#4.
ふるえやけいれんを表す言葉が多すぎる! ふるえ けいれん けいれん発作 てんかん cramp spasm convulsion seizure tremor epilepsy こむら
返り 日本語も英語も、臨床現場で明確な使い分けがされていないのが現状です。
#5.
まず用語の整理をしておきましょう 上記のようなおおまかな使い分けはありますが、現場では統一して使用されていません!
例えば、次のスライドのようなことが起こっています!
#6.
このように、同じ用語でも違う症状を指す可能性があります。
大事なことは、使われた言葉の真意を自分で再確認することです。 用語の使い方が人によって違う‼ 先生!301号室のAさんが
クランプを起こしています!!
すぐに診てください! クランプ!?
いいよ、様子見といて。筋肉がけいれんしているだけだから。痛がってるの? いや痛みは訴えてなくて。。 痛がるようなら、痛み止め使って。ちょっと救急対応で忙しいんだ!何かあったらまた
コールしてっ! ええっ!?
それって、seizure
だろう!すぐに行くよ!! あっ、先生!この患者さん、てんかんの薬飲んでて、けいれんだと思うんです。。
#7.
中枢性か末梢性かを意識する けいれんと一言で言っても、てんかんのような中枢性の症状を指すことと、筋攣縮のような
末梢性の症状を指すことがあります。中枢性で意識障害を伴うてんかんは救急対応が必要です。
#8.
診察と鑑別のポイントを知る 今回のスライドでは、けいれん発作やてんかんではなく、「ふるえ(特に振戦)」について勉強します。まず「ふるえ」にどんな種類があるかを確認しましょう。そこから、鑑別につなげます。
#9.
ふるえの種類を知ろう 患者さんが言う「ふるえ」にはいろんな種類があります。
大きく分けると「振戦」と「振戦以外」です。 では、この2つどのように見分ければいいのでしょうか?
#10.
すべてではありませんが、規則性のあるふるえの多くは「振戦」です。(クローヌスや一部のミオクローヌスも規則性を呈します)
患者さんのふるえの特徴を理解しましょう。
「振戦」の特徴に合致しないふるえを診たときは、
脳神経内科への紹介を考えましょう。
ふるえの特徴を理解するには問診と診察が重要です。 振戦の定義
骨格筋の規則的な律動性収縮による四肢、頭部あるいは体部のふるえ
#11.
ふるえの診察の4つのポイント 患者さんが手が振るえると言って、
外来にやってきました。 最近、緊張すると手が振るえて字も書けなくなるんです。 問診で以下の4つを
確認しましょう。
① いつから
(急に?徐々に?)
② どのような異常が
(規則性、常同性、持続性)
③ どの部位に
(片手?両手?頭や足?)
④ どんな時に
(安静時、動作時)
患者さんのふるえの特徴をまず捉えましょう!
#12.
症候から振戦を分類する 振戦は大きく「静止時(安静時)」と「動作時」に、さらに動作時は「姿勢時」「企図時」「運動時」
に分けられます。問診から得た症候の特徴から分類しましょう。
#13.
代表的な振戦の鑑別診断 主な振戦の違いを覚えておきましょう。大事なのは、振戦のタイプ、周波数、左右差です。
本態性振戦は、アルコールで改善することがしばしばあります。
パーキンソン病の振戦は静止時に多く、動作時に軽減、左右差を認めるのがポイントです。
小脳性は企図時に多く、やや遅い振戦です。
甲状腺中毒、薬剤性は振幅が小さく、両側に認めることが多いです。
#14.
実践!ふるえの診察① 52歳のAさんは最近、ふるえて上手に字が書けないことを主訴に総合内科の外来にきました。既往は高血圧を内服加療中のほかは特にありません。
さあ、ふるえの診察をはじめてみましょう!まずはステップ①の問診からです。 ステップ① 問診の4つのポイントを確認!いつ、どのような異常が、どの部位に、どんな時に? 半年くらい前からですね。字を書く時に、小刻みにふるえるんです。右手が主ですが、左手もなんとなくふるえるような気がします。 慢性の動作時振戦ね。診察で静止時には出ないか、どのくらいの速さのふるえか、運動失調はないか、確認しておきましょう!
#15.
実践!ふるえの診察② ステップ② 実際にふるえを確認しましょう。以下の3点が大切です。 ① 静止時振戦の確認;
両手を膝の上に置いてもらい、しばらく安静にしてもらう。
② 姿勢時振戦の確認;
次に両手を水平に挙上してもらい、しばらく観察する。指先までまっすぐ伸ばしてもらう。
③ 指鼻試験をおこなう;
最後に、人差し指をだしてもらい、自分の鼻のあたまと検者の人差し指の先との間をできるだけ素早く往復してもらう(企図時振戦や運動時振戦、運動失調を確認する)。両側施行。
常に左右差とふるえの頻度(1秒間に何回ふるえるか)を確認する。 この患者さんは、静止時にはなくて、姿勢時にふるえるわね。
左右ともふるえて、頻度は8Hzくらいかしら。
#16.
実践!ふるえの診察③ ステップ③ 実際に書いてもらおう。アルキメデスのらせんをなぞってもらう。 ふるえの診察でよくおこなうのは、アルキメデスのらせん(うずまき)をなぞってもらう検査。治療効果判定にも有用です! アルキメデスのらせん 患者さんの線
#17.
実践!ふるえの診察④ ステップ④ 原因を考える。治療が必要か判断する。 ・原因を考える:
ふるえの種類がわかったら、原因を考え、必要に応じ、頭部MRIを行い、パーキンソン病、脊髄小脳変性症などの神経変性疾患を鑑別、血液検査で甲状腺機能をチェック、薬剤性の可能性(気管支拡張薬、抗精神病薬など)をチェックする。
・治療の必要性を判断する:
日常生活でどの程度困っているのかを確認する。ふるえは完全に治すことは難しいことを説明し、治療の目標について目線を合わせる。 原因が何もなければ、本態性振戦でしょうね。治療を開始するかは患者さんと相談ね。
#18.
治療の基本を知る 治療の方針は、「ふるえを完全に抑えること」では残念ながらありません。日常生活に困らなければ、経過をみることもあります。
#19.
本態性振戦に対する治療 基本は原疾患に対する治療になります。原因のない本態性振戦の治療について勉強しましょう。
ポイントは以下の3つです。 ① 本態性振戦の治療は対症療法のみ。(次スライド)
・薬物療法
・ボトックス治療
・外科的治療(深部脳刺激術、MRIガイド下集束超音波)
② 治療目標の目線を合わせる。
・振戦は完全に抑えられないことを患者に説明する。
・日常生活に支障がなければ、治療しないのも選択肢。
③ 特に高齢者では薬物による副作用に注意!
・抗不安薬による眠気やβ遮断薬による心不全、徐脈。
#20.
本態性振戦の治療アルゴリズム 振戦の程度の評価 軽度;経過観察もしくは頓服(抗不安薬、β遮断薬) 中等度以上;
薬物療法
第1選択:プロプラノロール、プリミドン、
アロチノロール
第2選択:抗不安薬、ガバペンチン、トピラマート ボトックス治療 外科的治療
(DBS, FUS) 効果不十分 効果不十分 DBA; Deep brain stimulation, FUS; focused ultrasound surgery (日本神経治療学会;標準的神経治療:本態性振戦 一部改変) 基本的に薬物治療が中心!
(次のスライドも参照)
#21.
本態性振戦の主な薬物治療 (日本神経治療学会;標準的神経治療:本態性振戦 一部改変)
#22.
新しい治療;FUSとは? 振戦に対する外科的治療、MRIガイド下集束超音波のことです。
2019年本態性振戦に、2020年パーキンソン病の振戦に保険適応となりました。
振戦の原因となる視床腹側中間核を超音波を集束させ熱凝固します。
DBSとの違いは、頭を切らなくていいことです。
その一方で、DBSは可逆的ですが、FUSは不可逆的です。
Illustration by Storyset
#23.
脳神経内科に紹介するタイミングとは? ふるえが不規則な場合
パーキンソン症状や運動失調症状など他の神経徴候を伴う場合
急性発症や意識障害を伴う場合
日常生活に困る振戦の場合
以上のような場合は脳神経内科に紹介しましょう。
ただし、甲状腺機能亢進、薬剤性の除外は先にしておきましょう。
#24.
Take Home Messages ふるえとけいれんの違いを知る;
用語の定義は大切。でも人によって使い方が違うので注意。 ②診察のポイントを知る;
規則正しいふるえは振戦が多い。大きく分けて安静時と動作時振戦。 ③鑑別のポイントを知る;
代表的な振戦の特徴と病因を知っておく。
④治療の基本を知る;
本態性振戦の治療は薬物、ボトックス、外科的治療。FUSが承認。
⑤脳神経内科へ紹介するタイミングを知る;
発症様式、随伴症状をチェック。甲状腺中毒、薬剤性は除外しておく。
#25.
参考文献;
・日本神経学会 神経用語集.
https://www.neurology-jp.org/member/yougo/index.html, (参照 2022-2-28)
・辻省次. アクチュアル脳・神経疾患の臨床;パーキンソン病と運動異常. 中山書店, 2013.
・日本神経治療学会 標準的神経治療:本態性振戦, 2011.