサマイシン>,アセチルスピロマイシン<スピラ マイシン>,フィダキソマイシン<ダフクリア>ホスホマイシン系︓ホスホマイシン<ホスミシン>ニトロイミダゾール系︓ メトロニダゾール<フラジール>リンコマイシン系︓リンコマイシン<リンコシン>,クリンダマイシン<ダラシン>クロラ ムフェニコール系︓クロラムフェニコール<クロロマイセチン>テトラサイクリン系︓テトラサイクリン<アクロマイシン>, ビブラマイシン<ドキシサイクリン>,レダマイシン<デメチルクロルテトラサイクリン>,ミノマイシン<ミノサイクリン >アミノグリコシド系︓パロモマイシン<アメパロモ>,カナマイシン硫酸塩<カナマイシン>オキサゾリジノン系︓リネゾ リド<ザイボックス>グリコペプチド系︓バンコマイシン塩酸塩<塩酸バンコマイシン散>サルファ剤︓スルファメトキサ ゾール/トリメトプリム<バクタ,ダイフェン>(フルオロ)キノロン系︓ナリジクス酸<ウイントマイロン>,ピペミド酸<ド ルコール>,ノルフロキサシン<バクシダール>,ロメフロキサシン塩酸塩<バレオン>,オフ #19.
“代替薬時代”のための経口抗菌薬 経⼝抗菌薬って何種類くらいありますか︖ ペニシリン系︓ベンジルペニシリンベンザチン⽔和物<バイシリンG顆粒>,アンピシリン⽔和物<ビクシリン>,スルタミ シリントシル酸塩⽔和物<ユナシン>,バカンピシリン塩酸塩<ペングッド>,アモキシシリン<サワシリン,パセトシン>, アモキシシリン/クラブラン酸<オーグメンチン,クラバモックス>,アンピシリン/クロキサシリン<ビクシリンS>セフェ ム系︓セファレキシン<ケフレックス,ラリキシン>,セフロキサジン<オラスポア>,セファクロル <ケフラール>,セフ ロキシムアキセチル<オラセフ>,セフォチアムヘキセチル<パンスポリン>,セフィキシム<セフスパン>,セフカペンピ ボキシル<フロモックス>,セフジトレンピボキシル<メイアクト>,セフジニル<セフゾン>,セフチブテン<セフテム>, セフテラムピボキシル<トミロン>,セフポドキシムブロキセチル<バナン>ペネム系(≠カルバペネム系)︓ファロペネム< ファロム>,テビペネムピボキシル<オラペネム>マクロライド系︓エリスロマイシン<エリスロシン>,クラリスロマイシ ン<クラリス>,アジスロマイシン<ジスロマック>,ジョサマイシン<ジョサマイシン>,アセチルスピロマイシン<スピラ マイシン>,フィダキソマイシン<ダフクリア>ホスホマイシン系︓ホスホマイシン<ホスミシン>ニトロイミダゾール系︓ メトロニダゾール<フラジール>リンコマイシン系︓リンコマイシン<リンコシン>,クリンダマイシン<ダラシン>クロラ ムフェニコール系︓クロラムフェニコール<クロロマイセチン>テトラサイクリン系︓テトラサイクリン<アクロマイシン>, ビブラマイシン<ドキシサイクリン>,レダマイシン<デメチルクロルテトラサイクリン>,ミノマイシン<ミノサイクリン >アミノグリコシド系︓パロモマイシン<アメパロモ>,カナマイシン硫酸塩<カナマイシン>オキサゾリジノン系︓リネゾ リド<ザイボックス>グリコペプチド系︓バンコマイシン塩酸塩<塩酸バンコマイシン散>サルファ剤︓スルファメトキサ ゾール/トリメトプリム<バクタ,ダイフェン>(フルオロ)キノロン系︓ナリジクス酸<ウイントマイロン>,ピペミド酸<ド ルコール>,ノルフロキサシン<バクシダール>,ロメフロキサシン塩酸塩<バレオン>,オフ #20.
“代替薬時代”のための経口抗菌薬 習熟すべき経⼝抗菌薬を選ぶ条件 / バイオアベイラビリティが⾼い (bioavailability; ⽣体内利⽤率) // 効果や副作⽤につき⻑期かつ多数の研究で検討されている /// 添付⽂書の範疇を⼤きく越えずに世界標準の投与設計が可能 //// 不必要な抗菌スペクトラムを持たない -「抗菌スペクトラムが広い」ことは必ずしもメリットではない 習熟すべき経口抗菌薬の選定 #21.
“代替薬時代”のための経口抗菌薬 習熟すべき経⼝抗菌薬,6選 1 アモキシシリン 2 アモキシシリン・クラブラン酸 3 セファレキシン 4 ドキシサイクリン または ミノサイクリン 5 レボフロキサシン 6 メトロニダゾール #22.
“代替薬時代”のための経口抗菌薬 習熟すべき経⼝抗菌薬,6選 1 アモキシシリン 2 アモキシシリン・クラブラン酸 3 セファレキシン 4 ドキシサイクリン または ミノサイクリン 5 レボフロキサシン 6 メトロニダゾール β-ラクタム系 非β-ラクタム系 #23.
“代替薬時代”のための経口抗菌薬 習熟すべき経⼝抗菌薬,6選 1 アモキシシリン 2 アモキシシリン・クラブラン酸 3 セファレキシン 4 ドキシサイクリン または ミノサイクリン 5 レボフロキサシン 6 メトロニダゾール β-ラクタム系 基本β-ラクタムを優先 非β-ラクタム系 #24.
“代替薬時代”のための経口抗菌薬 い い で れ こ た っ だ ず は 習熟すべき経⼝抗菌薬,6選 1 アモキシシリン 2 アモキシシリン・クラブラン酸 3 セファレキシン 4 ドキシサイクリン または ミノサイクリン 5 レボフロキサシン 6 メトロニダゾール β-ラクタム系 基本β-ラクタムを優先 非β-ラクタム系 代替薬の選定と周知の重要性 #27.
“代替薬時代”のための経口抗菌薬 / 第⼀線で使いたいβ-ラクタム系抗菌薬が壊滅状態 - ⻑期に渡っており,既にかなり⾸が締まっている ・ // 処⽅医にとっても⼤きなフラストレーション - ただ,関⼼のない⾮専⾨医にとっては“どうでもいい” - ともすると不適切な薬剤選択へ誘導されかねない 妥当な代替薬の選定と周知が急務 感染症診療における治療薬の条件 #28.
“代替薬時代”のための経口抗菌薬 / 経⼝抗菌薬は“臓器-抗菌薬”で整理する - 暗記事項が減る - 多くの処⽅医(医家含む)が微⽣物レベルまでの記憶は困難 - 代替薬も“臓器-抗菌薬”で整理するとよい 疑義紹介・代替薬の提案にご活用頂けると幸いです #29.
感染症診療の基礎知識 感染症診療の原則 - 治療薬3つの条件患者の感染症を最大限治療可能であること= 最大の治療効果 起こりうる副作用が最小であること= 最小の有害事象 耐性菌の誘導を最小限に抑えること= 最小の耐性菌誘導(選択圧) + コスト,投与の簡便さ,アクセスの良さ など #30.
感染症診療の基礎知識 感染症診療の原則 - 治療薬3つの条件患者の感染症を最大限治療可能であること= 最大の治療効果 起こりうる副作用が最小であること= どうしてもある程度損なわれる 最小の有害事象 耐性菌の誘導を最小限に抑えること= 治療効果を維持しつつ,合理的な薬剤を選定する 最小の耐性菌誘導(選択圧) + コスト,投与の簡便さ,アクセスの良さ など アモキシシリン・クラブラン酸の使用法 #31.
“代替薬時代”のための経口抗菌薬 習熟すべき経⼝抗菌薬,6選 1 アモキシシリン 2 アモキシシリン・クラブラン酸 3 セファレキシン 4 ドキシサイクリン または ミノサイクリン 5 レボフロキサシン 6 メトロニダゾール β-ラクタム系 非β-ラクタム系 #32.
“代替薬時代”のための経口抗菌薬 習熟すべき経⼝抗菌薬,6選 1 アモキシシリン 2 アモキシシリン・クラブラン酸 3 セファレキシン 4 ドキシサイクリン または ミノサイクリン 5 レボフロキサシン 6 メトロニダゾール β-ラクタム系 非β-ラクタム系 #33. 経口抗菌薬 各論 ‒ アモキシシリン - 主たる標的臓器: 顔周り(⼝腔,咽頭,中⽿,副⿐腔) / ペニシリン系抗菌薬(アミノペニシリン) = β-ラクタム系抗菌薬(BL): 細胞壁の合成阻害 - 構造上はアンピシリンにヒドロキシ基がついているだけ → バイオアベイラビリティが著しく上昇(90%)1), 2), 3) (vs アンピシリン 50%2)) // 安全域は広いが注意すべき有害事象 - 伝染性単核球症患者への投与で起こる⾮掻痒性⽪疹 → 詳細なメカニズム不明. 頻度は70-90%4),これより低率とする報告あり5), 6), 7) 添付⽂書上の⽤法・⽤量(本邦・成⼈): 通常1回250mg(⼒価)を1⽇3-4回経⼝投与(年齢・症状により適宜増減) 国際的な標準投与設計: 1回500-1,000mg(⼒価)を1⽇3回経⼝投与1), 2) 溶連菌咽頭炎: 1回500mgを1⽇2回(朝⼣⾷後)経⼝投与・10⽇間 1) 2) 3) 4) 5) 6) 7) 日本語版サンフォード感染症治療ガイド ‒ アップデート版 アモキシシリン.https://lsp-sanford.jp/sguide/aaindex2.php (Accessed 2022/7/8) CB Cunha, BA Cunha. Antibiotic Essentials(London: JAYPEE BROTHERSMEDICAL PUBLISHERS, 2020), 552-554. ML Grayson, et al. Kucers̀ The Use Of Antibiotics,(Florida: CRC Press, 2018), 112-113. Horwitz CA, et al. Heterophil-negative infectious mononucleosis and mononucleosis-like illnesses. Laboratory confirmation of 43 cases. Am J Med. 1977;63(6):947. Lendak D, et al.. Rash in primary Epstein-Barr virus infection [in Serbian], Med Pregl, 2012, vol. 65 (pg. 138-4 #34. 経口抗菌薬 各論 ‒ アモキシシリン・クラブラン酸 - 主たる標的臓器: 顔周り(副⿐腔),肺,腹腔内臓器,膿瘍,動物咬傷など / アモキシシリン(BL) + β-ラクタマーゼ阻害薬(BLI) - 本邦の経⼝BLBLIラインナップの中で最も実⽤的(2024年12⽉現在) - 超・広域抗菌スペクトル: 経⼝抗菌薬では最終兵器的存在,温存を︕ // クラブラン酸は世界で初めて臨床使⽤されたBLI - ESBLs(Extended-Spectrum β-lactamases; 基質拡張型β-ラクタマーゼ)も阻害可能 → 臨床での利⽤価値はまだ限定的.ガイドラインレベルの推奨は膀胱炎のみ8) 添付⽂書上の⽤法・⽤量(本邦・成⼈): 通常1回250mgを1⽇3-4回経⼝投与(年齢・症状により適宜増減) 国際的な標準投与設計: 1回500mgを1⽇2-3回 / 1回875mgを1⽇2回経⼝投与 8) Pranita DT, et al. Infectious Diseases Society of America 2022 Guidance on the Treatment of Extended- Spectrum β-lactamase Producing Enterobacterales (ESBL-E), Carbapenem-Resistant Enterobacterales (CRE), and Pseudomonas aeruginosa with Difficult-to-Treat Resistance (DTR- P. aeruginosa). https://www.idsociety.org/globalassets/idsa/practice-guidelines/amr-guidance/1.0/idsa-amr-guidance-v1.1.pdf . (accessed 2022/7/10) #35.
経口抗菌薬 各論 ‒ アモキシシリン・クラブラン酸 - / クラブラン酸配合によるデメリットその①: 肝障害 - アモキシシリン単剤では0.3-0.4/10000に対し1.7/100001).ただし致死的な肝障害は稀 - ⻩疸・⽪膚掻痒感で発症.病理学的には胆管内胆汁うっ滞2) = 胆汁うっ滞型肝障害 - 55歳以上・男性>⼥性でリスク増加3) → 薬剤アレルギーの⼀部らしく,投与期間の⻑短や投与量は関係ない3), 4)ようだ // クラブラン酸配合によるデメリットその②: 下痢 - 恐らく最も有名.添付⽂書上も0.1-5%未満で記載有5) → このうちおよそ20%はCDI(Clostridioides difficile infection)だとする報告あり6), 7), 8) - 腸内正常細菌叢の撹乱(collateral damage)と⼩腸の蠕動運動亢進作⽤が原因かも︖9), 10), 11) - ⾼容量投与および頻回投与12), 13)・⻑期間投与14)等がリスクになる 1) Vial T, et al. Antibiotic-associated hepatitis: update from 1990. Ann Pharmacother. 1997; 31: 204-220 2) Richardet J-P, et al. Prolonged cholestasis with ductopenia after administration of amoxicillin/clavulanic acid. Dig Dis Sci. 1999; 44: 1997-2000 3) Thomson JA, et al. Risk factors for the development of amoxycillin-clavulanic acid associated jaundice. Med J Aust. 1995; 162: 638-640 4) Foureau DM, et al. Comparative analysis of portal hepatic infiltrating leucocytes in acute drug-induced liver injury, idiopathic autoimmune and viral #36.
経口抗菌薬 各論 ‒ アモキシシリン・クラブラン酸 - 投与設計に注⽬ 添付⽂書上の⽤法・⽤量(本邦・成⼈): 通常1回250mgを1⽇3-4回経⼝投与(年齢・症状により適宜増減) + クラブラン酸125mg 国際的な標準投与設計: 1回500mgを1⽇2-3回 / 1回875mgを1⽇2回経⼝投与 + クラブラン酸125mg + クラブラン酸125mg (いずれもアモキシシリン換算) オグサワ処方の利点と問題点 #37.
経口抗菌薬 各論 ‒ アモキシシリン・クラブラン酸 - / 世界標準的な(=エビデンスの蓄積した)投与設計を実現したい = アモキシシリンの投与量は⼗分確保したい // 副作⽤を低減したい = クラブラン酸の投与量・投与頻度は少ない⽅がよい この目的で生まれたのが「オグサワ処方」 #38.
経口抗菌薬 各論 ‒ アモキシシリン・クラブラン酸 - 処⽅案①: 正統派”オグサワ処⽅” オーグメンチン®配合錠250RS 1錠 + サワシリン®250mg 1カプセル(錠) → アモキシシリン500mg/クラブラン酸125mg(4:1) 1⽇3回内服 ◎ 海外での成人の標準投与量に完全に準拠 ◎ 個々では添付文書を逸脱しない(「適宜増減」の範疇に収まる) ◎ 処方医にとって理解しやすく,pK/pD理論の上でも理に適っている 時間依存性抗菌薬 = 分割投与が原則 #39.
経口抗菌薬 各論 ‒ アモキシシリン・クラブラン酸 - 処⽅案②: “オグサワ変法” オーグメンチン®配合錠250RS 1錠 + サワシリン®250mg 2カプセル(錠) → アモキシシリン750mg/クラブラン酸125mg(6:1) 1⽇2回内服 海外での成人の標準投与量に近似 個々では添付文書を逸脱しない り 可能な限 添付文書の縛りの中で7:1を再現 (「適宜増減」の範疇に収まる) 昼の内服が不要 = アドヒアランスが遵守されやすい(日中仕事や学校に出る若者などで特に) 正統派”オグサワ処方”よりクラブラン酸投与量・回数が少ない(375mg vs 250mg/ 3回 vs 2回) → 下痢のリスクは低減できるかもしれない #40.
経口抗菌薬 各論 ‒ アモキシシリン・クラブラン酸 - 「オグサワ処⽅」が抱える問題点 / オーグメンチン®錠の吸湿性のため⼀包化出来ない // 保険診療上査定されてしまうケースが根強くある - 2剤が「2種類の抗菌薬」「同効薬」と扱われるため - 保険審査担当者の裁量となり,査定される・されないは地域差あり - 公知申請してはどうか︖ セファレキシンとその適応症 #41.
経口抗菌薬 各論 ‒ セファレキシン - 主たる標的臓器: ⽪膚,尿路 / 第1世代セファロスポリン系薬剤 // バイオアベイラビリティ: 90%以上 /// ⻑時間作⽤型の剤形=複合顆粒があるのが⾮常に便利 - 1⽇2回投与が可能(カプセルは通常1⽇4回投与) //// 互換性のある静注薬: セファゾリン 処⽅例(正常腎機能の成⼈において) 蜂窩織炎・丹毒: 顆粒1回2g(⼒価1g)を1⽇2回(朝⼣⾷後)内服を5-14⽇ 急性膀胱炎: 顆粒1回2g(⼒価1g)を1⽇2回(朝⼣⾷後)内服を7⽇ #42.
代替薬 各論 ‒ アモキシシリン - 主たる標的臓器: 顔周り(⼝腔,咽頭,中⽿,副⿐腔) クリンダマイシン(ダラシン®): ★★★☆☆ (300mg/回, 1⽇3回内服) 連鎖球菌・肺炎球菌はまずまずOK.供給も今のところ問題なし. 中⽿炎・副⿐腔炎はちょっと微妙(インフルエンザ桿菌が絡むため). バカンピシリン(ペングッド®): ★★★☆☆(500mg/回, 1⽇4回内服) アンピシリンのプロドラッグ.新規採⽤が厳しい,かも. バイオアベイラビリティに⽬を瞑ればアモキシシリンと互換可能. 次点: ST合剤,ドキシサイクリン #43.
代替薬 各論 ‒ アモキシシリン・クラブラン酸 - 主たる標的臓器: 顔周り(副⿐腔),肺,腹腔内臓器,膿瘍,動物咬傷など 経⼝第3世代セファロスポリン: ★★★★☆ ここぞとばかりの出番.臨床実績からはセフジニルかセフポドキシム. 膿瘍の維持治療や動物咬傷にはクリンダマイシンと併⽤. 第⼀選択薬となり得ないことを今⼀度確認されたし︕ (メトロニダゾールも可) スルタミシリン(ユナシン®): ★★★☆☆(750mg/回, 1⽇3回内服) 実質アンピシリンとスルバクタムを結合させた魔改造感溢れる薬剤. 例によってバイオアベイラビリティがネック.新規採⽤も難しい︖ #44.
代替薬 各論 ‒ セファレキシン - 主たる標的臓器: ⽪膚,尿路 アンピシリン・クロキサシリン: ★★★★☆(1g/回, 1⽇4回内服) ⽪膚・軟部組織感染症に.⼊⼿可能ならば良い選択肢. (ビクシリンS®) 内服錠数が嵩む(4錠/回,1⽇4回=16錠/⽇)のが⽟にキズ. クリンダマイシン: ★★★☆☆(300mg/回, 1⽇3回内服) ⽪膚・軟部組織感染症に.連鎖球菌・⻩⾊ブドウ球菌は⼀定のカバー. ドキシサイクリン(ビブラマイシン®): ★★☆☆☆(100mg/回, 1⽇2回内服) ⽪膚・軟部組織感染症に.ユーティリティ⾼いが広域すぎる感否めず. ミノサイクリンが供給難に陥ったため,本剤も怪しい. #45.
代替薬 各論 ‒ セファレキシン - 主たる標的臓器: ⽪膚,尿路 セフロキシム(オラセフ®): ★★★★☆(500mg/回, 1⽇3回各⾷後内服) 経⼝第2世代セファロスポリン.尿路感染症に. ST合剤: ★★★★☆(トリメトプリム換算で160mg(=2錠)/回, 1⽇2回内服) (バクタ®,ダイフェン®) 尿路感染症に.エビデンス豊富. 短期間の投与であれば副作⽤もそう問題にならない.妊婦は原則禁. #46.
代替薬 対象となる感染臓器 皮膚・軟部組織 第一選択薬 セファレキシン 顔周り(口腔,咽頭,中耳,副鼻腔) アモキシシリン 顔周り(特に副鼻腔),肺, 腹腔内臓器,膿瘍,動物咬傷など アモキシシリン・ クラブラン酸 皮膚・軟部組織 セファレキシン 尿路 まとめ 代替薬 投与設計* クリンダマイシン 300mg/回,1日3回内服 バカンピシリン 500mg/回,1日4回内服 経口第3世代 セファロスポリン 薬剤による スルタミシリン 750mg/回,1日3回内服 アンピシリン・ クロキサシリン 1g/回,1日4回内服 ドキシサイクリン 200mg/回,1日2回内服 セフロキシム 500mg/回,1日3回内服 ST合剤 160mg/回**,1日2回内服 * 体重50kg以上かつ腎機能異常のない成人とする ** トリメトプリム換算 経口抗菌薬の各論と治療戦略 #47.
経口抗菌薬 各論 習熟すべき経⼝抗菌薬,6選 1 アモキシシリン 2 アモキシシリン・クラブラン酸 3 セファレキシン 4 ドキシサイクリン または ミノサイクリン 5 レスピラトリーキノロン1種類(レボフロキサシンなど) 6 メトロニダゾール β-ラクタム系 非β-ラクタム系 #48.
経口抗菌薬 各論 ‒ テトラサイクリン - 主たる標的臓器: β-ラクタムアレルギー患者の⽪膚感染症など /「ドキシ」か「ミノ」かどちらかあればOK - 臨床上の厳密な使い分けは不要だが適応疾患に若⼲の差あり - 「ドキシ」は前庭障害(めまいやふらつき)の副作⽤が少ないとされる // バイオアベイラビリティ: いずれも90%以上 /// 妊婦への投与は避ける - 胎児の催奇形性,⻭⽛⻩染,⾻形成不全の可能性あり //// ⾦属イオンとキレート形成 → 吸収率低下 - Mg,Al,Fe,Zn併⽤時は投与時間を2時間以上ずらす #49.
経口抗菌薬 各論 ‒ テトラサイクリン - 主たる標的臓器: β-ラクタムアレルギー患者の肺炎,⽪膚感染症など / 肝機能・腎機能での投与量調節が不要 // 市中肺炎の治療薬として⾒直されている - 背景に肺炎球菌・Mycoplasma pneumoniaeのマクロライド耐性増加 - 副作⽤や相互作⽤の問題がなければよいチョイス 処⽅例(正常腎機能の成⼈において) ※⼗分量の⽔で内服するよう指導する マイコプラズマ肺炎: 1回100mgを1⽇2回(朝⼣⾷後)内服を7⽇ など #50.
経口抗菌薬 各論 ‒ レスピラトリーキノロン - 主たる標的臓器: 全⾝臓器どこでも / 気道感染症にも使⽤できるニューキノロンの総称 // バイオアベイラビリティ: 総じて⾼い(70%〜ほぼ100%),組織移⾏性も抜群 /// 1剤で⼗分,使い分け不要 (→ レボフロキサシンでOK(私⾒)) - 使い慣れた1剤の効果と副作⽤を理解し使いこなすことが重要 //// 妊婦への投与は原則禁忌,⼩児も⼀部薬剤除き禁忌 ///// 尋常ならざる広域抗菌スペクトル - 薬剤により嫌気性菌,緑膿菌,結核菌を含む - ⼀⽅で耐性獲得が極めて進⾏していることが⼤きな懸念: ⼤腸菌が代表格 #51. 経口抗菌薬 各論 ‒ レスピラトリーキノロン - 主たる標的臓器: 全⾝臓器どこでも /「キノロン安全神話」は今や過去の話 ⼤動脈瘤・解離1, 2),腱断裂・腱障害のリスク増(2019/9追加) (OR 2.79; 95%CI 2.31-3.37 / OR 2.25; 95%CI 2.03-2.491)) ⼼電図異常(QTc延⻑),低⾎糖,光線過敏,末梢神経障害,痙攣など2) // 薬物相互作⽤も豊富 → 実際の添付文書 Mg,Al,Fe,Zn製剤でキノロンの吸収率減2) → 投与時間ずらす ステロイドとの併⽤で腱障害の頻度増2, 3) NSAIDとの併⽤でけいれん惹起の可能性2) 1) Sonal S, et al., Aortic Dissection and Aortic Aneurysms Associated with Fluoroquinolones: A Systematic Review and Meta-Analysis, Am J Med. 2017 Dec;130(12):1449-1457 2) レボフロキサシン錠250mg「明治」添付文書: https://www.info.pmda.go.jp/go/pdf/780009̲6241013F2306̲1̲07 , 2022年3月10日閲覧. 3) 医薬品インタビューフォーム「レボフロキサシン」: https://www.info.pmda.go.jp/go/interview/1/430773̲6241013C2032̲1̲1F.pdf , 2022年3月10日閲覧. #52.
経口抗菌薬 各論 2019年1月改訂 ‒ レスピラトリーキノロン 2019年9月改訂 (第一三共エスファ株式会社より許諾の上掲載) 本来はその都度「指導」が必要 #53.
経口抗菌薬 各論 ‒ レスピラトリーキノロン - 主たる標的臓器: 全⾝臓器どこでも / このクラスの殆どが⼤なり⼩なり抗結核作⽤あり(トスフロキサシンにはなし 1), 2)) - ⽇常診療において本菌をカバーする必要は皆無 - 結核菌は最短1週間の投与でキノロン耐性を獲得し得る3), 4), 5), 6) - 投与により⼀時症状改善7),喀痰抗酸菌塗抹陽性率も73%低下する6) = 診断が遅れる → 結核診断前のキノロン投与により結核関連死亡リスクが増加(1.8-6.9倍) 3), 8) // ⼀般臨床において第⼀選択薬となるケースは極めて少ない - レジオネラ症,急性前⽴腺炎(,感受性があればサルモネラ症)へのfirst choice - 基本的にはβ-ラクタム系薬剤へアレルギーのある患者へのalternative choice 1) Alexandra A, et al., Mycobacterium tuberculosis DNA gyrase: interaction with quinolones and correlation with antimycobacterial drug activity, Antimicrob Agents Chemother. 2004 Apr;48(4):1281-8. 2) ⽇本呼吸器学会成⼈肺炎診療ガイドライン2017作成委員会著, 『成⼈肺炎診療ガイドライン2017』,pp. 123, 株式会社メディカルレビュー社, 2017 3) Wang JY, Hsueh PR, Jan IS, et al: Empirical treatment with a fluoroquinolone delays the treatment for tuberculosis and is associated with a poor prognosis in endemic areas. Thorax. 2006 Oct; 61(10): 903-8. 4) Dooley KE, Golub J, Goes FS, et al: Empiric treatment of community-acquired pneumonia with fluoroquinolones, and delays in the #54.
経口抗菌薬 各論 主たる標的臓器: ‒ メトロニダゾール - 腹腔内臓器,膿瘍(肺化膿症,腹腔内膿瘍など), Clostridioides difficile infection(CDI, 軽症に限る) / 偏性嫌気性菌治療で最も信頼できる薬剤 - 薬剤耐性の懸念が極めて⼩さい // ⽣体利⽤率: 90%以上,組織移⾏性も抜群 /// 嫌酒効果あり(ジスルフィラム様効果) → 投与中と投与後数⽇は禁酒指導 //// “メトロニダゾール脳症”に注意が必要 → 疑ったら投与中⽌ - 構⾳障害,歩⾏障害,四肢の協調運動障害が多い1) - 頭部単純MRI T2/FLAIRにおける⻭状核に両側対称性の⾼信号が特異的 処⽅例(正常腎機能の成⼈において) CDI(軽症): 1回500mgを1⽇3回(各⾷後)内服を10⽇間 例えば腹腔内膿瘍の維持期治療: セファレキシン + 本剤 β-ラクタムアレルギーがある場合:レボフロキサシン + 本剤 「おかず」的 1) Caspar GS, et al.; Metronidazole-induced encephalopathy: a systematic review, Journal of Neurology (2020) 267:1–13 #55.
経口抗菌薬 各論 ‒ ST合剤 - 主たる標的臓器: 全⾝臓器どこでも / 葉酸代謝阻害薬 // バイオアベイラビリティ: 90%以上 /// しばしばある副作⽤が忍容できれば優れた薬剤 悪⼼・嘔吐・下痢 – 投与設計により軽減できる可能性がある ⾼カリウム⾎症 – ACE阻害薬・ARBとの併⽤注意.カリウム交換樹脂の使⽤を検討 ⾎清クレアチニン上昇 – 必ずしも腎障害を意味しない.軽度なら容認 ⽪疹,肝障害,⾻髄抑制(特に⾎⼩板減少),⽇光過敏など //// 薬剤耐性が進⾏していることには留意が必要: ⼤腸菌,レンサ球菌 ///// β-ラクタム系薬剤へアレルギーのある患者への代替薬 - 特に尿路感染症で利⽤価値あり #56.
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