テキスト全文
意識障害の基礎とAIUEOTIPSの重要性
#1. 意識障害AIUEOTIPS+α デキレジは“こう動く”
#3. こんな経験ありませんか?① 鑑別疾患が多い意識障害.しかしEmergencyのことを忘れてはいけません. 2 意識障害で救急搬送か.
AIUEOTIPSを順番に鑑別するぞ.アルコール,血糖… 意識障害に加えて高熱と項部硬直がある!
髄膜炎かもしれない!すぐに血培&抗生剤だ! --- 初 期 対 応 後 --- ヤバレジ デキレジ 本当に細菌性髄膜炎だった…(汗)
意識障害の診断手順と初期対応
#4. こんな経験ありませんか?② AIUEOTIPSと照らし合わせるだけの診療になっていませんか? 3 昏睡患者か.
Alcohol,Insulin,Uremia,Encephalitis,
Encephalopathy,Electrolyte…ああ,鑑別が多い! ヤバレジ ?? 呼吸安定,脳幹病変を示唆する徴候なし.
eye roving movementがある.代謝性の皮質障害かな. デキレジ
#5. AIUEO TIPS 網羅的ではありますが,覚えて参照するだけでは不十分です. 4
#6. デキレジになるには? 意識障害に対する理解を深め,診療に活かしましょう. 5 ①意識障害の病巣を考える
②適切な手順で診断を詰められる
意識障害の定義と構成要素の理解
#7. CONTENTS 6 意識障害とは 病変部位 鑑別疾患 診療手順 01 02 03 04
#9. 意識の構成要素 そもそも意識とは,「覚醒」「認識」に分けて考えることができます. 8 意識 覚醒 認識 × = 清明度 思考内容
#10. 意識:覚醒 覚醒は,おもに上行性賦活系が調節の中心を担っています. 9 橋 中脳 視床・視床下部 上行性
賦活系 大脳皮質 経路のどこかが障害➔覚醒障害(狭義の意識障害)
#11. 意識:認識 認識には,大脳皮質が関与しています. 10 局所の障害 広範な障害 認知
思考
言語 の異常
行動
感情 覚醒の障害 大脳皮質の障害➔認識の障害(意識変容)
#12. 意識障害とは 意識障害は,覚醒・認識を担う部位が様々な程度で障害されることで起こります. 11 意識障害 × = 上行性賦活系の障害 大脳皮質の障害 両者が複雑に混在 覚醒の障害 認識の障害
意識障害の病変部位とその影響
#13. 意識障害とは 意識障害は,覚醒・認識を担う部位が様々な程度で障害されることで起こります. 引用:Introduction to Psychology & Neuroscience 12 ⬅のように
図示されることも
#15. 病変部位で考える意識障害 意識障害をきたしうる部位と,その病態について考えましょう. 14 前脳基底部 大脳皮質 脳幹網様体
(中脳・橋) 間脳
(視床・視床下部) 覚醒の障害 認識の障害
#16. 病変部位①:脳幹網様体 脳幹網様体は,血管・構造的に障害される(ヘルニアなど)ことが多いです. 15 脳幹網様体
(中脳・橋) 大脳皮質 間脳
(視床・視床下部) 血管障害 :脳幹出血・梗塞
構造的障害:脳(鈎回)ヘルニア→中脳圧迫
その他 :橋中心髄鞘崩壊症など
#17. 病変部位②:間脳(視床・視床下部) 間脳の障害は,後方循環系の血管障害や腫瘍性疾患で起こります. 16 脳幹網様体
(中脳・橋) 大脳皮質 間脳
(視床・視床下部) 血管障害 :脳底動脈先端症候群,両側視床梗塞
腫瘍性疾患:悪性リンパ腫,膠芽腫,下垂体腫瘍の進展など
#18. 病変部位③:大脳皮質 広範な大脳皮質障害は,様々な病態で起こる可能性があります. 17 脳幹網様体
(中脳・橋) 大脳皮質 間脳
(視床・視床下部) 血管障害 :広範な脳梗塞・出血・浮腫・ヘルニア
感染症 :髄膜炎・脳炎
機能性疾患:てんかん
その他 :二次性の脳障害(代謝性の異常全般)
意識障害における診療手順の詳細
#20. 病歴のキーワード 患者背景/発症状況などは,原因を推定する手がかりとなります. 19
#21. 意識障害の診療手順 次に,意識障害患者に遭遇したときの診療手順を確認しましょう. 20 A B C D 検査
#22. 診療手順:ABC まずは呼吸・循環動態の確認が優先です. 21 ABC D 検査 A B C D アプローチ Airway (気道):窒息
Breathing (呼吸):CO2ナルコーシスなど
Circulation(循環):敗血症など
#23. 診療手順:D 次にDの診察.意識障害におけるDは「Don’tのD」でもあります. 22 ABC D 検査 Don’t/Dysfunction of CNS Dextrose(血糖) :低血糖
Oxygen(酸素) :低酸素脳症
Nalxon(ナロキソン):麻薬中毒
Thiamin(チアミン) :ビタミンB1欠乏
#24. 診療手順:D 意識障害患者の神経診察では「局所病巣があるか(あるならどこか)」を調べます. 23 D ABC 検査 Don’t/Dysfunction of CNS
意識障害の鑑別疾患とそのメカニズム
#25. 診療手順:検査 診察所見を踏まえて,必要な検査を実施します. 24 ABC D 検査 血液:血液ガス(CO2ナルコーシス),電解質(Na,Ca,Mg異常),
ビタミンB1(Wernicke脳症),アンモニア(肝性脳症),
甲状腺機能(粘液水腫性昏睡),血漿浸透圧(HHS),
腎機能(尿毒症)
尿 :ケトン(DKA),トライエージ(薬物中毒)
画像:頭部CT/MRI(血管障害,腫瘍など)
髄液:髄液検査・細胞診(髄膜炎;細菌,ウイルス,真菌,結核,癌)
脳波:発作波(NCSE),三相波(代謝性脳症),正常(心因性)
#27. 代表的な疾患 ここでは,意識障害をきたす疾患をいくつか説明します. 26
#28. 鑑別疾患①:脳底動脈先端症候群 後方循環系は,意識を司る部位を栄養しています. 27 脳底動脈先端部の閉塞
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脳幹・両側視床・後頭葉の梗塞
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意識障害・健忘・認知機能障害
(Top of the basilar syndrome) 脳底動脈 椎骨動脈 後大脳動脈 視床 視床
#29. 鑑別疾患①:脳底動脈先端症候群 後方循環系は,意識を司る部位を栄養しています. 28 脳底動脈 椎骨動脈 後大脳動脈 視床 視床
#30. Percheron動脈 傍正中視床動脈のanomalyで,1本の血管が両側視床を栄養している場合があります. 29 脳底動脈 椎骨動脈 後大脳動脈 視床 視床 percheron動脈の閉塞
⬇
両側視床内側の梗塞
(穿通枝梗塞にも関わらず)
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意識障害・垂直性眼球運動障害
・記憶障害など
薬剤性意識障害とWernicke脳症の理解
#31. 鑑別疾患②:薬剤性意識障害 薬剤の投与により,脳の代謝異常が起こることがあります. 30
#32. 鑑別疾患②:薬剤性意識障害 市販薬や頻用薬でも,脳の覚醒に影響を及ぼすことがあります. 31 意識障害(覚醒度の低下)の原因になりうる
#33. 覚醒に関わる神経伝達物質 上行性賦活系は,脳幹部から投射される神経伝達物質により覚醒を調節しています. 画像:睡眠の科学・改定新板 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか 32 障害されると覚醒度に影響
#34. ビタミンB1枯渇 原因 鑑別疾患③:Wernicke脳症 重要な補酵素であるビタミンB1の欠乏でも意識障害をきたします. 33 脚気(beriberi) 低栄養
アルコール多飲
長期嘔吐(妊娠悪阻)
吸収不良(消化管術後) 糖代謝障害
(TCA回路) 高拍出性心不全
(Wet beriberi)
ウェルニッケ脳症
(Dry beriberi)
#35. ①眼球運動障害
(両側外直筋麻痺)
②小脳失調
③意識変容/障害 低栄養
アルコール多飲
長期嘔吐(妊娠悪阻)
吸収不良(消化管術後) 鑑別疾患③:Wernicke脳症 ウェルニッケ脳症は,アルコール多飲者だけに起こるわけではありません. 34 ウェルニッケ脳症
(Dry beriberi) ビタミンB1欠乏 ※3徴候が揃う可能性は低い ※vB1は2-3週間で枯渇しうる
#36. 鑑別疾患③:Wernicke脳症 MRIでは特徴的な所見(中脳水道・第3脳室・視床内側の高新号)を認めます. 画像:M Kobayashi, et al. Intern Med 50:2245-2246,2011. 35 異常を認めないことも➔疑ったら補充