テキスト全文
ラコサミドの治療戦略と概要
#1. Daisuke Yamamoto
Department of Neurology, Shonan Kamakura General Hospital Lacosamido, efficacy and medication strategy of epilepsy ラコサミドを中心とした
救急病院での
入院てんかん治療戦略
ラコサミドの位置づけと推奨度
#4. Introduction ラコサミド(ビムパット®)は忍容性も良好であり、
実際に発作抑制において有効である。
このプレゼンテーションのテーマは二つ。
①実際にラコサミドがどれくらい有効で、どんな問題が
あるのか?
②急性期病院の入院診療における、ラコサミドを含めた
AEDの投薬ストラテジーについての一つのアイデアの
提供をする。
#5. ラコサミド(ビムパット®)の
位置づけ ガイドライン・エキスパートオピニオン
での推奨度について
#6. ラコサミドの焦点性てんかんについて
ガイドラインでの推奨 現時点(2021/03)において、ガイドラインでの推奨レベルは高くはない。
NICE 2020:
焦点性てんかんにおけるラコサミドの推奨は、第一選択薬、第二選択薬
でもなし。
てんかん診療ガイドライン2018:
ラコサミドは焦点性てんかんで、第二選択薬に位置づけられている。
米国のエキスパートオピニオンでは、第一選択薬ではある。
Epilepsy & Behavior (2017;69:186-222):
ラコサミドは焦点性てんかんで、第一選択薬に位置付けられている。
→データの蓄積が乏しく、今後の第一選択薬として使用が検討される薬剤である。
ラコサミドの副作用とリスク
#8. ラコサミドの副作用について 重大な副作用:
房室ブロック、徐脈、失神(いずれも1%未満)
…PR間隔の延長を起こす恐れがある。
頻度の多い副作用:
浮動性めまい>傾眠>頭痛
→心伝導障害の可能性は留意する必要がある。
入院診療における投薬戦略
#9. ラコサミドを中心とした
入院診療での投薬戦略 抗てんかん薬の選択について、一つのストラテジー
#12. LCMで治療をはじめる理由 成人てんかん診療で、救急病院で入院対応をしなければならない
シチュエーションでは、高齢者が対象の場合が多い。
発作分類の対象は、ほぼ焦点性てんかんである。
また、高齢者における投薬では、忍容性(眠気、精神症状)が重視される。 新規抗てんかん薬の中で、
焦点性てんかんでの有効性が高く、
眠気の副作用が少ない、
精神症状に影響が少ない、
以上の特徴をもつラコサミドで治療開始することは、理に適っている。
LCMからの変更先とその理由
#14. LCMで副作用を認めた場合の変更先 このストラテジーにおいて使用する薬剤を少なくして判断を簡易にするために、LCMからの変更先はLEVとZNSとした。LEVとZNSの選択理由は以下のごとく。 いずれも、副作用の面で問題になりにくい薬剤である。
薬剤の特徴として、治療スペクトラムが広く、副作用が少ない、という理由で、
変更先の薬剤としてLEV/ZNSを選択している。
#16. 転院症例となり、LCMが継続できない場合の変更先 発作後ADLが下がってしまい、元の生活の場所に退院できない場合もある。薬剤コストの理由で、もしくは転院先採用薬剤の問題で転院となった場合にLCM継続ができない場合もありうる。これは実臨床においては重要なテーマである。自宅や施設退院が困難で転院になった場合の変更先を用意しておく。 ここではLCMの変更先として、ZNSを提案する。ZNSの特徴は以下のごとく。
コストの面で、安価であり、継続可能性が高い。
採用されている可能性の高い薬剤である。
比較的、有効性・忍容性も期待しやすい。
有効用量として、200-300mg/dayを示しておく。
難治てんかん重積状態の治療戦略
#18. 先行AEDがある場合、LCM単剤への変更を目指す。 発作があって入院した場合、先行AEDの継続ではうまくいかない可能性が高い。先行AEDの用量増量も選択肢ではある。ただし、焦点性てんかんを想定するなら、先行AEDにこだわらず、焦点性てんかんでの有効性の高いLCMに変更していく妥当性はある。
そして、「AED単剤」でのコントロールを目指すなら、LCM導入でLCM単剤でのコントロールを目標にするのは一つの考え方だろう。 LCM導入後、LCMが維持量に達したら、先行AEDを緩徐に減量、中止を目指す。
#20. 難治てんかん重積状態では、最初から多剤併用で 難治てんかん重積状態では、機能予後が悪くなる可能性もありうる。ケースによりけりだが、治療抵抗性が予想される場合には、最初から多剤併用で、可能な限りの強力な治療で対応することは、選択肢である。 例えば、MDZ+fosFHT+LCM±othersで治療介入して発作抑制を目指す。
発作コントロールが落ち着いたら、AED単剤を目指す。
単剤のAEDは、LCM/LEV/ZNSをここでは提案する。
入院症例の後方視的検討結果
#21. 実際にどれくらい
戦略がfitしたか 救急病院での介入経験
#22. 後方視的検討
入院87症例について 2018/9-2020/9までの脳神経内科・総合内科入院症例で、
新規にLCMを開始したてんかん発作87症例についての検討。
おおむね、先述のストラテジーに沿って対応している。
#23. 患者プロフィール 年齢平均値 :75.1±14.4 歳
合計症例数 :87
未治療例 :70
既治療例 :17
難治てんかん重積状態 :5 (うち、未治療例4, 既治療例1)
#24. 結果 RSE 5例を除けば、その他全例で発作コントロールは良好だった。
一方、RSE 5例のうち、4例は治療後著しくADL低下をきたした。 重大な副作用は5例で、全例LCM投与中止に至った。
内訳は、高度徐脈 2例、肝障害 2例、傾眠傾向 1例であった。 LCMを新規に導入し、退院後も継続した症例は63/87例だった。 LCMを新規に導入し、入院中に中止した症例は24/87例だった。
LCM中止の内訳は、重大な副作用 5例、転院での変更 9例、
急性症候性発作 6例、その他 4例だった。
LCMの有効性と忍容性の評価
#26. LCMから始める投薬ストラテジー 66 61 5 16 16 RSE症例を除いた82例すべてで、発作抑制は良好であった。
副作用で中止した5例以外は、
LCMでの治療は有効であると評価した。 82
#27. ラコサミドは未治療てんかん症例の治療介入で、十分な発作抑制が得られた。
ラコサミドは既治療てんかん症例の治療介入で、十分な発作抑制が得られた。 SUMMARY:
ラコサミドは、発作抑制について有効である。 1
#28. ほとんどの症例で目立った副作用はなく、忍容性は十分であると評価された。
重大な副作用として、高度徐脈症例が認められた。
この副作用には留意が必要である。 SUMMARY:
ラコサミドは、忍容性は十分である。
重大な副作用としては、高度徐脈を認める場合がある。 2
先行AEDからの変更とその結果
#29. LCMから始める投薬ストラテジー 66 61 9 LCMは有効であったが、他剤AEDに転院によって変更を要する症例は9例であった。変更先AEDの内訳はZNS6名、CBZ2名、VPA1名。
#30. LCMで発作コントロールがついたのち、ZNSへの変更対応とした。
転院症例では、事前に転院先でのLCM継続可能かどうかについての確認が
必要である。 SUMMARY:
ラコサミドは、転院症例では変更の必要もある。 3
#31. LCMから始める投薬ストラテジー 6 16 16 先行AEDがある既治療例は16名で、そのうち、6名は
入院中にLCM単剤に変更可能であった。
#32. 6/16症例で入院中にLCM単剤へ切り替えが行われた。
先行AEDはLEV 8例、CBZ 2例、VPA 6例であった。 SUMMARY:
先行AEDがある症例について。 4
治療戦略のまとめと重要性
#33. LCMから始める投薬ストラテジー 4 5 1 難治てんかん重積状態と評価されたケースは5例で、
LCMも含めた集中的な治療介入にもよらず、
4/5例では高度の神経後遺症を認めた。
#34. RSE以外の症例での、LCMの治療結果はおおむね満足できるものであった。
一方、RSEの場合には、LCMを含めた複数薬剤で集中的治療を行ったが、
機能予後不良症例が目立ち、治療戦略については検討を要する。 SUMMARY:
難治てんかん重積状態の症例について。 5
#35. SUMMARY プレゼンテーションのまとめ
#36. Summary
高齢者患者が多い、救急病院での入院てんかん診療における、ラコサミドを中心とした投薬ストラテジーについて紹介した。
このようなセッティングにおいて、ラコサミドの有効性・忍容性は十分であった。
ラコサミドで治療開始した場合で、他のAEDに変更する必要がある。重大な有害事象の場合、転院対応となる場合等である。
#37. 薬剤の有効性、もしくは副作用についての臨床情報は重要です。また、抗てんかん薬1剤のみの有効性も重要ですが、薬剤の組み合わせや、薬剤の使い分け、また変更の方針など、臨床的には複合的な知識が必要です。このスライドでは、一施設での使用経験をもとに、LCMの有効性、問題点を踏まえた一連のストラテジーについて言及しています。オープンになりにくい内容であると思われますので、ご参考にしていただければ幸いです TAKE HOME MESSAGE!