テキスト全文
てんかん非専門医の基本対応
#1. てんかん非専門医としての対応 まずは“コレだけ”
#3. こんな経験ありませんか?① 一過性の神経症状を,安易に“てんかん疑い”としていませんか? 2 けいれんの患者さんか.
歩いてたら倒れて,けいれん始めたんだってー.
止まってるし楽勝♪明日脳神経内科を案内しとこう. ヤバレジ 心原性失神にともなうけいれんでした. 専門医 !?
てんかん患者の併用薬と注意点
#4. こんな経験ありませんか?② てんかん患者の併用薬には注意が必要です. 3 敗血症の患者さんがけいれんした!?
てんかんがあるのは知ってたけど,なんで今(泣)
3年以上発作がなくて,ちゃんと薬も続けてたのに… ヤバレジ …すみません(泣). バルプロ酸とメロペネムを併用してますね.
薬の相互作用については知っておきましょう. 専門医
#5. デキレジになるには? 「非専門医にも知っておいてほしい」てんかんの基礎を話します. 4 ①てんかん・鑑別疾患の特徴を把握している
②てんかん患者における管理上の注意点を知っている
#6. CONTENTS 5 てんかんとは コンサルトの前に 診断後のながれ 非専門医×てんかん患者 01 02 03 04
てんかんの定義と診療の流れ
#8. てんかんとは てんかんは,大脳神経細胞の過剰放電によって「発作」を繰り返す慢性疾患です. 出典:てんかん診療ガイドライン2018 7 てんかんの定義
①24時間以上の間隔で≧2回の非誘発性発作
②1回の非誘発性発作+その後10年間の再発率≧60%
(≒2回の非誘発性発作後の一般的再発リスク)
③てんかん症候群
#9. てんかんはcommon disease 非専門医でも,てんかん患者との遭遇は不可避です. 出典:厚生労働省HP 8 有病率5-8/1,000人
日本全体で60-100万人
#10. 診療のstep 診療は,一般外来(またはER)から始まることが多いです. 9 初期対応 評価/診断 治療 初療医 専門医 1 2 3
てんかんの鑑別疾患と初発の注意
#12. てんかんらしさ/らしくなさ 「てんかんらしさ」を適切に見積もることができていますか? 11 (一過性)意識障害 失神 けいれん 「一時的に反応が悪かった」 「けいれんしていた」 「倒れているところを
発見された」 “てんかん疑い”
よくある主訴 全部てんかん?
#13. 鑑別疾患 脳神経内科外来を案内する前に,下記の疾患は鑑別しましょう. 12
#14. 鑑別疾患:急性症候性発作 とくに初発のけいれんでは,急性症候性発作の可能性を検討しましょう. 13
問診の重要性と発症時の確認
#15. 前提:診断における脳波の有用性 診断には脳波検査が有名ですが,完全な検査ではありません. 出典:てんかん診療ガイドライン2018 14 問診ありき 問診・診察ありき てんかん患者の約50%は脳波正常
健常人でも0.5%に脳波異常 病歴聴取・身体診察が命
#16. 問診:患者背景 生育歴・既往歴・併存症などから,らしさ/らしくなさを考えます. 参考:N Engl J Med 2021;385:251-63. 15
#17. 問診:発症前 「どういう状況で発症したのか」「前兆の有無」も診断のヒントになります. 参考:N Engl J Med 2021;385:251-63. 16
#18. 問診:発症時 「けいれんしていた」等をそのまま受け取らず,詳細に聴取しましょう. 参考:N Engl J Med 2021;385:251-63. 17
てんかんの発作型と診察所見
#19. 問診:発症後 持続時間・回復過程の確認も忘れてはいけません. 参考:N Engl J Med 2021;385:251-63. 18
#20. てんかんの発作型:強直間代発作 ER受診のきっかけになることも多い強直間代発作は,詳細に説明できる必要があります. 19 開眼・無呼吸・チアノーゼ・流涎・失禁・咬舌
➜数分で徐々に覚醒.頭痛・筋肉痛・疲労感
#21. てんかんの発作型 てんかんの発作型分類についても確認しておきましょう. 参考:N Engl J Med 2021;385:251-63. 20
#22. 診察 コレがあったら“てんかんらしい/らしくない”という所見を探します. 21 舌咬傷(てんかん)
点状出血(てんかん)
顔面血管線維腫,白斑
(てんかんきたす全身疾患) 麻痺(post ictal state)
自傷痕(心因性) 心雑音(心原性失神)
血圧変動(起立性低血圧) 顔面 胸部 四肢
検査と最終判断のポイント
#23. 検査 脳だけに囚われず,心臓・電解質・血糖もちゃんと確認しましょう. 22
#24. まとめ 最終判断は専門医ですが,なるべく“らしい”症例を送るよう心がけましょう. 23 問診/診察/採血/画像
急性症候性発作?
心原性?神経調節性?その他?
(安易にてんかんとしない姿勢) すぐにコンサルト
鑑別不十分
患者/家族の表現をそのまま鵜呑み
(安易にてんかんと決めつける) 専門医の判断
てんかん or 非てんかん てんかん“疑い”
てんかんの投薬開始と治療方針
#25. 服薬忘れはないか?
(何%くらい内服しているかと聞く) 発作の頻度はどれくらいか?
(普段のコントロール) アルコール摂取の有無は?
(再発との間に量的相関) 生活リズムは乱れていないか?
(睡眠不足・疲労) +α:すでに診断がついている場合 診断済の患者さんが発作症状で受診したら,誘因がなかったかを聴取します. 24
#26. +α:薬物血中濃度・測定の意義 「てんかん患者が発作➜一律で濃度測定➜低い➜薬が犯人」は間違いです. 25
#28. 診療のstep:治療 ここから先は主に専門医の仕事ですが,少し覗き見しましょう. 27 初期対応 評価/診断 治療 初療医 専門医 1 2 3
#29. 投薬開始の判断 てんかんと診断した後は,投薬治療を行うかどうかを検討します. 出典:てんかん診療ガイドライン2018 28
#30. 投薬開始の判断 再発リスクが高いと判断した場合にのみ,投薬治療を開始します. 出典:てんかん診療ガイドライン2018 29 高齢者の初回発作後再発率
66-90% 高齢発症 Risk 1 2 3 てんかん波の検出や
神経学的・画像異常があると
再発リスク↑ 脳波・神経・画像異常 2回目発作後の再発率(≦1y)
73% 2回目の発作
抗てんかん薬の選択と妊娠時の注意
#31. 抗てんかん薬の選択 投薬治療を決めたら,適切な抗てんかん薬を選定します. 30 てんかんの型・患者背景をもとに選定
継続/量調整/変更/併用しながら発作をコントロール
#32. 抗てんかん薬の選択:高齢者 高齢発症のてんかん患者は多く,ほとんどが焦点性発作です. 参考:Lancet 2020;395:735-48. 31 高齢者では初回発作後から治療開始を考慮
焦点性発作の治療薬で開始 (副作用の少ないLEV,LTG,LCMが無難)
#33. 抗てんかん薬の選択:妊娠 バルプロ酸(VPA)は,妊娠において高いリスクを伴います. 参考:N Engl J Med 2021;385:251-63. 32 妊娠の可能性がある女性ではVPAを避ける ※1:使用する場合は避妊,定期的な妊娠検査
※2:葉酸サプリは胎児の神経学的異常リスク低下と関連
運転と抗てんかん薬の副作用
#35. てんかんと運転 てんかんと診断されたら,一定の期間運転ができなくなります. 34 ●運転に支障をきたすおそれがある発作(複雑部分発作,睡眠中に限定された発作)
➜過去2年間ない ※抗てんかん薬の有無は問わない
●運転に支障をきたすおそれがない発作(意識/運動障害を伴わない単純部分発作)
➜過去1年間ない ※抗てんかん薬の有無は問わない
※免許申請/更新の際に病状質問票への回答義務あり(虚偽の記載には罰則)
更新前にすぐ届け出ることは,現状義務化されてはいない ※医師は“任意”で診断結果を公安委員会へ提出可能 運転免許の取得条件
#37. 非専門医×てんかん患者 てんかん診療に直接携わらなくても,担当患者がてんかんを持っていることはよくあります. 36
主な抗てんかん薬
特徴・副作用
てんかん患者
併用薬
#38. 主な抗てんかん薬 使用頻度の高い抗てんかん薬の特性は,覚えておきましょう. 出典:てんかん診療ガイドライン2018 37
#39. 抗てんかん薬の副作用 抗てんかん薬それぞれに特有の副作用があります. 出典:てんかん診療ガイドライン2018 38
#40. 注意すべき併用薬 頻度は高くありませんが,発作の誘因となりうる薬には注意しないといけません. 39