テキスト全文
脳梗塞急性期治療の全体像と基本
#1. 脳梗塞急性期治療のキホン まずは“コレだけ”
#3. 診療の全体像 病型を判断したら,次は急性期治療に移ります. 2 病型診断
ラクナ/アテローム/心原性 慢性期管理
二次予防薬/その他の管理 急性期治療
抗血栓/補助療法/入院後評価
急性期治療の方法と薬剤の選択
#4. 急性期治療 脳梗塞急性期治療には,抗血栓療法・補助療法・全身管理があります. 3 抗血栓療法
-抗血栓/抗凝固- 全身管理
-血圧/離床- 補助療法
-脳保護/抗脳浮腫など-
#5. 急性期治療のキホン 非専門医も担当する可能性がある急性期治療について,キホンを整理しましょう. 4 ①各薬剤の特徴を知り,適切な抗血栓薬を選択できる
②その他の薬剤/管理についてキホンを理解している
#6. CONTENTS 5 Introduction 抗血栓療法 補助療法/全身管理 入院後評価 01 02 03 04
抗血栓療法の種類と適応
#8. 急性期治療:抗血栓療法 臨床病型によって,使用する抗血栓薬が異なります. 7 非心原性脳梗塞
抗血小板薬 心原性脳塞栓症
抗凝固薬
#9. 抗血栓療法:ラクナ/アテローム ラクナ/アテローム血栓性脳梗塞では,抗血小板薬を使用します. ※抗凝固薬だが非心原性脳梗塞で使用 8
#10. 抗血小板薬:点滴 それぞれの点滴薬の適応を把握しましょう. 9
#11. 抗血小板薬:内服 各薬剤の長所/短所を理解することで,適切な薬を選択できます. 10
#12. 抗血小板薬:DAPT 増悪リスクが高い場合,より強力な併用療法を行うことがあります. 11 対象:高リスクTIA,軽症非心原性脳梗塞 (CHANCE trial)
利点:強力な抗血栓作用
欠点:出血性合併症リスクが高くなる(特に長期投与) 抗血小板薬併用療法 - dual antiplatelet therapy:DAPT -
心原性脳塞栓症における抗凝固薬の使用
#13. 抗血栓療法・非心原性脳梗塞:まとめ 12
#14. 抗血栓療法:心原性 心原性脳塞栓症では,抗凝固薬を使用します. 13
#15. 抗凝固薬:点滴 抗凝固薬を静脈投与する場合,ヘパリンを持続点滴します. 14
#16. 抗凝固薬:ワルファリン vs DOAC 抗凝固・内服薬は,ワルファリンとDOACに大別されます. 15 ワルファリン・DOACの
有効性/合併症リスク
#17. 抗凝固薬:DOAC 各DOACの内服方法/減量基準/禁忌を把握して,適切な薬を選択しましょう. 16
#18. 抗凝固薬:投与しない 出血リスクが高い脳梗塞(とくに心原性)では,抗血栓薬を投与しないという選択肢もあります. 17 ※さらに早期開始を提唱した“1-2-3-4 day rule”もある
参考:Shunsuke Kimura et al. Stroke. 2022 May;53(5):1540-1549.
#19. 抗血栓療法・心原性脳塞栓症:まとめ 18
#20. 抗血栓療法:その他 特殊な脳梗塞や,初診時に病型が分からない場合,どの抗血栓薬を選択すれば良いでしょうか. 19 椎骨動脈解離
病型不明
トルーソー症候群
補助療法と全身管理の重要性
#21. 抗血栓療法:その他 椎骨動脈解離/トルーソー症候群/病型不明では,一般的にヘパリン点滴が選択されます. 20
#24. 急性期治療:補助療法 急性期の補助療法として,下記の治療を取り上げます. 23 脳保護
-フリーラジカル補足- 血液希釈
-微小循環を確保- 抗脳浮腫
-脳ヘルニア予防-
#25. 周囲の細胞に
神経障害 補助療法:脳保護 エダラボンはフリーラジカルを捕捉して脳神経障害を抑制します. 24 虚血部位 フリーラジカル産生 エダラボン
(ラジカット®)
フリーラジカル捕捉
#26. 補助療法:脳浮腫予防 脳浮腫・脳ヘルニアのリスクがある症例では,浸透圧利尿薬を投与します. 25 水頭症/脳ヘルニア 脳梗塞 5-7日目が極期 脳浮腫 ※重度脳浮腫では開頭減圧が必要 グリセロール
(グリセレブ®)
#27. 補助療法:血液希釈 急性期は脳血流調節能が破綻しているため,volume負荷をかけることがあります. 26 灌流圧
(血圧) 脳血流 血圧が下がると
脳血流量も低下 脳梗塞 通常時 volume負荷で灌流圧を確保 ● ● 血圧が下がっても
脳血流量を保持 血漿増量薬
(低分子デキストラン,HESなど)
全身管理の方針と血糖・脂質管理
#29. 急性期治療:全身管理 次に,脳梗塞急性期における一般的な全身管理を説明します. 28 血圧
-血圧髙値を許容- 糖・脂質
-至適血糖/スタチン-
#30. 全身管理:血圧 自動調節能破綻の理由から,ある程度の血圧高値は許容されます. 29 脳血流調節能の破綻
(降圧➜脳血流低下➜梗塞巣拡大) 基本方針:過度な降圧はしない(降圧薬中止)
血圧髙値を許容
降圧治療基準
t-PA投与前:≧185/110mmHg
投与後:≧180/105mmHg
非投与:≧220/120mmHg
#31. 全身管理:糖・脂質 適切な糖・脂質管理は,神経学的予後に影響します. 30 脂質異常
神経学的予後が悪化
スタチン投与
脂質低下/血管拡張/抗血栓/抗炎症/抗酸化作用
※発症直後の内服は有用性不明(入院中に開始)
※内服中のスタチンは継続 高血糖
再開通率⬇/梗塞巣⬆
高血糖自体が組織障害
低血糖
stroke likeな症状
低血糖自体が神経障害
至適血糖値:140-180mg/dl 血 糖 脂 質
入院後評価の方法と検査内容
#34. 入院後評価 入院後は抗血栓療法・リハビリと併行して,下記の検査を行います. 33 頸動脈
-頸動脈エコー- 心臓
-心臓エコー等-
#35. 入院後評価:頸動脈 頸動脈エコーは,治療方針や病型診断の手助けになり得ます. 34 塞栓性の病歴/画像+不安定plaque
➜A to A 梗塞かも 境界領域の梗塞巣+ICA高度狭窄/閉塞
➜分水嶺梗塞 脳梗塞+≧狭窄率70%
➜外科的治療(CEA/CAS)適応あり IMT(内膜中膜複合体) a c b 狭窄率(NASCET)
=(b-a)/c×100% 治療方針 病型予測
#36. 入院後評価:心臓① 血液検査や経胸壁心臓エコーで,心原性脳塞栓症らしさを確かめます. 35 左房内血栓 血液検査 経胸壁心エコー BNP⬆
D-dimer⬆ 左房内血栓
左房径⬆
EF⬇
弁膜症 単独で心原性と確定できる所見はない
#37. 入院後評価:心臓② 入院時にAfがなくても,Holter心電図で捕捉される場合があります. 36 Af 検出率 長時間心電図モニタリングが有効 潜在性pAf
#38. 入院後評価:心臓③ 臨床病型が不明な場合に,症例に応じて追加精査を行うことがあります. 37 経食道心エコー 下肢静脈エコー 経胸壁では分からない
左房内(左心耳)血栓
卵円孔開存(PFO)の有無
大動脈弓プラークの有無 深部下肢静脈血栓症(DVT)
+
PFO
⬇
奇異性脳塞栓症かも?