テキスト全文
β-ラクタム系抗菌薬の概要と目次
#1. ミニマム抗菌薬シリーズ β-ラクタム系抗菌薬 - カルバペネム系とその他のβ-ラクタム系薬 -
#2. executive summery / カルバペネムは温存すべき最終兵器である // カルバペネムが無効の微生物を整理する /// カルバペネムは多くの場合代替薬である //// PK-PD理論に基づき適切な投与設計を行う
#3. もくじ / カルバペネム系抗菌薬のアウトライン // 静注用カルバペネム系抗菌薬 1種類 /// 経口(カルバ)ぺネム系抗菌薬 1種類 //// モノバクタム系抗菌薬 1種類
カルバペネム系抗菌薬の特性と作用機序
#4. もくじ / カルバペネム系抗菌薬のアウトライン // 静注用カルバペネム系抗菌薬 1種類 /// 経口(カルバ)ぺネム系抗菌薬 1種類 //// モノバクタム系抗菌薬 1種類
#5. カルバペネム系抗菌薬のアウトライン / β-ラクタム系抗菌薬 = 細胞壁の合成阻害作⽤ - 細胞壁上のペニシリン結合蛋⽩(penicillin-binding protein; PBP)に結合 - 殺菌的(bactericidal)に作⽤する抗菌薬 細胞膜 [細胞壁合成阻害] 細胞壁 / β-ラクタム系抗菌薬 [タンパク合成阻害] - ペニシリン系 / テトラサイクリン系 - セフェム系 // マクロライド系 → セファロスポリン系 /// リンコマイシン系 → セファマイシン系 //// アミノグリコシド系 - カルバペネム系 - モノバクタム系 リボソーム // グリコペプチド系 [核酸合成阻害] / キノロン系 核酸
#6. カルバペネム系抗菌薬のアウトライン / β-ラクタム系抗菌薬 = 細胞壁の合成阻害 - カルバペネムは多種のPBPに対して親和性あり → 広域スペクトラムである所以 細胞膜 [細胞壁合成阻害] 細胞壁 / β-ラクタム系抗菌薬 [タンパク合成阻害] - ペニシリン系 / テトラサイクリン系 - セフェム系 // マクロライド系 → セファロスポリン系 /// リンコマイシン系 → セファマイシン系 //// アミノグリコシド系 - カルバペネム系 - モノバクタム系 リボソーム // グリコペプチド系 [核酸合成阻害] / キノロン系 核酸
カルバペネム系抗菌薬の投与設計と使用上の注意
#7. カルバペネム系抗菌薬のアウトライン / 投与設計をより深く考えてみる - 投与間隔: 薬剤の⾎中濃度半減期の4-6倍が⽬安 半減期 およそ1時間 半減期 およそ2時間 半減期 6時間以上 → 4-6時間毎投与(ペニシリンG,アンピシリンなど) → 8-12時間毎投与(セファゾリン,セフェピムなど) → 24時間毎投与(セフトリアキソン)
#8. カルバペネム系抗菌薬のアウトライン / 投与設計をより深く考えてみる - TAMを延⻑させるのに投与時間を延⻑する → PK/PD理論上,治療効果を向上させる可能性がある → お⾦が掛からない(スタッフの理解を得る必要はある) → 緊急疾患を疑う場合(=急速に⾎中濃度を⾼めたい時) は除く - 敗⾎症性ショック,細菌性髄膜炎の初回投与時など 少なくとも「30分で点滴」はダメ
#9. カルバペネム系抗菌薬のアウトライン / β-ラクタム系抗菌薬の中で最も広域 - 常に「他のβ-ラクタム(BL)にde-escalationできないか︖」考える セフェピム + メトロニダゾール,ピペラシリン・タゾバクタム など // “Try to reserve for the critically ill patients” - “critically ill” だけでは...不⼗分 薬剤耐性菌の保菌がわかっており,関与が否定できない 最適な抗菌薬を選択する時間的猶予がない カルバペネム以外の薬剤に耐性である = 他に選択肢がない 多くの場合カルバペネムはalternativeである
#10. カルバペネム系抗菌薬のアウトライン / β-ラクタム系抗菌薬の中で最も広域 - よく⾒る薬剤耐性菌対策に使⽤する根拠は乏しくなりつつある → ESBLs産⽣: セフメタゾール が⾮劣勢とするデータが集積 → AmpC型BLase過剰産⽣: セフェピム が⾮劣勢とするデータが集積 - そうはいってもローカルファクターは到底無視できない → 特に緑膿菌の感性率は頭においておくべき → 年に⼀度は必ずアンチバイオグラムを参照すること
カルバペネム無効の微生物と耐性機序
#11. カルバペネム系抗菌薬のアウトライン / カルバペネム無効の微⽣物をまとめる グラム染色像 グラム陽性ブドウ球菌 グラム陽性レンサ球菌 菌名 MRSA Enterococcus spp. Clostridioides difficile グラム陽性桿菌 耐性機序 PBPの変異 PBPの種類・発現の割合 Corynebacterium jeikeium Nocardia brasiliensis グラム陰性桿菌 その他の細菌 Stenotrophomonas maltophilia Elizabethkingia meningoseptica 染色体性にカルバペネマーゼを産生 Mycoplasma spp. 細胞壁を持たない Chlamydia spp. 細胞内寄生的な細菌である Legionella spp. Chlamydophila pneumoniae
#12. カルバペネム系抗菌薬のアウトライン / カルバペネム無効の微⽣物をまとめる カルバペネマーゼ産生菌には無効 その他の機序でカルバペネム耐性の細菌には無効 真菌・ウイルス・寄生虫には当然無効
静注用カルバペネム系抗菌薬の詳細
#13. もくじ / カルバペネム系抗菌薬のアウトライン // 静注用カルバペネム系抗菌薬 1種類 /// 経口(カルバ)ぺネム系抗菌薬 1種類 //// モノバクタム系抗菌薬 1種類
#14. 静注カルバペネム 1/1 メロぺネム / 中枢神経系への移⾏性: 有 // 腎機能障害時の⽤量調節: 要 /// 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 //// 妊婦への投与: 可 ///// 溶解液: ⽣理⾷塩⽔または5%ブドウ糖液
#15. 静注カルバペネム 1/1 メロぺネム / ⾎中半減期: およそ1時間 – 頻回投与︕ - 近年⻑時間点滴(extended infusion)が注⽬されている: 3時間/回 // 臨床使⽤する場合の注意点 - けいれん: イミペネム・シラスタチンよりは少ない - 薬物相互作⽤: バルプロ酸の⾎中濃度を低下させる ※ カルバペネムは他のβ-ラクタムとの交差アレルギーが⾮常に少ない /// 標準的な投与設計: 1g/回を8時間毎に点滴静注
#16. もくじ / カルバペネム系抗菌薬のアウトライン // 静注用カルバペネム系抗菌薬 1種類 /// 経口(カルバ)ぺネム系抗菌薬 1種類 //// モノバクタム系抗菌薬 1種類
経口カルバペネム系抗菌薬の特性
#17. 経口(カルバ)ペネム 1/1 ファロペネム 主たる標的臓器: 中枢神経以外 / バイオアベイラビリティ: 30%程度 // 緑膿菌に効果がない /// 現時点ではこれといった使い道がない.エビデンス集積が必要 - ESBLs産⽣腸内細菌⽬細菌感染症の維持治療期,など︖ - 耐性菌時代に活路が⾒出される,かもしれない... 処⽅例(正常腎機能の成⼈において): 1回300mgを1⽇3回(朝⼣⾷後)内服
#18. もくじ / カルバペネム系抗菌薬のアウトライン // 静注用カルバペネム系抗菌薬 1種類 /// 経口(カルバ)ぺネム系抗菌薬 1種類 //// モノバクタム系抗菌薬 1種類
モノバクタム系抗菌薬の特性と使用法
#19. モノバクタム系抗菌薬 1/1 アズトレオナム / 中枢神経系への移⾏性: 有 // 腎機能障害時の⽤量調節: 要 /// 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 //// 妊婦への投与: 可 ///// 溶解液: ⽣理⾷塩⽔または5%ブドウ糖液
#20. モノバクタム系抗菌薬 1/1 アズトレオナム / セフタジジムとR-1側鎖が同⼀ - 抗菌スペクトラムもほぼ同⼀ = 緑膿菌をカバーする,が耐性多し - セフタジジムとの交差アレルギーあり アズトレオナム // メタロβ-ラクタマーゼ(≒カルバペネマーゼ)に安定 - カルバペネマーゼ産⽣菌に対する治療選択肢 - ただし別の機序で耐性獲得の場合あり → 他の薬剤と併⽤する セフタジジム
#21. モノバクタム系抗菌薬 1/1 アズトレオナム / ⾎中半減期: およそ1時間 – 頻回投与︕ // 臨床使⽤する場合の注意点 - セフタジジムとの交差アレルギー - あまり使⽤されない割に薬剤耐性が多い /// 標準的な投与設計: 1g/回を6時間毎に点滴静注
総評と抗菌薬の使用に関する考察
#22. 総評 / メロぺネム: ★★★★★ - これだけ知っていればOK.とにかく温存. カルバペネム無効の菌を押さえておくこと. // ファロペネム: ★★☆☆☆ - いずれ出番がある,かも・・・ /// アズトレオナム: ★★★☆☆ - 耐性菌時代の中で復権.使用頻度は低いが覚えておいて損はない
#23. 終 ミニマム抗菌薬シリーズ β-ラクタム系抗菌薬 - ペニシリン系 -