堺市立総合医療センター
細菌性髄膜炎のマネジメント
#感染症科 #髄膜炎 #細菌性髄膜炎 #髄膜炎菌
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最終更新:2022年9月22日
サル痘のまとめ (2022/6/11更新)
#サル痘
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最終更新:2022年6月12日
CDI overview
#感染症科 #感染対策 #CDI #CD腸炎 #Clostridioides difficile
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グラム陰性桿菌の実践的分類
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感染性心内膜炎のまとめ
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新型コロナウイルスワクチン(COVID-19ワクチン)Q&A
#感染症科 #ワクチン #新型コロナウイルス感染症 #COVID-19
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最終更新:2021年2月1日
発熱性好中球減少症 Febrile Neutropenia
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COVID-19ワクチンアップデート(2021.5版)
#感染症科 #ワクチン #新型コロナウイルス感染症 #COVID-19
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SARS-CoV-2の重要な変異株 (オミクロンとその亜系統) 2022年11月版
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ミニマム緑膿菌
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2023.1.31時点のCOVID治療薬と濃厚接触者の就業制限の考え方とワクチンまとめ
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5類感染症となるCOVID-19への対応 - 5類化への対応・院内感染対策・早期治療の重要性 -
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2023.1.25改訂 細菌マニュアル ver.8
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ガイドラインを比較してみた C.difficile感染症 診断と治療 (ガイドライン2022順序)
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C. difficile感染症 Updates
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2023年1⽉21⽇ 梅毒 overview 堺市⽴総合医療センター 感染症内科 ⻑⾕川耕平
はじめに • 梅毒は性⾏為感染症 (STD, sexual transmitted disease) である • 病歴聴取など, 患者のプライバシーに踏み込むことが多く, 普段より丁寧 な診療を⼼がける必要がある
STDを疑ったとき • 患者がSTDを疑っているかどうかで問診の難しさが変わる • STDについて問診するときは下記を参考にするとよい1) - Partners:性交渉の相⼿の⼈数、性別、特定or不特定 - Practices:OSの有無、ASの有無 - Protection from STDs:コンドームの使⽤ - Past History of STDs:⾃⾝とパートナーのSTD既往 - Prevention of pregnancy:妊娠計画や、避妊の有無 1. MMWR Recomm Rep. 2021;70(4):1-187.
問診の際に気をつける点 1. STDの診断のため, 様々な病歴を聞くことが⼤事な医学的理由を伝える 2. 問診する医療従事者が, 様々な性的指向を特別視しない聞き⽅をする 3. 患者の⽣物学的/社会的性別を問わず, 問診時は極⼒, 異性の医療従事者が 同席する (男性同⼠でも同様) ⽇本医事新報社 jmed58「外来でどう診る?性⾏為感染症」1章
梅毒とは • 梅毒 (Syphilis) とは, Treponema pallidumによって⽣じる感染症である • 早期 (1・2期), 早期潜在, 後期潜在, 晩期 (3期) に分類される • 疾患表出型が様々で, “the great imitator”と呼ばれることもある Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 237, 2865-2892.e8
曝露 *ゴム腫が感染後5ヶ⽉で⽣じた報告あり 潜伏期間 (10-90⽇) 1期梅毒 潜伏期間 (4-10週) 感染⼒あり (性⾏為or⺟体など) 1年間 中枢神経 浸潤 25-60 % 症候性 5% 髄膜炎 脳神経炎 眼 髄膜⾎管梅毒 無症候性 早期潜伏梅毒 (1年以内) 後期潜伏梅毒 (1年以降) 晩期梅毒 感染⼒なし 早期神経梅毒 2期梅毒 再発 24% 感染⼒あり (⺟体) 4年間 Emerg Infect Dis. 2016;22(10):1846-1848. ⼼⾎管梅毒 10% 感染10年以降 80% 晩期梅毒 ゴム腫 15% 感染5年以降* (より早期のことも) 後期神経梅毒 進⾏⿇痺 2-5% 感染15年以降 脊髄瘻 2-9% 感染15年以降 Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 237, 2865-2892.e8より作成
梅毒の歴史 • コロンブスが「新⼤陸」を発⾒した1492年以降, 乗組員によって「旧⼤陸」 へ梅毒が持ち込まれた1) • インド航路発⾒により, 1512年には⽇本へ到達している2) • 1910年, サルバルサンが梅毒に有効と報告され, 1940年代にペニシリン 単離が成功した後に梅毒治療に応⽤された2) 1. Clin Infect Dis. 2005;40(10):1454-1463. 2. モダンメディア.2016;62(5):173-183.
感染経路 • 早期顕症梅毒 (1・2期) 患者の病変部位との, 主に粘膜 (と⽪膚) を接触す る⾏為, つまり多くの場合は性⾏為によって感染する1) • 他には妊婦梅毒からの垂直感染や, 稀に接触感染2)や⾎液曝露による感染 伝播3)も⽣じる • 早期顕症梅毒は感染率が30%1) • 必ずしも性器-性器間の感染ではなく, オーラルセックスのみでも病変があ れば感染が成⽴する 1. N Engl J Med. 1992;326(16):1060-1069. 2. Pediatr Infect Dis J. 2021;40(10):892-898. 3. Medical Microbiology: A Guide to Microbial Infections, 19th ed. 67, 693-700.e1
梅毒患者は激増している 10万⼈当たり報告数は 1. 東京都(21.3) 2. ⼤阪府(15.5) 3. 広島県(12.8) 4. 熊本県(8.6) 5. ⾹川県(8.3) IDWR 2022年第42号 https://www.niid.go.jp/niid/ja/syphilis-m-3/syphilis-idwrc/11612-idwrc-2242.html
性別・年齢による報告数 男性は若年〜中年, ⼥性は若年に増えている IDWR 2022年第42号 https://www.niid.go.jp/niid/ja/syphilis-m-3/syphilis-idwrc/11612-idwrc-2242.html
抗体検査 • ⾮トレポネーマ試験 (NTT)…感染者⾎清とカルジオリピン-コレステロー ル-レシチン抗原との反応性に基づく検査で, 治療効果判定・再感染判定に ⽤いる。STS。RPR, VDRL。 • トレポネーマ試験 (TT)…トレポネーマの特異抗原に対する抗体を検出す る検査で, 感染後は陽性が続く。TPLA, TPHA, CLEIA, FTA-ABS ®︎ UpToDate
検査結果と解釈 ⾮トレポネーマ試験 陰性 トレポネーマ試験 確認トレポネーマ試験 解釈 梅毒未感染 感染直後の潜伏期間 陰性 陰性 陽性 陽性 陰性 陽性 陰性 梅毒治癒後 後期潜伏梅毒 1期梅毒のごく初期 プロゾーン現象 ⽣物学的偽陽性 陽性 陽性 梅毒感染 (治療・未治療) 流⾏性トレポネーマ症 陽性 陰性 ⽣物学的偽陽性 N Engl J Med. 2020;382(9):845-854.より作成
J Clin Microbiol. 2021;59(10):e0010021.
⽣物学的偽陽性 • 主にNTTで起こり, TTで⽣じることもある • NTTはヒトの組織中に存在する脂質を抗原 としているため,T. pallidumに感染してい ない患者でも陽性となることがある • titerはRPR≦8倍となる Can J Infect Dis Med Microbiol. 2005;16(1):45-51.
RPR • カード法 (倍数希釈法 [1, 2, 4, 16倍, …]) • ⾃動化ラテックス⽐濁分析 (⼩数点第⼀位までの連続値) • カード法8倍と⾃動化法6.0は相関する J Clin Microbiol. 2018;56(11):e01003-18.
プロゾーン現象 • ⾼⼒価の抗体により抗原抗体複合体の凝集が阻害され, 凝集試験が偽陰性 となる (陽性が視認できなくなる) 現象で, 梅毒での発⽣率は0.83% • ⼀期および⼆期梅毒のどの臨床段階でも起こる可能性があり, 妊娠や神経 梅毒, HIVを合併していると⽣じやすい • 臨床的に梅毒が疑われ, TT陽性, NTT陰性 or 低値の場合, 検体を希釈し再 度NTTを⾏う Clin Infect Dis. 2014;59(3):384-389.
組織学的検査 • 浮腫上の潰瘍床に著明なリンパ形質細胞浸潤が認められ, 内⽪細胞の腫脹 を含む著明な⽑細⾎管増殖が認められる • スピロヘータは, Warthin-Starry染⾊またはSteiner染⾊を⾏うか, 免疫染 ⾊で確認する Diagnostic Pathology of Infectious Disease, 16, 429-467
リンパ球, 組織球, 形質細胞か らなる混合浸潤が認められ, 内 ⽪細胞の腫脹と増殖あり HE ×100 特徴的な閉塞性動脈炎所⾒ HE ×400 ⾎管壁・その周囲に⾚で標識 されたスピロヘータが多数 免染 ×400 Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 237, 2865-2892.e8より
1期梅毒 硬性下疳 (⽂献3より引⽤) • T. pallidumへの曝露後10-90⽇を経て, 硬 性下疳や⿏径リンパ節腫脹を呈する • 硬性下疳で痛みがあるのは50%, 30%で多 発する1) • 有痛性の場合はヘルペス合併も考える2) 1. Sex Transm Infect. 2016;92(2):110-115. 2. Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 237, 2865-2892.e8 3. N Engl J Med. 2020;382(9):845-854.
2期梅毒 • 硬性下疳から4-10週後に⽣じる • 全⾝にT. pallidumが巡っており, 多種多様な症状を呈する (“the great imitator”の時期) • 特に⼿掌と⾜底を含む全⾝に, 典型的には痒みのない発疹がみられること が多い (ただし40%に掻痒感があったする報告もある) • 熱, リンパ節腫脹, 粘膜病変, 脱⽑症, ⾻膜炎, 肝炎 (ALPが主に上昇), 腎炎 など多岐にわたる N Engl J Med. 2020;382(9):845-854. Sex Transm Dis. 1980;7(4):161-164.
(A) ⼿掌発疹 (B) 過⾓化を伴う⾜底発疹 (C) 梅毒性発疹̶体幹後部 (D) 梅毒性斑状脱⽑症 (E) 梅毒性⼝腔粘膜病変 (F) 男性性器コンジローマ Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 237, 2865-2892.e8
悪性梅毒 • 2期梅毒の稀で重度の変異型 • 全⾝状態が悪く, 急速に進⾏す る多形性の潰瘍病変を呈する • HIV感染者での報告が最多 Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 237, 2865-2892.e8 Open Forum Infect Dis. 2017;4(3):ofx139.
潜在梅毒 • 症状を伴わず, 梅毒⾎清反応のみを認める状態 • 早期潜在→感染成⽴後1年以内, 後期潜在→1年以上と定義される • 潜在梅毒から約25%で再燃し, その90%が早期潜在で起こる • 後期潜在梅毒から性交渉による感染伝播は起こらないと⾔われているが, 先天梅毒は感染後5年まで起こりうる Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 237, 2865-2892.e8
晩期梅毒 • 未治療の場合, 感染から5-30年で潜在梅毒から進展する • 感染性はない • 神経梅毒, ⼼⾎管梅毒, ゴム腫が三⼤表現型だが, 抗菌薬曝露が増えた結 果, ⼼⾎管梅毒は稀になった - ⾎管の炎症により, ⼤動脈基部の拡張およびそれに伴う⼤動脈弁閉鎖不 全症や冠動脈狭窄, 冠動脈瘤をきたす Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 237, 2865-2892.e8
神経梅毒 • かつて神経梅毒は晩期にしか起こらないとされていたが, 現在は感染初期 からT. pallidumの神経浸潤が⽣じることがわかっている1) - 早期神経梅毒で髄膜・脳⾎管への浸潤による症状を呈するのは2-5%1-2) - 後期神経梅毒では, 脊髄瘻や進⾏⿇痺 (認知機能低下etc) をきたす1) • HIVによらず神経症状がなければ早期梅毒で髄液検査を⾏う必要はない3) • 晩期梅毒, 眼・内⽿梅毒, 治療反応性が悪い場合に髄液穿刺を検討する4) 1. N Engl J Med. 2019;381(14):1358-1363. 2. Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 237, 2865-2892.e8 3. CLINICAL INFO.HIV.GOV [reviewed Jul 13, 2022]. https://clinicalinfo.hiv.gov/en/guidelines/adultand-adolescent-opportunistic-infection/syphilis?view=full 4. MMWR Recomm Rep. 2021;70:1-187.
神経梅毒の診断 各検査の感度・特異度 (⽂献1より作成) 検査 感度 (%) 特異度 (%) 早期神経梅毒 晩期, 症候性神経梅毒 晩期, 症候性神経梅毒 ⾎清VDRL, RPR 100 50-75 90 CSF VDRL* 75 30-70 100 ⾎清FTA-ABS, TPHA 100 96 60 CSF FTA-ABS 100 99 50-70 WBC >5-10/μL** 100 95 97 蛋⽩ >45mg/ml 90 95 <50 抗体検査 髄液検査 *⽇本ではコマーシャルベースで測定できないためCSF RPRを測定するが感度が落ちる2) **HIV合併例では>20/μLを採⽤すると特異度が上昇するかもしれない3) 1. N Engl J Med. 2019;381(14):1358-1363. 2. Sex Transm Dis. 2012;39(6):453-457. 3. J Infect Dis. 2004;189(3):369-376.
治療 • 早期梅毒 (1・2・早期潜在) 1. Benzathine penicillin G 2400万単位 1回/週 筋注 2. AMPC 500mg + プロベネシド 500mg 1⽇4回 14⽇間 3. DOXY 100mg 1⽇2回 14⽇間 • *抗菌薬開始24時間前からPSL40-60mgを検討 後期潜在梅毒, ⼼⾎管梅毒*, ゴム腫 1. Benzathine penicillin G 2400万単位 1回/週×3 筋注 2. AMPC 500mg + プロベネシド 500mg 1⽇4回 28⽇間 3. DOXY 100mg 1⽇2回 28⽇間 ※AMPCとプロベネシドの投与量は専⾨家により少し幅がある MMWR Recomm Rep. 2021;70:1-187. Int J STD AIDS. 2016;27(6):421-446.
アモキシシリンとプロベネシド • プロベネシドは, ペニシリン系抗菌薬の腎尿細管分泌を阻害し尿中排泄を 低下させる1) → 抗菌薬の⾎中濃度を⾼いまま維持できる • HIV+梅毒 (CD4陽性細胞中央値389/μL, RPR中央値96倍) に対して, AMPC 3g+プロベネシド投与により95.5%の患者で4倍以上RPRが低下2) • - 腰椎穿刺が治療前に⾏われたのは全体の約5%のみ - 早期梅毒は14⽇間で⼗分だが, 後期梅毒は28⽇治療が良い傾向 AMPC 2〜3g/⽇ (+プロベネシド 750mg/⽇) で開始することが多い 1. プロベネシド添付⽂書 https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3942001F1040_1_08/ 2. Clin Infect Dis. 2015;61(2):177-183.
治療-神経梅毒• 神経梅毒 (眼・内⽿梅毒含む) ※抗菌薬開始24時間前からPSL40-60mgを検討 1. Penicillin G 2400万単位/⽇ 静注 10-14⽇間 2. Procaine penicillin G 2400万単位 1⽇1回 筋注+プロベネシド 500mg 1⽇4回 内服 10–14⽇間 3. DOXY 100mg 1⽇2回 28⽇間 4. AMPC 2g + プロベネシド 500mg 1⽇3回 28⽇間 5. CTRX 2g 1⽇1回 筋注 or 静注 10–14⽇間 • 後期梅毒に準じた治療期間とするために, 治療終了後にBenzathine penicillin G 2400万単位 筋注/週×1-3を追加してもよい MMWR Recomm Rep. 2021;70:1-187. Int J STD AIDS. 2016;27(6):421-446.
Jarisch-Herxheimer reaction • スピロヘータを抗菌薬治療したあと数時間以内に, 発熱や筋痛などのイン フルエンザ様症状をきたす反応で, 破壊されたトレポネーマに対する免疫 応答と考えられている1) • 梅毒全体では30%程度に⽣じる (ペニシリン>DOXY) が, 早期梅毒 (⼆期 >初期>早期潜伏期) で起こりやすい2) • アセトアミノフェンによる対症療法で通常直ちに回復するため1), あらか じめ処⽅しておくことも多い 1. Travel Med Infect Dis. 2013;11(4):231-237. 2. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2018;32(10):1791-1795.
ステロイド • 早期梅毒ではステロイド投与によりJHRを予防できる可能性がある1) • CDCは, 内⽿梅毒・眼梅毒に対するステロイド投与に関して, 利点が確実 ではないため推奨も反対もしていない2) • UKでは, JHRでの重⼤な合併症が懸念される⼼⾎管梅毒・神経梅毒 (眼・ 内⽿含) について, 抗菌薬投与24時間前からPSL 40-60mgを開始し, 3⽇ 間投与することを推奨している3) 1. Acta Derm Venereol. 1968;48(1):15-18. 2. MMWR Recomm Rep. 2021;70:1-187. 3. Int J STD AIDS. 2016;27(6):421-446.
妊婦梅毒 • 妊婦梅毒では, 妊婦が未治療であれば36%で先天梅毒を⽣じうる • 特に1・2期梅毒, 妊娠後期での治療開始, カード法≧8倍の場合はリスクが ⾼い • ⾎清RPRは治療開始時, 出産時に測定することが推奨されるが, 治療失敗 が臨床所⾒から予想される場合は, 測定を早める。 • 感染後5年間, 垂直感染リスクがある PLoS One. 2014;9(7):e102203. MMWR Recomm Rep. 2021;70:1-187. Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 237, 2865-2892.e8
妊婦梅毒の治療 *アレルギーの場合, 減感作を⾏う • 梅毒のステージに応じたペニシリン2400万単位筋注を1-3回⾏う1) • 出産30⽇前までに治療を完了し, (できれば) RPRを4倍以上低下させる1) • ⽇本では最近までペニシリン筋注を⾏うことができなかったため*, ⽇本 性感染症学会はAMPC500mg 1⽇3回内服での治療を推奨2) • 早期妊婦梅毒ならAMPC500mg 1⽇3回 30⽇間で先天梅毒を予防できる 可能性があるが, 後期梅毒では78⽇間内服しても3割で先天梅毒が発⽣3) *2021年9⽉27⽇にステルイズ®⽔性懸濁筋注 (ベ ンジルペニシリンベンザチン⽔和物) が承認された 1. MMWR Recomm Rep. 2021;70:1-187. 2. ⽇本性感染症学会:梅毒診療ガイド 2018.06.15. 3. Emerg Infect Dis. 2020;26(6):1192-1200.
適切に管理されなかった妊娠梅毒の対応 • • 以下のいずれかを満たした場合, ⺟体治療が不⼗分であるとみなす - ペニシリン以外での治療 - 治療後30⽇以内に出産した場合 - 出産時に感染の臨床症状が⾒られる場合 - 出産時の⺟体抗体価が治療前の4倍である場合 新⽣児については, 診察やRPR, 組織PCRを確認した上で, 必要な検査を提 出し, ペニシリンGを投与する (割愛) MMWR Recomm Rep. 2021;70:1-187.
治療効果判定 • 早期梅毒は1年以内, 後期梅毒は2年以内に, RPRがカード法で4倍以上低下すれ ば治療成功と判断する1) • ⾃動化法は2倍以上の低下を⽬安とするが2), カード法と相関し治療により4倍以 上低下するという報告もある3)。 • 治療反応性が乏しい場合, 以下の可能性を評価する1) 1. アドヒアランスの問題 2. 再感染 3. HIV合併 4. 神経梅毒合併 1. MMWR Recomm Rep. 2021;70:1-187. 2. NIID 梅毒とは https://www.niid.go.jp/niid/ja/ kansennohanashi/465-syphilis-info.html 3. J Clin Microbiol. 2018;56(11):e01003-18.
梅毒治療後いつから性交渉していいか? • 少なくとも梅毒による病変がなくなるまでは避けてもらう1) • 治療終了5-14⽇間あけるべきという意⾒もある2-3) • 個⼈的には, 上記に加え⾃動化法でRPR 2倍以上の低下を確認してからと 伝えることが多い (それ以前の⾃由意志による再開はやむない) • 梅毒は再感染するので, 必ずパートナーの治療を⾏うこと, 適切な防護を ⾏うことを説明する 1. MMWR Recomm Rep. 2021;70(4):1-187. 2. NSW gov. Syphilis fact sheet (updated Mar 20, 2019) https:// www.health.nsw.gov.au/Infectious/factsheets/Pages/syphilis.aspx 3. NHS Wales, Syphilis (updated Apr 6, 2022) https://111.wales.nhs.uk/Syphilis/
パートナーへの対応 • 患者が早期 (潜在) 梅毒と診断されて - 90⽇未満:梅毒⾎清検査が陰性でも, 早期梅毒として治療を受けるべき 90⽇以上:⾎清学的検査が陰性であれば治療の必要はない • RPR⼒価が⾼い (≧1:32) 場合は, パートナーを初期梅毒として治療 • 患者が後期潜在梅毒の場合, パートナーに対し梅毒の臨床的および⾎清学的評価を⾏い, 結果に基づいて治療 • 以下に⽰す梅毒患者のパートナーは, 感染の危険があると考えられ, 曝露と評価を受ける 必要がある - 初期梅毒の場合, 有症状期間+3ヶ⽉以内に性的接触があった⼈ ⼆次梅毒の場合, 有症状期間+6ヶ⽉以内に性的接触があった⼈ 早期潜在梅毒の場合は1年以内に性的接触があった⼈ MMWR Recomm Rep. 2021;70:1-187.
梅毒患者を⾒つけたら • 症状の確認 • 梅毒罹患歴・検査歴があるか • 性交渉の相⼿は異性か同性か • ⾼リスク性⾏為はいつ頃か • 他のSTD合併がないか (HIV, HBV, HCV, 淋菌, ⾮淋菌性病原体など) • 治癒後でなければ7⽇以内に発⽣届を提出 (5類感染症)