テキスト全文
神経救急で役立つTIPSの概要
#1. Daisuke Yamamoto
Department of Neurology, Shonan Kamakura General Hospital 誰も教えてくれない!
神経救急で絶対に役に立つ
SKGH流100のTIPS!
#2. Introduction 特定の疾患に対する対応はもはやどこでも学べるものです。
しかしながら、実際の臨床をうまく回していくコツ(TIPS)は
言語化しにくく、誰も教えてくれません。
ここでは、本気で役に立つ、SKGH流TIPSを伝授しましょう。
若い先生向けですが、専門医だって必ず役に立つ内容をお話します。
臨床のキモを抑えて、matureな救急医になろう!
#3. Tips/Clinical pearlsの意味 即時性と実用性 :クリニカルパールは現場で即座に使える知識を教えてくれる。
経験知の共有 :ベテランの経験に基づく知見を若手と共有する手段になる。
EBMとの補完関係:エビデンスが不足している状況や個別性の高い症例において、
クリニカル・パールが意思決定を支援する。 知識は調べれば知ることができるが、Tips/Pearlsは得難い。生身の教育の中で醸成される。
脳卒中におけるラクナ梗塞とTIAの管理
#5. トラブルになるのは
ラクナ梗塞とTIA。
悩むなら入院対応にする。
ラクナ梗塞に準じての
治療介入とし、慎重に対応する。
悩むなら保守的対応にすること。 TIPS
#6. CASE 75歳女性。糖尿病でインスリン使用している。
一過性の構音障害で救急要請し受診。ER受診時には全く症状なし。
病歴聴取でも、病歴は詳細に聴取できず。
ともかく、一過性構音障害があったと。友人もあったと言っている。
どうするか。MRI施行したがDWIで脳梗塞は指摘できなかった。
なんとも言えなかったので無治療で帰宅にしたら、
その後、構音障害・右片麻痺を認め、脳梗塞になってしまった。
#7. ラクナ・TIAはコンサバティブにいく。 ERでの初診時脳梗塞の診断見逃し・診断遅延は、全脳梗塞診断症例の9%。
ラクナ梗塞は初期の症状の軽微さから診断の難しさがある。
主訴が軽度、非特異的、一過性の場合には誤診リスクが高い。
解説 Front Neurol. 2021;12:682827. Circ Cardiovasc Qual Outcomes. 2021;14(7):e007758.
Lancet Neurol. 2003;2(4):238-45.
#8. ラクナ・ TIAはコンサバティブにいく。 臨床をやっていると、真のTIA/真でないTIAと双方があることに気づく。
ただし、それを100%保証する基準などない。
しっかり症状のある心原性やアテロームは診断に悩みがない。
一方で、軽症として来院するラクナやTIAが厄介。
逆に軽症例が故に過小評価して症状が悪化するとトラブルになりやすい。
TIAやラクナ梗塞うたがいこそ、慎重な対応を。
では、何に注意して、何を行動原理にすればいいか????
解説
#9. TIAは入院を勧める。
真のTIAとは?
構音障害・麻痺・血管障害リスクは
真のTIA。 TIPS
#10. CASE 75歳女性。糖尿病でインスリン使用している。
一過性の構音障害で救急要請し受診。ER受診時には全く症状なし。
病歴聴取でも、病歴は詳細に聴取できず。
ともかく、一過性構音障害があったと。友人もあったと言っている。
どうするか。MRI施行したがDWIで脳梗塞は指摘できなかった。
なんとも言えなかったので無治療で帰宅にしたら、
その後、構音障害・右片麻痺を認め、脳梗塞になってしまった。
TIAの診断基準と治療方針
#11. ラクナ・ TIAはコンサバティブにいく。 Typical TIA Symptoms:虚血による可能性が高い症状
●一過性黒内障
●失語症または構音障害
●半盲
●片麻痺および/または片側感覚喪失
UPTODATE: Definition, etiology, and clinical manifestations of transient ischemic attack 解説
#12. ラクナ・ TIAはコンサバティブにいく。 ABCD2スコア:TIA発症後7日間における虚血性脳卒中リスクのスコア
●年齢 (60歳以上 = 1ポイント)
●TIA後の血圧上昇 (収縮期血圧≥140 mmHgまたは拡張期血圧≥90 mmHg = 1ポイント)
●臨床的特徴 (片麻痺= 2 点、構音障害のみ = 1 点、その他 = 0 点)
●TIA症状の持続時間(60分以上 = 2ポイント、10~59分 = 1ポイント、10分未満 = 0ポイント)
●糖尿病 (あり = 1 点)
UPTODATE: Definition, etiology, and clinical manifestations of transient ischemic attack 解説
#13. ラクナ・ TIAはコンサバティブにいく。 行動のルールを決めておくと判断に失敗が少ない。
構音障害は、意味のある所見として評価する。
運動障害は、意味のある所見として評価する。
リスクが高い場合は、事前確率を重んじて評価する。
どちらか悩んだら、抗血小板薬は処方してフォローにする。
どちらか悩んだら、保守的な対応を選ぶ。 解説
#14. TIA/ラクナ梗塞で
悩んだ場合には、
アスピリンは必ず投与する。 TIPS
脳梗塞後の症状再増悪とMICROSの概念
#15. CASE 75歳女性。糖尿病でインスリン使用している。
一過性の構音障害で救急要請し受診。ER受診時には全く症状なし。
病歴聴取でも、病歴は詳細に聴取できず。
ともかく、一過性構音障害があったと。友人もあったと言っている。
どうするか。MRI施行したがDWIで脳梗塞は指摘できなかった。
なんとも言えなかったので無治療で帰宅にしたら、
その後、構音障害・右片麻痺を認め、脳梗塞になってしまった。
#16. 真のTIAかどうかわからなくても、アスピリンはいれておく。 保守的な対応を。治療介入なし、というアクションは危険。
悩んだら治療を行う。
後日外来フォローで病歴をしっかり吟味してもらう。
慌ただしいERでは評価しきれないこともある。
アスピリンを処方して、外来での再評価対応にする。 解説
#17. 脳梗塞後の症状再増悪には、
MICROSというのがあってだな。 TIPS
#18. CASE 脳梗塞後遺症で右片麻痺がある65歳男性例。
「既知の右片麻痺が悪化した」という愁訴でERを受診した。
脳MRIを施行したが、新規の脳梗塞病変はない。
どう解釈すればいいのか。
#19. MICROSという概念は知っておく。ただしこれにミスリードされないのも大切。 過去に回復した脳梗塞の神経症状が、代謝的ストレス(感染症、低血糖、薬物の影響など)によって一時的に再出現する現象。
これは新たな脳梗塞ではなく、いわゆる「stroke mimic」の一つ。
metabolic insult causing re-expression of old stroke(MICROS)
Post-Stroke Recrudescence(PSR) 解説 臨床神経 2020;60:27-31 Cureus. 2023;15(8):e43461.
#20. MICROSという概念は知っておく。ただしこれにミスリードされないのも大切。 このようなシチュエーションは困る。本当に悪化したのかわからない。
MRIで評価するしかない。
そして結果、MRIもintactな場合はまだ困る。
概念としてのMICROSを知っておくと了解しやすい。
「既知の病変が、身体侵襲(発熱など)で悪化する」
ただし、こういう知識を知っていることで失敗することもある。
知識にミスリードされない態度も大切。 解説
てんかん発作後の合併症とその管理
#21. Category EPILEPTIC SEIZURE
#22. てんかん発作後起こる、
問題シリーズ。 TIPS
#23. CASE てんかん発作で来院した70歳女性。
てんかん発作後に血圧が低い。
てんかん発作後に呼吸不全になっている。
てんかん発作後に痛みを訴えている。
てんかん発作後から様子がおかしい。
#24. てんかん発作後シリーズ 血圧低下:たこつぼ型心筋症
呼吸不全:神経原性肺水腫
痛み :腰椎圧迫骨折/肩関節脱臼
様子 :てんかん発作後精神病
てんかん発作後に起こりうるイベントを知っておくとよい。
てんかん発作後の二次被害を知識として押さえておく。 解説
#25. てんかん発作×たこつぼ型心筋症 時に経験するので覚えておく。発作後のありふれた、CK上昇でも想起したい。
たこつぼ型心筋症:心筋梗塞に類似した、胸痛・呼吸困難・ACS様のECG変化・壁運動異常を呈し、冠動脈病変に原因のない、一過性の壁運動異常を特徴とする。
ストレス性心筋症として理解される。リスク:高齢・女性 に多い。
たこつぼを想起するキーワード
てんかん発作 × ECG ST変化
てんかん発作 × 心不全/ショック
てんかん発作 × BNP 上昇/トロポニン 上昇
てんかん発作 × 突然死(SUDEP) BMJ Case Rep. 2019; 12(1): e225924.
N Engl J Med. 2015;373(10):929.
N Engl J Med. 2015;373(10):929.
#26. けいれん×胸部画像異常
=神経原性肺水腫 中枢神経系への急性損傷後、数時間以内に発症する急性肺水腫。まれだが見落としは多い。
頭蓋内圧の上昇が、カテコールアミン放出を介して肺水腫の発症に関与していると考えられている。
けいれんの後に報告されるのは 2%。
発作後に予期せず死亡したてんかん患者のほぼ 80% が 神経原性肺水腫を患っていることが指摘されている。 Case Rep Neurol Med. 2019; 2019: 6867042.
#27. てんかん発作×外傷 骨折部位と頻度:
両側性肩関節後方脱臼骨折 33%
>胸腰椎圧迫骨折 29%
>頭蓋骨・顎骨折 8%
>両側大腿骨頸部骨折 6% Epilepsia. 2019 May;60(5):996-1004.
#28. てんかん発作×外傷のスクリーニング まず、患者に発作後の筋骨格系の痛み (特に関節、背中、四肢)があるかどうかを尋ねる。
障害リスクのある特定の場所を触診し、変形、 関節可動域制限、および打撲をチェックすることにより、 骨折の有無を評価する。
第三に、疑わしい領域の X 線または CT 検査を行う。 Epilepsia. 2019 May;60(5):996-1004.
#29. てんかん重積状態疑いなら
灌流画像を評価してみるのも
一考。
Perfusion CT, MRI ASL法。 TIPS
#30. CASE 90歳女性例。意識障害主訴で救急搬送。
けいれん発作はあった、ということだがはっきりしない。
てんかん発作であった証拠はあるのか?
てんかん重積状態の診断と治療
#31. J Neurol. 2022;269:3761-3769. 過灌流所見は、SEの最終診断に感度60%、特異度77.8%
他の研究でも、感度は低く、特異度は高い、という結果。 Clin Neurophysiol. 2024:168:121-128. Perfusion CT
#32. J Korean Soc Magn Reson Med. 2012;16(2):142-151. てんかん重積状態(Status Epilepticus, SE)におけるMRIのArterial Spin Labeling(ASL)法
SEでDWIで信号変化がなくても、ASL追加で異常所見が得られる。+ASLで追加の診断的情報が得られる。 Acta Epileptol. 2023;5:23. MRI ASL
#33. 灌流画像は役に立つ。脳梗塞で撮影したときも意識して評価する。 還流画像がてんかん発作の画像的な証拠として役に立つ。
発作時:過灌流所見が得られる。Perfusion CTもしくはMRIのASL法。
てんかん発作を考えたいときには意図して+ASLを追加する。
DWI+MRAも併せて注目する。
脳梗塞疑いでperfusion CTを撮った時も、意識して評価する。 解説
#36. てんかん重積状態では、
バイタル不安定なら、
ホスフェニトインは避ける。
(※発熱時のアセリオのイメージ) TIPS
#37. CASE 尿路感染症を契機にけいれん発作をきたした80歳女性例。
けいれん発作に対しては、ジアゼパム5mg IVして発作は頓挫した。
次の発作予防のためにホスフェニトインを追加で使用したところ、
血圧低下してしまった。
#38. ホスフェニトインでは時に血圧低下がある。 血圧低下リスク:低血圧は、高齢 (60 歳以上) および全身感染症の存在の可能性。
ホストイン VS レベチラセタムで血圧低下は、レベチラセタムでは認めなかった。
状態不安定では、2nd lineはLEV優先が安心。
Epilepsy Res. 2009 Dec;87(2-3):268-71. J Clin Pharm Ther. 2017 Oct;42(5):561-566.
#39. ホストインはたまに血圧下がる。 イメージとしては、アセリオと同様。
感染症が併存していると、血圧下がる。
ホストインの血圧低下リスク:感染症、高齢者
アセリオの血圧低下リスク :重症感染症、心不全、β遮断薬
こういう時の2nd line therapyはレベチラセタムが安心。 解説 Yonsei Med J. 2024;65(12):695–702.
#40. てんかん患者の精神症状は、
発作性か、発作後か。
はたまた、脳炎か。を検討する。 TIPS
脊髄障害の鑑別と初期対応
#41. CASE てんかん発作後、大暴れの41歳女性例。
アセスメントはどうしたらいいのか?
#42. 発作性か、発作後状態か。脳炎も考慮。 発作後精神病:発作後に精神症状を認める場合。
発作性精神病:今が発作状態で、精神症状を認める場合。まれ。
脳炎の可能性はどうか?:発作の原因がそもそも脳炎である場合。
てんかん発作関連では、いずれにせよ精神症状はありうる。
抗精神病薬でコントロールは試みていく。
脳炎の可能性についても考慮はしていく。
解説 Epilepsia. 2007:48 Suppl 9:17-9.
#43. 逆もしかり:脳炎のときにてんかん合併があるかの検討も。 脳炎の急性期にてんかん発作を合併することは多い。
原因にもよるが、脳炎急性期のてんかん発作の合併率は44%という報告も。
やや話題は異なるが、「脳炎の時には常に、てんかん発作の合併があるかどうか?を検討する」必要がある。
解説 Epilepsia. 2015;56(1):133-8.
#44. 精神症状があると判断するなら、
LEVはあっさりあきらめること。 TIPS
#45. CASE 85歳男性例。背景にアルツハイマー病がある。てんかん発作で入院し、レベチラセタム1000 mg/day投与とした。
夜間易怒性を伴い、不眠状態であった。どう考えるか。
#46. LEV使用状態で精神症状あればすぐやめること。 純粋に、入院によるせん妄かも?と考えるかもしれない。
ただし、LEV内服下で発生したせん妄はほぼ薬剤が関与している。
LEV投与の神経救急患者の50%が過活動性の精神症状を認めた。
この場合は潔く、LEV中止が好ましい。
頻用するLEVの副作用については留意しておくこと。 解説 Pharmacotherapy. 2023;43:122-128.
#47. Category SPINAL CODE DISEASE
#48. ER受診の脊髄障害疑いの鑑別:
物理的圧迫(頚椎症・腫瘍・膿瘍)
>脊髄硬膜外血腫
>脊髄梗塞
>脊髄炎 を想起する。 TIPS
#49. CASE 70歳女性。急性 OR 突発発症の両下肢脱力が主訴。
アクションはどうするか?
#50. ERで検討すべき脊髄障害の鑑別を挙げる。 まずは最もコモンな①頚椎症性脊髄症(=物理的圧迫病態)を考える。
Criticalな疾患として、②脊髄硬膜外血腫を。これは忘れやすい。
そして、③脊髄梗塞も鑑別になる。
内科疾患としては、④脊髄炎を鑑別に挙げる。 解説 Handb Clin Neurol. 2017:140:319-335.
脊髄障害のMRI評価と診断のポイント
#51. ERで検討すべき脊髄障害の鑑別を挙げる。 ERにおける急性脊髄障害についての検討:MRIで診断していくしかない。
疼痛、錐体路兆候(筋力低下・腱反射亢進)でより積極的にMRI施行の検討を。
そして、脊髄障害疑いならどの部位のMRIを撮るか??? 解説 Neuroradiol J. 2022;35:727-735.
#52. 脊髄障害は、
悩むならwhole spine MRI
矢状断をとっておく。 TIPS
#53. CASE 70歳女性例。突発発症の下肢対麻痺である。
先ほどのアイデアのごとく、4つの鑑別をまずは挙げる。
そして、MRIではどこを撮るのか?は正直、難しい。
正直、かっこつけずに、whole spine MRIでよいと思う。
#57. 脊髄障害の初手はwhole spineでよい。 脊髄緊急疾患でのWhole spine-MRIは推奨。
ER脊髄障害S/Oで、約半数の症例の脊髄緊急疾患診断に有用だった。
特に、外傷、麻痺、および排便/排尿症状患者で価値ある可能性 解説 Curr Probl Diagn Radiol. 2021;50:637-645. Handb Clin Neurol. 2017:140:319-335.
#58. 脊髄障害の初手はwhole spineでよい。 脊髄障害の高位診断は正直難しい。
症状の高位と実際の脊髄障害の高位は異なる。
実際の障害高位は、症状の高位よりも、より上にある。
対麻痺なら、腰髄レベルよりもより高位でどこでもあり。
腰髄レベルMRIのみ施行なら空振りリスクある。
それなら、WS-MRIの撮影でもよかろう。 解説
#59. 脊髄障害は
わかりにくかったりする。
運動感覚障害・膀胱直腸障害を
ヒントに。CTでの膀胱所見も。 TIPS
#60. CASE 70歳男性例。AFでDOAC内服中。
頸部痛で発症した四肢脱力症状。
まずは、硬膜外血腫や脊髄梗塞を鑑別にあげた。
そして、脊髄障害らしさを示唆するヒントを確認していく。
脳MRIにおけるDWI高信号の鑑別
#61. CTで膀胱見てみる。 しっかりした脊髄障害では膀胱直腸障害はないか?を意識して所見を確認する。
CTでの膀胱が緊満しているさまもみる。
脊髄梗塞の鑑別には、CTで大動脈解離も気にする。 解説 Neurologia . 2023;38(6):391-398.
#62. Ochsner J. 2015;15(1):70–73. CTで膀胱拡張を確認
#63. 麻痺が問題なら:
運動・感覚障害?
純粋運動 障害? TIPS
#64. 純粋運動障害 純粋運動障害は鑑別は特別なものばかり。
筋疾患・神経筋接合部疾患(MG)・ALSといった特別な鑑別になる。
ヒステリー疑いのときに、純粋運動障害なら有力な情報になる。
これは重要なTIPSで、麻痺をみたら、感覚症状の有無を確認していく。 解説
#65. 運動感覚障害 運動感覚障害なら、末梢神経障害か、脊髄障害。
これでぐっと鑑別が狭まる。
腱反射の亢進/低下+バビンスキー反射をここでは確認する。
ただし、四肢運動感覚障害でGBSかな?と話題になった場合は、やはりCriticalな疾患を鑑別するという意味で頚髄MRI評価はするのは慎重な対応。
Spinal shockの意味についても押さえておく。 解説
#67. 脳MRI:
DWI HIGHのmassでは、
脳梗塞以外に、
膿瘍、出血、リンパ腫を考える。
(+脳腫瘍) TIPS Insights Imaging. 2018;9:535-547. Br J Radiol. 2013;86(1032):20130599.
#68. CASE 70歳男性例。頭痛を主訴にERを受診した。
STROKEの検討でMRIを施行した。
ひだり基底核にDWIで高信号変化を認めた。
脳梗塞かと思ったが、なんだか違和感がある。
DWI高信号って脳梗塞だけでいいのかどうか、という議論になった。
#69. DWI高信号:脳梗塞、脳膿瘍、脳出血、悪性リンパ腫。 DWI高信号病変の鑑別をすらすらあげられることは大切。
まずは脳梗塞から考える、で異論はなし。
ただし、そのほかの可能性も知っておくべき。
脳梗塞一点買いだと、診断で失敗する。
やはり病歴は大切だろう。Strokeとして了解できない病歴なら、立ち止まって画像を検討する。
D/D 膿瘍、出血、悪性リンパ腫 解説
#70. Insights Imaging. 2018;9:535-547. 中枢神経系原発性リンパ腫 DWI ADC T2WI T1Gd
脳と脊髄の障害局在の評価方法
#71. Insights Imaging. 2018;9:535-547. 亜急性期血腫:DWI HIGH。リングエンハンスを呈しており、膿瘍と悩む。 DWI T1Gd ADC
#72. AJNR Am J Neuroradiol. 2004;25:1310–1317. 脳膿瘍:DWIは明確なHIGHで、リングエンハンスがある。 DWI T1Gd ADC
#73. 脳出血のMRIは難しい。悩む。
膿瘍っぽく見える。 TIPS
#74. CASE 頭痛主訴で来院した60歳男性。
MRIをとると、頭頂部にDWIで高信号がある。
脳梗塞?脳出血?脳膿瘍?脳腫瘍?
Generalまったく問題ないが、どう対応するのか悩む。。。。。
結局、亜急性期の脳出血だった。MRIで脳出血の診断は難しい。
#75. MRIで脳出血を語ろうとしない、はある程度大切な態度。 画像だけで勝負しようとすると難しい。
また、脳出血はMRIで評価しにくい、というルールを心得ておく。 解説
#76. T1WI T2WI DWI ADC MAP Eastern Journal of Medicine 2013;18:185-194
#77. 脳で障害局在がわからないなら、
脊髄も評価しておこう。
逆も然り。 TIPS
#78. CASE 突発発症の左上肢麻痺を主訴に救急要請。
麻痺の様子を評価すると、どう考えても脊髄を考えたくなる。
・左上肢単麻痺
・髄節性がありそうな障害パターン:C5領域に強調される障害
脳MRIを優先して行ったが脳梗塞はなし。
その後、脊髄硬膜外血腫や脊髄梗塞をねらって頚髄MRIを施行するが所見なし。
結局、次の日脳MRI再検し、脳梗塞であった。
#80. 脳➡脊髄ないしは脊髄➡脳は区別できないことも ここでのアイデアは、双方を障害局在として想起できることが重要。
また検査の順番をどうするか、は議論。
脳梗塞超急性期治療の適応はあるか?
Criticalな脊髄疾患ではないか?
これは議論しなければならない。病態評価の順番も重要。
そして、検査の偽陰性についても知っておく。
脳梗塞の偽陰性、脊髄梗塞の偽陰性はある。 解説
筋障害の評価と筋MRIの重要性
#81. 純粋運動障害を来す筋炎。
筋炎の傍証として、
大腿筋MRIをとってみる。 TIPS
#82. CASE 比較的突発発症の両下肢麻痺の40歳男性例。
脊髄障害を考慮して脊髄MRI施行するが所見なし。
大腿部痛も訴える。両下肢MMT 2/5。
GBS?脊髄障害?どうする?運動感覚障害とはいい難し。
やや節操ないが、大腿筋MRIを施行し、筋障害を証明した。
#83. Ann Rheum Dis. 2016;76:681–687. 筋MRI
客観的に筋炎所見があること
どの筋に障害があるか?
脂肪変性はあるか?
急性か?慢性か?
など、客観的に知ることができる。
#85. 客観的な検査に頼る。筋障害を筋MRIでみる。 ERでどこまでやるか?はもちろん議論にはなる。
筋障害は外からみてもわかりにくいこともある。
筋萎縮あるかも???といってもわかりにくい。
筋MRIが教えてくれること:急性筋障害があることの証明。また慢性的な筋障害の証拠(脂肪置換や変性)。
筋力障害が分からないときの筋MRIは一考。
CTでも筋萎縮に注目するのもオススメ。 解説
#89. Category ENCEPHALITIS
#90. 低Na血症をみたら、
脳疾患(脳炎・髄膜炎・その他)
の存在を考えてみる。 TIPS
脳炎の診断と低Na血症の関連
#91. CASE 様子がおかしい、という愁訴で救急受診に至った16歳女性例。
発熱ある。採血:Na 130 mEq/L。脳MRIはintact。髄液検査:Cell 7/μL。
精神症状もなんとも評価しにくい。
最終診断は、結局、脳炎(抗NMDAR抗体脳炎)だった。
低Na血症は往々にしてヒントになる。脳疾患鑑別は低Na血症あるならリアル。
#92. 髄膜炎、脳炎はヒント少ないが、低Na血症はヒント。 急性脳炎で低Na血症を認めることは多い。
SIADHあるから本物なんだろうな。という考え方は大切。
CSF Cellのちょっと上昇、もリアル。 解説 J Intensive Care Med. 2019;34(5):411-417.
#93. Category Parkinson’s
disease
#94. TIPS 運動障害がよくわからない時には、common diseaseである
PDを想起してみる。
#95. CASE 80歳男性例。もともとADL自立。発熱主訴に夜間ERをWalk inで受診した。
もともとは歩行は問題ないが、どうにも動けない、という状況である。
検査の結果、COVID19の診断に至った。
ただし、感染症の重症度と運動障害は見合わない印象。
歩き出そうとしても、最初の一歩がまったくでない。
反応の悪さ/発動性の低下も気になる。パーキンソン病??
#96. PDは多い。動けない理由で考えてみる。 PDの疾患頻度は100人に1人。
「高齢者が動けない」という話題ではPDを想起できる必要がある。
転倒した、という文脈においても、その理由は?の原因で考える。
感染症であぶりだされる(症状が顕在化する)PDはよくある。
常に、高齢者運動障害の原因はPDかも、という発想は悪くはない。 解説
#97. PDは急病で調子悪くなる。
変性疾患患者は感染症で
動けなくなってしまう。 TIPS
#98. CASE 80歳PD例。PD診断後10年経過している。
もともとADLは自立はしており、自分のことは自分でできる水準である。
今回誤嚥性肺炎を発症し、ERを受診した。肺炎の程度はそこまで重症ではない。
ただし、体動困難でdispositionは入院対応とした。
入院後もADL改善なく、嚥下障害も悪化したまま経過した。
#100. PD診断は病歴の流れを確認する。
前駆する非運動症状を聞く。 TIPS
パーキンソン病の診断と症状の評価
#101. CASE 転倒、頭部外傷のエピソードで救急搬送された70歳男性例。
転倒理由を探ろうとして一通り考えた。PDは?
内服薬は以下の如く
SSRI、酸化マグネシウム、タムスロシン、ゾルピデム。
何かフラグは立っているのか????
#102. パーキンソン病のdisease trajectory
#103. PDの非運動症状を聞いてみる。 PDには運動症状に前駆する、pre-motor symptomsがある。
これは、非運動症状である。
非運動症状:うつ、便秘症、排尿障害、不眠症、レム睡眠行動障害など。
頑固な便秘症の存在、レム睡眠行動障害が確認しやすい。
ER受診を契機に、PD診断に至る症例も少なくない。 解説
#105. ギランバレー症候群の鑑別は
ヒステリーではあり。 TIPS
#106. CASE 20歳女性例。発熱後、1週間後に四肢脱力感としびれ感を愁訴にERを受診した。
GBSっぽいと考え、入院対応にした。
#107. キーワード診断について考える。GBSはヒステリー多い。 私たちの診断学はある程度キーワード診断に依存している。
ただし、キーワードにミスリードされないようにすること。
何も証拠がないなら、慎重な診断をすることが重要。
機能性神経障害とGBSは、診断の場面でしばしば話題になりうる。 解説 UPTODATE:Guillain-Barré syndrome in adults: Pathogenesis, clinical features, and diagnosis
#108. GBSは過大評価も過小評価も 起こりうる。慎重に対応。
GBS診断は難しい。
ヒステリーも鑑別。
脳神経障害があれば確からしい。 TIPS
#109. CASE 20歳女性例。発熱後、1週間後に四肢脱力感としびれ感を愁訴にERを受診した。
GBSっぽいと考え、入院対応にした。
今回は、顔面神経麻痺がある。
#110. 脳神経麻痺はGBSとして信用できる。 先述の話題と比較し、脳神経麻痺があればGBS診断の悩みは少ない。
顔面神経麻痺が50%以上にが合併、嚥下障害は最終的に50%に合併しうる。また、外眼筋麻痺もfisher症候群では特徴的。
「7-9-10-いい」と専門医試験では覚えた。 解説 Brain. 2014;137:33-43.
薬剤性神経障害の鑑別と管理
#111. ER薬剤性神経障害シリーズ。 TIPS
#112. 薬剤性パーキンソニズム 抗精神病薬(ドパミンD2受容体拮抗薬)
第一世代(定型)抗精神病薬:リスクHIGH
例:ハロペリドール(セレネース🄬)、クロルプロマジン(コントミン🄬)、
スルピリド(ドグマチール🄬)
第二世代(非定型)抗精神病薬:リスクLOW
例:リスペリドン(リスパダール🄬)、オランザピン(ジプレキサ🄬)、
クエチアピン(セロクエル🄬)、アリピプラゾール(エビリファイ )
2. 消化器系薬剤(制吐薬・消化管運動促進薬)D2受容体拮抗作用を持ち、原因となる
例:トクロプラミド(プリンペラン🄬)>>ドンペリドン(ナウゼリン🄬)
3. その他の薬剤
抗うつ薬 :パロキセチン、セルトラリン、デュロキセチンなどのSSRI・SNRI
抗てんかん薬:バルプロ酸ナトリウム(デパケン🄬)
解説 重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤性パーキンソニズム(厚生労働省)
パーキンソン病診療ガイドライン2018(日本神経学会)
J Clin Neurol. 2012;8(1):15–21.
#113. 遅発性ジスキネジア
第一世代抗精神病薬(例:ハロペリドール)>第二世代抗精神病薬(例:リスペリドン、オランザピン)のTDリスク
非抗精神病薬であるメトクロプラミド(プリンペラン🄬)やプロクロルペラジン(ノバミン🄬)などの抗ドーパミン作用を持つ薬剤もリスク。 解説 Ochsner Journal 2017;17(2):162-174
#114. 薬剤性てんかん
抗うつ薬 :三環系(アミトリプチン)、SNRI
鎮痛薬 :トラマドール(特に他の中枢作用薬と併用時)
抗ヒスタミン薬
抗菌薬 :ペニシリン系、カルバペネム系(特にイミペネム)
抗がん薬/免疫抑制薬:シクロスポリン、メトトレキサート
中枢刺激薬 :アンフェタミン、コカイン 解説 Expert Rev Neurother. 2006;6(4):575-89.
#115. 薬剤性脳症
抗菌薬 :セフェム系抗生物質(CFPM>CTRX)、メトロニダゾールなど。
抗てんかん薬:バルプロ酸ナトリウム
抗精神病薬
免疫抑制薬 :シクロスポリン、MTX など。
その他 :リチウム、トラマドールなど。 解説 Int J Clin Exp Med 2020;13(11):9092-9100
#116. 薬剤性振戦
原因薬剤:
アミオダロン、SSRI、三環系抗うつ薬、リチウム、バルプロ酸、抗精神病薬、シクロスポリン・タクロリムス、レボチロキシン、アルコール
トラマドール も原因になりうる。
解説 J Neurol Sci. 2022:435:120192.
#117. SKGH神経救急TIPSはある程度汎用性のある、
臨床で使える知識です。
パールやTIPSは、行動にブレがなくなる有用性が
あります。もっとTIPSを集積・集約して、
価値あるものに昇華していきます!