テキスト全文
#1. 細菌性髄膜炎ERでの初期対応 デキレジは“こう動く”
#3. こんな経験ありませんか?① 2 発熱・意識障害か.何だろう(髄膜炎だったりして).
でもこの時間に一人でルンバールするのちょっとな…
どれどれ,項部硬直はなし!まあ大丈夫か. ヤバレジ 細菌性髄膜炎は時間との勝負ですよ(怒) 専門医 え!?痙攣し始めた!? --- し ば ら く し て --- --- 診 療 後 ---
#4. こんな経験ありませんか?② 3 発熱・項部硬直・意識障害の患者さんだ!
細菌性髄膜炎の典型例じゃないか!
頭部CTを撮ったら腰椎穿刺.治療薬はなんだっけ(汗) ヤバレジ !? 今すぐ血培2set採取!CTRX+VCM投与!
腰椎穿刺はそのあとだ! デキレジ
#5. 血液や解剖学的近接部位から細菌が侵入すると,髄膜炎を起こします. 4 細菌性髄膜炎とは 頭蓋骨 硬膜 くも膜 軟膜 髄膜炎 脳実質 細菌
#6. 患者数は多くなく,遭遇したことがない人もいるかもしれません. 出典:細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014 5 細菌性髄膜炎の疫学 成人例は年間400-500人
#7. 致死率/後遺症 しかし予後は不良で,決して見逃しが許されない致死的疾患です. 出典:細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014 6 20% 30% 致死率 後遺症
#8. さらに,治療開始までの時間が予後に直結する緊急疾患です. 参考:Clin Infect Dis. 2015 Apr 15 ; 60(8) : 1162-9. 7 内科エマージェンシー 治療開始が遅れる程
死亡率が増加 時間 死亡率
#9. ER医の役割 素早く診断して治療につなげられるかどうかは,ERでの初期対応にかかっています. 8 初期対応次第 後遺症 死亡
#10. デキレジになるには? 細菌性髄膜炎の初期対応をマスターしましょう. 9 ①臨床像・身体所見を正しく解釈できる
②診療手順・治療薬を把握している
#11. CONTENTS 10 臨床像/髄膜刺激徴候 髄液検査 初期治療 デキレジは“こう動く” 01 02 03 04
#13. 古典的三徴候(+四徴)が有名ですが,必ずしも全てを認めるわけではありません. 出典:細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014 12 細菌性髄膜炎:臨床像 三徴が揃うのは44-51%
(95%の症例で2つ以上の症状を認める)
#14. 細菌性髄膜炎:臨床像 典型的には発熱・頭痛で発症後,急速に意識障害が出現・増悪します. 出典:細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014 13 発熱・頭痛 発熱・頭痛 意識障害 意識障害
#15. 下記の項目とあわせて,髄膜炎らしさを考えます. 14 病歴聴取と診察
#16. 髄膜炎における有名な診察所見として,髄膜刺激徴候があります. 15 髄膜刺激徴候
#17. 髄膜刺激徴候の有用性 それぞれの所見が,どの程度診断に有効かを把握した上で利用しましょう. 出典:細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014 16 特異度高いが感度低い
これだけで除外はできない
#18. 髄膜刺激徴候:Jolt accentuation(JA) JAはなにかと便利に使われがちですが,誤用に気をつけないといけません. 17 発熱・頭痛のみの軽症例で有用(限定的) 陰性なら除外できる?
#19. 髄膜炎?/Crowned dens syndrome? 「これは髄膜刺激徴候?」と悩む項部硬直も多く,診察には慣れが必要です. 18 頸部屈曲制限 前後方向のみ
(髄膜進展刺激)
髄膜炎 左右・回旋時も
(環軸関節炎)
CDS
#21. 細菌性髄膜炎:診断 細菌性髄膜炎の診断確定には,腰椎穿刺による髄液検査が必須です. 20 疑った時が,腰椎穿刺の適応 “ ” 単独で除外できる所見がなく,予後不良疾患であることを表した有名な格言 そうは言っても,判断のヒントが欲しい… 髄膜炎診断の難しさ=腰椎穿刺を行うかどうかの判断
#22. いつ腰椎穿刺をするのか 腰椎穿刺の是非を判断する上で,指針となりうる情報を再確認します. 21
#23. いつ腰椎穿刺をするのか これらを踏まえ,以下のような場合に腰椎穿刺を検討してはどうでしょうか. 22 細菌性髄膜炎の四徴
発熱・項部硬直・意識障害・頭痛 ≧3 ≦2 腰椎穿刺 いくつ当てはまる? No Yes 髄膜刺激徴候がある? 腰椎穿刺 当てはまる? 腰椎穿刺 他を検索 原因不明 Yes No
#24. 髄液検査:まとめ 23 しない(したくない)理由を考えない! ある程度は「空振り」を許容
腰椎穿刺を躊躇しなくてもいいようなスキルの準備 フローチャートを参考にしつつ,
結局は検査のハードルをしっかり下げておくのが一番大事
#26. 初期治療では,好発起因菌を踏まえた抗菌薬選択を行います. 出典:細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014 25 細菌性髄膜炎の起因菌 市中感染
好発 高齢
免疫不全 全年齢において肺炎球菌が最多
#27. 好発起因菌:肺炎球菌 細菌性髄膜炎は,一般感染症と区別して考える必要があります. 出典:細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014 26 PISP/PRSPの存在を無視できない
#28. 好発起因菌と抗菌薬感受性を以下にまとめます. 27 起因菌と経験的治療 だいたいは
カバー可能
#29. 経験的治療薬の選択 細菌性髄膜炎の経験的治療薬の選択は,大きく2通りあります. 28 vs 細菌性髄膜炎
診療ガイドライン 海外
感染症医
#30. 髄膜炎治療では,抗菌薬投与量が一般感染症とは異なります. 29 髄膜炎治療の特徴①:抗生剤用量 血液脳関門
BBB 通常用量では不十分
#31. 髄膜炎用量は,すぐ分かるようにしておきましょう. 出典:細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014 30 髄膜炎治療の特徴①:抗生剤用量
#32. 出典:細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014 31 髄膜炎治療の特徴②:ステロイド 過剰な免疫応答 肺炎球菌性ではエビデンス確立
他の菌では確立していない(悪化するというエビデンスもない) 合併症
(難聴,神経学的後遺症) 抑制
死亡率も低下 細菌性髄膜炎では,抗菌薬にステロイドを併用する場合があります.
#33. デキサメタゾン
9.9mg 投与タイミング・量には注意しましょう. 出典:細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014 32 髄膜炎治療の特徴②:ステロイド ※0.15mg/kg・6時間ごと×4日間
※すでに抗菌薬が開始されている場合は使用しない
※外科的侵襲後の細菌性髄膜炎でも使用しない
※肺炎球菌以外が検出されたら中止すべきという意見も 診断 抗生剤投与 抗菌薬投与10-20分前
#34. 33 初期治療:まとめ 細菌性髄膜炎 ステロイド
DEX9.9mg+Ns50ml
#36. 内科エマージェンシーを迅速に治療するために,診療の手順をマスターしましょう. 35 診療手順 ① ② ③ ④ ・血液培養 ・頭部CT
・髄液検査 ・抗菌薬(+ステロイド)
#37. 診療手順:60分以内の抗菌薬投与が必須 細菌性髄膜炎では,検体採取よりも抗菌薬投与が優先される可能性があります. 出典:細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014 36 細菌性髄膜炎は致死的感染症
治療開始までの時間が生命予後に直結する内科エマージェンシー ※髄液所見は抗菌薬投与≦24時間ならほとんど影響を受けない
※G染色・培養は投与後1-2時間でも影響を受けるが,≦8時間なら微生物が検出される可能性がある
#38. 診療手順:頭部CTは必須ではない 腰椎穿刺前の頭部CTは,必ずしも全例で行う必要はありません. 出典:細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014 37
#39. 診療手順:髄液検査で必要な項目 オーダーする項目に困ったら,とりあえず下記を検査しましょう. 38
#40. 「髄膜炎疑い」スイッチを入れたら,診療手順を速やかに切り替えましょう. 39 診療手順:まとめ 髄膜炎
疑い 血液培養
2セット 髄液検査
髄液培養 抗菌薬
投与開始 頭部CT <1時間で治療開始できなさそう Yes No 60分以内