1/17
総合病院
夜中の救急外来。小児科の処方で困ったことはありませんか。
覚えておきたい『5つの薬』と大切なホームケアについてまとめました。
◎目次
・はじめに 〜とある夜中の救急外来〜
・小児の救急受診患者について
・極論:武器は アセトアミノフェン だけでもだいたいOK
・小児の救急外来 -覚えておきたい5つの薬-
・part.1 解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)
・アセトアミノフェンの効果と使用法
・part.2 抗ヒスタミン薬
・覚えておくべき抗ヒスタミン薬と用法用量
・part.3 吸入薬
・part.4 浣腸
・part.5 抗菌薬(AMPC:アモキシシリン)
・なぜ溶連菌には抗菌薬を検討するのか
・処方より重要なホームケアの指導
・ホームケアの指導(一例)
・Take Home Message
小児の食物アレルギー 〜食物ごとの特徴を意識する〜
#鶏卵 #ナッツ #ピーナッツ #クルミ #小麦
33
6,269
小児の食物アレルギーについて 子育てに関わる全員が知っておきたい!
#小児科 #食物アレルギー #経皮感作 #アレルギーマーチ #粗抗原 #コンポーネント #栄養指導 #食物経口負荷試験
52
6,016
こどもの診察〜救急外来で泣かれないコツ?〜 診察時の心構え!
#救急外来 #PALS #小児科 ##初期研修医 #乳児 #腸重積 #母子手帳 #PAT法
46
6,867
【デキレジは“こう動く”】細菌性髄膜炎ー髄膜刺激症候/腰椎穿刺ー
#意識障害 #救急外来 #ER #神経内科 #研修医 #髄膜炎 #脳神経内科 #デキレジ #頭痛 #腰椎穿刺 #頭部CT #細菌性髄膜炎
279
79,765
入門 急性疾患の患者中心のケア 人工呼吸器は一度つけたら外せない?
#救急外来 #救急 #研修医 #緩和ケア #ICU #集中治療 #救急×緩和ケア #病状説明 #救急緩和 #初期研修医 #救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン #人工呼吸器
52
27,926
曳舟ER診断カンファレンス第3回〜Back to the history〜
#鑑別診断 #救急外来 #ER #診断推論 #総合診療 #診断 #救急科 #診断学 #NEJM #Clinical Problem Solving
33
35,648
気道管理:RSI 救急外来での気管挿管 基本編
#救急外来 #救急 #気道
293
684,844
【デキレジは“こう動く”】けいれんーepilepsy/seizure/convulsionー
#救急外来 #ER #神経内科 #研修医 #けいれん #てんかん #脳神経内科 #デキレジ #ジアゼパム #ホスフェニトイン #ミダゾラム #イーケプラ
583
167,205
急性期医療で緩和ケアを実践する光景
#救急外来 #救急×緩和ケア
17
9,755
救急外来に発熱の赤ちゃんが来られましたー どう対応しますか? ー
#予防接種後発熱 #Step-by-Step法 #うつ熱 #3か月以降の発熱
34
4,765
肘内障
#回外法 #整復 #回内法
47
6,237
こどもの診察〜救急外来で泣かれないコツ?〜 診察時の心構え!
#救急外来 #PALS #小児科 ##初期研修医 #乳児 #腸重積 #母子手帳 #PAT法
46
6,867
熱性けいれんの対応ー救急での対応と家族への説明ー当直の前に一度確認!
#救急科 #小児科 #ミダゾラム ##初期研修医 #熱性けいれん #乳幼児用JCS #間代性けいれん #家族説明 #部分発作 #ダイアップ坐剤
139
31,774
小児の頭部外傷について
#脳神経外科 #頭部外傷 #小児科 #頭部CT #小児頭部CT #PECARN #虐待
64
7,235
乳幼児の転落 重症頭部外傷のリスク
#外傷 #小児科 #乳幼児 #転落 #乳幼児転落 #小児外傷
28
11,866
Primary Survey 気道(A)の異常【解剖・気道確保を中心に】
#救急外来 #ER #救急 #ABCDEアプローチ #みんなの救命救急科
58
28,249
臨床における意思決定支援
#患者中心の医療の方法 #意思決定支援 #臨床倫理4分割表 #Shared decision making #臨床倫理 #倫理4原則
23
8,296
不登校と向き合う第一歩 〜不登校は疑うところから〜
#総合診療 #不登校 #児童精神科
19
3,956
急性腹症のCT
#腹痛 #CT
58
15,819
局所麻酔時に痛みを減らすテクニック
#救急外来 #救急 #研修医 #局所麻酔 #キシロカイン #メイロン #ペンレス #エムラクリーム #麻酔
79
21,425
踵採血のいろは〜新生児医療入門〜
#小児科 #新生児 #踵採血 #新生児マススクリーニング #濾紙血 #マイクロティナ #血液ガス
27
12,130
薬剤感受性試験の読み方(ID-Gym2020~感染症治療のイロハ~ vol.2)
#抗菌薬 #MIC #薬剤感受性試験 #薬剤感受性検査
64
23,778
【公式】Antaa Slideの投稿方法
#お知らせ
33
60,801
︕ ⾒ 必 医 修 研 救急担当 ⼩児科 頻⽤薬について 〜救急外来はこれで⼗分︖〜 どっと@⼩児科
はじめに 〜とある夜中の救急外来〜 夜中の⼩児で⼼配したけど、とりあえず元気そうだ。適当に薬を 処⽅して、明⽇かかりつけ医を受診してもらおう。 …でも、何を処⽅したら良いのか︖まあ希望通り処⽅しておこう。 〇〇先⽣、この患者さんシロップは飲めないみたいですよ。 あと添付⽂章に■■とありますが、これで⼤丈夫ですか︖ えっ︖そんなこと夜中に⾔われても、わからんよ…。 こっちは希望されたから出してるだけなのに。 こんなご経験はありませんか︖ 帰宅可能な⼩児への処⽅は 最低限で⼗分 です。 無駄な薬を出さないと決めれば、悩みはだいぶ少なくなります。
⼩児の救急受診患者について • ⼩児の救急受診患者は、軽症・受診⾃体が不要 な場合がほとんど。 (もちろん1〜2割の処置や検査が必要な児を⾒逃さないことが⼤切です。) • このスライドは軽症・受診⾃体が不要な患者さんを対象とした話です。 あえて薬を処⽅しないメリット ・慣れない計算や剤形相談での トラブル・時間のロスが減る 。 ・⾵邪は⾃然に治るものという感覚をつけ、過度な受診を減らす 。 ・かかりつけ医の受診につなげ、救急がかかりつけを防ぐ 。 ・微⼒ながらも医療費削減につながる。
極論︓武器は アセトアミノフェン だけでもだいたいOK ⼩児救急受診患者 熱です︕ 咳と⿐⽔が出てきます。 お腹が痛いです。 何回か吐きました︕ 頭が痛いです。 発疹が出ました。 帰宅可能と判断 処⽅不要、そのまま帰宅 アセトアミノフェンのみ処⽅ いわゆる⾵邪薬や整腸剤、制吐剤の有効性は極めて限定的です。 これらを救急で処⽅しないことは⼗分に合理的と思われます。
⼩児の救急外来 -覚えておきたい5つの薬• 解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン) • 抗ヒスタミン薬 • 吸⼊薬 アセトアミノフェンだけでも⼗分ですが、 処置で必要な薬、ときに処⽅を検討する 『5つの薬』を覚えておきましょう。 • 浣腸 • 抗菌薬(AMPC︓アモキシシリン)
part.1 解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン) - ポイント - ⼩児は アセトアミノフェンのみ でOK。 主訴に当たる症状を緩和する薬であり処⽅意義あり︕ • 解熱鎮痛薬としてイブプロフェンも選択肢ですが、救急の場では不要です。 • アセトアミノフェンの作⽤機序は中枢神経におけるCOX(シクロオキシゲナーゼ) 阻害と考えられていますが、実は未だに解明されていません。 • 使⽤⽬的は 熱や痛みによる不快感を⼀時的に緩和 することです。 それ以上でも、以下でもないことを医療者・養育者ともに理解しましょう。
アセトアミノフェンの効果と使⽤法 効果︓体温を 1.2〜1.4 ℃ 下げる。痛みを緩和する。 38℃くらいが使⽤の⽬安ですが、元気があれば使⽤する必要はありません。 参考︓⼩児科診療ガイドライン-最新の診療指針- 第4版.総合医学社, 2019 - 使⽤法のポイント • ⽣後 3ヶ⽉以降から使⽤可能 • 1回 10〜15 mg/kg 3ヶ⽉〜2歳 3〜6歳 7〜15歳 • 剤形 要相談(右図参照) • 救急では 2〜3回分 で⼗分 2/3個 粉・坐剤 2/3個 粉・坐剤 粉・錠剤
part.2 抗ヒスタミン薬 - ポイント - 救急での適応は 蕁⿇疹のみ で⼗分です。 上気道炎に伴う⿐汁に対しては処⽅不要︕ • #8000 相談内容の 約 5% が 蕁⿇疹 であり、受診も稀ではありません。 ⼊眠困難・養育者の不安 の元であり、抗ヒスタミン薬は処⽅しましょう。 *原因に関わらず、蕁⿇疹のみで抗ヒスタミン薬の静脈内投与は不要です。 参考︓平成30年度 #8000 情報収集分析事業報告書.⽇本⼩児科医会, 2019 • 第⼀世代抗ヒスタミン薬は、⼩児ではけいれんの誘発も指摘されています。 第⼆世代 x 適応年齢が広い x 体重計算不要 な薬が望ましいです︕
覚えておくべき抗ヒスタミン薬と⽤法⽤量 これだけでも⼗分︕ レボセチリジン(ザイザル®) 6ヶ⽉〜1歳 1歳〜7歳 7歳以上 2.5ml 分1 5ml 分2 5mg 分2 フェキソフェナジン(アレグラ®) 6ヶ⽉〜2歳 2歳〜12歳 12歳以上 剤形︓ドライシロップ/錠剤/OD錠 30mg 分2 60mg 分2 120mg 分2 〜3歳 3歳〜7歳 7歳以上 適応なし 5mg 分1 10mg 分1 剤形︓シロップ/錠剤/OD錠 余裕があれば覚えておきましょう︕ ロラタジン(クラリチン®) 剤形︓ドライシロップ/錠剤
part.3 吸⼊薬 - ポイント - ・喘息 → β刺激薬 0.3 ml + ⽣⾷ or クロモグリク酸Na 2 ml ・クループ → アドレナリン 0.3 ml + ⽣⾷ 2 ml 吸⼊の量は年齢による調整不要︕ • 軽症の喘息発作やクループは吸⼊で帰宅可能なことも多いです。 30分間隔 で 3回まで 吸⼊可能 ですが、2回で効果不⼗分なら⼩児科コール。 • 以前は年齢で量を調整しましたが、吸⼊効率の観点から 調整不要 となりました。 • アドレナリンは 0.2〜1 ml/回 と施設毎に異なりますが、いずれにおいても効果 はあるため、0.3 ml がβ刺激薬と同じ量 で覚えやすいです。
part.4 浣腸 - ポイント - グリセリン浣腸 1〜2 ml/kg/回 浣腸をしたら観便しよう︕ • ⼩児の腹痛の原因として最も多いのは 便秘症 です。浣腸によって症状の 改善だけでなく、便の⾊・⼤きさ・硬さの確認 が可能となります。 *⾎便をみたら、必ず腸重積の可能性を考えましょう。 • ⼤切なことは 排便後に症状の改善があるか で、浣腸後にも腹痛が続く 場合には、⾍垂炎やIgA⾎管炎など他の原因の検索が必要です。
part.5 抗菌薬(AMPC︓アモキシシリン) - ポイント - AMPC 50 mg/kg/day 分1-3(1回量を飲めれば分1でもOK) ⼩児の救急で抗菌薬を使うのは溶連菌と診断した場合だけで⼗分。 • 救急を受診する⼩児の発熱はほとんどがウイルス感染(⾵邪)であり、基本的に 救急外来で抗菌薬は不要 です。むしろ有害なこともあります。 • 以前は03歳児は元気に⾒えても、⾼熱時に⼀部が菌⾎症・重症感染症になると 報告されていました(潜在性菌⾎症)。しかし、肺炎球菌ワクチンやヒブワクチン の普及により、現在は⼤幅にリスクが低下しています。 • ただ、溶連菌 は治療効果から救急でも抗菌薬処⽅を検討します(次⾴参照)。 参考︓抗微⽣物薬適正使⽤の⼿引き 第⼆版.厚⽣労働省健康局結核感染症課
なぜ溶連菌には抗菌薬を検討するのか 溶連菌に対する抗菌薬の効果 リウマチ熱 速やかな 感染の伝播 予防 症状改善 防⽌ 発病から9⽇ までに 抗菌薬開始後 24時間以内 に 治療開始すれば予防効果あり。 ほとんどが解熱し、感染⼒も著しく低下する。 → 翌⽇かかりつけでもOK︕ → 救急で処⽅するメリットもありそう。
処⽅より重要なホームケアの指導 救急で処⽅する薬は少ないといわれても、患者の希望が強いです︕ このパターンは少なくありません。 救急で 検査や⼊院の必要がない と判断していることを伝え、 翌⽇かかりつけ医を受診するよう指導しましょう。 ただ、救急を受診する場合は「不安」を抱えている養育者が多いです。 簡単・定型⽂で良いのでホームケアの指導をしましょう︕
ホームケアの指導(⼀例) 診察した様⼦では 今のところ検査や治療は不要 だと思い ます。熱や咳は不安かと思いますが、この場では熱で寝ら れないときのため、解熱剤を処⽅します。 咳⽌めのお薬は即効性はないので、救急では処⽅しません。 また明⽇かかりつけさんでご相談下さい 。 寝てしまった場合はそのままで良いですが、起きていれば 少量ずつこまめな⽔分摂取を意識して下さい。また、咳に 困る場合は ⿐⽔吸引や加温・加湿 などが効果的です。 ホームケアを理解しておくことはそのまま⾃分の⼦育てでも役⽴ちます︕ 「教えてドクター」という佐久医師会の先⽣⽅が作成した無料アプリは、 ホームケア指導に極めて有⽤なので、⼩児に関わる⽅はぜひダウンロードしてみて下さい。
Take Home Message • 必要な薬は少ない︕ 帰宅可能なら アセトアミノフェンのみでだいたいOK︕ • 覚えておきたい『5つの薬』。 (解熱鎮痛薬・抗ヒスタミン薬・吸⼊薬・浣腸・抗菌薬) • むしろ指導するべきは ホームケア。