テキスト全文
心肺停止の乳児の状況と救急対応
#2. 生後4か月 乳児 心肺停止 13:00 母親が授乳の際にうたた寝
➡気づいたら呼吸が停止しており救急要請
13:15 救急隊接触後、心肺停止(波形:心静止)と判断
➡CPR開始・救急搬送
13:25 病着 CRP継続
13:40 来院後15分間ACLS継続するも、蘇生に反応せず
スタッフは当該乳児の蘇生に限界を感じている中、
あなたは、心肺蘇生継続中に状況把握と現状説明のため
患者家族と対話することに
蘇生継続か中止の判断基準と家族への伝え方
#3. 今回のテーマ ①蘇生継続か蘇生中止の判断基準
②家族への伝えかた
#4. 今回のテーマ ①蘇生継続か蘇生中止の判断基準
②家族への伝えかた ●救急外来などの超急性期の現場では時間的猶予がない
●各症例の個別性も非常に高い
➡画一的な方法はないがSPIKESモデルを参考に
避けるべき話し方や、理想的な流れを考えてみる
SPIKESモデルに基づく悪い知らせの伝え方
#5. 悪い知らせの伝え方
SPIKES モデル 参考)緊急ACP VitalTalkに学ぶ悪い知らせの伝え方,大切なことの決め方 伊藤香, 他 医学書院
※当スライド以降のスライドも一部参考に作成
会話に備えるためのSetupの重要性
#7. S: Setup
会話に備える(情報・場所・人)
周囲に人がいる・騒がしい場所は避ける ●臨床経過や検査結果(話し合いに必要な臨床情報)
・病状の伝え方や想定質問と回答を準備
●プライバシーの保たれる場所
・面会室や面談室など可能であれば個室で
#8. S: Setup の一例
会話に備える(情報・場所・人) 面談室などの個室をセッティング
他に来院すべき家族・親戚の確認
必要に応じて多職種の同席も
「●●科の医師の◆◆と申します。」
患者の理解を把握するためのPerception
#10. P: perception
患者の理解を把握する
文脈を意識せず、本題や結論を伝える ●現在の状況・病状について理解しているかを把握
・理解が乏しければ本題の前に経過を説明
●実際に聞いていないのか、理解できていないのか
●解釈モデルや心情、期待も併せて評価
患者の許可を得るためのInvitationの手法
#11. 「救急隊の方から何かお話を聞かれていますか?」 P: perception の一例
患者の理解を把握する
#12. 悪い知らせの伝え方
SPIKES モデル
#13. I: invitation
本題に入る前に患者の許可を得る
文脈を考えず、いきなり本題を切り出す ●「これから病状(現状)について説明させて
いただいてもよろしいでしょうか?」
●心境に配慮しようとしていることや
ペースに合わせて話を進めようという姿勢を伝える
#14. 「●●くんの現在の状態について説明させて
いただいてもよろしいでしょうか?」 I: invitation の一例
本題に入る前に患者の許可を得る
簡潔に伝えるためのKnowledgeのポイント
#15. 悪い知らせの伝え方
SPIKES モデル
#16. K: knowledge
簡単にわかりやすく伝える
回りくどい言い方 or 専門用語の羅列 ●一番重要な内容をheadline(新聞の見出し)
のように短く簡潔な言葉で伝える
●相手が理解できるよう医学用語の言い換えを
●headlineの前に、警告(warning shot)を出す
・「残念ながらあまりいい知らせではありません…」
#17. 「残念ながら、非常につらいことを
お伝えしなければなりません。」
「●●くんは現在、心停止の状態が続いており、
スタッフ全員で懸命に治療にあたっていますが、
治療に反応がない、非常に厳しい状態です。」
「心停止からこれだけの時間が経過しているため、
●●くんにどれだけ治療を施しても生き返る見込みはないのが現状です。」 K: knowledge の一例
簡単にわかりやすく伝える
患者の感情に対応するEmotionの重要性
#18. 悪い知らせの伝え方
SPIKES モデル
#19. E: Emotion
患者の感情に対応する
感情を無視して話を進める ●揺れ動く相手の感情を受け止め・支え・共感を示す
●感情的になっているときは話が入ってこない
➡まずは相手の感情に対応する
参考)NURSE
#20. 「突然の出来事で動揺されることと思います。」
「これまで育児も懸命に
されてきたことと思います。」
「私には今のお二人の悲しみは想像しがたいほどの
ものであると、心中お察しします。」 E: Emotion の一例
患者の感情に対応する
話し合った内容のまとめと今後の方針
#21. 悪い知らせの伝え方
SPIKES モデル
#22. S: Summarize
話し合った内容のまとめ・今後の方針
一方的に話を打ち切り、診療に戻る ●これまでの内容をまとめ、今後の方針を伝える
・治療の中止 or 期限を設けて治療を継続するか
●思った以上に医療者の話は伝わっていない
➡リマインドが非常に大切
●こんなはずではなかった…という事態を防ぐ
#23. 「これ以上心臓マッサージを続けたり、
薬を使い続けることは●●くんのお体を傷つける
事にしか繋がりません。」
「大変心苦しいですが、最期の死亡確認を
させていただきます。」 S: Summarize の一例
話し合った内容のまとめ・今後の方針
救急外来での病状説明のまとめと個別性の考慮
#24. 救急外来での病状説明まとめ(私見含む) ●超急性期の現場で相手との信頼関係を気づくのは
非常に難しい
➡常に相手の立場に立って考える
●SPIKESモデルなどのスキルは非常に大切だが、
無理に当てはめようとすると不自然な会話になることも
➡個別性を考慮し臨機応変に・ヒントとして用いる
●死亡確認は、残される家族のこれからの人生を左右する