テキスト全文
ERてんかん診療の目的とフィードバック
#1. Daisuke Yamamoto
Department of Neurology, Shonan Kamakura General Hospital さらに,もう一枚上手な
ERてんかん診療に役立つTips
#2. また、本講演内容に関連し、開示すべき利益相反はありません。
#3. Introduction ER診療と入院・外来診療は求められるものもゴールも異なります。
ER診療とその後の診療は、お互いにフィードバックが存在することが望ましいですが、現実的にはその機会の乏しさもあります。
このプレゼンテーションでは、ERでのてんかん診療をレベルアップするために役立つTIPSを、入院治療医の立場からフィードバック させていただき、よりよい診療を目指すことが目的です。
脳卒中後てんかんの定義とリスク
#5. early seizure、late seizureとはなにか?
#6. Early seizure (ES)は、脳卒中発症とともにけいれん発作を来す場合を指します。
定義としては、脳卒中発症7日以内に発症した発作。多くは1-2日以内発症です1) 。
ESは急性症候性発作である、と言えます。
急性症候性発作とは、神経系に影響を及ぼすイベントに時間的に並行して起こるけいれん発作です。これは、「てんかん」とは区別されます。
てんかんではありませんので、抗てんかん薬の使用は一時的で、永続的な使用は行いません。 Early seizureとは? 1) Arch Neurol 2000;57:1617-1622
#7. 急性症候性発作はてんかんとは区別する。 繰り返しになりますが、一過性のけいれん発作は起こりうる状態ではあるが、将来的に反復性をもって発作を来す「てんかん」とは区別されます。
急性症候性発作での抗てんかん薬の使用は短期間のみとします。
永続的な使用は必要ありません。
例えば、入院中のみの抗てんかん薬の使用や、外来での減量中止が 方針となります。
#8. 急性症候性発作の原因疾患:てんかん診療ガイドライン2018
#9. Late seizureとは? Late seizureは、ほぼ「てんかん」と同義です。
Late seizureの定義は、脳卒中発症後の慢性期の発作を指します。
脳卒中後の慢性期に起こった発作は、てんかんによる発作と言えます。
その理由は、発作の反復リスクが高いことによります。
てんかんとは、反復性をもって発作を来し得る病態です。
Late seizureの場合は発作を反復しうるので、継続的な抗てんかん薬での発作予防が検討されます。
発作の反復性とてんかんの診断基準
#10. 発作の反復性について 1) Epilepsia 2014;55:475-482 てんかんの診断を検討する時、通常は二度の発作をもって「反復性がある」と評価し、抗てんかん薬が導入されます。
一度発作があった人が、反復発作を来す頻度は50%以下であることが知られています1)。
二度発作があった人が、反復発作を来す頻度は70%以上であることが知られています1) 。
この疫学データをもとに、二度の発作をもって、てんかんの評価をする事となっています。
#11. Late seizure = てんかん 一方で、反復性が高い病態の場合には、一度の発作をもって、てんかんとして 診断を検討します。
脳卒中後てんかんは、反復性が高い(再発率60%以上)ことが知られています1)。よって、LSはおおむねてんかんとしての理解が可能な病態となります。
すなわち、抗てんかん薬導入が初回発作から議論されることになります。 1) Epilepsia 2014; 55: 475-482.
#12. 脳卒中の発作 一般的な発作 この対応関係について理解して下さい。 演者作成
#13. SUMMARY 1 脳卒中発症と共に起こるけいれん発作がearly seizureである。
Early seizureはてんかんではない。急性症候性発作である。
この場合の抗てんかん薬使用は一時的である。
脳卒中発症後、時間が経った後におこる発作がLate seizureである。
Late seizureは、反復性に発作を来し得る。つまりは、Late seizureはてんかんである。
てんかん診断の二回発作ルールについても確認してください。 演者作成
脳卒中後てんかんの頻度とリスク因子
#14. 脳卒中後てんかんの
頻度はどれくらいか?
#15. Late seizure=脳卒中後てんかん (Post stroke epilepsy)
脳卒中後のてんかん発症頻度は、6-12%です1)。
よって、脳卒中後にてんかん発作を認める頻度は低くありません。
コモンであることは、説明できる必要があります。
また、脳卒中後てんかんが起こりやすい条件も知られています。 脳卒中後てんかんはコモン 1) Eur J Neurol 2013; 20: 1247-1255
#16. 脳卒中後てんかんのリスク 1) Neurochem Int 2017; 107: 219-228 脳卒中後てんかん発症のリスク因子が知られている。
リスク:出血性病変がある、テント上皮質病変である、脳卒中が重症である。1)
発症に関連するリスクの組み合わせのスコア化による予測の検討もある。
(SeLECT score, CAVE score)
脳出血患者においては、未来のてんかん発症リスクは伝えてもいいかもしれない。
#17. 高齢者てんかん(65歳以上)の頻度は1%以上です1)。加齢とともにてんかん患者は増えていきます。脳の器質的病変の増加とともにてんかん発症が増えることは了解しやすいです。
また、高齢者てんかんの背景疾患の40%が脳卒中後てんかんです2)。
高齢者てんかんと脳卒中後てんかんは、オーバーラップする患者群です。
脳卒中後てんかん、高齢者てんかんいずれもコモンな問題であることを知りましょう。 高齢者てんかんもコモン 2) Ann N Y Acad Sci 2010; 1184: 208-224 1) Epilepsy 2020; 14: 7-10
#18. SUMMARY 2 脳卒中後にてんかんを発症する頻度は5-10%である。少なくはない。
高齢者てんかん(65歳以上)は、 1%以上の頻度である。
高齢者てんかんの一番多い背景疾患は脳卒中である。
脳卒中後てんかん、高齢者てんかんはコモンなテーマであることを理解する。 演者作成
MRIと髄液検査の適応と評価
#19. 脳卒中後てんかんは最もコモンなてんかん。
一通り基礎的知識を説明できるようにする。
これを中心に、知識を整理していく。 TIPS 1
#20. MRI・髄液検査の
indicationについて
#21. 何を見たくてMRIを撮る?
検査の条件は? 初発けいれん発作であれば、いずれかのタイミングでMRI評価は行われる必要がある。
比較的高齢者であれば、脳卒中による急性症候性発作の鑑別目的で、ERでの頭部MRI施行は検討される。
発作後神経症状の残存があるならMRIは施行する。
#22. MRI評価。現実的には
脳梗塞>器質的病変>脳炎 繰り返しになるが、脳梗塞があるのかどうか?が第一の論点。
脳梗塞以外には、脳腫瘍/陳旧性病変など器質的病変の評価。
頻度は少ないが、脳炎を評価する目的。
#23. 発作の反復 × 脳炎 てんかん重積状態(status epilepticus:SE)が、急性脳炎に由来する可能性は高いわけではない。
SEは、急性脳炎の5-18%で認められた。
免疫介在性脳炎を疑うとき:①初回評価でSEの原因がはっきりしなかった場合、 ②特に一般的な治療介入によっても遷延性・難治性の発作を認めた場合。
Medicine 2016;95:30 Neurology 201;85:464-70. Epilepsy Currents 2014;14:43–49
#24. MRIのindicationについて:
ミニマムは脳梗塞の除外目的。
積極的なMRIの適応は、高齢者、反復する発作、
神経症状の残存する場合。 TIPS 2
中枢神経感染症の鑑別と対応
#25. 何を見たくて髄液検査? 中枢神経感染症(細菌性髄膜炎、ヘルペス脳炎など)
自己免疫性脳炎
が鑑別になる場合には髄液検査を行う。
よって、免疫不全状態の患者では積極的に検査する。
#26. 中枢神経系感染症を
心配する場合は? 二つの代表疾患のキーワードは以下のごとく。
免疫不全のリスクに加えて、これらのキーワードを拾って対応するしかないか。
細菌性髄膜炎のコモンな症状:多い順(UPTODATE)
強い頭痛、発熱、項部硬直、意識障害(GCS<14)、悪心、けいれん発作
単純ヘルペス脳炎のコモンな症状:(UPTODATE)
発熱+意識障害、新規発症けいれん発作、脳神経障害、片麻痺、失語、構音障害
少なくとも、発熱がある場合には注意する必要があると思う。
#27. 何はなくとも
ER的には、HSV脳炎。 HSV脳炎は成人において急性ウイルス脳炎の中で最も頻度が高く、起因ウイルスが判明したウイルス性脳炎の60%、脳炎全体の20%を占める。
治療介入の遅延が、シビアな神経後遺症につながる。
「脳炎」による急性症候性発作においては、HSV脳炎の可能性を追求すること。 Internal med 2000;39:894-900
#28. 脳炎について
どのように考えて
どう対応すべきか
#29. 脳炎/脳症の
ER対応 Antaa slideで解説スライドあります。
解説が少ない領域です。
どのように整理して対応するかをご参照ください。
脳炎/脳症は、てんかん診療と密接な関係のある病態です。
#30. 単純ヘルペス脳炎のみ、最低限カバーできれば及第点としてよい。
ヘルペス脳炎は早期治療介入が必要である。
ヘルペス脳炎は、MRIで画像異常が得られる可能性が高い。
髄液異常も指摘できる可能性が高い。
・・・・・ただし、所見に乏しいこともある。難しい。 脳炎→最低限は単純ヘルペス脳炎のカバー
自己免疫性脳炎の評価については、
ERではわからない。
てんかん重積状態のMRI所見と鑑別
#31. 単純ヘルペス脳炎を
疑うポイント 易感染性背景の場合。
基礎疾患あり。また、
アルコール多飲、高齢者など 特徴的なMRI所見、髄液異常 新規発症の
比較的難治性けいれんのとき 発熱、意識障害、
高次脳機能障害の合併
#32. HSV脳炎の対応
→ガイドラインも参照。 疑った場合は、
髄液検査を施行する。
髄液一般+髄液HSV-DNA PCR
提出する。
アシクロビル 10mg/kg*3回/dayを投与する。
ヘルペス脳炎でなくても、
アシクロビルを投与することに問題はない。迷った場合、疑う場合は迷わず投与、というポリシーになっている。 処方例)アシクロビル500-750mg + NS 250ml
1回2時間で投与、1日3回
※腎障害・脱水時には注意。
#33. 髄液検査のindicationについて:
目的① 中枢神経感染症の鑑別のため
目的② 脳炎の鑑別のため
特にHSV脳炎の可能性を追求する TIPS 3
#34. てんかん重積状態で
MRI信号変化があるのか? ERでけいれん発作疑いでMRIを施行した場合に知っておくべき知識である。
てんかん重積状態でのMRI所見を抑えておく。
MRI画像所見によって、てんかんを診断できることもある。
#35. てんかん重積状態のMRI所見について てんかん重積状態でMRIでの信号変化を認める。
画像評価でてんかんを診断できるので役に立つ。
画像変化を来しやすい部位
大脳皮質
視床枕
小脳
そして、発作に関連して過還流と
なる。MRAに注目すると、
発作側が血管描出が強調されている。 脳卒中 2017;39:446-450 大脳皮質のHIGH 視床枕のHIGH 右側MCAの過還流
#36. てんかん重積状態のMRI所見 脳卒中 2014;36:247-254 DWIでの大脳皮質の信号変化に注目する。
対側の小脳に信号変化も来し得る。
しかし、ここでもpit fallがあり・・・・
てんかん重積状態のみがこの信号変化を来すわけではない。
#37. てんかん重積状態
VS 脳炎
VS 脳梗塞 大脳皮質の高信号変化の鑑別。
悩むところだが、臨床症状と髄液所見と合わせて評価するしかないだろう。
鑑別の可能性は、SE・脳炎・脳梗塞である。
#38. てんかん重積状態
VS 脳炎
VS 脳梗塞 てんかん重積状態と、脳炎(特にHSV脳炎)の区別は画像のみでは困難かもしれない。信号変化がある場合には、髄液検査は必要だろう。
また、このような場合、念のためACV使用は検討される。
脳梗塞は画像的にある程度鑑別可能ではあろう。(時に難しいこともある。)
DWIでの大脳皮質病変の評価とアプローチ
#39. てんかん+DWI皮質HIGH
のアプローチの仕方 以下の手順で考え、行動する。
最もコモンな脳梗塞として説明できないかどうかの検討
てんかん重積状態の可能性の検討+MRAを確認する(過還流かどうか?)
抗てんかん薬を投与する。(1st line + 2nd line治療)
脳炎の可能性を検討する。(髄液検査+HSV PCR+ACVの投与)
#40. 共同偏視+けいれん発作
の組み合わせ 共同偏視の向きと、
けいれん発作の組み合わせから、
病態推測可能な、有用なルールがある。
けいれん発作の側と共同偏視の側
の評価で、純粋なてんかん発作かどうかを
推定することができる。
#41. DWIで大脳皮質病変をみたら① CASE 80代 左上下肢けいれん、左共同偏視。 考え方:てんかん重積状態の可能性。ただし、HSV脳炎も鑑別に。MRAは?
#42. DWIで大脳皮質病変をみたら① CASE 80代 左上下肢けいれん、左共同偏視。 評価:てんかん重積状態の可能性。右側MCA過還流。一応ACV投与は妥当。
#43. DWIで大脳皮質病変をみたら② CASE 90代 左上下肢けいれん、左共同偏視。 考え方:てんかん重積状態の可能性。ただし、HSV脳炎も鑑別に。MRAは?
#44. DWIで大脳皮質病変をみたら② CASE 90代 左上下肢けいれん、左共同偏視。 評価:てんかん重積状態の可能性。右側MRAの過還流。一応ACV投与は妥当。
#45. DWIで大脳皮質病変をみたら③ CASE 70代 左上下肢けいれん、みぎ共同偏視。 考え方:てんかん重積状態の可能性。純粋なてんかん発作ではなさそう。
HSV脳炎も鑑別に。MRAは?
#46. DWIで大脳皮質病変をみたら③ CASE 70代 左上下肢けいれん、みぎ共同偏視。 評価:てんかん重積状態の可能性もある。ただし、HSV脳炎も鑑別に。MRAは左右差なし。
てんかん重積状態の治療と段階的アプローチ
#47. DWIで大脳皮質病変をみたら③ 最終診断:HSV脳炎。
入院後、CSF HSV PCRの陽性が判明した。
入院時からACVは投与開始、その後も継続されていた。
入院時からLEV静注で対応した。
#48. DWIで大脳皮質病変をみたら④ CASE 20代 右上下肢けいれん、ひだり共同偏視。 考え方:てんかん重積状態の可能性。急性症候性発作?ただし、HSV脳炎も鑑別に。
#49. DWIで大脳皮質病変をみたら④ CASE 20代 右上下肢けいれん、ひだり共同偏視。 評価:MRAでは左側MCA過還流所見はある。てんかん重積発作でいい?ACVは投与する。
#50. DWIで大脳皮質病変をみたら④ その後の最終診断はMELASのstroke like episodeだった。 右側にSLEの再発あり。MELASの診断。
ただし、ERでは、てんかん重積発作の治療と、HSV脳炎を考慮してのACV投与でよい。
#51. DWIで大脳皮質病変をみたら⑤ CASE 70代 右上下肢けいれん、ひだり共同偏視。 考え方:てんかん重積状態の可能性。急性症候性発作?ただし、HSV脳炎も鑑別に。
#52. DWIで大脳皮質病変をみたら⑤ CASE 70代 右上下肢けいれん、ひだり共同偏視。 評価:てんかん重積状態の可能性。HSV脳炎の可能性。左右皮質病変で非典型的。
#53. DWIで大脳皮質病変をみたら⑤ 最終評価は、クロイツフェルトヤコブ病だった。 ただし、ERでは、てんかん重積発作の治療と、HSV脳炎を考慮してのACV投与でよい。
#54. てんかん+DWI皮質HIGH
のアプローチの仕方まとめ 以下の手順で考え、行動する。
最もコモンな脳梗塞として説明できないかどうかの検討
てんかん重積状態の可能性の検討+MRAを確認する(過還流かどうか?)
抗てんかん薬を投与する。(1st line + 2nd line治療)
脳炎の可能性を検討する。(髄液検査+HSV PCR+ACVの投与)
抗てんかん薬の選択と使用法のまとめ
#55. SEのMRI所見について:
大脳皮質の高信号変化を知る。
MRAでの過還流所見を知る。
DWIでの大脳皮質高信号の鑑別を知る。
入り口のアクションは決まっている。
HSV脳炎のカバーが検討事項である。 TIPS 4
#56. ERからの外来への紹介。
脳波オーダーがあると
嬉しい。 けいれん発作を認めた場合には、後日の専門外来への引継ぎはあってしかるべきです。
専門外来への受診スパンがあくなら、脳波オーダーしてから紹介していただけると嬉しい。
専門外来で行うこと=>脳波検査オーダー + 脳MRI オーダー となる。
また、発作後早期に検査を行えると、異常所見の検出力があがる。
#57. 脳波の検出力の変化 Lancet 1998;352:1007-1011. 脳波検査で、発作間欠期にてんかん性の変化を捕まえることは容易ではない。
感度:発作間欠期てんかん性放電が、初回の脳波検査で20-55%のてんかん患者で検出される。
感度を上げるために:脳波検査のタイミングは検討される。発作と発作間欠期てんかん性放電の検出は時間的に関連している。
時間的な検出力の検討では、24時間以内で62%、24-48時間で51%、48-72時間で40%、72時間以降で31%の検出率であった。
=>ERから、フォロー外来までにオーダー入れてもらえるなら助かる! J Clin Neurophysiol. 2017;34:434.
#58. 脳波検査オーダーはありがたい。
脳波異常の検出力を高める。
てんかんで必要な検査の目的の意味を知る。 TIPS 5
#60. まず、けいれん発作を
見たときの
行動はどうするか? 基本に忠実にprimary surveyを行うことから始める。
すなわち、ABC(A:気道、 B:呼吸、C:循環)の確認と安定化である。
心停止によるけいれんを見逃さないように、気道確保と酸素投与とともに、 脈拍の確認をする。
「循環動態破綻による低酸素脳症の結果としてのけいれん」をまずは鑑別する。
気道確保、呼吸状態の安定、循環動態の安定を確認しながら発作抑制の対応に 移行していく。 みんなの救命救急科(三谷雄己), 中外医学社, 2022
#61. けいれん発作をみたら、まずはやること 応援要請をおこないながら、primary surveyを行う。
A:気道確保をする。必要に応じてair wayを挿入する。
B:酸素10L投与開始する。
C:血圧、脈拍の確認をする。呼吸循環モニタリングを開始する。
また末梢静脈路を確保する。
#62. てんかん発作は、基本的には自然とん挫することが多い。
よって、けいれん発作を見たときには先述の如く、まずは落ち着いてABCの確認、安定化を行う。
一方で、「てんかん重積状態」では発作の自然とん挫が期待しにくく、薬剤投与による発作抑制が必要となる。まずは、てんかん重積状態について理解する。 てんかん発作は
自然とん挫が期待できる。
#63. 改めて、SEについて
理解する てんかん重積状態 = status epilepticus: SE
てんかん発作が持続的に生じる状況である。
SEに関わる覚えるべき時間は二つで、5分と30分。
てんかん重積状態の2つの特徴
①自然に終息しそうにない発作 5分続くと自然終息しなくなる。
②神経後遺症を来す可能性のある発作 30分続くと神経後遺症をきたすリスクがある。
#64. SEの
5分と30分 5分:5分発作が続くなら、自然とん挫は困難なので、点滴薬での発作抑制を行う必要がある。「SE」では救急対応が必要である。
30分:脳機能障害が生じないよう、発作抑制をなるべく早期に達成する必要がある。
#65. SEについて知ること
てんかん重積状態の定義は5分以上の発作、 30分以上の発作。この場合は点滴薬での発作抑制が必要。 救急要請のindicationの説明にも役に立つ知識。
表現も追加して覚えておく。
5分以上持続した発作 =>早期てんかん重積状態
30分以上持続した発作=>確定したてんかん重積状態 TIPS 6
#66. てんかん重積状態の治療:
第一段階治療から第三段階治療について理解する。 てんかん重積状態の治療は、第一段階から第三段階治療まで、フェーズが分かれている。
第一段階治療は、発作をまず止めるための治療である。
ここで使用される薬剤はベンゾジアゼピン(ジアゼパム、ロラゼパム)である。
第一段階治療で押さえておくべき事実:頻用されるジアゼパムの発作抑制持続時間は長くは ないことである。ジアゼパムのけいれん抑制効果の持続は20分程度とされる。
発作持続する場合にベンゾジアゼピンは初回投与後5-10分程度で追加反復投与を検討する。 Lancet 1998;352:1007-1011. てんかん診療ガイドライン2018 .
#67. 第一段階治療 ジアゼパムとロラゼパム ①ジアゼパム (セルシン®) 5-10mg 静注、
5分以上間隔をあけて 追加投与可
②ロラゼパム (ロラピタ®) 4mg 静注、
5分以上間隔をあけて 合計8mgまで追加投与可
#68. IVなら:ロラゼパム>ジアゼパム
ジアゼパムの薬効は20分。
SE50%が2時間以内に再発。
2nd therapyで再発予防する。
IMなら:ミダゾラム
体重40kg以上で10mg筋注 1st therapy
Benzodiazepines 1 Lancet 1998;352:1007-1011. Neurocrit Care 2012;17:3-23.
#69. 第二段階治療:
第一段階に合わせて使用 第一段階治療に次いで行う第二段階治療は、長時間作用し再発作を予防するという ニュアンスである。
ここで使用される薬剤は抗てんかん薬の静注薬である。
先述の如く第一段階治療のみでは途中で薬効が切れ、再発作を防ぐには治療が足りない可能性がある。
ジアゼパム静注のみで対応した場合の二時間以内の発作再発率は、50%程度とされる。第二段階治療はそこを補うものである。 BMJ 2005; 331: 673.
#70. 第二段階治療について 第二段階治療薬は、ホスフェニトインとレベチラセタムの使用が推奨される。
フェノバルビタール、ミダゾラムも選択肢にはなるが、呼吸抑制などの副作用が問題になりうる。
原則的な考え方は、第一段階治療によっても発作が持続する場合には第二段階治療を行う、である。
一方で、再発作を防ぐという観点から第一段階治療後、連続して第二段階治療を行うという考え方でもよい。 Lancet 1998;352:1007-1011. Epilepsy Curr 2016; 16: 48 .
#71. 第二段階治療 ホスフェニトインとレベチラセタム A:ホスフェニトイン (ホストイン®)
22.5mg/kg + 生食100ml 15分で投与
B:レベチラセタム (イーケプラ®)
1000-3000mg + 生食100ml 15分で投与
#72. てんかん発作が反復する場合には、
第一段階治療薬(ジアゼパム・ロラゼパム静注)に続き、
第二段階治療薬(抗てんかん薬静注)を投与する! いずれの用量も、生食100mlで溶解し30分かけて投与 処方例:第二段階治療薬
ホスフェニトイン(ホストイン注®)
1回22.5mg/kg 150mg/分以下で静注
(具体例:体重60kgの場合は以下の処方)
ホストイン®1.8V + 生食100ml 15分で投与
ホストイン投与量早見表
#73. Bzは短期間のみ作用。Bzのみでは再発リスクあり。2nd therapy追加は妥当。
レベチラセタム
60mg/kg, max 3000mgで投与
1000~3000mgで投与
ホスフェニトイン
血圧低下には留意、投与15分後はモニタリング 2nd therapy
Antiseizure medications 2
#74. 第二段階治療の
追加投与について 第二段階治療も、発作持続がある場合には追加投与を検討する。
例えば、初めにジアゼパム静注を行い、連続してホスフェニトイン投与を行ったとする。その後の追加治療としては、先述の如く二回目のジアゼパム静注を行う。
それでも発作持続する場合には、他の抗てんかん薬(例えばレベチラセタム静注)追加投与を検討する。 Epilepsy Curr 2016; 16: 48 .
#75. ベンゾ
ジアゼピン 静注
抗てんかん薬 静脈麻酔薬 第1段階治療 第2段階治療 第3段階治療 5分発作が持続したら、てんかん重積状態と評価する。
すぐに、①ベンゾジアゼピンを静注する。また、②静注抗てんかん薬も投与する。発作持続で、③ベンゾジアゼピン、④抗てんかん薬は追加投与する。 第1+2段階治療で発作抑制困難であり、
発作開始から60分経過するなら
難治てんかん重積状態と評価とする。
⑤第3段階治療へ移行する。 ルート1
ロラゼパム
OR
ジアゼパム ルート2
レベチラセタム
OR
ホスフェニトイン ミダゾラム
OR
プロポフォール
OR
ペントバルビタール 発作持続で、
5分後追加投与可 1 5 3 2 発作持続で、使用していない
抗てんかん薬を追加投与可 4 まずやること てんかん重積状態への治療的対応 Epilepsy Curr 2016;16:48
#76. 第三段階治療について 第三段階治療は静脈麻酔薬を使用し、人工呼吸器管理での治療を行う。
てんかん重積状態が持続すれば脳機能障害を認め得るので、発作抑制が困難であるなら第三段階治療への移行は躊躇せずに判断したい。
#77. 第三段階治療 ミダゾラムとプロポフォール A:プロポフォール
1-2mg/kg静注、その後2-5mg/kg/時で持続静注
B:ミダゾラム
0.2mg/kg静注、その後0.1mg/kg/時で持続静注
※気管内挿管と人工呼吸器管理で対応
#78. 選択肢:ミダゾラム、プロポフォール、ペントバルビタール
発作は続けば続くほど止まりにくくなり、薬剤投与への反応性が失われる。
後手に回れば回るほど不利になる。
3rd therapyへの移行はためらわず。
3rd therapy
Anesthetics 3
#79. 改めて、RSEについて
理解する 難治てんかん重積状態 = Refractory status epilepticus: RSE
1st line, 2nd line治療を行っても発作抑制できない状態がRSEである。
言葉として、SEとRSEを今一度区別しましょう。
RSEでは発作開始から60分程度で3rd line 治療が必要なこと、を抑える。
#80. RSEについて重要な知識 「発作が続けば続くほど、不利になる。」
発作を発症すると、シナプス膜上の抑制系GABA A受容体の減少、興奮系NMDA受容体、AMPA受容体の増加を来す。このため、時間経過とともに、GABA A受容体に作用するベンゾジアゼピンに対して、急速に抵抗性を生じる。
薬効は時間と共に急速に失われる。
発作抑制について、後手に回るのは悪手である。
#81. RSEのマネジメント
中途半端な判断は控える。 発作抑制が達成できていないが、もう少しこのまま様子をみてみるか・・・・という判断は悪手になることが多い。
発作が続けば続くほど、発作抑制が困難になる。
ERにいるうちに、アクションを決めないと入院後困る。
入院してからRSE治療方針について考えよう、というのは不適である。
#82. SE・RSE
治療整理
5分-30分-60分 何度も見慣れたガイドラインのフローチャートだが、要素を整理して改めて理解して下さい。
1st, 2nd, 3rd で使う薬剤は、それぞれのSEステージで異なります。
SEの5分、30分に加えて、RSEの60分も覚えてください。
60分以降にはRSEとして3rd line治療に移る必要があります。 神経治療 2019;36:457-460
#83. SEで使用する薬剤 1st line :ベンゾジアゼピン
抑制系を強化する。 2nd line :抗てんかん薬
興奮系を抑制する。 1st lineと2nd line 治療のロジックも大まかに理解しておく。
1st line:抑制系の強化
2nd line:興奮系の抑制
3rd line:抑制系の強化
SEでの発作抑制はGABA系へのアプローチが主軸になる。
抗てんかん薬は主軸でないことは知っておくことは重要。 3rd line :MDZ/プロポフォール/バルビツール系抑制系を強化する。 Emer-Log 2019;32:15-19
#84. ベンゾ
ジアゼピン 静注
抗てんかん薬 静脈麻酔薬 第1段階治療 第2段階治療 第3段階治療 5分発作が持続したら、てんかん重積状態と評価する。
すぐに、①ベンゾジアゼピンを静注する。また、②静注抗てんかん薬も投与する。発作持続で、③ベンゾジアゼピン、④抗てんかん薬は追加投与する。 第1+2段階治療で発作抑制困難であり、
発作開始から60分経過するなら
難治てんかん重積状態と評価とする。
⑤第3段階治療へ移行する。 ルート1
ロラゼパム
OR
ジアゼパム ルート2
レベチラセタム
OR
ホスフェニトイン ミダゾラム
OR
プロポフォール
OR
ペントバルビタール 発作持続で、
5分後追加投与可 1 5 3 2 発作持続で、使用していない
抗てんかん薬を追加投与可 4 まずやること てんかん重積状態への治療的対応 Epilepsy Curr 2016;16:48
#85. RSEについて知ること
1st line+2nd line therapyでも発作抑制できない状態を指す。60分で判断する。 TIPS 7
#86. SE・RSEの治療について整理すること
1st line~3rd lineまで整理する。
2nd lineの意味、3rd lineの意味を理解する。
1st line+ 2nd lineの施行の妥当性について。 TIPS 8
#87. 3rd line治療はためらわず。
悩むならやるしかない。
中途な対応としないことは重要である。 TIPS 9
#88. 発作抑制後のオーダー けいれん発作抑制を第一~第三段階治療で達成した後は、抗てんかん薬を継続使用する。
発作抑制状態を維持するために、投薬継続を検討する。
ここではERで発作抑制後、入院対応で継続して使用しやすい点滴での抗てんかん薬処方例を以下に示す。 処方例)
レベチラセタム 500mg + 生食100ml 15分で投与 1日2回
#89. 発作抑制後の対応 入院対応において、急性期のみの抗てんかん薬使用にするか、またはその後長期継続使用が必要になるかは病態によって異なる。
反復性にてんかん発作を来し得る病態(すなわち、「てんかん」として診断される病態)であれば、抗てんかん薬は長期継続使用方針となる。
一方、特定の誘因によって引き起こされた発作(=誘発性発作)であれば、抗てんかん薬は短期間のみの使用となる。
また、ERから帰宅対応とする場合には、原則ERでの抗てんかん薬処方開始は行わない。なるべく早い専門診療科外来へ紹介し、そこでの検討が診療の流れとなる。
#91. AEDの抗菌薬に例えて
理解する。 わかりやすく伝える技術は重要です。
医師の共通言語としての、「抗菌薬」に例えて、抗てんかん薬(AED)を
説明してみましょう。
AEDのイメージを作りましょう。
レジデントやスタッフへのAEDのニュアンスを伝えましょう。
#92. 「抗菌薬」に例えて説明。
Narrowか?Broadか? 抗菌薬に例える手法は非専門医の先生方に伝わりやすいので、好んでいます。
「CBZ(カルバマゼピン)はCEZ(セファゾリン)です」。
「LEV(レベチラセタム)はMEPM(メロペネム)です」。
など、抗菌薬に例えるとイメージがわきやすいです。また、抗てんかん薬と抗菌薬の特徴において、ニュアンスが類似しているところもあります。抗てんかん薬には 守備範囲があり、抗菌薬同様spectrum (Narrowか? Broadか?)で語られます。
#93. Narrowとは? =焦点性てんかんに有効である、
ことを意味します。 <narrow spectrumのAED>
焦点性てんかんとは、脳の特定部位から異常放電を来たし、てんかん発作に至る、てんかん分類。
焦点性てんかんを考慮する場合には、narrow spectrumの抗てんかん薬が治療薬で選ばれます。
代表的な抗てんかん薬はCBZです。
抗菌薬に例えて、CEZと説明します。
#94. Broadとは? =焦点性てんかん・全般性てんかん
双方に有効である、こと意味します。 <broad spectrumのAED>
全般性てんかんとは、脳全体に異常放電の発火を来し、てんかん発作に至る てんかん分類です。
発作分類が、焦点性か、全般性てんかんか区別しにくい場合もあります。
この場合は、双方に有効なbroad spectrumの抗てんかん薬を選びます。
代表薬剤はLEVです。
抗菌薬に例えてMEPMと説明します。 ※イーケプラ 効能・効果
○ てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)
○ 他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法
#95. 古典的抗てんかん薬について
従来薬=>CBZとVPAが代表薬 従来薬の代表薬は、カルバマゼピンとバルプロ酸です。
カルバマゼピンは=>昔からの、焦点性てんかんの第一選択薬 です。
バルプロ酸は =>昔からの、全般性てんかんの第一選択薬 です。
これら2剤は昔から現在までも、第1選択薬の位置づけです。新規AEDの出現で、使用頻度は減っています。その理由は、薬剤相互作用(併用薬の効果を変えてしまう)や薬剤の副作用によります。よって、従来薬の処方機会は減り、新規抗てんかん薬が選択されることが多くなっています。 (第1世代)
#96. 新規抗てんかん薬について
新規=>使いやすい 近年登場した抗てんかん薬は、新規抗てんかん薬として位置付けられます。
代表薬は、レベチラセタム。抗菌薬に例えるなら、カルバペネムをイメージします。
新規抗てんかん薬の特徴は、「副作用の少なさ」と言えるでしょう。
代表薬であるレベチラセタムは、ブロードスペクトラムで、副作用が少ない※、となると、非専門医にとっては使用しやすい抗てんかん薬である、と言えるでしょう。 ※LEV副作用:国内第Ⅲ相試験(長期投与含み)において、傾眠32.4%、浮動性めまい4.2%、疲労感4.2%(承認時評価資料) (第2-3世代)
#97. 新規と従来薬の
それぞれの特徴のまとめ 副作用 薬物相互作用 薬価
新規抗てんかん薬 少ない 気にしない 高い
従来薬 多い 気にする 安い 新規抗てんかん薬は従来薬と比較し、使用しやすい薬剤と言えます。
しかしながら、新規抗てんかん薬の唯一の弱点は、薬価といえます。
コストについては、患者さんと相談する必要はあります。 (第1世代) (第2-3世代)
#98. AEDの特徴まとめ Narrow spectrum? Broad spectrum?で区別される特徴がある。
新規? 従来薬?で区別される特徴がある。
#99. AEDの使い分けのポイント いずれかの抗てんかん薬を選択する場合には、考慮する条件があります。
臨床で、よく出会うポイントについて列挙します。 抗てんかん薬の選択において、考慮されるポイント
▲薬剤相互作用を気にする場合。
▲怒りっぽい症状が既に知られている。
▲第1選択薬で眠気が問題になった。
▲薬価が問題になる。
#100. 使い分けにおける薬剤特徴まとめ
薬物相互作用が少ない:新規抗てんかん薬
薬物相互作用が多い :CBZ
怒りっぽくなる :LEV
気分が落ち着く :CBZ, VPA, LTG
眠気がでやすい :LEV, CBZ
眠気がでにくい :LTG, LCM, VPA
薬価が高い :新規抗てんかん薬
薬価が安い :従来薬
#101. AEDは抗菌薬に例えて説明しよう:
Narrow spectrum =>CEZ =CBZ
Broad spectrum =>MEPM =LEV
伝わりやすいし理解しやすい。 TIPS 10
#102. レベチラセタムについて知る。
LEVとは:汎用性の高いAED レベチラセタムは頻用されるAEDです。
今一度、LEVとはどんな抗てんかん薬かを理解しましょう。
LEVの特徴は使いやすさにつきます。
#103. 添付文書で示されている、一般的な使用量は1,000mg/day。
レベチラセタムのメリット、デメリットは以下。
メリット:薬剤相互作用が少ない。副作用が少ない。漸増の必要がなく、有効用量を最初から投与できる。つまり、急性期に使いやすい。点滴製剤がある。
デメリット:眠気が強く、使用継続できない症例がある。また、易怒性を誘発することがある。 レベチラセタム
新規抗てんかん薬で、使用しやすい抗てんかん薬の1つ。非専門医が習熟すべき、薬剤の1つ。 ※LEV副作用:国内第Ⅲ相試験(長期投与含み)において、傾眠32.4%、浮動性めまい4.2%、疲労感4.2%(承認時評価資料)
#104. レベチラセタム ①
急性期使用に長じている。 長所
注射製剤もあり、かつ、最初からてんかん発作抑制に十分な有効用量を投与できる。
ERはじめ、急性期病院の現場での使い勝手のよさがある。
短所
眠気や易怒性の誘発は、少なからずあり。
副作用が問題になる場合には、他剤への変更を検討する。
成人てんかんにおいて、非専門医にとっては第1選択にしてもよい薬剤。
#105. レベチラセタム ②
どの場面でも使いやすい。 レベチラセタムの強み:てんかん発作が焦点性てんかん であっても、全般性てんかんであっても有効である※。
焦点性てんかんか全般性てんかんか、てんかん発作分類に ついて診断に悩む場合にも、選択してよい薬剤。
レベチラセタムは治療量から開始できる、副作用の少ない薬剤で、使い勝手がよい(点滴投与可な)薬剤である。 (私見)
イーケプラ 効能・効果 ○ てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)
○ 他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法
#106. LEVについて語れるようになろう。
最も汎用されるAEDである。その理由を知る。
点滴である、Braod spectrumである、副作用が少ない、薬物相互作用が少ない。 TIPS 11
#107. ラコサミドについて知る。
LCMとは:成人用AED 近年頻用される薬剤です。
LEV同様、新しいAED(第3世代の位置づけ)です。
LEVと似たようなニュアンスもありながら、異なる特徴もあります。
ラコサミドのニュアンスも押さえておきましょう。
#108. ラコサミドの焦点性てんかんについて
エキスパートオピニオンでの推奨 Initial treatment of focal epilepsy:
lamotrigine, levetiracetam, oxcarbazepine, carbamazepine,
lacosamide
Older adult with focal epilepsy:
lamotrigine, levetiracetam, lacosamide
Epilepsy treatment in adults and adolescents: Expert opinion, 2016.
Epilepsy Behav. 2017;69:186.
#109. ラコサミドの焦点性てんかんについて
ガイドラインでの推奨 現時点(2023/01)において、ガイドラインでの推奨レベルは高くはない。
■NICE guideline [NG217] Published 2022:
Focal seizures with or without evolution to bilateral tonic-clonic seizures
first-line monotherapy lamotrigine or levetiracetam
second-line monotherapy carbamazepine, oxcarbazepine, zonisamide.
third-line monotherapy lacosamide
■てんかん診療ガイドライン2018:
ラコサミドは焦点性てんかんで、第二選択薬に位置づけられている。
→データの蓄積が乏しく、今後の第一選択薬として使用が検討される薬剤である。
#110. LCMは、成人てんかん
診療で役に立つ 成人てんかん診療では、焦点性てんかんを主にターゲットにすればいいです。
ということは、Narrow spectrumのAEDでよいわけです。
Broad spectrumのLEVでなくても良い訳です。
LEVは便利ですが、LEV以外の選択肢として、LCMは知っておく必要があります。
#111. メリット :焦点性てんかんについて、有効性が高い薬剤。
デメリット:高価。心筋伝導障害の可能性もある。
焦点性てんかんでは使いやすく、効果も期待しやすい。
有効性はカルバマゼピンと同等。一方副作用は目立たない。
成人てんかん診療では、基本的に焦点性てんかんが対応できればよい、という考えからは、ラコサミドは成人てんかん診療での今後の第1選択薬になる薬剤と言える。 ラコサミド
焦点性てんかんに有効な新規抗てんかん薬。 副作用もあまり目立たず、非専門医でも使用しやすい薬剤。
#112. ラコサミド
眠気少なく、効果もよい。 200mg/dayが維持量。
1週間での有効用量までの増量が可能であり、レベチラセタム同様急性期病院で使用しやすい薬剤。
眠気が問題になりにくい薬剤でもあり、第1選択薬で眠気が問題になり、継続できなかった症例で変更薬剤の選択肢になる。
高齢者でも比較的使いやすい薬剤。
副作用の心筋電導障害の報告はある。
あまり弱点がなく、焦点性てんかんでは頼りになる薬剤。 主な副作用:国内第 相試験において 浮動性めまい 7.9 %、疲労 5.6% 、傾眠 4.5 %
部分発作単剤療法にて6 ヵ月間発作消失患者割合 73.6%
#113. 焦点性てんかんとして評価可能なら、選択しやすい薬剤である。
器質的病変が指摘可能なてんかん、高齢者てんかんで選択する。
例)高齢者、脳卒中後、脳腫瘍、外傷後などの症候性てんかん。 ラコサミドとは①
焦点性てんかん用AEDである。
#114. 忍容性の高さから、高齢者用AEDとして選択しやすい薬剤である。 ラコサミドとは②
高齢者てんかん用AEDである。 一般に高齢者では生理機能が低下している。[16.6.4 参照]
#115. 焦点性てんかんとして、理解しやすいのでよき適応である。
脳卒中を発症しうる高齢者である、という背景も考慮。 ラコサミドとは③
脳卒中後てんかん用AEDである。
#116. 焦点性てんかんとして評価できるなら、発作抑制後の
【静注療法=>入院後の内服療法】への、シームレスな治療移行が
可能である。 ラコサミドとは④
救急=>急性期用AEDである。
#117. LCMについて語れるようになろう。
点滴がある、Narrow spectrumである、副作用が少ない※、効果が高い。 TIPS 12 ※LCM:主な副作用は国内第Ⅲ相試験において浮動性めまい7.9%、疲労5.6%、傾眠4.5%(承認時評価資料)
#118. LCM VS LEV LEVとLCMの特徴について説明してきました。
いずれも使いやすい薬剤です。
頻出薬なので、それぞれの比較についてまとめてみます。
#119. LEVとLCMの違いをまとめる てんかん発作分類についての違い
全般性てんかん+焦点性てんかん 幅広く推奨される LEV
焦点性てんかんのみ 推奨される LCM 併存症がある場合の違い
LEV:幅広い併存症において、最も推奨されるAED。
脳腫瘍、全身癌、脂質異常症、急性期脳梗塞、薬剤多剤使用者、
肝疾患、心疾患、HIVなど。
ただし、精神疾患の併存症は除く。(うつ、不安症、精神病)
LCM:幅広い併存症での推奨あるAED。
そして、精神疾患の併存でも推奨されている。 Epilepsy Behav. 2021.doi: 10.1016/j.yebeh.2020.107540. ※LCMは添付文書上、重要な基本的注意として易刺激性、興奮、攻撃性等の精神症状が記載あり。
#120. LCM VS LEV
どちらも頻用される薬剤で押さえておいていただきたい。
やはり選択肢は多い方がよい。 TIPS 13
#121. AEDの特徴と捉え方 その他AEDについても言及します。
抗菌薬に例えてイメージを作ってください。
#123. AEDの総論的なイメージも理解する。 TIPS 14
#124. 発作の反復性をもって、
抗てんかん薬開始が検討される。 てんかんとは、反復性に発作を生じうる疾患である。
「反復性がある」ことが、どのように検討されるかについて理解しておく。
初回けいれん発作を認めた場合、二度目の発作を認める可能性は高くはない。5年間で35%の反復性がありうるとされる。
つまり、発作反復は半分以下の確率である。 N Engl J Med.1982; 307: 522-528. .
#125. 発作の反復性をもって、
抗てんかん薬開始が検討される。 一方、二度のけいれん発作を認めた場合、発作の再発率は73%以上である。つまり半分以上の確率で反復がありうる。
上記の事実を踏まえて、二度の発作を持って「反復性のある病態である」として評価する。
よって、原則的には二回の発作確認後、抗てんかん薬の導入について議論されることになる。
初回発作では評価を行った上で、経過観察となる対応について理解しておく。 N Engl J Med.1998; 338: 429-434.
#126. 初回発作から
AED導入が検討される場合 一方で高齢者てんかん、脳卒中後てんかんでは、初回発作後の再発性の高さ(66-90%)が知られているので、初回発作から抗てんかん薬導入が議論されることも知っておく。
高齢者てんかんの予後の悪さも理解しておく。発作により機能低下を来し、入院後療養型病院への転院対応になることも少なくない。
良性疾患として理解されるてんかんだが、高齢者てんかんの経過の悪さも理解しておく。
高齢者てんかんの「事前指示」の問題もいずれかで議論してほしい。 Int Rev Neurobiol.2007; 81: 129-151.
#127. 二回の発作でAED導入、の理屈を理解しておく。
高齢者てんかんについての理解を深める。 TIPS 15
#128. ER診療と入院後診療については、ロジックが部分的には異なります。
今回はフィードバックをテーマにプレゼンテーションをしています。
意識してほしいポイントについて是非マスターしていただき、
てんかん診療を得意にしてください! TAKE HOME MESSAGE!