テキスト全文
肺アスペルギルス症の診断と背景
#1. 肺アスペルギルス症の診断 スペクトラムで考える 新潟大学医歯学総合病院
高次救命災害治療センター/呼吸器・感染症内科
番場祐基
IPA・CPA 2026
アスペルギルスの重要性と病態
#4. 4 感染部位による真菌症の分類 表在性真菌症
深部皮膚真菌症
深在性真菌症(日和見)
深在性真菌症(風土病) 血流感染症(カンジダ、アスペルギルス、トリコスポロン、クリプトコックスなど)
肺(気道)真菌症(アスペルギルス、ムーコル、クリプトコックス、ニューモシスチスなど)
中枢神経感染症(クリプトコックスなど)
その他、播種性
#6. 6 なぜ、アスペルギルスが重要? Anatomy of the Human Body (1918)
Henry Gray アスペルギルスは、環境中に広く存在し、吸入によって肺に侵入する
通常は感染することなく排除されるが、宿主側の免疫状態に応じて多彩な病態を呈する
#7. Med. Mycol. J. Vol. 58(No. 3), 2017 より作図 日本の剖検例における深在性真菌症の推移
#8. Medical Mycology, 2020, 0, 1–8 日本の剖検例における深在性真菌症の推移
(白血病+MDS症例) アスペルギルスが最も多く、次いで混合感染としてカンジタ、ムーコルが続く
#9. Medical Mycology, 2020, 0, 1–8 肺真菌症で重要なのは、アスペルギルスと接合菌症(カンジダは播種性病変)
#10. 10 なぜ、アスペルギルスが重要? 病態が多彩なので、
スペクトラムとして理解すると
整理しやすいです
というお話
肺アスペルギルス症のスペクトラム
#11. 11 1 2 3 肺アスペルギルス症のスペクトラム 肺アスペルギルス症の診断 肺アスペルギルス症の治療 INDEX 肺アスペルギルス症
#12. 12 1 2 3 肺アスペルギルス症のスペクトラム 肺アスペルギルス症の診断 肺アスペルギルス症の治療 INDEX 肺アスペルギルス症
#13. 13 肺アスペルギルス症のスペクトラム 侵襲性肺
アスペルギルス症
IPA 単純性肺
アスペルギルス症
SPA アレルギー性
気管支肺
アスペルギルス症
ABPA 深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014 慢性進行性肺
アスペルギルス症
CPPA 慢性肺
アスペルギルス症
CPA
アスペルギルス症の分類と診断
#14. 14 肺アスペルギルス症のスペクトラム Med Mycol. 2023;61(8):myad074. Lancet Infect Dis . 2025;25(3):312-324.
#15. 15 肺アスペルギルス症のスペクトラム Med Mycol. 2023;61(8):myad074. Lancet Infect Dis . 2025;25(3):312-324. 境界領域? クリアカットに
分類できる?
#16. 16 肺アスペルギルス症のスペクトラム 背景疾患・病態をスペクトラムで理解する
#17. 17 肺アスペルギルス症のスペクトラム=境界線は明確に引けない Immunocompromised Immune dysfunction Normal Immune hyperactivity 造血幹細胞移植後
血液悪性腫瘍 免疫抑制薬
自己免疫性疾患 肺局所免疫の低下・構造改変
COPD/間質性肺炎/肺NTM症 アレルギー
喘息 IPA CPA ABPA sub-acute IPA
(CNPA) CCPA CFPA Aspergilloma Aspergillus
Nodule Severe Asthma with fungal sensitization
(SAFS)
#18. 18 肺アスペルギルス症のスペクトラム 診断から治療まで At a glance Immunocompromised Immune dysfunction Normal Immune hyperactivity 造血幹細胞移植後
血液悪性腫瘍 免疫抑制薬
自己免疫性疾患 肺局所免疫の低下・構造改変
COPD/間質性肺炎/肺NTM症 アレルギー
喘息 IPA CPA ABPA sub-acute IPA
(CNPA) CCPA
CFPA Aspergilloma Aspergillus
Nodule Severe Asthma with fungal sensitization
(SAFS) GM抗原 アスペルギルスIgG抗体 (アスペルギルスIgE抗体) 抗真菌薬(アゾール系) ステロイド
#19. 19 肺アスペルギルス症のスペクトラム Immunocompromised Immune dysfunction Normal Immune hyperactivity 造血幹細胞移植後
血液悪性腫瘍 免疫抑制薬
自己免疫性疾患 肺局所免疫の低下・構造改変
COPD/間質性肺炎/肺NTM症 アレルギー
喘息 IPA CPA ABPA sub-acute IPA
(CNPA) CCPA CFPA Aspergilloma Aspergillus
Nodule Severe Asthma with fungal sensitization
(SAFS)
#20. 20 肺アスペルギルス症のスペクトラム IPAからCPA IPA sub-acute IPA
(CNPA) CCPA CFPA Lancet Infect Dis 2015 Eur Respir J 2016 <1ヶ月 1-3ヶ月 3ヶ月< 免疫抑制 肺の構造改変 IPAかCPAか「分類」するよりも、病態として「どっち寄り?」かを考える
肺アスペルギルス症の診断方法
#21. 21 小括1
肺アスペルギルス症の「スペクトラム」を意識すると理解しやすい
#22. 22 1 2 3 肺アスペルギルス症のスペクトラム 肺アスペルギルス症の診断 肺アスペルギルス症の治療 INDEX 肺アスペルギルス症
#23. 23 患者背景・リスク因子 症状・身体所見・画像所見 微生物学的検査・血清学的検査 肺アスペルギルス症の診断
IPAとCPAの診断基準
#25. IPAの診断 微生物学的検査 病理学的検査 少なくともいずれか EORTC/MTG診断基準
<Proven: 確定診断> 局所の培養か、組織培養or組織PCRが陽性=侵襲的検査(気管支鏡検査)が必要 Clin Infect Dis. 2020;71(6):1367-1376.
#26. Clin Infect Dis. 2020;71(6):1367-1376.
#27. 27 肺CT所見 Angio-invasive Airway-invasive 結節、浸潤影壊死
“halo-sign”
“reversed halo”
“air crescent sign” 気管炎、気管支炎
(細)気管支肺炎
気管支周囲の斑状影
“tree in bud”
気管支拡張 肺アスペルギルス症の診断 Sub-acute 空洞性病変 免疫抑制 好中球減少 呼吸器疾患 Eur Respir J. 2016;47(1):45-68.
Eur J Radiol. 2024:171:111290. 常にこの通りではない
#28. 28 EORTC/MTG基準の例外:IAPA、CAPA 肺アスペルギルス症の診断 IAPA
Influenza-associatedpulmonary Aspergillosis CAPA
COVID-19-associatedpulmonary Aspergillosis
#29. 29 EORTC/MTG基準の例外:IAPA、CAPA 肺アスペルギルス症の診断 Lancet Respir Med. 2024;12(9):728-742. ・重度のウイルス性肺炎により、アスペルギルスに対する免疫機能が低下
・必ずしもEORTC/MTG基準にあるような基礎疾患を有さない
#30. 30 ICU入室患者における肺アスペルギルス症 肺アスペルギルス症の診断 Intensive Care Med. 2024;50(4):502-515.
Clin Infect Dis. 2024:ciae633. これに加えて、ARDSと心臓手術後がリスク
CPAの診断と微生物学的検査
#32. 32 肺アスペルギルス症の診断- CPA CCPA CFPA Eur Respir J 2016 免疫抑制 肺の構造改変 ・症状
・画像所見 ・血清学的検査
・微生物学的検査 ・背景、リスク(既存の肺構造の破壊)
#33. 33 結節のみ 組織浸潤なし
確定診断は生検でのみで得られる 非免疫不全患者で症状が軽度またはない
空洞病変が3ヶ月以上進行しない
微生物学的検査・血清学的検査で診断 背景(肺)疾患+空洞病変と症状の進行
微生物学的検査・血清学的検査で診断 肺アスペルギルス症の診断- CPA CCPA CFPA Aspergilloma Aspergillus
Nodule CCPAが進行し、少なくとも肺の2葉に及ぶ重度の線維性破壊により、肺機能が著しく低下したもの
#34. 34 肺アスペルギルス症の診断 IPAもCPAも「微生物学的検査」が確定診断には重要 (比較的稀ではあるが)抗真菌薬耐性
抗真菌薬は高価かつ副作用の問題がある ・・・とはいえ、
しばしば検査は侵襲的+判断に困る(コンタミネーションの問題) 「上手に」血清学的検査を利用する
血清学的検査の重要性と注意点
#35. 35 肺アスペルギルス症の診断ー血清学的検査 Med Mycol. 2015;53(5):417-39より、引用改変
#36. 36 肺アスペルギルス症の診断ー血清学的検査 IPA sub-acute IPA
(CNPA) CCPA CFPA 免疫抑制 肺の構造改変 GM抗原 アスペルギルスIgG抗体
#37. 37 ガラクトマンナン抗原の注意点 肺アスペルギルス症の診断ー血清学的検査 カットオフ値が異なる 偽陽性が多い 適切な運用 カットオフ値はODI=1.0
(メーカー推奨は0.5)FUNDICUでは0.5
BALFや髄液もODI≧1.0 輸液1,2)や血液製剤3)などの製造過程で混入する可能性 1)Clin Microbiol Infect. 2024;30(5):682.e1-682.e4
2)Sci Rep. 2024;14(1):2552.
3)Clin Microbiol Infect. 2020;26(11):1555.e9-1555.e14.
4)J Infect. 2022;84(1):80-86. スクリーニングには使用しない
(有用4)とされているのは、急性白血病に対する化学療法導入とallo-HCT例くらい)
#38. 38 アスペルギルスIgG抗体 肺アスペルギルス症の診断ー血清学的検査 1)PLoS One. 2020;15(3):e0222738.
2)Mycoses. 2021;64(7):701-15.
3) Microbiol Spectr. 2023; 11: e0343522
4) Med Mycol J. 2024;65(3):41-47. 2022年5月に沈降抗体測定試薬が販売中止
2024年8月にアスペルギルス抗体(IgG, ELISA)が保険収載された
感度も特異度も高い1,2)検査であるが、
A. fumigatus以外のアスペルギルスによるCPAでは偽陰性3,4)が問題となる
#39. 39 患者背景・リスク因子 症状・身体所見・画像所見 微生物学的検査・血清学的検査 肺アスペルギルス症の診断-小括2 適正な運用と解釈が大事
肺アスペルギルス症の治療編への導入
#40. 40 肺アスペルギルス症のスペクトラム 診断から治療まで At a glance Immunocompromised Immune dysfunction Normal Immune hyperactivity 造血幹細胞移植後
血液悪性腫瘍 免疫抑制薬
自己免疫性疾患 肺局所免疫の低下・構造改変
COPD/間質性肺炎/肺NTM症 アレルギー
喘息 IPA CPA ABPA sub-acute IPA
(CNPA) CCPA
CFPA Aspergilloma Aspergillus
Nodule Severe Asthma with fungal sensitization
(SAFS) GM抗原 アスペルギルスIgG抗体 (アスペルギルスIgE抗体) 抗真菌薬(アゾール系) ステロイド