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心電図の基本と重要性
#1. 聖路加チーフと学ぶ心電図 これだけ!心電図の読み方 基 本 的 な 読 影 方 法 と 、 S T 上 昇 非循環器医が求められるのは、循環器を呼ぶべき波形を見極めること 札幌ハートセンター 循環器内科 / 元 聖路加国際病院 チーフレジデント 常見 勇太 / Yuta Tsunemi
#2. C A R D I O L O G I S T 常見 勇太 つ ね み ゆ う た | Yuta Tsunemi, MD 医療法人 札幌ハートセンター 札幌心臓血管クリニック 循環器内科 前・聖路加国際病院 内科チーフレジデント 第1位 民間医局コネクトセミナー 心電図 45 万回 Antaa Slide 累計閲覧 1級 心電図検定 2024 年 年間人気ランキング 心電図スライドを継続して公開 取得 心電図の読み方と、論文の要点を発信しています @tsunemi_md tnmyt1208 papercruxy.com
#3. MORE 02 心電図と論文を、もっと詳しく 毎日の発信、じっくり読める解説、そして論文をまとめて追える場所 Paper Cruxy @tsunemi_md note.com/tnmyt1208 papercruxy.com 毎日、心電図の読み方と セミナーで話しきれない 医学生・研修医・上級医のための 見逃してはいけない波形を投稿 詳しい解説をまとめています 論文解説 スマホで読み取れます スマホで読み取れます このスライドが役に立ったら、Antaa でフォローしていただけると嬉しいです 常見 勇太 / 札幌ハートセンター 札幌心臓血管クリニック 循環器内科 スマホで読み取れます
心電図を読むための原則
#4. 優秀さとは行動ではなく、習慣の賜物である。 We are what we repeatedly do. Excellence, then, is not an act, but a habit. ― アリストテレス
#5. AGE NDA 03 この講義で扱うこと 01 はじめに 心電図を読むときの、四つの原則 02 心電図の読み方 調律診断 → 波形診断の 11 ステップ 03 なぜ ST が上昇するのか 活動電位の変化から導く 04 ST 上昇の鑑別 STEMI mimic を見分ける 05 まとめ 持ち帰ってほしいこと
心電図の調律診断と波形診断
#7. F OUR PRINCIPL ES 05 心電図を読むときの、四つの原則 ① 順番を決めて、毎回同じに読む ② いちばん大事なのは心電図ではない 読む順番を固定すると、 患者の病歴、症状、身体所見。 抜けは意志ではなく構造で防げる。 波形はそのあとに来る。 ③ 求められるのは確定診断ではない ④ 必ず自分の目で 12 誘導を見る 非循環器医に求められるのは、 モニター 1 誘導で判断しない。 循環器を呼ぶべき波形を見極めること。 自動診断をそのまま信じない。
#8. A N I GH T ON C A L L ある日の、内科当直中 「モニター上 RR 不整で、Af だと私は思うのですが…… 抗凝固薬とか、始めなくていいですか?」 K E Y M E S S A G E モニターだけで、その判断をしてよいのか RR 不整に見えても、blocked PAC や多源性心房頻拍かもしれない。12 誘導を撮り、P 波を自分の目で確かめてから決める。 この講義は、その「確かめ方」を順番として身につけるためのもの。 06
#9. 02 心電図の読み方 調律診断 → 波形診断の順で読む
#10. READING ORDER 08 調律診断 → 波形診断の順で読む (0) まず条件を確認する ── 10mm = 1mV か。電極のつけ間違いはないか。 調律診断 (1) 調律 (2) 心拍数 (3) そのあと波形診断へ regular か。sinus か 60 – 100 /分か 軸 −30 〜 +90 度か (6) PQ 間隔 3 〜 5 マス(0.12 – 0.20 秒)か (9) 調律が決まらないうちに波形を読み始めると、 T波 陰性 T はあるか。分布は 以降、この 11 項目を順に見ていく。 所見の意味が定まらない。 (4) 移行帯 V3 – V4 にあるか (7) QRS 波 異常 Q 波・幅・電位は正常か (10) QT 時間 短縮や延長はないか (5) P波 尖ったり幅広ではないか (8) ST 上昇や低下はあるか (11) U波 出現はあるか
心電図の各項目の確認方法
#11. STE P 0 09 (0) 条件の確認 ─ 心臓を疑う前に、記録を疑う 較正波 紙送り速度 電極のつけ間違い 通常 10mm = 1mV。 通常 25mm/秒 ⇒ 1mm = 0.04 秒。 aVR が陽性、I の P が陰性なら、 まず貼り直す。 半分の設定なら、電位も 50mm/秒にすると横に広がり、 半分に見える。左端の階段状の 細かい部分が読みやすくなる。 波形で毎回確認する。 胸部誘導が正常なら、 右胸心ではなく入れ替え。
#12. STE P 1 10 (1) 調律 ─ 洞調律かどうかの判断が、すべての前提 まず二つを決める 洞調律の定義 1. regular か irregular か ・regular(PP・RR が一定) irregular なら 呼吸性変動、心房細動 呼吸で多少変動してもよい ・P 波の波形が一定 2. 洞調律か P 波はあるか。P と QRS は対応しているか K E Y ・1 つの P に 1 つの QRS が対応 ・I、II、aVF の P が上向き M E S S A G E 「regular を基本」として考え、そこからの外れ方を見る この一分岐で、その先に考える病気の数が半分になる。
#13. STE P 2 11 (2) 心拍数 ─ 300 ÷ 大きいマスの数 正常は 60 – 100 /分。大きいマス(5mm)が 0.2 秒なので、300 を割ればレートになる。 1 コマ 2 コマ 3 コマ 6 コマ 300 /分 150 /分 100 /分 50 /分
#14. STE P 3 (3) 軸 ─ I と aVF の向きで、四象限に落とす 正常は −30° 〜 +90°(若年者は 110° まで)。角度を計算する必要はない。 軸偏位だけで診断しない。軸偏位をきたす疾患(左脚前枝ブロック、右室肥大、心筋梗塞など)を確認する。 12
ST上昇とその鑑別
#15. STE P 4 13 (4) 移行帯 ─ R と S が入れ替わる場所を見る 正常は V3 – V4。それより前なら反時計回転、それより後なら時計回転。 時計回転 反時計回転 慢性閉塞性肺疾患、急性肺性心(右室拡大)。 後壁梗塞、左室肥大、右脚ブロック。 急激に出現したら、肺塞栓を鑑別に挙げる。 背景に何があるかを考える。
#16. STE P 5 14 (5) P 波 ─ 尖っているか、幅広いか 正常は I・II で陽性。大きさは 2.5mm × 0.12 秒以内。見る誘導は II と V1。 なぜ II と V1 か 右房負荷 左房負荷 II は右房も左房も近い。 前半が尖って高くなる。 後半が幅広くなり、二峰性に。 V1 は右房が近づき、左房が遠ざかる。 II 誘導で 2.5mm 以上が目安。 V1 の終末陰性成分が深く広い。
#17. STE P 6 15 (6) PQ 間隔 ─ 3 〜 5 マスに収まっているか 正常は 0.12 – 0.20 秒。短すぎても、長すぎても意味がある。 短い(< 0.12 秒) 長い(> 0.20 秒) WPW 症候群など、早期興奮症候群。 1 度房室ブロック。 デルタ波を伴っているかを確認する。 単独では無症候だが、脚ブロックを デルタ波と短い PQ はセット。 伴えば評価を進める(三束ブロック)。 K E Y M E S S A G E PQ を測る癖をつけると、拾える病気が二つ増える 早期興奮と伝導障害。どちらも見ようとしなければ見えない。
#18. STE P 7 16 (7) QRS ─ 幅・電位・R 波の伸び方・異常 Q 波 幅 低電位 左室高電位 異常 Q 波 3 – 5 マス(0.12 秒未満) 肢誘導すべて < 5mm SV1 + RV5 ≧ 35mm 深さ 5mm 以上 wide なら脚ブロック・VT・ 胸部誘導すべて < 10mm または RV5 > 26mm または R 波の 1/4 以上 副伝導路を考える 心嚢水、収縮性心膜炎 ストレインの有無も見る 幅 0.04 秒以上 III・aVL・V1 単独の異常 Q 波は、それだけでは異常と判断しない。
QT時間とU波の確認
#19. STE P 8 17 (8) ST ─ 上昇は部位診断ができ、低下はできない ST 上昇の基準 ST 低下の読み方 ・連続する 2 誘導以上で J 点が上昇 部位診断はできない。 ・V2 – V3 以外は 1mm 以上 ・V2 – V3 は 40 歳以上で 2mm 以上 horizontal type と down-sloping type は ・40 歳未満 男性 2.5mm、女性 1.5mm 虚血に対する特異度が高い。 V1 – V3 の 2mm までは正常亜型もある V1 – V3 の ST 低下は後壁の鏡像かも K E Y M E S S A G E 連続する 2 誘導以上で ST 偏位を認めたら、虚血性変化を疑う 1 誘導だけの偏位は、まず記録の問題やアーチファクトを考える。
#20. STE P 9 18 (9) T 波 ─ まず「そもそも異常でないもの」を外す 正常の目安 陰性 T の鑑別 巨大陰性 T なら ・高さは P 波の 2 倍くらい ・そもそも異常でないもの ・心尖部肥大型心筋症 ・R 波の 1/2 〜 1/8 ・心室肥大、肥大型心筋症 ・たこつぼ症候群 ・加齢と女性で低くなる ・虚血性心疾患 ・aVR は常に陰性 ・III、aVL、V1 は陽性でも陰性でもよい K E Y 切迫 MI、心内膜下梗塞、亜急性期 MI ・たこつぼ症候群、肺塞栓症 そして脳血管障害。 心臓以外の原因も一度考える。 M E S S A G E 中年女性の V1 – V3、小児の V1 – V3 は、正常でも陰性のことがある 「陰性 T があるから異常」ではない。年齢と性別、そして分布を見る。
#21. STE P 10 19 (10) QT 時間 ─ 自分で測って、補正する QRS の始まりから T 波の終わりまで。心筋の収縮時間を表す。 補正する 延長させるもの 短縮させるもの QTc = QT / √RR(Bazett) 低 Ca、低 Mg、低 K。 高 Ca、高 K、ジギタリス中毒。 正常値 0.36 – 0.44 秒。 QT 延長症候群、薬剤性。 薬剤性、遺伝性 QT 短縮症候群。 T の終点が RR の 1/2 を超えたら延長。 TdP のリスクになる。 短すぎても突然死につながる。
#22. STE P 11 20 (11) U 波 ─ 出ているかどうかを、最後に確かめる どこに出るか T 波に続く小さな陽性波。 V2 – V3 でもっとも見えやすい。 K E Y 目立つとき 低カリウム血症、徐脈、薬剤。 巨大 U 波は TdP の前兆になりうる。 M E S S A G E ここまでの 11 項目を、毎回同じ順で通す 順番を固定すれば、抜けは意志ではなく構造で防げる。 なぜ最後に見るか U 波を T 波の一部として測ると、 QT を過大評価してしまう。 T と U の谷で切る。
ST上昇のメカニズム
#23. 03 なぜ ST が上昇するのか 活動電位の変化から導く
#24. D I R EC T I ON 収縮時、壁の内と外は反対向きに動く 電極から見て、向かってくれば陽性、離れていけば陰性。ここが出発点。 この向きの違いが、心内膜側と心外膜側で ST の偏位が逆になる理由につながる。 22
#25. A C TI O N P O T EN T I AL 23 活動電位のどこが、心電図のどこに対応するか 0 相(Na)→ QRS 2 相(Ca)→ ST 3 相(K)→ T 波
#26. THREE CHANG ES 24 虚血が活動電位に起こす、三つの変化 ① 静止膜電位が浅くなる ② 波高が下がる ③ 持続時間が短くなる ATP が枯れ、 浅い膜からの立ち上がりになり、 再分極が早く終わる。 Na-K ポンプが回らなくなる。 0 相のピークが低くなる。 活動電位が縮む。 K E Y M E S S A G E この三つの変化は、心外膜側のほうが受けやすい 心外膜側は Ito が多く、活動電位の短縮がより大きく出る。
ST上昇の鑑別診断
#27. O V ER L AY 二つの層を重ねて、引き算する 心電図に出るのは絶対値ではなく、層のあいだの差。だから重ねて引く。 同じ引き算で、T 波も ST 低下も ST 上昇も説明できる。 25
#28. U AP v s M I 26 心内膜下なら ST 低下、貫壁性なら ST 上昇 UAP(心内膜下虚血)= ST 低下しやすい MI(貫壁性虚血)= ST 上昇しやすい
#29. 04 ST 上昇の鑑別 STEMI を絶対に見逃さない
#30. S TE MI M I M I C 28 ST 上昇を見たら、まず STEMI を疑う そのうえで、上がっていても詰まっていないものを知っておく。 心膜炎 / 心筋炎 早期再分極 たこつぼ症候群 冠動脈支配に一致しない J 点のノッチと、 急性期は前胸部の ST 上昇。 広範な ST 上昇。 上昇傾斜の ST。 数日後に深い陰性 T と QT 延長。 心膜炎では PR 低下を伴う。 若年男性・アスリートに多い。 確定は冠動脈造影。 K E Y M E S S A G E mimic を知る目的は、STEMI を否定するためではない 否定しきれないことを確認するために行う。迷ったら STEMI として動く。
ST上昇の形状と解釈
#31. SHAPE 29 ST 上昇は、高さより「形」を見る 分けているのは高さではない。J 点と T 波の頂点を結んだ直線に対して、ST がどちら側にたわむか。 concave(上に凹) straight(直線的) convex(上に凸) 基準線より下にたわむ 基準線をほぼなぞる 基準線より上に膨らむ concave straight convex 早期再分極や心膜炎に多い形。 良性側の説明がつきにくい。 ST と T が一体の山に見える。 ただし STEMI の初期にも出る。 STEMI 側に寄せて考える。 tombstone とも呼ばれる形。 破線は J 点と T 波の頂点を結んだ基準線。J 点の高さも T 波の頂点も三つとも同じで、違うのは「あいだの通り道」だけ。
#32. S I DE B Y S I D E 30 三つを並べると、見るべき場所が分かる STEMI で見るところ 早期再分極で見るところ 心膜炎で見るところ V2 / V3 で S 波が消えていないか V4 の J 点のノッチ PR 低下と、TP 区間の下降 (terminal QRS distortion)。 (fish hook pattern)。 (Spodick's sign)。
#33. ST / T RATIO 31 V6 の ST / T 比で、心膜炎と早期再分極を分ける 同じ「広範な凹型 ST 上昇」でも、T 波との比を測ると分かれる。 測り方 読み方 V6 で、J 点の ST 上昇の高さを 0.25 未満なら早期再分極、 T 波の高さで割る。 0.25 を超えれば心膜炎に寄る。
#34. D I FF E R EN T I AL TA B LE 32 STEMI と STEMI mimic ─ 一枚の表に 所 見 STE MI 早期 再分 極 心膜 炎 鏡面変化(対側の ST 低下) あり なし なし ST 上昇の分布 支配領域に一致 全体的 全体的 ST 上昇の形 straight / convex concave concave PR 低下 なし なし あり Spodick's sign(TP の下降) なし なし あり V4 の fish hook なし あり なし V2 / V3 terminal QRS distortion あり なし なし V6 の ST / T 比 ─ < 0.25 > 0.25 一つの所見で決めない。複数の行を縦に読んで、どの列に票が集まるかを見る。
心電図のまとめと重要メッセージ
#35. 12-LE AD P ER I C A R D I T IS 12 誘導で見る急性心膜炎 冠動脈の支配領域に一致しない、広範な ST 上昇。そして PR 低下。 aVR だけは鏡像になる ── PR 上昇と ST 低下。ここが心膜炎らしさの確認になる。 33
#37. T AK E - H O M E M ES S AG ES 持ち帰ってほしい 5 つ 順番を決めて、毎回同じように読む ── 調律診断から波形診断へ いちばん大事なのは心電図ではなく、病歴・症状・身体所見 必ず自分の目で 12 誘導を見る。モニターで判断しない 貫壁性虚血で ST が上がる。だから ST 上昇は部位診断ができる 求められるのは確定診断ではなく、循環器を呼ぶべき波形を見極めること STEMI を見逃さないこと。それが、この講義のいちばんの目的。 35
#38. 明 日 か ら 、 ひ と つ だ け 読む順番を、自分のなかで 一つに決めてしまう 順番さえ固定すれば、抜けは意志ではなく構造で防げる。 ご清聴ありがとうございました 常見 勇太 / 札幌ハートセンター 循環器内科