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渡部博明

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守りのER

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渡部博明

神戸市立医療センター中央市民病院

内容

院内の研修医向け勉強会で使用した、ER診療の概説です。

診断・管理といった側面ではなく、「タイムマネジメント」「意思決定プロセス」「コミュニケーション」「救急外来からの安全な帰宅」などを中心に取り扱っています。

外来に関わる上で重要な考え方を通して、将来、Emergency Physicianの道を進む・進まないに関わらず、役立つ知識をつけてもらうことを目標としています。

本スライドの対象者

研修医/専攻医

テキスト全文

  • 1.

    守りのER 2023/5/10 @神⼾市⽴医療センター中央市⺠病院 救急科専攻医 PGY-5 転載・⾃由配布はしないでください 個⼈の勉強の範疇に利⽤をとどめてください

  • 2.

    本⽇の⽬標 救急外来での “ながれ” を通して 救急にきてくれたら嬉しいですけど、ひとまず ⾮救急医として働く皆さんの 今後に活きる考え⽅・スキルの枠を学ぶ 2

  • 3.

    本⽇のCONTENTS 1. 救急の診療のながれ - 導⼊ - 2. 問診・⾝体診察のピットフォール - 診療 - 3. 意思決定⽀援(SDM)とコミュニケーション 4. 救急外来から帰宅する - 技術 - - 合意形成 3

  • 4.

    1 救急の 診療の ながれ 4

  • 5.

    1 救急の 診療の ながれ 救急⾞ 救急外来 • • • • • 問診(SAMPLE) ⾝体診察 POCUS ⾎液検査 CT… Walk in • トリアージ • 蘇⽣の判断 • • • • 蘇⽣ Clinical Prediction Rule 診断 症状緩和 適切な問診・⾝体診察と 鑑別疾患(3C等)を想起 したplanningが診療の要 やみくもな検査は 後々困るだけのことも… 3C︓Critical, Common, Curable 5

  • 6.

    1 救急の 診療の ながれ ⼼窩部痛・・・胃炎︖ではなく、ACS 腹痛/下痢・・・腸炎︖ではなく、⾍垂炎 腰痛・・・結⽯︖急性腰痛症︖ではなく、⼤動脈瘤切迫破裂 など 救急外来 適切な問診・⾝体診察と 鑑別疾患を想起した Killer 〇〇を逃さない︕ planningが診療の要 やみくもな検査は オーバートリアージを許容する場所 後々困るだけのことも… (アンダートリアージは危険しか無い) Must Rule Out(緊急性のあるもの)の評価を優先する 6

  • 7.

    1 救急の 診療の ながれ コンサルテーション • Golden time • SBAR communication • 5 Cs consultation 7

  • 8.

    1 救急の 診療の ながれ S B A R コンサルテーション Situation Background Assessment Recommendation BMJ Open. 2018 Aug 23;8(8):e022202. PMID: 30139905 The 5C’s consultation Contact Communicate Core question Collaborate Closed the loop J Emerg Med. 2015 Nov;49(5):713-21. Epub 2015 Aug 4. Erratum in: J Emerg Med. 2016 Aug;51(2):222. PMID: 26250838. 8

  • 9.

    1 救急の 診療の ながれ S B A R コンサルテーション Situation 相談したい状況・メインの症状はどんなの ‘Dr Preston, I’m calling about Mr Lakewood, who’s having trouble breathing’ Background Assessment どんな背景の⼈でそれはどんな状況 ‘He’s a 54 year old man with chronic lung disease who has been sliding downhill, and now he’s acutely worse’ どんな所⾒があって、何を疑っているか ‘I don’t hear any breath sounds in his right chest. I think he has a pneumothorax‘ Recommendation なにをしてほしいのか ‘I need you to see him right now. I think he needs a chest tube’ BMJ Open. 2018 Aug 23;8(8):e022202. PMID: 30139905 9

  • 10.

    1 救急の 診療の ながれ コンサルテーション The 5C’s consultation ⽅法︓ • ⽶国・カナダ8施設 • 前向き無作為 対象・評価︓ • ベースラインvsトレーニング済 • Check list・Global rating scale 結果︓ • トレーニング済がCheck list合計 点およびGRS評価が⾼い • ⾃信が得られていた • J Emerg Med. 2015 Nov;49(5):713-21. Epub 2015 Aug 4. Erratum in: J Emerg Med. 2016 Aug;51(2):222. PMID: 26250838. • Acad Med. 2012 Oct;87(10):1408-12. PMID: 22914527. 10

  • 11.

    1 救急の 診療の ながれ ※架空の症例です コンサルテーション(例) 1−2分にまとまるように準備する 救急科の〇〇です。発熱・体動困難の80代男性でADL低下のため⼊院を相談 ⾃⼰紹介・礼儀を⽋かさず、 したいんですが、いまお時間⼤丈夫ですか︖ 要件を1⾏にまとめてはじめに伝える ⾼⾎圧、脂質異常症の既往があるADLの⾃⽴された⽅ですが、3⽇前から発熱、 本⽇トイレ歩⾏もできないとのことで救急要請され当院搬送されました。 ⾝体所⾒上は熱源に乏しく、⾎液検査はCRPが12程度の上昇で尿もきれい、胸 腹部造影CTを施⾏しましたが深部膿瘍含め熱源を⽰唆する所⾒は⾒られませ んでした。 来院後も悪寒戦慄あり、エントリーは不明ですが菌⾎症のリスクが⾼いと思 われる点と、⾃宅⽣活困難な背景、caregiverもいないということを考えると 依頼したいことを明確に伝える ⼊院が安全かと考えますがいかがでしょうか︖ Minor problemで伝えきれないところは最後に付け⾜す 11

  • 12.

    1 救急の 診療の ながれ Disposition(転機)を決める 救急⾞ 救急外来 • • • • • 問診(SAMPLE) ⾝体診察 POCUS ⾎液検査 コンサルテーション CT… Walk in • トリアージ • 蘇⽣の判断 • • • • 蘇⽣ Clinical Prediction Rule • Golden time • SBAR 診断 communication 症状緩和 • 5 Cs consultation 救急外来は診断を付ける場所でなく、 「⽅針」を決めるところ ※可能な限り診断はつける ⼊院 • ⼊院適応 (医学的・社会的) 帰宅 外来 12

  • 13.

    1 救急の 診療の ながれ 外来・⼊院患者でも似た流れ • • • • • ⼊院患者の急変 診察 問診(SAMPLE) ⾝体診察 上級医・専⾨家へ POCUS ⾎液検査 コンサルテーション CT… ICUなどへ 外来 • トリアージ • 蘇⽣の判断 • • • • 蘇⽣ Clinical Prediction Rule • Golden time • SBAR 診断 communication 症状緩和 • 5 Cs consultation 継続治療 13

  • 14.

    ある患者の ⾎液検査結果を待っている間に 別の患者の 造影CTの同意を取り また別の患者の 追加の診察をして またまた別の患者の コンサルトをすすめる 14

  • 15.

    数多の患者をみる⼊院・外来業務 “マルチタスクをこなす能⼒” が救急外来では特に必要 診療の“律速段階”がどこにあるのかを認識する この能⼒は⽇常診療でとても有⽤ 15

  • 16.

    2 問診・⾝体診察 のピットフォール 16

  • 17.

    2 たとえば、、、 問診・⾝体診察 のピットフォール 36 突然背中が痛くなった︕上の⽅から下まで痛くなってきた︕ 急性⼤動脈解離 ⻭がガチガチなるほど震えたあと、熱がでて、意識が悪く… 敗⾎症性ショック 典型的なパターン 17

  • 18.

    2 ※架空の症例です 問診が⾮常に重要 問診・⾝体診察 のピットフォール 36 患者「⾃転⾞でコケて、そのあとから肩が痛い」 研修医「外傷評価でレントゲン取ります︕」 救急医「どうやって転けて、どうぶつけたの︖」 患者「左にいた⾞を避けて右側に転けた」「左肩が痛い」 研修医「右側に転けて、左肩が痛いそうです」 救急医「いつから痛いんですか︖」 患者「転けて家帰って、ご飯⾷べてたら痛くなってきた」 「そういえば胸がむかむかする」 救急医「⼼電図取りましょうか」 急性⼼筋梗塞 18

  • 19.

    2 ※架空の症例です ⾝体診察が⾮常に重要 問診・⾝体診察 のピットフォール 36 患者「だんだん左⾜がめちゃくちゃいたくなってきた・・・」 研修医「⽚則の浮腫で下腿圧痛あります」 「担癌患者ですしDVTっぽいです」 救急医「エコー⾒てみよか」 ⾝体所⾒︓左下腿浮腫、圧痛著名、⾎⾊不良 救急医「なんか⾊悪くない︖⾜背A触れる︖」 ⾝体所⾒︓左⾜背動脈触れず、ドップラー乗らず 患者「そういえばトイレの時に急に痛みが悪化したんです」 急性下肢動脈閉塞 19

  • 20.

    2 問診・⾝体診察 のピットフォール Mimics/Chameleons 36 ミミック カメレオン ある疾患と紛らわしい別の疾患 その疾患と気づけない⾮典型例 例︓失神かとおもったらクモ膜下出⾎ 例︓脳梗塞かと思ったら偏頭痛 病歴+⾝体所⾒が重要な情報 検査ありきだと逃してしまう 20 レジデントノート 2020年10⽉ Vol.22 No.10 救急でもう騙されない! ミミックとカメレオン〜紛らわしい疾患たちを⾒抜いて正しく診断・対処する

  • 21.

    2 何その症状…︖ 問診・⾝体診察 のピットフォール 36 話しかけても返事が遅くなった 1週間前からあたまがうるさい 夜眠れない ⾜が腫れてきた 世界が斜めに傾いて今にも倒れそう なんでいま︕という感情に飲まれず、 「救急外来を受診した理由」をアセスメントする 21

  • 22.

    2 知ってる主訴に置き換える 問診・⾝体診察 のピットフォール 36 話しかけても返事が遅くなった 1週間前からあたまがうるさい →意識障害︖ →⽿鳴︖めまいはあるかな 夜眠れない ⾜が腫れてきた →不眠︖臥位になれない︖ →軟部組織感染︖ 世界が斜めに傾いて今にも倒れそう 仮にこうだとしたら︖ と考えてみる →めまい︖前失神︖ 22

  • 23.

    2 知ってる主訴に置き換える 問診・⾝体診察 のピットフォール 36 話しかけても返事が遅くなった 1週間前からあたまがうるさい →⽿鳴︖めまいはあるかな →⽿鳴でよさそう ⾜が腫れてきた →軟部組織感染︖ →NSTIなし︕蜂窩織炎だ オーバートリアージを許容する場所 (アンダートリアージは危険しか無い) Must Rule Out(緊急性のあるもの)の評価を優先する →意識障害︖ →失語だ、脳梗塞あり︕ 夜眠れない →不眠︖臥位になれない︖ →呼吸苦か︕⼼不全だ︕ 世界が斜めに傾いて今にも倒れそう →めまい︖前失神︖ →⼼電図…CAVB︕ 23

  • 24.

    2 病歴聴取・⾝体所⾒ 問診・⾝体診察 のピットフォール 病歴は「具体的な映像にできるくらい」聞き出す 36 その発症は本当に その増悪は本当に その訴えは本当に “突然” か︖ 何をしている時だったのか︖ ”急激” か︖ どれくらいの時間がかかったのか︖ ”主訴” か︖ 受診理由を明確に聞き出す →そして、それらは「今」聞くべきか︖ 検査を先にすべきではないか︖ ⾝体所⾒は「聞いた⼈が再現できるように」表現する その肩の痛みは その腹痛は ”肩” のどこか︖ “腹部” のどこか︖ 表在痛︖関連痛︖⾃動・他動時痛︖ tapping pain︖murphy︖CVAt︖ →そして、それらは「今」⾒るべきか︖ 検査を先にすべきではないか︖ 24

  • 25.

    3 Shared Decision Making, SDM コミュニケーションスキル 25

  • 26.

    2 Shared Decision SDM Making 共有意思決定⽀援︓SDM 「質の⾼い医療決断を進めるために、 最善のエビデンスと患者の価値観、好みとを統合させるための 医療者と患者間の協働のコミュニケーション・プロセス」 26 JAMA. 2016 May 17;315(19):2063-4. PMID: 27099970

  • 27.

    2 Shared Decision SDM Making 共有意思決定⽀援︓SDM パターナリズム SDM インフォームド コンセント 情報の⽅向 ⽅針の検討者 ⽅針の決定者 27 Soc Sci Med. 1999 Sep;49(5):651-61. PMID: 10452420.

  • 28.

    2 Shared Decision SDM Making 共有意思決定⽀援︓SDM SDMの4つの必須構成要素 1. 最低限、医師と患者の両⽅が関与している 2. 医師と患者の双⽅が情報を共有する 3. 治療法の希望を表明することによって、医師と患者の双⽅が、 意思決定プロセスに参加するための⼿段を講じる 4. 医師と患者の双⽅が実施する治療法に合意する そもそも医学的な選択肢が⼀つしか無い、メリットがデメリットを上回る場合 には、SDMとして不適切でインフォームド・コンセントが⾏われるのが良い 28 Soc Sci Med. 1999 Sep;49(5):651-61. PMID: 10452420.

  • 29.

    2 Shared Decision SDM Making 救急外来におけるSDM Part 1︓適したシナリオかどうか(3つ︓Figure) ①臨床的に不確実 メリットが上回るときには説得が許容される ②SDMに参加意思がある ⾃分の状態を把握、代理⼈も可 ③⼗分な時間がある 時間をかけても患者への不利益がないとき Part 2︓会話を⾏う Step1 決めることが⼤事であることを話す Step2 選択肢と、メリット・デメリットを話す Step3 患者の価値観を探る 「今の選択肢を聞いてどう思われますか︖」 Step4 価値観をもとに最適な選択肢を⼀緒に決定する ”先⽣ならどうしますか︖”には答えない︕(医師の価値観が基準になる) 選択肢を再確認するのがよい Part 3︓SDMにありがちな誤解 ①IC拒否ではない ②良好なコミュニケーションが⽬的ではない ③不要な検査を削ることが⽬的ではない ④決定権を患者に委ねるのではない 29 Ann Emerg Med. 2017 Nov;70(5):688-695. PMID: 28559034

  • 30.

    2 Shared Decision SDM Making 救急外来におけるSDM 「共に考えて決定する」 30

  • 31.

    2 Shared Decision SDM Making 治療拒否にはどうするか︖ Questions to determine the patient's ability to understand treatment and care options 理解 病態・状況・治療についてを理解しているか Questions to determine the patient's ability to appreciate how that information applies to his or her own situation 認識 治療をしたor拒否したときの結果の解釈 Questions to determine the patient's ability to reason with that information in a manner supported by the facts and the patient's own values 論理的思考 なぜその選択をするのか・意思決定における価値は Questions to determine the patient's ability to communicate and express a choice clearly ⾃分の選択を表明できるか 表明 4つの項⽬で、 「患者の判断能⼒」を評価 判断能⼒が⽋如しているならば その意思決定は正しくないことも →治療を優先する必要がでる 31 Am Fam Physician. 2018 Jul 1;98(1):40-46. PMID: 30215955.

  • 32.

    3 コミュニケーション スキル 救急外来での情報伝達 患者の理解度について ⾼齢患者の退院時の指⽰の理解度を調べたある⼩規模な研究 • 21%が診断を理解せず • 56%が帰宅時の指⽰を理解していなかった • 有害事象と有意な関連はなかった J Patient Saf. 2011 Mar;7(1):19-25. 救急外来を受信したあとの患者の12-22%は、 電話で確認しても処⽅された薬を説明することができなかった Ann Emerg Med. 1996 Jan;27(1):49-55. Am J Emerg Med. 1987 Jul;5(4):283-6. 32 Ann Emerg Med. 2012 Aug;60(2):152-9.

  • 33.

    3 コミュニケーション スキル 救急外来での情報伝達 患者への説明について 録⾳テープをもとにした研究 • 76%の患者が症状についての説明を受けているが • 救急外来の再受診指⽰は34%しかうけていなかった Ann Emerg Med. 2011 Apr;57(4):315-322.e1. 質問があるかどうかを尋ねられた患者はわずか16% 退院先の医療機関から理解度を確認された者はいなかったという研究 Ann Emerg Med. 2004 Sep;44(3):262-7. 33 Ann Emerg Med. 2012 Aug;60(2):152-9.

  • 34.

    3 コミュニケーション スキル 救急外来での情報伝達 フォローアップの遵守 薬物療法の遵守 Red Flagを答えられるか すくない︕ 34

  • 35.

    3 コミュニケーション スキル 救急外来での情報伝達 救急対応医師が⾏うべきこと 1. 情報を的確に伝え 2. その理解度を確認し 3. 誤解や混乱に合わせて指導しつつ在宅環境の安全を確保する 35 Ann Emerg Med. 2012 Aug;60(2):152-9.

  • 36.

    3 コミュニケーション スキル スキル Bad newsを伝える上での“コミュニケーションスキル” は通常の診療においても⾮常に有⽤ Ask 相⼿の考えを確認 Tell 要点を簡潔に伝える Ask 伝わっているかを確認する Tell me more “もっと詳しく話していただけませんか︖” 36 神⼾中央市⺠ER・ICUメソッド. 8章2 緩和ケア的アプローチ, 2023

  • 37.

    3 コミュニケーション スキル コミュニケーションの道筋 会話の流れを組み⽴てつつ “感情に常に配慮すること”が重要 悪い知らせを伝える(流れ) S P I K E S Set up 医療者側の準備 Prognosis, Perception Invite 経過の推定 “お話は皆さん揃ってますか” “本⼈ならどう考えるでしょうか” Knowledge 2 min rule︓2分にまとめる 50% rule︓喋りすぎない Emotion 感情への対処 “びっくりしますよね…”など Strategy “⼀緒に考えましょう” 感情に対処する(スキル) 治療のゴールを決める(流れ) N U R S E R E Expect Emotion M Map out A Align P Plan Name “驚きますよね” “腹⽴たしいですよね” “そんな気持ちも当然です” Understand “私もそう思います” Respect “よく頑張られていますね” Support “⼀緒に考えさせてください” Explore “他に何か 思うことはありますか︖” Reframe ここまでの話のまとめ “⼀緒に考えましょう” 常に感情へ 配慮 価値観を探る 選択肢をだしてもいい ⽅針と価値観を⼀致させる プランを提案する “本⼈を尊重すると〜〜 のようにするのがいいと 思いますがどうですか︖” 37 神⼾中央市⺠ER・ICUメソッド. 8章2 緩和ケア的アプローチ, 2023

  • 38.

    4 救急外来から 帰宅する 38

  • 39.

    4 救急外来から 帰宅する ⼊院適応はない︖ 酸素投与が必要 Caregiverがいない 緊急⼿術適応 ⾃分のケアが破綻 虐待の可能性 医学的⼊院適応 予測死亡率が⾼い バイタルサインが異常 Clinical Prediction Ruleを活⽤ 社会的⼊院適応 歩けない 患者が⽣活できるのかを確認 39

  • 40.

    4 救急外来から 帰宅する ⼊院適応はない︖ わからないときは 「⼊院する前提」で考えて 「安全に帰れるのか︖」 「⽣活できるのか︖」 を検討する 40

  • 41.

    4 救急外来から 帰宅する そもそも帰宅できる︖ 1つでもあれば⼊院を考慮する • 致死的な病態が考慮されている • バイタルサインに異常がない • 症状が改善傾向にある • 何かあった場合に医療機関にアクセスできる • 家族・訪問介護などの社会的な⽀援を受けられる • 帰宅で経過をみることに本⼈・家族が同意をしている 41 Cadetto.jp救急外来でのdisposition──帰宅? ⼊院?︓https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/cadetto/column/ematips/202112/572431.html

  • 42.

    4 救急外来から 帰宅する 考慮すべき問題点 1. フォローアップ医療へのアクセス 2. 薬の処⽅箋を記⼊する能⼒(薬の内容を説明できること) 3. 機能的⾃⽴度または歩⾏能⼒ 4. ⾃宅での介護能⼒(例︓⽇常⽣活動作、着替え、⼊浴など) 5. 家族および社会的⽀援ネットワーク 6. 児童・⾼齢者虐待の疑い Disposition of the Emergency Department Patient︓https://www.saem.org/about-saem/academies-interest-groups-affiliates2/cdem/for42 students/online-education/m3-curriculum/disposition/disposition-of-the-emergency-department-patient?_fsi=31jKfKci

  • 43.

    4 救急外来から 帰宅する ⾼齢者を帰宅させる場合の注意 1. 患者の認知障害や精神状態の変化はないか︖ 2. 安全に歩けるか︖ 3. どの程度の介護が必要で、介護者にそれが可能か確認したか︖ 4. 虐待やネグレクト(セルフネグレクトも含む)の⼼配は︖ 5. 新しい処⽅があれば、薬の相互作⽤は再確認したか︖ 6. 退院時の指⽰を、患者さんや介護者がよく理解しているか︖ 7. 患者は安⼼して帰宅の準備ができているか、患者・家族の⼼配は︖ 8. 患者のかかりつけ医に治療⽅針(ケアプラン)が伝えられているか︖ 43 Emerg Med Australas. 2019 Apr;31(2):266-270. PMID: 30884575.

  • 44.

    4 救急外来から 帰宅する ⾃殺企図の患者の帰宅は慎重に 1. 希死念慮が残存している 2. 今回の⾃殺を公開していない 3. 「もう⾃殺をしない」という約束に応じない 4. ⾃殺企図を頻繁に繰り返している 5. 不安や幻覚妄想が強い 6. ⾒守る家族がいない 精神科診察・施設への紹介、難しいなら⼊院→翌朝紹介 ⽇経メディカル︓https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/cadetto/column/ematips/201909/562330.html Modern Physician.2014;34: 217–9. 44 臨牀と研究.2012;89:1211–14.

  • 45.

    4 救急外来から 帰宅する 万全の準備 いざ帰宅 “かきくけこ”でチェックする 45

  • 46.

    4 救急外来から 帰宅する “かきくけこ” 紹介状は積極的に書きましょう • フォローアップが必要な病態のとき • 憩室炎、尿路感染、⾮特異的腹痛… • 患者が希望するとき • 新規処⽅するとき • 前医の処⽅を変更するとき • かかりつけでの調整が必須のとき(便秘薬等) • 後々診断書が必要な場合(救急では書かない) • 頻回受診患者のとき など “か” 外来予約・外来紹介 “き” 帰宅指⽰書・帰宅時説明 “く” 薬 “け” 結果説明 鎮痛・解熱薬等の処⽅希望があるかを確認しましょう コスト 超⾳波等のコストをもれなく取ること 病院経営がいまいち →職場環境がいまいちに… “こ” 46 志賀 隆. “当直ハンドブック”, p.282

  • 47.

    4 救急外来から 帰宅する 暫定診断名① 鑑別診断名② 処⽅内容と⽬的④ フォローアップ 次回予約⑤ 帰宅指⽰書 ③予想される経過 療養上の注意 ⑥早期再診の⽬安 47 J Accid Emerg Med. 2000 Mar;17(2):86-90. PMID: 10718226

  • 48.

    4 救急外来から 帰宅する 帰宅時に何を注意する︖ 「有事再診」の「有事」は何をさす︖ 「なにか変わったことがあれば受診するように」 という指⽰が 「注意義務違反」に相当するとする判例あり POINT︓具体的な再受診⽬安 ⽇経メディカル 「何かあれば受診するように」の説明で敗訴︓ 48 https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/clinic /saibankan/201911/563126.html(最⾼裁平成7年5⽉30⽇判決(判例タイムズ897号p.64))

  • 49.

    4 救急外来から 帰宅する 具体的な再受診⽬安︖ 予⾒可能性 注意すれば特定の出来事が発⽣することを予測予⾒で きたという可能性 回避可能性 特定の出来事が発⽣しないようにすることができたと いう可能性 医師に責任を問うための過失:医師がそのときに予測ができるもので、かつ、不都合な結果を避けら れることが前提となる。言い換えれば、行為時に予測もできず、仮に予測ができたとしても回避が不 可能なものについては、医師に責任を問えないとなる。 医療過誤弁護⼠ 49 予⾒可能性・回避可能性︓https://www.avance-lg.com/customer_contents/iryou/predictability-avoidability/

  • 50.

    4 救急外来から 帰宅する 再受診・フォローアップ 横ばい・改善傾向 増悪傾向 急激な悪化 外来へ 再受診 50

  • 51.

    4 救急外来から 帰宅する 再受診・フォローアップ 横ばい・改善傾向 「経過」から 合併症・治療経過を評価 今後の検査の必要性判断 外来へ 51

  • 52.

    4 救急外来から 帰宅する 再受診・フォローアップ 「予想される⾃然経過」 からの逸脱 Red Flagに相当する 増悪傾向 急激な悪化 再受診 52

  • 53.

    4 救急外来から 帰宅する 再受診・フォローアップ 合併症や治療経過の評価︖ ⾃然経過はどう判断する︖ Red Flag︖ 疾患・症候によって 予想できるものが異なる 覚えれない︕ ・・・適宜確認する 53

  • 54.

    4 救急外来から 帰宅する 4 救急外来から 帰宅する 注意すること︓私⾒ 4 救急外来から 帰宅する 腹痛 診断がつかない腹痛 no-specific abdominal pain, NSAP undifferentiated abdominal pain 救急外来を腹痛で受診した患者(全受診の5-10%)の 25-40%は診断がつかない しかし、再受診した患者の16%は外科的疾患で⼊院する Scand J Trauma Resusc Emerg Med. 2020 Jul 1;28(1):63. 4 救急外来から 帰宅する 咽頭痛 4 救急外来から 帰宅する 発熱 悪寒戦慄を伴う発熱 ⽣検後・⼿術後の発熱 なにかに噛まれたあと・渡航歴がある 化学療法中・担癌患者 免疫抑制剤使⽤中… などなど は基本的には出会ったときにwork upが推奨だが、 帰宅となっても外来紹介がよい 「腫瘍熱︖」「ウイルス感染︖」「熱中症︖」 はアンダートリアージ 「代替診断のない発熱」+「リスクあり」→培養採取 4 救急外来から 帰宅する 頭痛 Killer sore throatに相当する症状 急激な増悪 急激な増悪・新規随伴症状など 神経症状の出現(⿇痺・視野障害) 飲⽔・⾷事ができないことはよく注意する 発熱を伴うなどは特に注意する 胸痛 Killer chest painに相当する症状 急激な増悪・新規随伴症状など 移動痛なども注意 96 4 救急外来から 帰宅する 外傷 コンパートメント症候群の注意 5P(pallor(蒼⽩), pain out of proportion(強い痛み), pulseless (脈拍消失), paresthesia(知覚鈍⿇), paralysis(⿇痺))のうち、 知覚鈍⿇が⼀番初め、強い痛みも初期に⽣じる 化膿性腱鞘炎の注意(Kanavel徴候) 1. 屈筋鞘に沿った圧痛 2. 患指の対称性または紡錘状腫脹 3. 安静時、指はわずかに屈曲 4. 受動伸展時、腱に沿った痛み →最も初期症状 54

  • 55.

    4 救急外来から 帰宅する 注意すること︓私⾒ ポイントになるのは… 鑑別(3C等)が挙げれているか Critical, Common, Curable 臨床経過をどれだけ推測できるか 合併症の徴候を⾒抜けるか 55

  • 56.

    +α 救急医とは 56

  • 57.

    +α 救急医とは Emergency Physicianの役割 メディカルコントロールへの関与 緊急度・重症度を問わないGeneralist ⼈的・物的資源の制約がある環境でもパフォーマンスを最⼤に マルチタスク 教育 診療科を超えたマネージメント・リーダーシップ 専⾨科が専⾨を活かせるように 困ったときにどうするか 社会的プロブレムとの対応 → → → 幅広い守備範囲で初期対応をする トラブルシューティング 社会のセーフティネットとしての役割 57 JJAAM. 2022; 33: 204-36

  • 58.

    +α 開業 救急医とは Emergency Physician (ER医) 緩和ケア Clinical Toxicologist IVR 研究 ⾏政 Trauma Surgeon Intensivist 熱傷 58

  • 59.

    +α 開業 救急医とは Emergency Physician (ER医) 緩和ケア Clinical Toxicologist IVR Emergency Physicianの役割は 拡充されていっている ⾏政 Trauma Surgeon 研究 Intensivist 熱傷 59

  • 60.

    救急医療の10箇条 1. ABCの確保、慎重に 6. レッドフラッグを⾒極める 2. ナロキソン、グルコース、チアミン 7. 誰も信じるな、(カルテでさえも) を忘れない 信じるな 3. 妊娠検査、ベッドサイドエコーを 8. 失敗から学べ 4. 最悪の事態を想定する 9. ⾃分の家族と同じように接しなさい 5. 不安定なら画像検査に⾏かせない、 10. 疑わしきは、常に患者のそばに⽴て ⾏かなければならないなら ⼀⼈で⾏かせない 60 Ann Emerg Med. 2021 Mar;77(3):367-370. PMID: 33618812.

  • 61.

    Take Home Message 1. オーバートリアージを許容して⽅針決定︕ 2. 律速段階(時間)を意識したSmartな診療を︕ 3. 問診・⾝体診察を丁寧に︕受診理由を確認︕ 4. 患者と⽅針を「共同決定」する︕(SDM) 5. 感情を置き去りにしないコミュニケーションを︕ 6. “かきくけこ”で帰宅前チェック ⾝を守る指⽰・記載 7. Emergency Physicianが増えるとみんな助かる︕(はず) 61

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