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抗NMDAR抗体脳炎の概要と精神症状
#2. 精神症状が多彩なので誤診されやすい 対応が遅れに遅れ、訴訟沙汰になった例も 見聞きしています
#3. 精神症状が多彩なので誤診されやすい 感冒症状 精神病症状 (幻覚・興奮・ カタトニアなど) 昏睡 (自律神経障害・ けいれんなど)
#4. 抗NMDAR抗体脳炎と精神症状 59%は精神症状が初発症状 65人の後方視研究 (精神病院入院時の初回診断) うつ病 (23%) 急性統合失調感情エピソード (23%) 躁病 (8%) 摂食障害または依存症 (6%) Lejuste F, et al. Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2016;3:e280.
自己免疫性脳炎の診断基準とMRI検査
#6. 自己免疫性脳炎診断基準 (Graus) • 3ヶ月以内に急速に発作などが悪化 • 内側側頭葉に限局したFLAIR高信号 • 髄液細胞数5以上, もしくは, • てんかん性異常や側頭葉を含む徐波 Graus, Francesc et al. The Lancet. Neurology vol. 15,4 (2016): 391-404. これらをすべて満たさないケースは少なくない
#8. 脳MRI検査陰性の自己免疫性脳炎 自己免疫性脳炎患者の18/37例に 経時的にMRI検査で異常所見なし Abunada M, et al. Eur J Radiol Open. 2024;12:100552
髄液検査の重要性とオリゴクローナルバンド
#9. 抗NMDAR抗体脳炎 (MRI陰性・髄液抗体価20倍) Day 3 Day 30 (治療前)
#11. オリゴクローナルバンドとは 電気泳動の原理を利用し 血液と髄液中の蛋白質の 違いを調べる 中枢神経領域で新たな 蛋白質 (自己抗体) が 産生されている
#12. 髄液検査は有用か? 抗NMDAR抗体脳炎は 細胞数・蛋白・ オリゴクローナルバンドの いずれかに所見が出やすい Blinder T, Lewerenz J. Front Neurol. 2019;10:804.
抗NMDAR抗体価の確認と誤診のリスク
#13. 髄液検査は有用か? てんかん発作による細胞数増加例は少ない てんかん重積状態後に細胞数が増加した症例は6% てんかん発作による髄液蛋白上昇は10‒61% 血液/脳脊髄液関門破壊による影響を示唆 Langenbruch L, et al. Seizure. 2021;91:233-243.
#14. 抗NMDAR抗体価は髄液で確認! Red flags (誤診) TPO抗体陽性 GAD65抗体価低値 LGI1/CASPR2陰性のVGKC陽性 血清NMDAR抗体陽性だが 髄液NMDAR抗体陰性 CASPR2抗体価低値 Flanagan EP, et al. JAMA Neurol. 2023;80(1):3.
脳波検査の有用性と治療前後の変化
#16. 抗NMDAR抗体脳炎の脳波 Extreme delta brush (EDB) は多くない Zhang, Yan et al. Clinical neurophysiology. 2017:1227-1233. 初回記録の71%は、後頭部優位に正常な基礎波を認める Sonderen, et al. Journal of neurology, neurosurgery, and psychiatry vol. 89,10 (2018): 1101-1106
#17. 抗N MD A R 抗体脳炎 治療前 髄液抗体価 20倍 治療後
自己免疫性精神病のアプローチとまとめ
#19. 自己免疫性 精神病基 準からのアプローチ 突然発症の精神症状が 3ヶ月以内に急速に悪化 かつ、いずれかを満たしたら積極的に検査へ! 腫瘍 運動症状 (カタトニア) 悪性症候群 脳波検査 認知機能障害 MRI検査 意識障害 髄液検査 発作 自律神経症状 Pollak TA, et al. Lancet Psychiatry. 2020;7:93–108.
#20. まとめ 脳炎を見逃さないためには 検査データに依存せず 経時的な病歴聴取も重要です