テキスト全文
ERでのけいれん初期対応の重要性
#1. けいれんERでの初期対応 デキレジは“こう動く”
#3. こんな経験ありませんか?① 重積状態における投薬順序は,しっかり覚えておきましょう. 2 けけけいれんの患者さんがきたぞーー!
いけ!セセセルシン®!
ん,止まらない?えっと……(わたわた) ヤバレジ 重積状態における投薬順序は覚えましょう. 専門医 …すみません(泣).
急性症候性発作の考慮と治療
#4. こんな経験ありませんか?② ERのけいれん診療では,急性症候性発作の可能性を十分考慮する必要があります. 3 けけけいれんの患者さんがきたぞーー!
いけ!セルシン®!
止まらなかったらホストイン®だ! ヤバレジ !? ちょっと待って,まず血糖を測っておこう.
むむ,低血糖だ!ブドウ糖とビタミンB1を! デキレジ
#5. デキレジになるには? ERでのけいれん診療(投薬・原因評価)をマスターしましょう. 4 ①治療の手順を把握している
②同時に原因疾患を鑑別できる
#6. CONTENTS 5 用語の整理 止める 調べる デキレジは“こう動く” 01 02 03 04
てんかんとけいれんの用語整理
#8. まずはじめに“てんかん”という用語の定義について確認しましょう. 7 てんかんの定義 特発性
(特発性てんかん) 二次性
(症候性てんかん) てんかん
- epilepsy -
“発作”を繰り返す慢性の脳「疾患」
#9. 似た用語として“発作”という言葉があります. 8 発作の定義 unprovoked seizure
(てんかん発作) provoked seizure
(急性症候性発作) 発作
- seizure -
脳神経細胞の異常興奮による「症候全般」
#10. “けいれん”とは,数々の疾患によって引き起こされる「症状」です. 9 けいれんの定義 全身の筋肉
(例;てんかん発作) 一部の筋肉
(例;こむら返り) けいれん
- convulsion -
意思とは関係なく筋収縮を起こす「症状」
#11. 混同している場面をよく見かけますが,これらの用語はすべて別物です. 10 用語の整理 ≠ ≠ 発作
seizure
症候全般 てんかん
epilepsy
疾患 けいれん
convulsion
症状
#12. 「けいれん診療」を極める上で,これらの違いを理解することが必須です. 11 用語の整理
特発性と症候性てんかんの違い
#13.
あきらかな脳病変が
認められない
(小児〜若年者てんかんの多く)
脳病変が原因となって
発症する
(高齢者てんかんのほとんど) +αその①:症候性てんかんって何? 症候性てんかんとは,脳の損傷/変性などによって引き起こされるてんかんを言います. 12 特発性てんかん 症候性てんかん てんかん
脳神経細胞の異常興奮(=発作)を繰り返す慢性疾患 “症候性てんかん”ってよく聞くけど,結局なに!? 病 因
#14. +αその①:症候性てんかんって何? 損傷/変性した脳細胞が異常興奮の発生母地となり,てんかんを発症します. 13 脳
損傷(脳血管障害,腫瘍)
変性(認知症,変性疾患) 脳細胞
の
異常興奮 症候性てんかん
高齢発症てんかんの
ほとんど
#15. +αその②:急性症候性発作とは? 急性症候性発作(acute symptomatic seizure)は,急性疾患により引き起こされる“発作”です. 14
非誘発性発作
(てんかん)
誘発性発作
≒急性症候性発作
(頭蓋内,全身疾患) unprovoked seizure provoked seizure 発作
脳神経細胞の異常興奮による「症候全般」 病 因 “急性症候性発作”ってよく聞くけど,結局なに!?
#16. +αその②:急性症候性発作とは? 代謝性/中毒性/器質性/感染性/炎症性などにより,急性中枢神経系障害をきたします. 15 疾患
頭蓋内(脳出血,髄膜炎など)
全身(低血糖,低Naなど) 中枢神経
神経系障害を
引き起こす seizure
としての
けいれん
脳血管障害と発作の関連性
#17. +αその③:脳血管障害と発作 脳血管障害と発作の関わりは大きく,高齢発症てんかんの最多原因となっています. 出典:Lancet 2020 ; 395 : 735-48. 16 高齢発症てんかんの原因 脳梗塞 脳出血 Alzheimer 変性疾患 代謝性 他 原因不明
#18. 発 症 時 期
分 類
疾 患 名
原 因 +αその③:脳血管障害と発作 重症・大脳皮質障害がある脳卒中では,seizureを引き起こすリスクが高まります. 17 7日以内
誘発性発作(急性症候性発作)
脳血管障害
脳出血で多い 7日以降
非誘発性発作
症候性てんかん
脳梗塞で多い early seizure late seizure 脳血管障害による発作
けいれんを止めるためのステップ
#20. ERにおけるけいれん診療 頓挫・鑑別・治療からなり,まずは止めるパートをマスターしましょう. 19 頓挫 鑑別 治療 初療医 専門医 1 2 3 @ER @入院or外来
#21. STEP1頓挫 -けいれんをとめる- 何よりもまず,目の前のけいれんを止めないといけません. 20 脳細胞が燃えている状態
≧30分続くと後遺症を残す可能性 CKやミオグロビンが大量に漏れる
➜横紋筋融解症,急性腎不全など 交感神経亢進(血圧上昇,不整脈)
たこつぼ型心筋症,虚血 窒息,呼吸停止,誤嚥性肺炎
神経原性肺水腫,ARDS 中枢神経 呼吸器 循環器 その他 けいれんの持続は全身にダメージ!!
#22. STEP1頓挫 -けいれんをとめる- ≧5分持続するけいれんは重積状態と判断し,速やかに治療を開始しましょう. 21 参考:てんかん診療ガイドライン2018 全身管理 薬剤投与 ジアゼパム
ロラゼパム
ミダゾラム ホスフェニトイン
レベチラセタム
ミダゾラム プロポフォール
ミダゾラム ABC評価
気道・ルート確保 気管挿管
人工呼吸器管理 Stage 01 Stage 02 Stage 03
けいれん治療の段階的アプローチ
#23. Stage 01 -まずはセルシン®- 第一段階ではBZ系薬剤が有用です.多くの施設でジアゼパムを利用していると思います. 22 無効or不十分なら速やかにStage02へ➜
#24. Stage 02 -次にホストイン®/イーケプラ®- 第二段階で用いる抗てんかん薬は,施設ごと把握の頻用薬を詳細に把握しましょう. 23 参照:N Engl J Med 2019 ; 381 : 2103-13. fPHT/LEV(/VPA)で発作頓挫に有意差なし
#25. Stage 03 -最終手段は静注麻酔薬- 第三段階は静脈麻酔薬,専門医が必須のパートです. 24 発症後≦60分を目標にStage03へ移行!
けいれんの原因評価と鑑別
#26. STEP1まとめ 施設ごとのStage01,02使用薬剤に習熟し,速やかに動けるようになりましょう. 25 参考:てんかん診療ガイドライン2018 5分 30分 60分
#28. ERにおけるけいれん診療 次に原因評価のパートに移ります(実際には①②を同時に進めます). 27 頓挫 鑑別 治療 初療医 専門医 1 2 3 @ER @入院or外来
#29. ここでもう一度,各分類を振り返りましょう. 28 復習:用語の整理
#30. 鑑別パートでは,目の前のけいれん症状が「何の症候で原因疾患は何なのか」を順に探ります. 29 STEP2鑑別 -症状➜症候➜疾患へ- ゴールはどこかな?
発作の鑑別診断の重要性
#31. STEP2鑑別 -発作 or 失神 or 心因性?- まず発作・失神・心因性を鑑別するために,それぞれの特徴を把握しましょう. 30 など など
#32. STEP2鑑別 -provoked seizure or unprovoked seizure?- 次にprovoked seizureの可能性を検索します.原因として下記疾患があります. 31 など など
#33. STEP2鑑別 -特発性てんかん or 症候性てんかん?- 誘因が見当たらない場合「epilepsyだとしたら疑わしい病巣はあるか」まで考えられると満点です. 32 症状はどこからが始まった?
既往疾患は右or左?症状に合う?
#34. 「seizureとしてのけいれんか」「provokedな要因はないか」を洗い出せるようになりましょう. 33 STEP2まとめ
デキレジの実践的対応とまとめ
#35. おまけ:共同偏視の向き 「大脳皮質は“向こう”を向かせる」と覚えて,各病態での偏視の向きを整理しましょう. 34 てんかん=機能亢進 血管障害=組織破壊 破壊=向かせられない 亢進=向かせる力強い vs
#36. おまけ:共同偏視の向き 偏視との関係を把握することで,目の前のけいれん患者の病態が予測できます. 35
#38. ERに運ばれてくるけいれん患者は,下記の4つに分類することができます. 37 それぞれの受診パターンごとに考える
#39. 何はともあれまず止める!「病着時に持続している」=「重積」と考えるべきです. 38 ①② -けいれんが持続している場合- 病着 発症 病着時に持続
=5分以上経過=重積状態 頓 挫 鑑別 入 院 重積発作であれば
基本的には入院が妥当 ≦60分で 01 02 03 03 に到達を目指す 止まらなければ
どんどん次の段階へ
#40. ERにおける役割は,急性症候性発作の可能性を第一に考えることです. 39 ③ -初発のけいれん・頓挫している場合- 病着 発症 この間に頓挫 鑑 別 帰宅 or 入院 意識清明かつ神経症状も完全消失➜帰宅も可
※初発では,経過観察入院がより安心 問診 診察 検査 他疾患を除外
➜unprovoked疑い
として専門医へパス 急性症候性発作
➜原因疾患治療へ
#41. すでに診断がついている場合も「なぜ今日,再発したのか」を考えましょう. 40 ④ -再発のけいれん・頓挫している場合- 病着 発症 この間に頓挫 鑑 別 帰宅 or 入院 「今回は急性症候性発作」の可能性も考える
意識清明かつ神経症状も完全消失➜帰宅も可 問診 診察 検査
#42. 患者さんがどのパターンに当てはまるかを見極め,適切な対応をしましょう. 41 まとめ