テキスト全文
一次性頭痛の概要と重要性
#1. 頭痛一次性頭痛のみかた デキレジは“こう動く”
#3. ER診療×頭痛 救急外来には,さまざまな頭痛患者さんが来院します. 出典:頭痛の診療ガイドライン2021 2 頭痛急患
3.2% 二次性
頭痛 58. 6% 一次性
頭痛 頭痛患者は多い/原因疾患はさまざま
二次性頭痛の診断と考慮
#4. 頭痛診療:二次性頭痛 頭痛診療では,まず二次性頭痛の可能性を考えます. 参考:頭痛の診療ガイドライン2021 3
#5. 二次性頭痛:SNNOOP SNNOOPに1つでも当てはまる場合,二次性頭痛を疑いましょう. 出典:頭痛の診療ガイドライン2021 4
#6. 頭痛診療:一次性頭痛 危険な疾患を順に除外した後に,一次性頭痛を考えます. 5
緊急疾患
細菌性髄膜炎
くも膜下出血
その他の
二次性頭痛
脳動脈解離
脳腫瘍・膿瘍
緑内障 など
一次性頭痛
片頭痛
緊張型頭痛
群発頭痛
一次性頭痛の問診と特徴
#7. 一次性頭痛:問診力 一次性頭痛においても,詳細な病歴聴取が重要です. 6 嘔気・嘔吐は伴いますか?
日常動作に支障がある程度の頭痛ですか? 頭痛はどれくらいの時間続きますか?
光を眩しく感じたり,音がうるさいと感じますか? じっと安静にしている必要がありますか?
眼の奥が傷んで,じっとしていられない程ですか?
#8. デキレジになるには? 本スライドでは,片頭痛をメインに一次性頭痛のイロハをざっくりまとめました. 7 ①各頭痛の特徴を理解している
②各頭痛を適切に治療・予防できる
片頭痛の基本情報と定義
#9. CONTENTS 8 Introduction 片頭痛 緊張型頭痛 群発頭痛 01 02 03 04
片頭痛の疫学と病態生理
#11. 片頭痛:疫学 「有病者数」や「生活への障害度」が大きい片頭痛は,必ず抑えておくべき疾患です. 参考:頭痛の診療ガイドライン2021/N Engl J Med 2020;383:1866-76. 10 –EPIDEMIOLOGY- ・緊張型頭痛に次いで2番目に多い神経疾患
・女性:男性=3:1
・有病率ピークは35-39歳(約75%が≦35歳で発症)
・加齢に伴って軽快
・家族歴を有することが多い
・発作に誘因を認めることも
(月経,ストレス,チョコレート,チーズなど)
#12. 片頭痛:臨床像 片頭痛の臨床経過には4つの段階があります. 参考:頭痛の診療ガイドライン2021/N Engl J Med 2020;383:1866-76. 11
#13. ③視床が活性化
➜皮質に痛覚情報伝達(痛み自覚) ③’血管作動性ペプチド(CGRP,substancePなど)放出
➜血管が拡張・神経原性炎症が誘発 ②二次ニューロン(SpV)が活性化
➜侵害受容伝達が視床に投射 ①何らかの刺激で三叉神経が興奮
➜侵害受容伝達が脳幹に投射 片頭痛:病態 まだ完全には解明されてませんが,三叉神経の関与が示唆されています. 引用:N Engl J Med 2020;383:1866-76. 12
#14. 片頭痛:診断 二次性頭痛を除外した上で臨床診断します.診断の指標としてPOUND scoreが有名です. 13 4つ以上満たせば片頭痛の可能性が高い
片頭痛の急性期治療と薬物
#15.
薬物療法・急性期
薬物療法・予防
非薬物療法 片頭痛の治療 片頭痛治療は急性期治療と予防治療に分けられ,薬物療法が中心となります. 14
#16. 急性期治療 急性期治療における主役は,NSAIDとトリプタン製剤です. 15 軽〜中等症片頭痛の第一選択薬
※妊婦ではアセトアミノフェン
イブプロフェン®,ジクロフェナク®
ナイキサン®,ロキソニン® など
効果がなければ早期にトリプタンへ変更 NSAID NSAIDが無効な片頭痛で用いる
1/3がnon-responder
イミグラン®,マクサルト®,アマージ®
レルパックス®,ゾーミック®
禁忌:虚血性心疾患・脳血管障害の既往
片麻痺性/脳幹性片頭痛など Triptan
#17. 急性期治療:トリプタン製剤 各トリプタン製剤にはそれぞれの特徴があります. 16
#18. 17 頭痛発作の早期(≦1時間)
※予兆・前兆期の使用は無効 薬を内服するタイミングは? 3回の発作治療に失敗したら,
別のトリプタン製剤に変更
(トリプタンローテーション) 効果判定はいつ行う? 効果不良なら2時間空けて追加内服可
※推奨はされていない 追加で内服してもいい? NSAIDとトリプタンの併用は有用
各製剤で鎮痛不十分な場合に併用 NSAIDとトリプタンは併用できる?
#19. 急性期治療:新薬 近年は,新しいクラスの片頭痛治療薬が注目されています. CGRP:カルシトニン遺伝子関連ペプチド 18 Gepant Ditan
薬物乱用頭痛と予防治療
#21. 薬物乱用頭痛(Medication-Overuse Headache;MOH) 片頭痛慢性化の最も一般的な原因は,薬剤の使用過多といわれています. 参考:頭痛の診療ガイドライン2021 20 【診断基準】
頭痛が≧15日/月存在
3ヶ月を超えて頭痛治療薬を定期的に乱用
(トリプタン;≧10日/月,NSAID;≧15日/月)
【治療】
原因薬剤の中止,予防薬投与 【疫学】
年間有病率1-2%(海外)
中年層に多い
女性が≧7割
喫煙習慣・運動不足がリスク?
#22. 予防治療 急性期治療だけでは不十分な場合は,予防治療を併用します. 21 2回≧月の頭痛があり
生活に影響を及ぼす場合 頻度/期間/重症度を減らすことが目的
(最低2ヶ月は使用して効果判定)
薬物療法・急性期
薬物療法・予防
#23. 予防治療 予防治療に使用される主な薬剤は以下になります. 参考:頭痛の診療ガイドライン2021 22 ●プロプラノロール:β遮断
(インデラル®)
※リザトリプタンと併用禁忌
●ロメリジン :Ca拮抗
(ミグシス®,テラナス®)
▲カンデサルタン :ARB
(ブロプレス®) 降圧薬 抗うつ薬
抗てんかん薬 その他 ●バルプロ酸
(セレニカ®,デパケン®)
■アミノトリプチン:三環系
(トリプタノール®)
▲トピラマート
(トピナ®) ▲A型ボツリヌス毒素
(ボトックス®)
呉茱萸湯 ●保険適応 ■保険診療における適応外使用が認められている ▲保険適応外
非薬物療法とその効果
#24. 予防治療:新薬 近年は,新しいクラスの片頭痛予防薬が注目されています. CGRP:カルシトニン遺伝子関連ペプチド 23 GGRP関連薬剤
#25. 非薬物療法 薬物療法の補助として,非薬物療法を用いることもあります. 24 妊婦などは非薬理学的治療単独で予防することも
#27. 片頭痛治療:まとめ 26 制吐薬 プロプラノロール/ロメリジン
カンデサルタン/バルプロ酸
アミノトリプチン/トピラマート
A型ボツリヌス毒素/呉茱萸湯 認知行動療法
ニューロモデュレーション 非薬物 予防療法 月に2回以上の頭痛
治療しても生活に影響 抗CGRP抗体/抗CGRP受容体抗体
緊張型頭痛の特徴と治療
#29. 緊張型頭痛:疫学 日本における年間有病率は約22.4%と言われており,最多の一次性頭痛です. 参考:頭痛の診療ガイドライン2021 28 –EPIDEMIOLOGY- ・一次性頭痛のなかで最多
・女性に多い(片頭痛ほどの男女差はない)
・確率された誘因・危険因子はない
(肥満,運動不足,喫煙が危険因子とする報告も)
・高齢でも高い有病率
#30. 緊張型頭痛:診断 緊張型頭痛と診断されている患者の中には,片頭痛患者が紛れている可能性があります. 29
群発頭痛の疫学と治療法
#31. 参考:頭痛の診療ガイドライン2021 30 緊張型頭痛:治療 NSAID(とアセトアミノフェン)
による対症療法が,治療の主体.
片頭痛で使うトリプタン製剤は
ガイドライン推奨されていない. NSAID チザニジン(テルネリン®)は,
エビデンス不十分で推奨はない.
しかし日本では頻用されており,
適応外使用も認められている. 筋弛緩薬 頻発反復性,慢性型に適応あり.
アミノトリプチンが第一選択薬.
非薬物療法の選択肢に行動療法
(筋電図バイオフィードバック)がある. 予防薬
#33. 群発頭痛:疫学 片頭痛/緊張型頭痛ほど多くはありませんが,群発頭痛の要点も押さえておきましょう. 32 –EPIDEMIOLOGY- ・他の一次性頭痛ほど多くない(56-401人/10万人)
・男性が女性の3-7倍
・発症年齢は20-40歳代
・大酒家,ヘビースモーカーが多い
・誘発/増悪因子として
アルコール,ニトログリセリン,ヒスタミン
#34. 群発頭痛:病態 視床下部/ニューロペプチド/内頚動脈/三叉神経過剰興奮など複数の説があります. 33
#35. 群発頭痛:診断 群発頭痛×片頭痛の鑑別は,緊張型頭痛×片頭痛ほど難しくありません. 34
#36. 群発頭痛:治療 参考:頭痛の診療ガイドライン2021 35 急性期はスマトリプタン3mg皮下注
+酸素吸入(フェイスマスク7L/min 15分)
に関するエビデンスが確立されている. 急性期治療薬 Ca拮抗薬のベラパミル(ワソラン®)の
適応外使用が認められているものの,
maxは240mg/日(効果立証x360mg/日).
米国ではガルカネズマブが承認された. 予防治療薬 神経ブロック療法や三叉神経根切除
が予防として行われることがある.
最近は,ニューロモデュレーション
などの導入が注目されてきている. 非薬物療法
#37. 三叉神経・自律神経性頭痛(TACs) 群発頭痛はTACsに分類されており,治療薬が異なる類似疾患との鑑別が必要です. 参考:頭痛の診療ガイドライン2021 36
#38. 参考:頭痛の診療ガイドライン2021 37 発作性片側頭痛
Paroxysmal Hemicrania 群発頭痛と共にTACsに分類されているが,
インドメタシン反応性頭痛の1つでもある.
(スマトリプタンや酸素吸入は有効性なし)
【群発頭痛との鑑別点】
発作が短く,日に5回以上,女性に多い
【治療】インドメタシンが著効,予防可能
※日本採用はプロドラッグ(インフリー®)
一次性頭痛の総括と今後の展望