テキスト全文
免疫不全の感染症の概要と目標
#1. シニアレジデントに知ってほしい~免疫不全の感染症のみかた~
#2. 本日の目標 2 免疫不全者とは何なのか理解する
免疫不全者の感染症のアセスメントと初療ができるようになる
免疫不全者の感染症の基本的理解
#5. 背景 免疫状態 解剖学的異常・人工物 耐性菌リスク
#6. 大原則① 免疫不全者は自分から免疫不全であることを教えてくれない
見た目、年齢、性別、職業などで判断することは不可能
#8. 大原則② 8 免疫不全者の感染症は
日和見感染だけではない
当然のように免疫正常者がかかる感染症の方が頻度が多い
#10. 免疫とは 好中球、マクロファージ、樹状細胞など 貪食・融解・抗原提示 自然免疫 B細胞系による 液性免疫
T細胞による 細胞性免疫 獲得免疫 正常な表皮、粘膜による 異物の進入阻止
粘液・分泌物などによる 接着・進入阻止 物理的・化学的バリア
バリア不全の原因とその影響
#17. バリア不全
GPC
連鎖球菌群
黄色ブドウ球菌
コアグラーゼ陰性ブドウ球菌
GNR
GNR全般が問題となりうる
腸内細菌群もブドウ糖非発酵菌群も
#18. バリア不全
カンジダ
バリア不全でカンジダが問題になる時
①広域抗菌薬&鼠経CV&絶食のCRBSI
②消化管・婦人科癌がらみの感染症
③大腸穿孔の超重症Ver
#19. つまり バリア不全は
意識しなくても
大概院内感染の管理ができてれば治療できてしまってる
好中球機能不全の詳細とリスク
#24. 好中球機能
不全 GPC
連鎖球菌群
黄色ブドウ球菌(MRSA)
コアグラーゼ陰性ブドウ球菌
GNR
耐性グラム陰性桿菌腸内細菌群もブドウ糖非発酵菌群も
#25. 好中球機能
不全 無顆粒球症7日以上で
アスペルギルス
時にカンジダ
#26. 好中球機能
不全 ヘルぺス
は
時に問題になることあり
#27. つまり 発熱性好中球減少症として
迅速な培養にくわえて
CFPM±VCMの投与で初療は乗り越えられる
玄人はアスペルやヘルペスにも対峙できるとgood
液性免疫不全の原因と重篤な症例
#32. 液性免疫不全 莢膜をもつ細菌
超重症プレゼンテーションになる
肺炎球菌
Hib
髄膜炎菌
クレブシエラ
カプノサイトファーガ
緑膿菌 原虫
#33. つまり 液性免疫不全は
通常の細菌感染症の重篤なプレゼンテーションで来るので
抗菌薬の知識というより集中管理能力が大事
細胞性免疫不全の原因と病原体
#36. 大原則③ 36 CKDやDMや肝硬変は
細胞性免疫不全をきたすが
それ単独で日和見感染になることは極めてまれ
通常の感染症が重篤なプレゼンテーションで来ることが多い
#39. 細胞性免疫
不全 全てのウイルス
ヘルペスウイルス属
(特にHSV,VZV,CMV)
インフルエンザ
SARS-CoV-2
#40. 細胞性免疫
不全 特に
ニューモシスチス
アスペルギルス
他には
カンジダ、ムコール、クリプトコッカス
細胞性免疫不全における感染症の診断
#42. 細胞性免疫
不全 リステリア
ノカルジア
レジオネラ
サルモネラ
クラミジア
#43. 細胞性免疫
不全 原虫 トキソプラズマ
クリプトスポリジウム
ストロンジオイデス
#44. ついにきました 免疫不全の感染症の神髄は
細胞性免疫不全といっても過言ではない
細菌感染症ではない世界を意識する
#45. 大原則④ 45 免疫不全の感染症(特に細胞性免疫不全)は
1人の患者さんに”同時に”
複数臓器(もしくは同一臓器)に
複数の病原体が感染していることがある
#46. 大原則⑤ 46 細胞性免疫不全の感染症の診断は
基本的には存在診断が必要
組織培養陽性、組織PCR陽性、病理陽性など
マーカーのみでの診断はなるべくしない!!
免疫抑制剤と抗がん剤の影響
#47. 大原則⑥ 47 細胞性免疫不全の感染症に対して
Empiric therapyは原則しない
Non-HIVの時のPcPくらい
#49. 免疫抑制剤と免疫不全 49 *Cyclophosphamideのみ★★
#50. ステロイドと免疫不全 50 免疫不全のリスクとなるのは
PSL 16mg/day 8週間以上
PSL 15-20mg/day以上(基本的には3週間以上)
総投与量PSL換算で700mg以上
PSL 5mg/day for 3years≒PSL 30mg/day for 30days N Engl J Med 2004;350:2487-98
Rev Infect Dis. 1989;11(6):954-63
Ann Rheum Dis. 2012 Jul;71(7):1128-33
#51. 51 Ann Rheum Dis 2012;71:1128–1133
#52. Arthritis Rheum 21 : 37-44, 1978
#53. 免疫抑制薬と免疫不全 メトトレキサート
ミコフェノレート酸モフェチル
シクロスポリン/タクロリムス 軽度の細胞性免疫不全 投与量によるが
好中球減少、細胞性免疫不全
液性免疫不全 シクロフォスファミド
#54. TNF-α阻害薬と免疫不全 結核の再活性化リスクの上昇
PSL 5mg/day相当の免疫不全を起こす”イメージ” 注:私見です
#55. つまり 55 リウマチ科医が使う薬は
だいたい軽い細胞性免疫不全を起こす
#56. 抗がん剤と免疫不全 56 抗腫瘍性抗生物質(アドリアマイシン、ダウノマイシン…)
微小血管阻害剤(オンコビン、パクリタキセル…)
白金製剤(シスプラチン、カルボプラチン…)
トポイソメラーゼ阻害薬(イリノテカン…)
代謝拮抗薬(フルオロウラシル…) アルキル化剤(エンドキサン、メルファラン…)
代謝拮抗薬(メトトレキサート…)
プリンアナログ(フルダラビン…) 好中球減少のみ 好中球減少
細胞性免疫不全
液性免疫不全
癌と免疫不全の関係性
#57. 抗体製剤と免疫不全 他の抗体は適宜しらべる。インタビューフォームなどを参照
#58. つまり 58 多くの抗がん剤は
好中球減少していないときは何の免疫不全も来さない
一部特殊なものと抗体製剤に注意
#59. むしろケモ中の患者は 59 「嘔気止め」や「倦怠感」のため
デカドロンやリンデロンに注意すべし
#61. 癌と免疫不全 61 粘膜や表皮にできるもの
消化管癌
皮膚癌
婦人科癌
膀胱・尿管癌
肺癌 e.t.c. バリアを侵さないもの
骨腫瘍
前立腺癌・腎癌
脳腫瘍
乳癌
リンパ腫/白血病 e.t.c. バリア不全あり バリア不全なし
#62. 癌と免疫不全 62 癌そのものが免疫不全をきたすもの
T細胞性白血病・リンパ腫
多発性骨髄腫
B細胞性白血病(急性・慢性)・リンパ腫 細胞性免疫不全 液性免疫不全
#63. つまり 63 固形癌はそれ自体では
免疫不全をきたすとしてもバリア不全だけ
血液悪性腫瘍は液性・細胞性免疫不全をきたす
参考図書と感染症診療のリソース
#64. 参考図書 64 感染症診療のロジック
感度と特異度からひもとく感染症診療のDecision making
免疫不全患者の呼吸器感染症
病院内/免疫不全関連感染症診療の考え方と進め方
癌患者の感染症診療マニュアル
雑誌 Hospitalistシリーズ などなど