テキスト全文
研修医に知ってほしい抗菌薬の概要と目標
#1. 研修医に知ってほしい ~抗菌薬~ 2022年ver
#3. 目標(今回は点滴のみです) ・抗菌薬の種類が分かるようになろう。 ・抗菌薬を正しく選択できるようになろう。
感染症の5大原則とその重要性
#5. 感染症の5大原則は??? ・背景 何回も唱えて ・臓器 覚えましょう! ・微生物 ・抗菌薬 ・フォロー
#6. 今日のテーマは! ・背景 ・臓器 ・微生物 ・抗菌薬 ・フォロー 他の項目については 今度レクチャーがあ るのでお楽しみに!
耐性グラム陰性桿菌に効く抗菌薬の種類
#7. Question1 この中で耐性グラム陰性桿菌に効く薬は? ST CTM CAZ MEPM CTRX ABPC TEIC TAZ/PIPC LVFX CLDM DAP VCM CMZ AZT METRO MINO GM ABPC/SBT AMK CPFX CEZ LZD AZM CFPM
#8. 耐性グラム陰性桿菌に効く抗菌薬 ペニシリン系 ・PIPC ・TAZ/PIPC セフェム系 ・CAZ ・CFPM カルバペネム系 ・MEPM モノバクタム系 ・AZT キノロン系 ・LVFX ・CPFX アミノグリコシド系 ・GM ・AMK
#9. 耐性グラム陰性桿菌に効く抗菌薬 ペニシリン系 ・PIPC ・TAZ/PIPC モノバクタム系 ・AZT キノロン系 セフェム系 ・LVFX これらの抗菌薬は ・CAZ 耐性グラム陰性桿菌を狙ってるときしか ・CPFX ・CFPM 使わない! アミノグリコシド系 カルバペネム系 ・GM ・MEPM ・AMK
耐性グラム陽性球菌に効く抗菌薬の種類
#11. 耐性グラム陽性球菌に効く抗菌薬 グリコペプチド系 ・VCM ・TEIC(テイコプラニン) オキサゾリジノン系 ・LZD(リネゾリド) リポペプチド系抗菌薬 ・DAP(ダプトマイシン)
#12. 耐性グラム陽性球菌に効く抗菌薬 グリコペプチド系 ・VCM ・TEIC(テイコプラニン) 1にVCM 2にVCM 3も4もVCM オキサゾリジノン系 5もVCM ・LZD(リネゾリド) VCMが効かない場合は感染症内科に相談を! リポペプチド系抗菌薬 ・DAP(ダプトマイシン)
耐性菌の定義とその影響
#13. 抗菌薬の話に入る前に・・・ ・背景 ・臓器 ・微生物 耐性菌について少しだけ。 ・抗菌薬 ・フォロー
#15. 耐性菌とは… ・薬剤耐性とは →本来有効であった抗菌薬が効かなくなること ・耐性菌についての明確な定義は存在しない。 WHOのサイトでは:第3世代セフェム以降の抗菌薬に耐性をもつ細菌 Antimicrobial resistance, WHO, 2020 今回のレクチャーでは、 CTRXまたはABPC/SBTより狭域な抗菌薬が効かない GPC/GNRのことを“耐性菌”と定義する
耐性グラム陰性桿菌の代表と機序
#16. 耐性グラム陰性桿菌の代表は? 『SPACE』 S セラチア P 緑膿菌 A アシネトバクター C シトロバクター E エンテロバクター 私、最初は微生物の 名前かと思ってました…。 そして、 ESBL産生菌 AmpC産生菌 CRE などなど。
#17. 耐性菌の機序 いくつか機序がありますが、 今回はそのうちの1つのβラクタマーゼについて少しだけ。
#18. βラクタマーゼ(βラクタムを分解する) 抗菌薬のβラクタム環を 分解するので抗菌薬の 効果がなくなる。 AMR Clinical Reference Center
ESBLsの特徴と感受性結果の判断
#19. βラクタマーゼ(βラクタムを分解する) Ambler分類 A 第三-四世代セフェム+モノバクタムが効かない ESBLs B カルバペネムを含めたほぼ全てのβラクタマーゼ阻害薬が効かない C ペニシリン+第一~三世代セフェムが効かない AmpC D βラクタマーゼ阻害薬が効かない
#20. ESBLs (extended-spectrum β-lactamase) ・第三世代セフェム+CFPM+モノバクタムが効かない。 でも、CMZやβラクタマーゼ阻害薬(TAZ/PIPCを含む)が 効くこともある。 ・問題となるのは腸内細菌(大腸菌とクレブシエラとプロテウス) いわゆる”PEC” ・身体の中で変化することはなく、人からもらって感染する。
#21. 感受性結果でESBLと判断するポイント 感受性結果で… CTRX、CAZ、CFPM、AZT →”R” CMZ、PIPC/TAZ、MEPM →”S” ”R”のはずのものが”S”になっているのに 『ESBL』と表示されていることがあります! そのときは必ず検査室に確認しましょう!
AmpC耐性菌の特徴と治療法
#22. ESBLs (extended-spectrum β-lactamase) [治療] ・基本はカルバペネム系(MEPM) ・軽症例ではCMZやTAZ/PIPCを使うことを考慮しても良い。 ただし、上記2つはMEPMに対して非劣勢は示せていない。
#23. ESBLs (extended-spectrum β-lactamase) [治療] <個人的な見解> ・基本はカルバペネム系(MEPM) ・基本的にはMEPM。 ・軽症例ではCMZやTAZ/PIPCを使うことを考慮しても良い。 ・軽症例や以前にESBLが出ていてCMZに感受性があるときは、 ただし、上記2つはMEPMに対して非劣勢は示せていない。 CMZでも良いかな? ・緑膿菌もESBLもカバーしたい(ex:院内発症UTI、以前の培養 で緑膿菌が検出、など)ときは、TAZ/PIPCでも良いかな?
#24. AmpC ・CFPM+カルバペネム以外のβラクタム系が効かない。 ・問題となるのは”SCE”。(“PA”はあんまり問題にならない) ・身体の中に元々いる。ある日突然AmpC過剰産生になる。 そうなるとやばい。 ・AmpCの耐性があるかないかに加えて量が大事!
PK/PDの基本概念とその重要性
#25. 感受性結果でAmpCと判断するポイント 感受性結果で… CMZ、CTRX、CAZ、AZT、PIPC/TAZ →”R” CFPM、MEPM →”S”
#26. AmpC [治療] ・基本はCFPM ・重症例やMICが高いケースはカルバペネム系(MEPM)
#27. 本題に入る前に・・・② PK/PDとかAUCとか覚えてますか? 思い出したくもない…(笑)
#28. PK/PD ・PK→phaemacokinetics(薬物動態) 『抗菌薬がちゃんと感染部位に行き着くか?』 ・PD→pharmacodynamics(薬理作用) 『感染部位で抗菌薬が細菌をやっつけられるか?』 ・MIC→最小発育阻止濃度。 MICの値よりも抗菌薬の濃度が低ければ効かない。 ・PAE→MIC値より低い濃度になっても抗菌薬の作用が持続する。 一旦抗菌薬に触れたらMIC値以下になっても 抗菌作用が続くという特徴があるということ。
#29. PK/PD 濃度依存性+長いPAE:Cmaxが重要 ex) キノロン系、アミノグリコシド系 Cmax 血 中 濃 度 AUC MIC Time above MIC 時間 時間依存性+短いPAE: MICよりも高い血中濃度を維持した時間が重要 ex) ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系 時間依存性+長いPAE:AUC/MICが重要 ex) クラリスロマイシン、アジスロマイシン、 テトラサイクリン、バンコマイシン
βラクタム系抗菌薬の種類と特徴
#31. 今回お話する抗菌薬は・・・ ・βラクタム系抗菌薬 - ペニシリン - セフェム - カルバペネム ・グリコペプチド系抗菌薬 -バンコマイシン
#32. 今回お話する抗菌薬は・・・ ・βラクタム系抗菌薬 - ペニシリン - セフェム - カルバペネム覚えるのはこれだけ! 今回は点滴のみ! ※5年間医者をやっていてこれ以外を使ったことは ・グリコペプチド系抗菌薬 ほとんどありません…。まじです…。 -バンコマイシン
#33. ここから出てくる感受性などは あくまで教科書的な感受性です 実際は地域のアンチバイオグラムを 確認してください
#36. 抗菌薬 ・βラクタム系抗菌薬 - ペニシリン - セフェム - カルバペネム ・グリコペプチド系抗菌薬 -バンコマイシン
ペニシリン系抗菌薬の特徴と使用法
#37. ペニシリン系 [特徴] ・安全域が広く、大量投与が可能 ・髄液移行性は良好◎ ・他の薬剤と比較してアレルギーの頻度が高い
#38. ペニシリン系 Cmax 血 中 濃 度 AUC MIC 時間依存性+短いPAE: MICよりも高い血中濃度を維持した時間が重要 ex) ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系 Time above MIC 時間 1日に何回も投与する!
#39. ペニシリン系で覚えるのは4種類! ・PCG(ペニシリンG®) ・ABPC(ビクシリン®) ・ABPC/SBT(ユナシン®、スルバシリン®) ・TAZ/PIPC(ゾシン®)
PCG(ペニシリンG)の特徴と使用法
#41. PCG(ペニシリンG®) [特徴] ・人類初の抗菌薬 ・連鎖球菌、肺炎球菌などのグラム陽性球菌に効く ・梅毒にも効く ・頻回に投与する必要がある ・高K血症になることがある(K 1.53mEq/100万単位) ・血管痛(静脈炎)や痙攣が起こる 転院前の人にPCGを使って高K血症にして 転院延期にした思い出があります…
#42. ペニシリン系 黄色ブドウ球菌(MSSA) 連鎖球菌 肺炎球菌 腸球菌(E. faecalis) 耐性リスクのない腸内細菌 SPACE+耐性リスクのある腸内細菌 嫌気性菌(バクテロイデス) ペニシリナーゼ非産生株には効くけど 日本では基本効かないと覚える PCG ABPC △ ◎ ◎ × × × × △ ◎ ◎ ◎ △ × × ABPC/SBT TAZ/PIPC ◎ ◎ ◎ ◎ 〇 × 〇 〇 ◎ 〇 〇 〇 ◎ 〇 ※ブドウ球菌にMRSAとCNS、腸球菌にE. faeciumは入れてない。
#43. PCG(ペニシリンG®) [Empiric & Definitive therapy] ・レンサ球菌感染症(皮膚軟部組織感染、感染性心内膜炎など) ・肺炎球菌肺炎 ・神経梅毒 ・髄膜炎菌感染症 ・ペニシリン感受性黄色ブドウ球菌感染症(特に髄膜炎)
#44. PCG(ペニシリンG®) 看護師さんの点滴交換が大変なので、 [使用方法] 持続で投与するときもあります ・通常 40kg≦:PCG 200~400万単位 q4hr <40kg:PCG 5~10万単位/kg q4hr ※グラム単位表記の場合は、100万単位=0.6g ・腎機能障害があるとき CCr 10-50:PCG 200~400万単位 q8hr CCr<10 or HD or CAPD:PCG 200~400万単位 q12hr
ABPC(ビクシリン)の特徴と使用法
#46. ABPC(ビクシリン®) [特徴] ・肺炎球菌や連鎖球菌(感受性あり)の1st choice ◎ ・腸球菌(E. faecalis)の良い適応◎(セフェムがほぼ効かない) ・グラム陰性桿菌にはほぼ効かない△ (感受性があるGNRにはDefinitive therapyで投与できる) ・最もスペクトラムの狭い抗菌薬の一つ 感受性結果をみてこれが”S”なら de-escalationで一番使う!
#47. ペニシリナーゼ非産生株には効くけど 日本では基本効かないと覚える ペニシリン系 黄色ブドウ球菌(MSSA) 連鎖球菌 肺炎球菌 腸球菌(E. faecalis) 耐性リスクのない腸内細菌 SPACE+耐性リスクのある腸内細菌 嫌気性菌(バクテロイデス) PCG ABPC ABPC/SBT TAZ/PIPC △ ◎ ◎ × × × × △ ◎ ◎ ◎ △ × × ◎ 〇 ◎ ◎ 感受性のある ◎ 腸内細菌 〇 と ◎ 〇 インフルエンザ桿菌 に効く 〇 〇 × ◎ 〇 〇 ※ブドウ球菌にMRSAとCNS、腸球菌にE. faeciumは入れてない。
#48. ABPC(ビクシリン®) [Empiric therapy] ・連鎖球菌の扁桃腺炎 ・グラム染色でよく見える 肺炎球菌性肺炎 ・リスクのない市中肺炎 [Definitive therapy] ・腸球菌感染症(E. faecalisのみ) ・リステリア感染症(特に髄膜炎) ・A群溶連菌による感染症 ・肺炎球菌による感染症 ・連鎖球菌による感染性心内膜炎 ・梅毒 ・髄膜炎菌 ・感受性のある腸内細菌や インフルエンザ桿菌による感染症
#49. ABPC(ビクシリン®) [使用方法] ・通常 ABPC 2g q6hr (IE、髄膜炎、壊死性筋膜炎で使うときには ABPC 2g q4hr) ・腎機能障害があるとき CCr 10-50:ABPC 2g q8hr CCr<10 or HD(透析日は透析後投与):ABPC 1g q12hr CAPD:ABPC 500mg-1g q12hr
ABPC/SBT(ユナシン)の特徴と使用法
#51. ABPC/SBT(ユナシン®) [特徴] ・嫌気性菌にも効く ・βラクタマーゼ産生による耐性菌にも効く ・胆嚢炎、虫垂炎、大腸憩室炎などの腹腔内感染で良い適応 (E. coli、Proteus、Klebsiellaをカバー)
#52. ペニシリン系 黄色ブドウ球菌(MSSA) 連鎖球菌 肺炎球菌 腸球菌(E. faecalis) 耐性リスクのない腸内細菌 SPACE+耐性リスクのある腸内細菌 嫌気性菌(バクテロイデス) PCG ABPC △ ◎ ◎ × × × × △ ◎ ◎ ◎ △ × × ABPC/SBT TAZ/PIPC ◎ ◎ ◎ ◎ 〇 × 〇 〇 ◎ 〇 〇 〇 ◎ 〇 ※ブドウ球菌にMRSAとCNS、腸球菌にE. faeciumは入れてない。
#53. ABPC/SBT(ユナシン®) [Empiric therapy] いずれも耐性菌リスクのない ・市中感染症(市中肺炎など) ・扁桃周囲膿瘍 ・胆嚢炎、虫垂炎、大腸憩室炎 ・咬傷による感染症
#54. ABPC/SBT(ユナシン®) [使用方法] ・通常 ABPC/SBT 3g q6hr ・腎機能障害があるとき CCr 30-60:ABPC/SBT 3g q8hr CCr 10-30:ABPC/SBT 3g q12hr CCr<10 or HD(透析日は透析後投与):ABPC/SBT 3g q24hr CAPD:ABPC/SBT 3g q24hr
TAZ/PIPC(ゾシン)の特徴と使用法
#56. TAZ/PIPC(ゾシン®) [特徴] ・かなりスペクトラムは広い! ・耐性グラム陰性桿菌を想定していないときは使わないで! ・TAZ/PIPCで効かない菌を覚えよう! GPC MRSA, PRSP, E. faecium GNR (ESBL産生菌), AmpC産生菌, MDRA, MDRP S.Maltophillia 当然 ウイルス、真菌、抗酸菌、非定型菌、 非感染症には効かない
#57. ペニシリン系 黄色ブドウ球菌(MSSA) 連鎖球菌 肺炎球菌 腸球菌(E. faecalis) 耐性リスクのない腸内細菌 SPACE+耐性リスクのある腸内細菌 嫌気性菌(バクテロイデス) PCG ABPC △ ◎ ◎ × × × × △ ◎ ◎ ◎ △ × × ABPC/SBT TAZ/PIPC ◎ ◎ ◎ ◎ 〇 × 〇 〇 ◎ 〇 〇 〇 ◎ 〇 ※ブドウ球菌にMRSAとCNS、腸球菌にE. faeciumは入れてない。
#58. TAZ/PIPC(ゾシン®) [Empiric therapy] ・耐性グラム陰性桿菌のリスクのある感染症 (カテ感染、術後感染、人エ関節感染など) ・緑膿菌感染(特に嫌気性菌感染との混合感染が疑われるとき) ・発熱性好中球減少症
#59. TAZ/PIPC(ゾシン®) [使用方法]※主に緑膿菌に対して使うときのdose ・通常 TAZ/PIPC 4.5g q6hr(30分以上かけることを推奨) ・腎機能障害があるとき CCr 20-40:TAZ/PIPC 3.375g q6hr CCr <20 :TAZ/PIPC 2.25g q8hr HD(透析後に0.75g追加) or CAPD:TAZ/PIPC 2.25g q8hr
セフェム系抗菌薬の特徴と使用法
#60. ペニシリン系まとめ 黄色ブドウ球菌(MSSA) 連鎖球菌 肺炎球菌 腸球菌(E. faecalis) 耐性リスクのない腸内細菌 SPACE+耐性リスクのある腸内細菌 嫌気性菌(バクテロイデス) PCG ABPC △ ◎ ◎ × × × × △ ◎ ◎ ◎ △ × × ABPC/SBT TAZ/PIPC ◎ ◎ ◎ ◎ 〇 × 〇 〇 ◎ 〇 〇 〇 ◎ 〇 ※ブドウ球菌にMRSAとCNS、腸球菌にE. faeciumは入れてない。
#62. Question 2 耐性菌リスクはどんな人にありますか?
#63. 耐性菌リスクはどんな人にありますか? ・過去90日で2日以上の入院 ・過去90日以内の抗菌薬使用 ・免疫抑制状態 ・胃酸抑制薬の使用 ・経管栄養 ・寝たきり ・耐性菌保菌者/以前に耐性菌を検出された人 ・血液透析 Am J Respir Crit Care Med. 2013 Oct 15; 188(8): 985-95. Up to date; Risk factors for multidrug-resistant gram-negative urinary tract infections
#64. 耐性菌リスクはどんな人にありますか? ・過去90日で2日以上の入院 ・過去90日以内の抗菌薬使用 ・免疫抑制状態 抗菌薬の使用歴がある人 ・胃酸抑制薬の使用 病院・施設に入所中または頻回に通っている人 ・経管栄養 ・寝たきり ・耐性菌保菌者/以前に耐性菌を検出された人 ・血液透析
#65. 抗菌薬 ・βラクタム系抗菌薬 - ペニシリン - セフェム - カルバペネム ・グリコペプチド系抗菌薬 -バンコマイシン
#66. セフェム系 [特徴] ・安全性が高い、時間依存性なところはペニシリン系と類似 ・第1-4世代まである ・ペニシリンは〇だけど、セフェムで×なのは →腸球菌(E. faecalis)とリステリア ・基本嫌気性菌には効かない(※CMZだけ効く!) ・髄液移行性があるのは第3世代以降 ・耐性グラム陰性桿菌をカバーできるのは、CAZとCFPMだけ
第一世代セフェムの特徴と使用法
#67. セフェム系 Cmax 血 中 濃 度 AUC MIC 時間依存性+短いPAE: MICよりも高い血中濃度を維持した時間が重要 ex) ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系 Time above MIC 時間 1日に何回も投与する!
#68. セフェム系で覚えてほしい抗菌薬 陽性菌 第一世代 CEZ(セファゾリン) 第二世代 CTM(セフォチアム)、CMZ(セフメタゾール) 陰性菌 陽性菌 陰性菌 第三世代 CTRX(セフトリアキソン)、CAZ(セフタジジム) 第四世代 CFPM(セフェピム)
#69. 第一世代セフェム CEZ(セファゾリン)
#70. CEZ(セファゾリン) [特徴] ・MSSAの1st choice!MSSAのための薬! ・髄液移行性が悪いので中枢神経系感染症には使えない
#71. セフェム系 黄色ブドウ球菌(MSSA) 連鎖球菌 肺炎球菌 腸球菌(E. faecalis) 耐性菌リスクのない腸内細菌 SPACE+耐性リスクのある腸内細菌 バクテロイデス CEZ CTM CMZ CTRX CAZ CFPM ◎ ◎ △ × △ × × 〇 〇 〇 × 〇 〇 〇 〇 × 〇 △ △ ◎ × 〇 × × × × × 〇 〇 〇 〇 〇 × × × 〇 ◎ × 〇 × × × ※ブドウ球菌にMRSAとCNS、腸球菌にE. faeciumは入れてない。
#72. CEZ(セファゾリン) [Empiric & Definitive therapy] ・MSSA感染症(髄膜炎などの中枢神経感染症以外) ・蜂窩織炎などの軟部組織感染症 ・心臓血管外科、脳外科、整形外科などの清潔手術の術前の 予防投与
#73. CEZ(セファゾリン) [使用方法] ・通常 CEZ 1-2g q8hr ・腎機能障害があるとき CCr 10-50:CEZ 1-2g q12hr CCr<10 or HD(透析後に0.5-1g追加):CEZ 1-2g q24-48hr CAPD:CEZ 0.5g q12hr
第二世代セフェムの特徴と使用法
#74. 第二世代セフェム CTM(セフォチアム) ※日本にしかないよ!
#75. CTM(セフォチアム、パンスポリン®) [特徴] 第一世代セフェムと比較して、 ・腸内細菌(大腸菌、クレブシエラ)、インフルエンザ菌、 モラキセラなどのグラム陰性菌に対して活性が強い ・黄色ブドウ球菌、連鎖球菌に対しては同等以下 同世代のCMZと比較して、 ・嫌気性菌カバーなし
#76. セフェム系 黄色ブドウ球菌(MSSA) 連鎖球菌 肺炎球菌 腸球菌(E. faecalis) 耐性菌リスクのない腸内細菌 SPACE+耐性リスクのある腸内細菌 バクテロイデス CEZ CTM ◎ ◎ △ × △ × × 〇 〇 △ × 〇 × × CMZ CTRX CAZ CFPM 〇 〇 △ × 〇 × 〇 〇 〇 ◎ × 〇 × × × × × × 〇 〇 × 〇 〇 〇 × 〇 ◎ × ※ブドウ球菌にMRSAとCNS、腸球菌にE. faeciumは入れてない。
#77. CTM(セフォチアム、パンスポリン®) [Empiric therapy] ・耐性菌リスクのない中等度の尿路感染症
#78. CTM(セフォチアム、パンスポリン®) [使用方法] ・通常 CTM 1-2g q6-8hr(Max 4g/dayまで) ・腎機能障害があるとき CCr 10-50:CTM 1-2g q12hr CCr<10 or HD:CTM 1g q24hr
#79. 第二世代セフェム CMZ(セフメタゾール)
#80. CMZ(セフメタゾール) [特徴] ・セフェム系の中で唯一嫌気性菌に効く! ・ESBLにも効く”ことが多い” ・CTM+嫌気性菌カバーってイメージ(投与方法も同じ) ・セファマイシン系→セフェム系とは構造がちょっと違う
第三世代セフェムの特徴と使用法
#81. セフェム系 黄色ブドウ球菌(MSSA) 連鎖球菌 肺炎球菌 腸球菌(E. faecalis) 耐性菌リスクのない腸内細菌 SPACE+耐性リスクのある腸内細菌 バクテロイデス ESBLに効く!? CEZ CTM ◎ ◎ △ × △ × × 〇 〇 △ × 〇 × × CMZ CTRX CAZ CFPM 〇 〇 △ × 〇 × 〇 〇 〇 ◎ × 〇 × × × × × × 〇 〇 × 〇 〇 〇 × 〇 ◎ × ※ブドウ球菌にMRSAとCNS、腸球菌にE. faeciumは入れてない。
#82. CMZ(セフメタゾール) [Empiric therapy] ・中等度までの腹腔内感染症、骨盤内感染症 ・感受性次第でESBL産生菌感染症のde-escalationに
#83. CMZ(セフメタゾール) [使用方法] ・通常 CMZ 1g q6hr or 2g q8hr(保険適応は4g/dayまで) ・腎機能障害があるとき CCr 30-50:CMZ 2g q12hr CCr 10-30:CMZ 1g q24hr CCr<10 or HD or CAPD:CMZ 0.5-1g q24hr
#84. 第三世代セフェム CTRX(セフトリアキソン)
#85. CTRX(セフトリアキソン) [特徴] ・半減期が長く、1日1回の投与でもいい。外来でも使いやすい ・腎機能での量の調節不要 ・髄液移行性◎ ・ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)にも効くことがある ・市中感染症のメロペン!的位置づけ ・無石性胆嚢炎に注意
#86. セフェム系 黄色ブドウ球菌(MSSA) 連鎖球菌 肺炎球菌 腸球菌(E. faecalis) 耐性菌リスクのない腸内細菌 SPACE+耐性リスクのある腸内細菌 バクテロイデス ESBLに効く!? CEZ CTM ◎ ◎ △ × △ × × 〇 〇 △ × 〇 × × CMZ CTRX CAZ CFPM 〇 〇 △ × 〇 × 〇 〇 〇 ◎ × 〇 × × × × × × 〇 〇 × 〇 〇 〇 × 〇 ◎ × ※ブドウ球菌にMRSAとCNS、腸球菌にE. faeciumは入れてない。
#87. CTRX(セフトリアキソン) [Empiric therapy] ・耐性菌リスクのない肺炎・尿路感染・腹腔内感染 ・細菌性髄膜炎 (ただし、PRSPカバーのためにVCMも併用する) ・重症インフルエンザ菌感染症
第四世代セフェムの特徴と使用法
#88. CTRX(セフトリアキソン) [投与方法] 腎機能で調整不要! CTRX 2g q24hr or 1g q12hr (髄膜炎では 2g q12hr)
#89. 第三世代セフェム CAZ(セフタジジム)
#90. CAZ(セフタジジム) 私の一押し!(笑) [特徴] ・耐性菌を含むグラム陰性桿菌に対して効果がある! ・逆にグラム陽性球菌や嫌気性菌には効かない!
#91. セフェム系 黄色ブドウ球菌(MSSA) 連鎖球菌 肺炎球菌 腸球菌(E. faecalis) 耐性菌リスクのない腸内細菌 SPACE+耐性リスクのある腸内細菌 バクテロイデス ESBLに効く!? CEZ CTM ◎ ◎ △ × △ × × 〇 〇 △ × 〇 × × CMZ CTRX CAZ CFPM 〇 〇 △ × 〇 × 〇 〇 〇 ◎ × 〇 × × × × × × 〇 〇 × 〇 〇 〇 × 〇 ◎ × ※ブドウ球菌にMRSAとCNS、腸球菌にE. faeciumは入れてない。
#92. CAZ(セフタジジム) [Empiric therapy] ・耐性菌リスクのある尿路感染症(グラム染色でGNRがみえるとき) ・軽症のCRBSIにVCMと併用して ・感受性がある緑膿菌のde-escalationに
#93. CAZ(セフタジジム) [投与方法] ・通常 CAZ 1-2g q8hr(保険適応は4g/dayまで) ・腎機能障害があるとき CCr 50-90:CAZ 1-2g q8-12hr CCr 10-50:CAZ 1-2g q12-24hr CCr<10 or HD(透析日は透析後):CAZ 2g q24-48hr
#94. 第四世代セフェム CFPM(セフェピム)
セフェム系抗菌薬のまとめ
#95. CFPM(セフェピム) [特徴] ・髄液移行性◎ ・CFPMで効かない菌を覚えよう GPC MRSA, (PRSP,) E. faecium GNR ESBL産生菌, MDRA, MDRP S.Maltophillia, Bacteroides 当然 ウイルス、真菌、抗酸菌、非定型菌、 非感染症には効かない
#96. セフェム系 黄色ブドウ球菌(MSSA) 連鎖球菌 肺炎球菌 腸球菌(E. faecalis) 耐性菌リスクのない腸内細菌 SPACE+耐性リスクのある腸内細菌 バクテロイデス ESBLに効く!? CEZ CTM ◎ ◎ △ × △ × × 〇 〇 △ × 〇 × × CMZ CTRX CAZ CFPM 〇 〇 △ × 〇 × 〇 〇 〇 ◎ × 〇 × × × × × × 〇 〇 × ◎ ◎ ◎ × ◎ ◎ × ※ブドウ球菌にMRSAとCNS、腸球菌にE. faeciumは入れてない。
#97. CFPM(セフェピム) [Empiric therapy] ・耐性菌リスクのある感染症の初期治療 ・発熱性好中球減少症
#98. CFPM(セフェピム) [投与方法] ・通常 CFPM 1-2g q8-12hr ※FNや緑膿菌感染では2g q8hr(保険適応は4g/dayまで) ・腎機能障害があるとき CCr 30-60:CFPM 1g q12hr CCr 11-29:CFPM 0.5g q24hr CCr<10 or HD(透析後に1g追加):CFPM 1g q24hr
#99. セフェム系まとめ 黄色ブドウ球菌(MSSA) 連鎖球菌 肺炎球菌 腸球菌(E. faecalis) 耐性菌リスクのない腸内細菌 SPACE+耐性リスクのある腸内細菌 バクテロイデス ESBLに効く!? CEZ CTM ◎ ◎ △ × △ × × 〇 〇 △ × 〇 × × CMZ CTRX CAZ CFPM 〇 〇 △ × 〇 × 〇 〇 〇 ◎ × 〇 × × × × × × 〇 〇 × ◎ ◎ ◎ × ◎ ◎ ×
MEPM(メロペン)の特徴と使用法
#101. Question 3 ・今回は点滴の抗菌薬を取り上げていますが、 どのタイミングで内服薬へスイッチしますか?
#102. 内服へ移行する際に確認すべきこと COMS criteria C:Clinical improvement observed『臨床症状が改善している』 O:Oral route is not compromised 『経口摂取可能、腸管からの吸収可能、bioavailabilityが良い』 M:Markers showing trend towards normal『臨床経過が良好』 S:Specific indication/deep seated infection requiring prolonged iv therapy 『静注抗菌薬治療が必要な感染症ではない』
#103. 抗菌薬 ・βラクタム系抗菌薬 - ペニシリン - セフェム - カルバペネム ・グリコペプチド系抗菌薬 -バンコマイシン 使ったことありますか??
#104. MEPM(メロペン®) 最強の薬と思ってた?? 効かない菌もあるんです! 考えて使いましょうね! [特徴] ・最終兵器!!!! ・MEPMで効かない菌を覚えよう GPC MRSA, (PRSP,) E. faecium GNR MDRA, MDRP S. Maltophillia 当然 ウイルス、真菌、抗酸菌、非定型菌、 非感染症には効かない ・髄液移行性◎
VCM(バンコマイシン)の特徴と使用法
#105. MEPM Cmax 血 中 濃 度 AUC MIC 時間依存性+短いPAE: MICよりも高い血中濃度を維持した時間が重要 ex) ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系 Time above MIC 時間 1日に何回も投与する!
#106. MEPM(メロペン®) MEPM 黄色ブドウ球菌(MSSA) 連鎖球菌 肺炎球菌 腸球菌(E. faecalis) 耐性菌リスクのない腸内細菌 SPACE+耐性リスクのある腸内細菌 バクテロイデス ◎ ◎ ◎ △ ◎ ◎ ◎ ※ブドウ球菌にMRSAとCNS、腸球菌にE. faeciumは入れてない。
#107. MEPM(メロペン®) [Empiric therapy] ・耐性菌リスクのある感染症 ・免疫不全の敗血症 ・術後腹腔内感染 ・壊死性筋膜炎 ・発熱性好中球減少症 おまけ、 家族もしくは本人が医療従事者の場合 院内発症の重症の感染症
#108. MEPM(メロペン®) [投与方法] ・通常 MEPM 1g q8hr (髄膜炎では2g q8hr) ・腎機能障害があるとき CCr 25-50:MEPM 1g q12hr CCr 10-25:MEPM 0.5g q12hr CCr<10 or HD(透析後投与) or CAPD:MEPM 0.5g q24hr
#109. 抗菌薬 ・βラクタム系抗菌薬 - ペニシリン - セフェム - カルバペネム ・グリコペプチド系抗菌薬 -バンコマイシン
#110. VCM(バンコマイシン) [特徴] ・基本的に耐性グラム陽性球菌をターゲットとして使う 陰性菌にはまっっったく効かない ・髄液移行性〇 ・副作用: レッドマン症候群 →予防として、1時間以上かけて投与する。 1gを超える場合は500mgあたり30分以上かけて投与する 腎障害、耳障害、静脈炎
VCMの投与方法と血中濃度測定
#111. VCM Cmax 血 中 濃 度 AUC MIC Time above MIC 時間 時間依存性+長いPAE:AUC/MICが重要 ex) クラリスロマイシン、アジスロマイシン、 テトラサイクリン、バンコマイシン
#112. VCM(バンコマイシン) [ターゲットとする菌] ・MRSA ・MRSE(メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌) ・アンピシリン耐性腸球菌 ・PRSP(ぺニシリン耐性肺炎球菌) ・ペニシリン耐性連鎖球菌
#113. VCM(バンコマイシン) [Empiric & Definitive therapy] ・耐性グラム陽性菌を想定するとき ・耐性グラム陽性球菌による血流感染を疑うとき ・PRSP(ペニシリン耐性肺炎球菌)による髄膜炎 ・壊死性筋膜炎(複合感染)の初期治療 ・βラクタムアレルギー患者でのグラム陽性菌カバー
#114. VCM(バンコマイシン) [投与方法] ・通常 初回負荷投与量:20-30mg/kg(実測体重) 維持量:1回20mg/kg(実測体重)を12時間毎に投与 抗菌薬TDM臨床実践ガイドライン2022
#115. VCM(バンコマイシン) [投与方法] ・腎機能障害があるとき 抗菌薬TDM臨床実践ガイドライン2022
#116. VCM(バンコマイシン) 補足その1:腎機能評価時の注意 ・筋肉量低下を伴う高齢、るい痩、長期臥床の方 →血清シスタチンCでの評価を推奨する。 ・過体重、肥満の方 →補正体重などを用いたCCrでの腎機能評価を行う。 ex)肥満患者(>100kg)では、 初回20-25mg/kg(実測体重3gを上限) 腎機能正常(>100mL/min)の場合は、 以降は10-15mg/kg(4g/日を上限)を12時間毎 抗菌薬TDM臨床実践ガイドライン2022
#117. VCM(バンコマイシン) 補足その2:VCMで良いかの判断 ・VCMのMICが2μg/mLの株 →AUC/MICに基づいた維持量の設計では腎障害のリスクを伴うため、 継続投与するか他剤へ変更するかの臨床的判断を行う。 ・MIC=4の株では他の抗MRSA薬を選択する 抗菌薬TDM臨床実践ガイドライン2022
#118. VCM(バンコマイシン) VCMの血中濃度測定 ・VCMは中毒域と治療域が近いため、使用するときは血中濃度を 測定する必要がある。 ・従来は、トラフ値15-20μg/mLを目標としていた。 ・トラフ値15μg/mL以上で高い臨床効果が期待されるが、 トラフ値15~20μg/mLでの管理は、腎障害のリスクとなり得る。 ・VCMでの治療開始前から腎機能低下、TAZ・PIPC併用、 利尿薬使用、ICU入院、トラフ>20μg/mLである場合は、 AKIのリスク因子となる可能性がある。 Am J Health-Syst Pharm. 2020;77:835-864
#119. VCM(バンコマイシン) VCMの血中濃度測定 ・VCMは中毒域と治療域が近いため、使用するときは血中濃度を これまでは”トラフ値”で投与量を調整していたが、 測定する必要がある。 臨床効果と安全性から、”AUC/MIC”で調整することを推奨。 ・従来は、トラフ値15-20μg/mLを目標としていた。 ・トラフ値15μg/mL以上で高い臨床効果が期待されるが、 目標AUC/MICは400~600μg・時/mL(MIC=1μg/mL)を推奨。 トラフ値15~20μg/mLでの管理は、腎障害のリスクとなり得る。 (腎機能障害例では500を超えないように調整) ・VCMでの治療開始前から腎機能低下、TAZ・PIPC併用、 利尿薬使用、ICU入院、トラフ>20μg/mLである場合は、 AKIのリスク因子となる可能性がある。 Am J Health-Syst Pharm. 2020;77:835-864
抗菌薬のまとめとTake home message
#120. VCM(バンコマイシン) 血中濃度測定のやり方 ・重症例や複雑性感染症例、腎機能障害、AKI高リスク例 治療開始早期のPK評価を行うために、 定常状態前の3回投与前後(トラフ値、ピーク値)に 初回のTDMを考慮する。(1日2回投与→翌日、1日1回投与→3日目) ・軽症/中等症例かつ腎機能正常例 4~5回投与直前(3日目)にTDMをする。 ・トラフ値→投与前30分以内で採血 ピーク値→点滴終了1-2時間で採血 抗菌薬TDM臨床実践ガイドライン2022
#121. VCM(バンコマイシン) 血中濃度測定のやり方 ・重症例や複雑性感染症例、腎機能障害、AKI高リスク例 実臨床的には、看護師側の負担も考えて、 治療開始早期のPK評価を行うために、 トラフ値だけ採血してAUC/MICを推定することが多い。 定常状態前の3回投与前後(トラフ値、ピーク値)に ただし、重症例や複雑性感染症例、腎機能障害例では、 トラフとピークを両方取るかを一度検討しましょう! 初回のTDMを考慮する。(1日2回投与→翌日、1日1回投与→3日目) ・軽症/中等症例かつ腎機能正常例 ※まだトラフ値でやっている施設も多いようです。 4~5回投与直前(3日目)にTDMをする。 ※いずれにしても薬剤師さんの力が必要です。 分からなければ薬剤部へ電話をしましょう! ・トラフ値→投与前30分以内で採血 ピーク値→点滴終了1-2時間で採血 抗菌薬TDM臨床実践ガイドライン2022
#122. βラクタム系抗菌薬のまとめ PCG ABPC ABPC/SBT TAZ/PIPC CEZ CTM CMZ CTRX CAZ CFPM MEPM 黄色ブドウ球菌(MSSA) △ △ ◎ 〇 ◎ 〇 〇 〇 × 〇 ◎ 連鎖球菌 ◎ ◎ ◎ 〇 ◎ 〇 〇 〇 × 〇 ◎ 肺炎球菌 ◎ ◎ ◎ 〇 △ △ △ ◎ × 〇 ◎ 腸球菌(E. faecalis) × ◎ ◎ 〇 × × × × × × △ 耐性菌リスクのない腸内細菌 × △ 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 ◎ SPACE+耐性リスクのある腸内細菌 × × × ◎ × × × × 〇 ◎ ◎ バクテロイデス × × 〇 〇 × × 〇 × × × ◎ ESBLに効く!? ※ブドウ球菌にMRSAとCNS、腸球菌にE. faeciumは入れてない。
#123. 広域抗菌薬のまとめ 何にでも効くわけじゃないよ! TAZ/PIPC CFPM MEPM VCM × × × × △ × × △~〇 × 〇 〇 〇 〇? × × × × 〇 × 〇 × × × × 〇 〇 × × × 〇 × × × × × × GPC MRSA PRSP E. faecium GNR ESBL産生菌 AmpC産生菌 MDRA MDRP S. maltophillia Bacteroides
#125. 腸球菌(E. faecium)に効く抗菌薬 グリコペプチド系 First choice! ・VCM ・TEIC(テイコプラニン、MRSAに使う薬) オキサゾリジノン系 ・LZD(リネゾリド、MRSAに使う薬) リポペプチド系抗菌薬 ・DAP(ダプトマイシン、MRSAに使う薬)
#126. 嫌気性菌に効く抗菌薬 βラクタマーゼ阻害薬 ・ABPC/SBT ・TAZ/PIPC ・CMZ カルバペネム系 ・MEPM リンコマイシン系 ・CLDM(半分くらい感受性) ニトロイミダゾール系 ・METRO(100%感受性あり)
#127. 髄液移行性がある抗菌薬 ペニシリン系すべて セフェム系 ・CTRX ・CAZ ・CFPM カルバペネム系 ・MEPM
#128. 補足 ・これまで示した抗菌薬投与量は、 日本語版サンフォード感染症治療ガイドアップデート版 に従っています。(2021最終更新版) ・投与量は書いてある本によって少しずつ違うので、 研修中に自分が信じられる本を見つけてみてください。 ・抗菌薬を初回投与する際は、腎機能に関係なくfull doseで 投与しましょう。
#129. Take home message ・しっかり復習して抗菌薬を適切に使えるようになろう!! これであなたも抗菌薬マスター!