テキスト全文
急性心不全の初期評価と治療方針
#1. AC UTE H EAR T FA IL URE 急性心不全は、 これ1本で困らない。 深夜の急性心不全 —— 最初の1時間と、最初の2週間 初期評価 → うっ血解除 → Fantastic Four → 退院後フォロー 札幌ハートセンター / 聖路加国際病院 循環器内科 常見 勇太 / Yuta Tsunemi
#2. I N TR O D UC T I ON 急性心不全は、受診したその瞬間から始まっている このスライドでは、救急外来での初期評価から、退院基準と退院後2週間のフォローまでを通しで扱う。 01 初期治療がそのまま予後になる 02 病態は一つではない 03 急性期にこそ「慢性期の薬」を 呼吸不全・循環不全を伴う救急疾患。 受診直後の病態評価と初期治療が、 そのまま転帰に直結する。 バイタルサインと身体所見を統合し、 Nohria–Stevenson 分類で整理して、 方針を柔軟に組み立てる。 安定期治療とされてきた薬物療法が、 近年は急性期から積極的に導入され、 再入院抑制につながっている。 骨格は4段構え ——「病態評価 → うっ血解除 → Fantastic Four → 早期フォロー」。一つ抜けると、患者は戻ってくる。
#3. A GE NDA 今日の流れ — 5つのステップ 01 初期評価と病態把握 A・B・C の安定化とうっ血の評価 ABC 02 治療方針の決定 Nohria–Stevenson 分類の4タイプ 2×2 03 急性期の薬物治療 Fantastic Four をどこまで入れるか 4剤 04 退院基準と退院後管理 退院後1〜2週で決まる再入院率 2週 05 症例で確認する 臨床問題2問と解説 初期評価 → 分類 → 薬物治療 → 退院後管理。どこか一つが抜けると、患者は戻ってくる。 Q&A
呼吸と循環の安定化に向けた初療
#4. 01 初期評価と病態把握 呼吸と循環を止めない ——「A・B・C」から始める
#5. S TE P 01 初療は A・B・C の安定性を「即時に」評価する 低酸素血症や呼吸困難が著明なら、酸素投与に加えて NPPV / CPAP を早期に導入し、呼吸仕事量を軽減する。 A B C 気道 — Airway 呼吸 — Breathing 循環 — Circulation 気道の開通を最初に確認する。 SpO₂・呼吸回数・呼吸様式。 収縮期血圧・末梢冷感・尿量。 意識レベルの低下や分泌物の 酸素で改善しなければ、 乳酸値で灌流不全を判定する。 貯留があれば直ちに介入する。 ためらわず陽圧換気へ移る。 低灌流はショックの前段階。 呼吸を安定させるまでは、利尿も昇圧も後回しでよい。まず酸素化と換気を取り戻す。
#6. S TE P 01 — C R I TE R I A 酸素と NPPV は「数字」で判断する 急性非代償性心不全における酸素投与と NPPV 導入の目安を、あらかじめ決めておく。 SpO₂ < 90 % RR > 25/分 挿管回避 または PaO₂ < 60 mmHg 酸素で呼吸困難が改善しない 呼吸仕事量の軽減と症状緩和 → 酸素投与を開始する → NPPV を第一選択とする → NPPV/CPAP がもたらす効果 「酸素で様子を見る」時間が、そのまま挿管までの時間になる。改善しなければ、すぐ次の一手へ。
#7. S TE P 01 — A S SE SS M ENT 灌流とうっ血は、別々に評価する 灌流(Perfusion)を測る うっ血(Congestion)を測る 収縮期血圧 — 低下は心拍出量低下のサイン 頸静脈怒張 — ベッドサイドで繰り返し確認 末梢冷感 — 触れて確かめる、最も早い所見 下腿浮腫 — 左右差と圧痕の深さ 尿量 — 時間尿での推移を追う 体重変化 — 入院時からの推移を毎日追う 乳酸値 — 組織灌流の客観指標 胸部 X 線・BNP / NT-proBNP — 総合して判定 血圧低下や末梢冷感はショックへ移行するリスクを示す。 うっ血残存は再入院・死亡と強く関連する。初期から除水 迅速な介入を要する。 の方向性を立てる。 うっ血の評価は初療で終わらない。入院から退院まで、全経過を通じて繰り返す。
#8. L ES SO N 0 1 「うっ血を残さない」は 初日に決める方針である 除水の到達点を決める 毎日、同じ順番で診る 残ったうっ血は必ず返ってくる 「どこまで引くか」を初日に 頸静脈・下腿・体重・尿量。 退院時のわずかな残存が、 言語化しておく。 順番を固定すると、変化に気づける。 数週間後の再入院として現れる。 目標体重/所見を、チームで共有する。
Nohria–Stevenson分類による治療戦略
#9. 02 治療方針の決定 Nohria–Stevenson 分類 ——「灌流」と「うっ血」の2軸で整理する
#10. S TE P 02 — C LA S S I FI C A T I ON 2軸で整理すると、治療の優先順位が決まる うっ血 灌流 保たれる Warm 灌流 低下 Cold なし(Dry) うっ血 あり(Wet) Warm and Dry Warm and Wet 安定・慢性期に近い うっ血優位(最多) GDMT の導入と増量、 生活指導と退院後フォロー 血管拡張薬 + 利尿薬、 高血圧性肺水腫は NPPV Cold and Dry Cold and Wet 低心拍出・容量不足 低灌流 + うっ血(重症) 輸液、あるいは血管拡張薬・ 利尿薬の減量と中止 昇圧薬・強心薬、 反応不良なら MCS を早期に この2軸に「収縮期血圧(高血圧型 / 低血圧型)」を重ねると、血管拡張薬・昇圧薬・補助循環の判断がより正確になる。
#11. TY PE — C O LD A N D W E T 低灌流 + うっ血 — 臓器灌流の確保が最優先 低血圧、末梢冷感、尿量低下。ここでは「うっ血を取ること」より先に、灌流を立て直す。 01 03 ノルアドレナリンが第一選択 02 強心薬を必要に応じて併用 急性循環不全における第一選択の昇圧薬。 ドブタミンまたはミルリノンを併用し、 まず血圧を確保し、臓器灌流を守る。 心拍出量の改善を図る。 β遮断薬は「入れない」 04 反応が乏しければ MCS を早期に 急性期は心拍出量を低下させるため、 VA-ECMO による心肺補助、Impella による 循環が安定するまで導入・再開を控える。 左室減負荷。導入の遅れは死亡率上昇と関連。 MCS の導入可否は、迷う前に心不全・集中治療チームで協議する。相談は早すぎるということがない。
#12. TY PE — W A R M A N D W ET うっ血優位 — 前負荷・後負荷の調整と除水 血管拡張薬 NPPV / CPAP ループ利尿薬 収縮期血圧が保たれていれば、 高血圧を伴う急性肺水腫では 外来維持量以上で開始する。 ニトログリセリンなどで 最も有効。呼吸仕事量の軽減と 反応不良例では最大2.5倍 急速なうっ血改善が望める。 挿管回避に寄与する。 程度まで増量を検討する。 DOSE 試験 N Engl J Med 2011 高用量群では症状改善と尿量増加が明確であり、腎機能悪化も許容範囲であった。 短期間で十分な除水を達成することが、そのまま再入院予防につながる。 利尿薬は「効いていないなら足りていない」。反応を見て、ためらわず増やす。
急性期の薬物治療とFantastic Four
#13. TY PE — D R Y うっ血が目立たない2つの状態を、取り違えない Cold and Dry Warm and Dry 低心拍出が主体 急性増悪が落ち着いた状態 過度の利尿や血管拡張薬による前負荷低下が 背景にあることが多い うっ血・低灌流ともに目立たず、慢性心不全に近い 体液量・血圧・腎機能を総合的に評価する GDMT(β遮断薬・RAS阻害薬・MRA・ SGLT2阻害薬)の導入と増量 必要に応じて輸液、あるいは 血管拡張薬の減量・中止を行う 再発予防のための教育・生活指導 ショックに近い低灌流があれば、 昇圧薬・強心薬を検討する 退院後フォローアップの設定 Cold and Dry を「うっ血がないから安定」と読み違えると、低灌流が見過ごされる。
#14. L ES SO N 0 2 分類は「治療の入口」を 決めるためにある 触って、見て、決める 血圧を第3の軸に足す 分類は途中で変わる 末梢が冷たいか、頸静脈が張っている 同じ Wet でも、高血圧型は血管拡張薬 治療に応じて Cold は Warm へ、Wet か。高価な検査より先に、 、低血圧型は昇圧薬。 は Dry へ動く。 この2つで方向が決まる。 血圧が入口を分ける。 一度貼ったラベルを固定しない。
#15. 03 急性期の薬物治療 Fantastic Four ——「入れられる薬は、入院中に入れる」
退院基準と退院後の管理方法
#16. S TE P 03 — F A N TA ST I C F OU R Fantastic Four — 4本の柱を、入院中に立てる 循環動態が安定した段階で、慢性期心不全治療の基本4剤を可能な範囲で導入する。導入可否は血圧・腎機能・灌流状態から判断する。 1 2 3 4 β遮断薬 RAS 阻害薬 MRA SGLT2阻害薬 Beta-blocker ACE-I / ARB / ARNI Mineralocorticoid SGLT2 Inhibitor Receptor Antagonist 循環が安定してから 血圧が許容されれば 腎機能と K 値が 急性期からの導入が 維持または再導入 積極的に導入 許容されれば継続 可能な薬剤 4剤すべてを揃えることが目的ではない。退院までに「入れられるものは入れておく」ことが目的。
#17. GDMT — 1 & 2 β遮断薬と RAS 阻害薬 — 入れる時期を間違えない β遮断薬 RAS 阻害薬 低灌流が続く間は入れない 急性心不全治療の中心 心拍出量を一時的に低下させる可能性があるため、 導入や再開を避ける。 安定し血圧が保たれたら 既存のβ遮断薬を維持、または再導入することが望ましい 血圧が許容される範囲で積極的に導入を検討する。 ARNI は入院中から PIONEER-HF 試験では、エナラプリルより早期に NT-proBNP を低下させた。 導入後は慎重に漸増 切り替えには36時間 徐脈や血圧低下に留意しながら増量する。 ACE 阻害薬から ARNI へは、 心拍数の制御が心筋酸素消費を抑える。 中止後36時間以上の待機が必要。 β遮断薬は「待つ」薬、RAS 阻害薬は「急ぐ」薬。同じ GDMT でも、急性期の扱いは正反対になる。
#18. GDMT — 3 & 4 MRA と SGLT2阻害薬 — 腎機能と K 値を見ながら MRA SGLT2阻害薬 スピロノラクトン / エプレレノン 急性期からの導入が可能 腎機能とカリウム値が許容される場合には、 急性期でも継続または再導入を検討する。 腎機能が使用基準を満たし血圧が保たれていれば、 急性期でも導入を検討する。 長期的に死亡・再入院を減らす EMPULSE 試験 レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の 過剰活性を抑制する。 入院中の導入が、総合転帰の改善に寄与した。 高カリウム血症が制限因子 SOLOIST-WHF 試験 特に腎機能障害例では、慎重なモニタリングが求められる。 退院前後の導入で、イベントを減少させた。 非ステロイド性 MRA 血糖値とは独立した効果 フィネレノン等は本邦で急性心不全への適応はないが、 腎保護・抗線維化作用で注目。 利尿作用に加え、前負荷軽減・腎保護・心筋代謝改善という 多面的な作用をもつ。 SGLT2阻害薬は「退院後に外来で」ではなく、入院中に始められる薬になった。
#19. EVIDENCE この稿を支える5つの試験 DOSE N Engl J Med 2011 ループ利尿薬の高用量群で症状改善と尿量増加。腎機能悪化は許容範囲。 PIONEER-HF N Engl J Med 2019 入院中の ARNI 導入がエナラプリルより早期に NT-proBNP を低下、 再入院を抑制。 EMPULSE Nat Med 2022 急性心不全入院中のエンパグリフロジン導入が総合転帰を改善。 SOLOIST-WHF N Engl J Med 2021 退院前後のソタグリフロジン導入でイベントが減少。 STRONG-HF Lancet 2022 退院後1〜2週の再評価と GDMT 急速増量で、再入院・死亡が有意に改善。 急性期に「できること」は、この10年でかなり増えた。知っているかどうかが、そのまま差になる。
#20. L ES SO N 0 3 入れられる薬は、 入院しているうちに入れる 外来より入院中のほうが安全 退院後の導入率は上がらない 少量でも始めておく 血圧・腎機能・K 値を毎日測れる環境 「落ち着いたら外来で」と送り出した 目標用量に届かなくても、始まってい は、入院中にしかない。 薬の多くは、 れば外来で増やせる。 導入と観察が同時にできる。 結局始まらないまま時間が過ぎる。 ゼロと少量の差は大きい。
退院後のフォローアップと自宅管理
#21. 04 退院基準と退院後管理 退院は終わりではない —— 再入院は最初の2週間で決まる
#22. S TE P 04 — D I SC H A R GE 退院前に確認する3点 1 2 3 うっ血が十分に 尿量・体液量が GDMT が可能な 解消している 安定している 範囲で入っている 残存は再入院・死亡リスクと 利尿薬の調整が終わり、体重が β遮断薬・RAS 阻害薬・MRA・ 強く関連する。 安定した状態で退院日を決める。 SGLT2阻害薬。 入院中に適切な除水を確実に 達成しておく。 この3点が揃わないまま退院日を決めると、外来ではなく救急外来で再会することになる。 入れられるものは入れてから帰す。
#23. S TE P 04 — F O LL OW - UP 退院後1〜2週の再評価が、再入院率を変える 1〜2 外来で確認する4項目 血圧 起立性低血圧の有無まで含めて確認する 週 腎機能 増量に伴うクレアチニン上昇の許容範囲を決めておく STRONG-HF 試験が示した 電解質 特にカリウム値。MRA 増量の可否を左右する 体液量 体重・浮腫・頸静脈で、うっ血の再燃を早期に捉える 再評価と薬剤増量のタイミング。 退院後この期間の介入が、 転帰の改善に寄与する。 これらを確認しながら GDMT を段階的に増量することで、再入院を効果的に予防できる。
#24. S TE P 04 — P R I MA R Y C A R E 退院後の自宅管理では、実地医家の役割が大きい 1 アップタイトレーションとセルフケア支援 自宅で体重・浮腫・呼吸状態を継続して観察できるよう指導する。 利尿薬の使い方(増量・追加内服の基準)を具体的に共有する。 塩分制限や内服アドヒアランスを継続的に支える体制が望ましい。 2 基幹病院へ紹介すべきタイミングの明確化 紹介基準をあらかじめ言語化し、患者・家族とも共有しておく。 利尿薬の増量に反応しない場合や、腎機能の急激な悪化も契機となる。 3 地域リソース・多職種連携の活用 訪問看護、在宅診療、地域の心不全支援チームと連携する。 必要時に循環器専門医へ迅速に相談できる体制を整える。 対応が困難な場合は、早期の連携が重症化を防ぐ。 退院サマリーに「何を見たら、いつ紹介するか」が書かれているかどうかで、その後が変わる。
再入院リスクとその管理
#25. RED FLAGS この所見が出たら、迅速に紹介する 以下はいずれも、外来での経過観察ではなく速やかな紹介が必要なサインである。 安静時呼吸困難の悪化 急激な体重増加 労作時ではなく安静時に出ていれば、 すでに代償が破綻しつつある 例:2〜3日で2 kg 以上。自宅での体重測定がこれを捉える 浮腫の進行 起坐呼吸の出現 下腿から大腿・体幹へ広がる場合は、うっ血の再燃を疑う 横になれない、枕を重ねて寝ている、 という訴えを聞き逃さない 頻脈または徐脈・新規の低血圧 BNP / NT-proBNP の明らかな上昇 血行動態の破綻、あるいは薬剤性の可能性を同時に考える 前回値との比較で判断する。絶対値より、トレンドを見る 「利尿薬を増やして様子を見る」で許されるのは、増やして反応があったときだけ。
#26. L ES SO N 0 4 退院は「終わり」ではなく 管理の始まりである 日付を先に押さえる 増やす前提で帰す 患者自身を観察者にする 退院時に「2週間後」の枠を確保する。 退院処方は到達点ではなく出発点。 体重・浮腫・呼吸。 空いたら入れる、では埋まらない。 次に何を増やすかを、 毎日測る人がいれば、 カルテに書いて渡す。 悪化は数日早く見つかる。
#27. 05 症例で確認する 臨床問題2問 —— 明日のベッドサイドで問われること
臨床問題と急性心不全の対応
#28. QUIZ 0 1 急性心不全の初期対応として、最も適切なのはどれか。 1 どのような場合でも利尿薬を増量し、尿量の反応を見ることが重要である 2 SpO₂ が保たれていれば、呼吸苦があっても酸素投与は不要である 3 呼吸・循環の安定化を最優先とし、必要に応じて NPPV / CPAP を早期導入する 4 NT-proBNP が上昇し、非代償性の場合はβ遮断薬を増量する 5 ショック所見がなくてもドブタミンを第一選択で投与する 答えを決める前に、「この患者の何が今いちばん危ないか」を一つ挙げてみてください。
#29. ANSWER 01 正解 3 初療は A・B・C の安定化を最優先とする 呼吸困難 + SpO₂ 低下 → NPPV / CPAP 早期に導入することで呼吸仕事量を減らし、挿管回避率を改善する。 「酸素で様子を見る」時間を長く取らない。 ショックの有無を迅速に判断する 血圧・末梢灌流・乳酸・尿量から判定する。低灌流があれば、 利尿より先に灌流の確保へ舵を切る。 うっ血の評価は初期から始める 頸静脈怒張・浮腫・胸部 X 線・BNP / NT-proBNP を総合する。 初日に除水の方向性を立てておく。 利尿薬もβ遮断薬も強心薬も、まず A・B・C が安定してから考える。
#30. QUIZ 0 2 退院後の再入院を、最も効果的に減らす戦略はどれか。 1 退院後1か月で受診し、必要時に薬剤を調整する 2 BNP が正常化するまで入院を継続する 3 退院後2週以内の早期フォローアップと、GDMT の迅速かつ集中的な増量を行う 4 利尿薬は退院時の用量を固定し、変更しない 5 退院後の管理は循環器専門医のみが担当すべきである 「いつ会うか」と「そこで何をするか」。この2つが揃っている選択肢はどれでしょうか。
急性心不全治療の重要なポイント
#31. ANSWER 02 正解 3 STRONG-HF —— 早期再評価と積極的な増量 退院後1〜2週での再評価と GDMT 増量 この戦略をとった群で、再入院 / 死亡 / 統合転帰が有意に改善した。 受診間隔を「1か月」に置くと、その間に悪化が起こる。 確認するのは5つ 血圧、腎機能、電解質、体液量、そしてうっ血の残存。 これらを見ながら4剤を段階的に増量していく。 専門医だけの仕事ではない 利尿薬調整、紹介基準の共有、セルフケア支援。 実地医家との連携が、再入院予防に不可欠である。 早く会い、そこで薬を動かす。この2つが揃ってはじめて、再入院は減る。
#32. REFERE NCES 参考文献 1)Felker GM et al:Diuretic strategies in patients with acute decompensated heart failure:N Engl J Med 364:797–805, 2011 2)Velazquez EJ et al:Angiotensin–neprilysin inhibition in acute decompensated heart failure:N Engl J Med 380:539–548 ,2019 3)Voors AA et al:Empagliflozin in patients hospitalized for acute heart failure:Nat Med 28:568–574,2022 4)Bhatt DL et al:Sotagliflozin in patients with diabetes and recent worsening heart failure:N Engl J Med 384:117–128, 2021 5)Mebazaa A et al:Management strategies and 180-day mortality in patients hospitalized for acute heart failure( STRONG-HF):Lancet 400:1750–1763,2022
#33. S UM MA RY 持ち帰ってほしい7つ 初期対応は呼吸・循環の安定化が最優先 必要なら NPPV / CPAP を早期に導入する 灌流とうっ血の2軸で病態を整理する Nohria–Stevenson 分類に血圧を重ねて判断する 高血圧を伴う急性肺水腫は血管拡張薬 + NPPV うっ血改善と挿管回避を同時に狙う 利尿薬は反応性に応じて増量する うっ血を確実に解消することが再入院・死亡リスクを下げ る 循環が安定したら Fantastic Four を導入する SGLT2阻害薬は急性期からの導入が可能である 退院前にうっ血を取り切り、薬を入れておく この2つが揃わないうちは、退院日を決めない 退院後1〜2週で必ず再評価する 実地医家と紹介基準を共有し、地域連携を強化する 急性心不全の治療は、初日の判断と退院後2週間の設計で、その大半が決まる。