#4.
■針刺し事故対応 総論 1.針刺し直後の初期対応 2.感染症対応のフローチャート
#5.
総論1.針刺し事故直後の初期対応 作業を中断し、 すぐに流水+石鹸で洗う ※ 消毒、血液の絞り出しなどは、 積極的には推奨されていません。 他にやるべきことを優先しましょう。
#6.
総論1.針刺し事故直後の初期対応 周りに援助を求める 針刺し直後は、できるだけ急いで やることがたくさんあります。 当事者に冷静な対応は ですので、 必ず誰かに援助を求めてください。
#7.
総論1.針刺し事故直後の初期対応 マニュアルに沿って動く 勤務する医療施設の針刺し事故時の マニュアルなどを参考に動いてください。 感染制御部など、針刺し事故の対応に 詳しい職員の援助を受けてください。
#8.
総論1.針刺し事故直後の初期対応 曝露源/被曝露者、両者の検査を行う 被曝露者 曝露源者 HBs抗原 HCV抗体 HIV迅速 先に針を刺した方 後に刺した方 HBs抗原/抗体 HCV抗体 HIV迅速 一般検査 (妊娠反応) 両者、現時点で血液を介して感染する感染症にかかっていないか、 また緊急の予防治療の際に障壁となる問題がないか検査します。 ※ 両者ともに、検査の意義について十分な説明と同意が必要です
#9.
総論1.針刺し事故直後の初期対応 必要な介入を行う ・緊急の感染予防のための治療 ・事故に対する報告 ・その後のフォロー検査 などを開始します。
#10.
総論2.感染症対応のフローチャート 被 曝露者 曝露 源者 HBs抗原 陽性 被曝露者のHBs抗原/抗体に応じて介入 (免疫グロブリン、B型肝炎ワクチンの投与) HCV抗体 陽性 被曝露者のHCV抗体に応じて介入 (基本的には経過観察) HIV迅速 陽性/不明 全て陰性 リスクがあれば曝露後予防内服を検討 ・経過観察(ウインドウ期を考慮した感染症 検査フォローの実施は施設判断) ・HBワクチンの接種を必要に応じて実施
#11.
■針刺し事故対応 各論 1.B型肝炎 2.C型肝炎 3.HIV
#12.
B型肝炎 1.B型肝炎への対処 • B型肝炎ウイルスは針刺し事故による感染リスクが高い 病原体として知られています。 曝露 源者 • HBV感染 HBs抗原 + / HBe抗原 + 37-62 % HBs抗原 + / HBe抗原 - 23-37 % 被 曝露者 被 曝露者 肝炎発症 22-31 % 1-6 % MMWR Recomm Rep 2001 の免疫次第では緊急の対応が必要な場合がある ので、しっかり押さえておきましょう。
#13.
B型肝炎 当直中、近くの療養型病院より相談あり 職員が、針刺しをしてしまいました。 先に針を刺した患者さんは、入院時の 検査でB型肝炎陽性者だったようです。 うちでは検査も何も出来ないので、 なんとかお願いします。 自信をもって対応できますか?
#14.
ここで確認すべきこと、考えること 曝露源者 被曝露者 ①曝露源者(先に針を刺した方)に ② 被曝露者(後に針を刺した方)に HBVの感染力があるかどうか HBVへの免疫があるかどうか ③ どれくらいの時間的猶予があり、 院内で緊急検査が行えるか ④ 院内で免疫グロブリン(HBIG)、 HBワクチンが利用可能か B型肝炎
#15.
※ 各々の解説 B型肝炎 ① 汚染源者 の感染力の確認 曝露 源者 • 針刺し後に 曝露 源者 に説明して採血をする (または、入院時検査など利用できる検査情報から拾う) HBs抗原検査」が陽性か陰性かをチェックする 「 曝露源者不明の場合、 「陽性」として扱う!
#16.
※ 各々の解説 ② B型肝炎 被 曝露者 の免疫の確認 • HBs抗原、HBs抗体検査(+ベースラインの肝機能)を実施する すでにB型肝炎キャリアでないか評価する HBs抗原 ※陽性ならHBIGの投与が行えないことに注意 HBs抗体 陽性(≧10mIU/mL)かどうかを確認する ※ここでHBs抗体陰性でも、ワクチン接種歴があり過去に 陽性を確認されていれば「陽性」と取り扱って良い ※ B型肝炎ワクチン接種歴を聴取し、未接種または接種途中の場合は HBs抗体検査をスキップ(抗体陰性とする)しても良い。
#17.
※ 各々の解説 B型肝炎 ③ 時間猶予があるかどうか 目標は 48時間以内 • 状況次第では針刺しから出来るだけ早期の対応が必要になる。 • 曝露源者/被曝露者の緊急検査+結果解釈がすぐに行えるかどうか ④ 院内で投薬が可能な状況か • HBIG+B型肝炎ワクチンをすぐ投与できる準備があるかどうか ※出来るだけ早い対応が望ましいので、環境・リソース次第では 対応が可能な高次医療機関へ相談したほうが良いこともあります。
#18.
手順1: のHBs抗原は? 被 曝露者 対応 被 曝露者 のHBs抗原が 陰性 陽性 B型肝炎 曝露 源者 のHBs抗原が 陰性 手順2-1へ 陽性 手順2-2へ 肝臓内科へ相談 既に感染していない?
#19.
B型肝炎 手順2-1:汚染源者 のHBs抗原が陰性 被 曝露者 曝露 源者 対応 の HBs抗体価が 10 mIU/mL 以上 (または過去に陽性) 10 mIU/mL 未満 今回の針刺しに関しては 経過観察で良いけれども、 抗体価が低いので今後に 備えてきちんとワクチンを 打ちましょう、という目的 経過観察のみ(手順3不要) B型肝炎ワクチン接種歴は 未接種 接種途中 ワクチン1シリーズ(3回)接種する ワクチン接種を完了させる 1シリーズ済み ワクチンをもう「1回」接種する 2シリーズ済み 専門家へ相談する(ワクチン不応者、後述) ワクチン接種したなら、 手順3-②のみ行う
#20.
B型肝炎 手順2-2:汚染源者のHBs抗原が陽性/不明 被 曝露者 曝露 源者 の 対応 HBs抗体価が 10 mIU/mL 以上 (または過去に陽性) 10 mIU/mL 未満 ①と②、 セットで! 経過観察のみ(手順3不要) ① HIBG投与 ★B型肝炎ワクチンの不応者(※)は HBIG増量や追加を検討 ② ワクチン接種歴に応じて、ワクチン接種 (前ページと同様に) 手順3へ ※HBワクチン不応者(Non-responder):ワクチンを2シリーズ行ってもHBs抗体<10mIU/mLの方。
#21.
■ 抗HBs人免疫グロブリン(HBIG) 抗HBs人免疫グロブリン筋注1000単位 へブスブリンIH静注1000単位 理想は 24時間以内 ・適応:HBs抗原陽性血液の汚染事故後のB型肝炎発症予防 ・禁忌:HBs抗原陽性者 ・投与の時期は事故発生後7日以内とする。なお、48時間以内が望ましい。 ・本剤投与後3カ月は生ワクチンの接種を避けること ・HBワクチンと同時接種する場合、接種部位を離すこと ■血液由来製剤のため、同意書が必要 ■1000~2000単位を投与(要、添付文書確認) B型肝炎 ★ワクチン不応者へは、2000単位投与や、1000単位を1か月あけて2回投与など検討
#22.
■ B型肝炎ワクチン B型肝炎 ヘプタバックス-Ⅱ水性懸濁注シリンジ 0.5mL ビームゲン注 0.5mL ・適応:①B型肝炎の予防 ②HBs抗原陽性でかつHbe抗原陽性の血液による 汚染事故後のB型肝炎発症予防 ・投与の時期(初回)は事故発生後7日以内。 ※ワクチン不応者への追加ワクチン接種は専門家へ相談を。 ■ワクチンとしての問診表が必要 ■通常10歳以上なら0.5mLを皮下又は筋注(1シリーズ3回接種) ※ 適応②の場合、業務外(労災外)でもHBIGと併用で保険給付対象
#23.
手順3: 被 曝露者 B型肝炎 のフォローアップを行う ■針刺し事故から、 ① 1、3、6(、12) か月後に、 ・HBs抗原、AST、ALT ② ワクチン接種終了から1~2か月後にHBs抗体確認 ※ フォローアップの内容、回数、時期などは参考です。 HBIGを使用した場合、 使用から6ヶ月あける
#24.
B型肝炎 補足:HBワクチンの接種 ・1シリーズ3回接種(添付文書上の接種間隔は適応で微妙に異なる) ①B型肝炎の予防(通常の方法) ②HBsAg+かつHbeAg+の血液による汚染事故後の予防(HBIGとの併用) ※1シリーズ(3回)接種後、 汚染事故 1 2 3 ※ 1回目接種 2回目接種 3回目接種 適応① 事故直後 1回目から4週後 1回目から20~24週後 適応② 事故直後 1回目から1月後 1回目から3~6月後 抗体価(HBs抗体)が十分に 上昇したか確認を行う場合は、 ・3回目接種から1-2ヶ月あける ・HBIGを使用した場合は、 投与から6ヶ月以上あける ※1シリーズ済みで針刺し事故時に抗体価が低く、1回のみ追加接種した場合 接種1-2か月後にHBs抗体測定(HBIG併用の場合6ヶ月以上あける)
#25.
B型肝炎 被 曝露者 補足:B型肝炎のフロー または 過去に陽性を確認されたことがある 陽性:肝臓内科へ紹介 HBs抗原 被 陽性: 曝露者 ①:介入不要 ①:HBs抗体陽性(≧10mIU/mL) 陰性: 曝露 源者 HBs抗体 ②:B型肝炎ワクチン なし/接種途中/ 接種歴は? 1シリーズ済 ・HBIG 1000単位(48hr以内) ・ワクチン接種歴 なし:ワクチン1シリーズ開始 接種途中:完了させる 1シリーズ済み:ワクチン1回接種 ・後日HBs抗体確認 ・針刺し後フォローアップ検査 2シリーズ済 【ワクチン不応者】 ・HBIG 1000単位(48hr以内) ・HBIG 1000単位(1か月後) ・針刺し後フォローアップ検査 ・ワクチン追加を専門家へ相談 ②:HBs抗体陰性(< 10mIU/mL) かつ 過去に陽性となったことがない HBs抗原 被 陰性: 曝露者 ①:介入不要 HBs抗体 ②:B型肝炎ワクチン なし/接種途中/ 1シリーズ済 ・ワクチン接種歴 なし:ワクチン1シリーズ開始 接種途中:完了させる 1シリーズ済み:ワクチン1回接種 ・後日HBs抗体確認 接種歴は? 2シリーズ済 【ワクチン不応者】 ・ワクチン追加を 専門家へ相談
#26.
C型肝炎 2.C型肝炎への対処 • C型肝炎ウイルスはB型肝炎ウイルスと比べて針刺し事故による 感染リスクが高いとは言えません。 ※曝露によるHCV抗体検査陽転化は平均して1.8 (0-7) %とも MMWR Recomm Rep 2001 • 医療現場での感染リスクは高いとは言えませんが、過去に 少数ながら感染事例があることや、透析などリスクが比較的 高い場面もあるため、注意が必要です。
#27.
まず確認すべきこと、考えること 曝露源者 ① 曝露源者(先に針を刺した方)に HCVの感染力があるかどうか 被曝露者 ② 被曝露者(後に針を刺した方)の ベースラインの検査を行う C型肝炎
#28.
手順1: のHCV抗体は? 被 曝露者 対応 被 曝露者 のHCV抗体が 陰性 陽性 C型肝炎 曝露 源者 のHCV抗体が 陰性 経過観察のみ 陽性 手順2へ 肝臓内科へ相談 既に感染していない?
#29.
手順2: 被 曝露者 C型肝炎 のフォローアップを行う ① 針刺し事故後のベースライン検査 ・HCV抗体、AST、ALT ② 1、3、6(、12) か月後に、 ・HCV抗体、AST、ALT ※ 曝露1-2週間後にHCV-RNA検査を行うことも検討可能 ※ フォローアップの内容、回数、時期などは参考です。
#30.
HIV 3.HIVへの対処 • HIVは、B/C型肝炎ウイルスと比べて、針刺し事故による感染リス クが更に低いとされています。 経皮的な感染血液への曝露:0.3%(95%CI 0.2-0.5%) 粘膜への接触:0.09%(95%CI 0.006-0.5%) MMWR Recomm Rep 2001 • しかし、万が一リスクの高い針刺し事故が起きてしまった場合に 迅速な曝露後予防内服(PEP)を行う必要があるため、事前の準備 や手順の確認が重要になります。
#31.
まず確認すべきこと、考えること 曝露源者 ② どれくらいの時間的猶予があり、 院内で緊急検査が行えるか ③ 院内で曝露後予防内服(PEP) が利用可能か、システムがあるか ① 曝露源者(先に針を刺した方)に 被曝露者 HIV感染、リスクがあるかどうか ④ 被曝露者(後に針を刺した方)の PEP実施の検討 HIV
#32.
※ 各々の解説 HIV ① 汚染源者 のHIV感染/リスクの有無を評価 曝露 源者 HIV検査」がすぐに実施可能なら、 ■「迅速 針刺し後に 曝露 源者 に同意を得て採血をする ■ 検査が行えない、または結果がまだ出ていない場合、 ニューモシスチス肺炎やクリプトコッカス髄膜炎の罹患など HIV感染を推定できる情報や、最近のHIV感染のリスクが非常 に高い病歴や行為などが無いかチェックする。
#33.
※ 各々の解説 HIV ② 時間猶予があるかどうか ■可能な限り早急に予防内服を行う必要があるため、 急いで決断する必要がある。 理想は曝露から2時間以内 ※ 過去の報告では曝露24時間以内の内服で感染事例なし ※ 曝露72時間以降では有用性が期待できない可能性がある 抗HIV治療ガイドライン 2024年版 2時間を超えても、 時間切れではない
#34.
※ 各々の解説 HIV ③ 院内で投薬が可能か、システムがあるか • 院内に緊急用の抗HIV薬が配備されているかどうか (緊急PEPの際のマニュアルがあるかどうか) • 院内で投薬できない場合、病院間または地域で 緊急でPEPを行うための連携システムがあるか (フロー図やマニュアルが作成されているか) ※出来るだけ早い対応が望ましいので、自施設にマニュアルや システムがあるかどうかは、普段から知っておくと良いです。
#35.
※ 各々の解説 ④ 被 曝露者 HIV のPEP実施の検討 1.曝露後予防内服(PEP)を行う際にチェックが 必要な情報を収集する ・活動性B型肝炎がある ・腎障害がある ・妊娠中/妊娠の可能性(可能なら妊娠反応検査) ※これらは必ずしも禁忌ではなく、薬剤選択に必要な情報です
#36.
※ 各々の解説 ④ HIV 被 曝露者 のPEP実施の検討 2.感染のリスクの高さ(①曝露源の情報から)や、 PEPのメリット、デメリットを考慮し判断する ※十分な説明の上での理解と自己決定が必要 参考: ■「血液・体液曝露事故(針刺し事故)発生時の対応」 国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター ■「抗HIV治療ガイドライン 2024年」 HIV感染症および血友病におけるチーム医療の構築と医療水準の向上を目指した研究班
#37.
HIV 手順1:リスクを吟味して介入する 曝露 源者 の迅速HIV検査が 陽性 陰性 検査困難 曝露源不明 対応 被 曝露者 HIV 感染が に急いでPEP実施 疑わしい PEP実施 可能性低い 経過観察 手順2へ
#38.
手順2: 被 曝露者 HIV のフォローアップを行う ① 針刺し事故後のベースライン検査 ・HIV抗原抗体検査 ② 6週、12週、6か月後に、 初回検査陽性なら確認検査を 行うか、専門家へ相談を。 ・HIV抗原抗体検査 ※ 抗HIV治療ガイドライン 2024年版 ※ フォローアップの内容、回数、時期などは参考です。 PEPを行った場合、フォローを専門家に委ねることも考慮してください。
#39.
補足:経過観察のみの場合 曝露 源者 B型肝炎 C型肝炎 HIV の各種検査が陰性で「経過観察のみ」 となった場合でも、ウインドウ期を考慮して 被 曝露者 に後日検査を行う施設もあります。 例:3ヶ月後に ・HBs抗原、HCV抗体、HIV抗原抗体、その他一般検査 ※ 画一的な検査フォロー検査の必要性については議論があります。 曝露源者が直近で各種感染症に罹患する病歴があったかなど、十分な吟味が必要です。