#4.
なんとなく抗菌薬選択していませんか? よくわからないけど発熱、CRP高値だからゾシン®︎
誤嚥性肺炎だから何でもかんでもスルバシリン®︎
起因菌、感受性は判明したけど良くなってるからそのまま継続
など
#5.
根拠のある抗菌薬選択を行いましょう!
#6.
テーマ 抗菌薬をなんとなくで選んでいないか
感染症診療の5原則
抗菌薬選択の3point
Empiric therapyとDefinitive therapy
PID(骨盤内炎症性疾患)を例に
#7.
確認! 感染症診療の基礎である5原則
知っていますか?
#8.
感染症を筋道立てて診るには 5原則を順番に検討する
①患者背景を理解する
②どの臓器の問題かを詰める
③どの微生物が原因かを詰める
④抗菌薬を選択する
⑤適切な経過観察を行う
#9.
①患者背景 解剖学的構造の破綻(デバイス)
ex)血管カテーテル、尿道カテーテル、術後ドレーン、手術、
粘膜障害(化学療法)、骨折など
発熱性好中球減少症→緑膿菌などのGNRや真菌
細胞性免疫不全→細胞内寄生菌(LLMNS:Legionella , Listeria , Mycobacterium , Nocardia , Salmonella)
液性免疫不全→莢膜を有する菌
( Streptococcus pneumoniae , Haemophilus influenzae など)
#10.
②臓器・解剖学的診断 問診
身体診察(top to bottom approach)
検査所見(血液検査・尿検査、Xp、CT、MRI)
⇨focusを絞りましょう
#11.
③微生物 年齢、基礎疾患、臓器、感染成立の場所(院内 or 院外、旅行の訪問地とそこでの活動)などからある程度原因微生物は絞らられる
例えば、
市中肺炎:肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラキセラ
NHCAP:緑膿菌、クレブシエラ、MRSA
尿路感染症(市中):大腸菌
CAUTI:大腸菌、緑膿菌、クレブシエラ、腸球菌など
#12.
④抗菌薬 患者背景、解剖学的診断、原因微生物が頭に浮かばないと、抗菌薬は決まらない!
まずは可能性のある微生物をカバーするような抗菌薬選択を
(詳細は後で!)
#13.
⑤最適な経過観察 臓器特異的な治療効果の判定を
肺炎→呼吸苦の改善、呼吸数の安定化、酸素需要など
髄膜炎→意識状態の改善、髄液細胞数の低下など
解熱、白血球・CRP陰性化は非特異的
画像検査での改善にはより時間経過が必要なことも
→既知の感染症の改善や別の感染症を見逃さない!
#14.
⑤最適な経過観察 回復のペース、パターンを予測する
感染症は「感染を起こしている臓器、起因菌の種類により治療に対する反応のスピード、パターンがある」
・腎盂腎炎−適切な治療を始めてから解熱がみられるまで2〜3 日かかることが多い、尿塗抹で菌消失が最も特異的
・肺炎−まずグラム染色、呼吸数、動脈血ガスなどが改善。胸部Xpの異常陰影は長期間残る
・肺炎球菌性肺炎、レジオネラ肺炎ー正しい治療にもかかわらず一過性にすべてのパラメーターが悪化することもあり
#15.
⑤最適な経過観察 耐性菌で患者を失うことは少ない
治療効果がみられない時、菌が現在使用中の抗菌薬に耐性であることよりも、以下のような事態になっていることが多い ⑴ 抗菌薬が到達できない膿瘍など
⑵ 全く別の臓器・解剖に発熱原因がある(DVTなどの7Ds)
⑶ 抗菌薬自体による薬剤熱
⑷ 抗菌薬が効いてるのに気がつかないだけ
⇨熱が下がらないから、漫然と抗菌薬を替える、加えるはダメ!
#16.
テーマ 抗菌薬をなんとなくで選んでいないか
感染症診療の5原則
抗菌薬選択の3point
Empiric therapyとDefinitive therapy
PID(骨盤内炎症性疾患)を例に
#17.
抗菌薬選択の3point 何でしょうか
#18.
抗菌薬選択の3point 最大の効果
最小の副作用
最小の耐性菌誘導 これを念頭に抗菌薬を選びましょう!
#19.
抗菌薬選択の3point これも順番が大事
まずは最大の効果がある抗菌薬を
その中で副作用が少ないものを
最後に耐性菌誘導リスクを考える(なるべく狭域スペクトラムで)
#20.
テーマ 抗菌薬をなんとなくで選んでいないか
感染症診療の5原則
抗菌薬選択の3point
Empiric therapyとDefinitive therapy
PID(骨盤内炎症性疾患)を例に
#21.
Empiric therapy ターゲットとすべき標的(微生物)を想定し、それに対して効果のあるものを選択して処方する
背景、臓器を念頭に Definitive therapy 微生物が同定されたら第一選択の抗菌薬にde-escalationする
歴史的・教科書的に最も実績のある第一選択薬を用いる
Broad spectrumの抗菌薬は、コラテラルダメージが大きい
Narrow spectrumの抗菌薬に変更することで耐性菌誘導を防ぐ
#22.
テーマ 抗菌薬をなんとなくで選んでいないか
感染症診療の5原則
抗菌薬選択の3point
Empiric therapyとDefinitive therapy
PID(骨盤内炎症性疾患)を例に
#23.
骨盤内炎症性疾患(PID)知っていますか? 女性の腹痛として鑑別に挙がり、どんな医師でも出会う可能性がある
肺炎や尿路感染症はよく知られているため、他のコンテンツも充実
⇨今回はPIDを取り上げることとしました!
#24.
骨盤内炎症性疾患(PID) Pelvic Inflammatory Disease
病態:子宮頸管より上部の生殖器に発症する上行性感染
子宮内膜炎、付属器炎、卵巣卵管膿瘍、骨盤腹膜炎を含む
リスク因子:若年、PIDの既往、複数の性的パートナー、コンドーム無しの性行為、子宮内避妊器具
症状:下腹部痛、帯下の性状の変化、発熱、性行為痛、不正性器出血など
Fitz-Hugh-Curtis症候群:肝周囲炎による右上腹部痛や呼吸性の痛みが特徴
#25.
骨盤内炎症性疾患(PID) 診断基準
・必須項目:下腹部痛・下腹部の圧痛、子宮/付属器の圧痛
・付加診断基準:体温 38度以上、白血球数増加、CRP上昇
・特異的診断基準(これは産婦人科が内診などで行う)
:骨盤内の膿瘍形成(経膣超音波やMRIで確認/ダグラス窩穿刺)
腹腔鏡による炎症の確認
◎疑ったら、産婦人科コンサルトを
#26.
骨盤内炎症性疾患(PID) PIDらしい所見
①痛みの移動がないこと
②両側の腹部圧痛
③悪心・嘔吐がないこと 虫垂炎や腸炎などとの鑑別!
#27.
骨盤内炎症性疾患(PID) 治療
・軽症の場合は経口抗菌薬、重症の場合は抗菌薬の経静脈投与
・適切に治療しないと将来不妊症の原因となる
・パートナーも治療しないと感染が拡大する恐れあり
今回は、経静脈抗菌薬をテーマに
ちなみに、経口抗菌薬でもカバーする微生物を考えるのは同じ
PEK→セファレキシン
嫌気性菌→メトロニダゾール
PEK+嫌気性菌→オーグメンチン+サワシリン
ナイセリア、クラミジア→ドキシサイクリン、アジスロマイシン
#28.
骨盤内炎症性疾患(PID) ほとんとが複数菌による感染
治療対象は
腹腔内感染症の原因菌(グラム陰性桿菌、Bacteroidesを含む嫌気性菌)
+淋菌、クラミジア
その他
グラム陽性菌(B群レンサ球菌、A群レンサ球菌)、インフルエンザ桿菌など
#29.
原因微生物 下部消化管:E.coli、Klebsiella、Proteus(PEK)
嫌気性菌:Bacteroides fragilisなど
Neisseria gonorrhoeae
Chlamydia trachomatis
微生物が決まらないと抗菌薬も決まらない!
#30.
PEK ※PEKはESBL産生によるβ-ラクタム薬耐性
をとりうる
→ESBLの分解を受けないセフメタゾール
(重症の際には、カルバペネム系) Klebsiella pneumoniaeはペニシリナーゼを
産生する遺伝子を染色体上に持っており、
アンピシリンに自然耐性を示す 赤:第一選択(最も狭域)
黄:効くけど広域
#31.
嫌気性菌:Bacteroides fragilisなど 嫌気性菌のみをカバーするのであれば
メトロニダゾール
クリンダマイシンはB.fragilisの耐性化が問題
(感受性 約40%)
→横隔膜から上:クリンダマイシン
下:メトロニダゾール
#32.
Neisseria gonorrhoeae グラム陰性双球菌(GNC:その他 N.meningitidis)
治療:CTRX(+AZM)が第一選択
(臨床的治癒を確実にし、耐性の発現を防ぐため2剤併用療法を行うことになっていたが、現在はCTRX単剤が推奨)
#33.
Chlamydia trachomatis 偏性細胞内寄生菌
(宿主細胞内でのみ増殖可、培養できない)
治療は:MINO or AZM(経口ならDOXY)
#34.
PIDで病原微生物判明前は CTRX+MINO±MNZ
で前述の菌をカバーできる!!
#35.
PIDで血液培養陽性になった症例
#36.
症例1 55歳女性
既往歴:糖尿病(HbA1c 10.3)
受診1週間前から、発熱・頭痛・悪寒ありOTCで対応
下腹部痛も出現し改善ないため、救急外来受診
受診時バイタル:BT 37.7℃ BP 122/77mmHg HR 95bpm
下腹部全体に圧痛あり、左下腹部に低エコーの液貯留あり
造影CTで骨盤内に脂肪織混濁、腹水少量あり、膿瘍認めず
PIDとして治療開始する方針となった
#37.
感染症を筋道立てて診るには 5原則を順番に検討する
①患者背景を理解する
②どの臓器の問題かを詰める
③どの微生物が原因かを詰める
④抗菌薬を選択する
⑤適切な経過観察を行う
#38.
症例1 55歳女性
既往歴:糖尿病(HbA1c 10.3)
受診1週間前から、発熱・頭痛・悪寒ありOTCで対応
下腹部痛も出現し改善ないため、救急外来受診
受診時バイタル:BT 37.7℃ BP 122/77mmHg HR 95bpm
下腹部全体に圧痛あり、左下腹部に低エコーの液貯留あり
造影CTで骨盤内に脂肪織混濁、腹水少量あり、膿瘍認めず
PIDとして治療開始する方針となった
#39.
5原則に当てはめる ①コントロール不良の糖尿病のある55歳女性
②骨盤内
③ PEK、嫌気性菌(Bacteroides fragilisなど)、
(Neisseria gonorrhoeae、Chlamydia trachomatis)
④CTRX+MINO±MNZ
⑤膿瘍がなければ治療期間2週間
各種培養結果見てde-escalationを
#40.
生えたのは、、、 カテ尿からも同様の菌検出 (2セット中1セット) 自然耐性→第一選択薬はPCG , ABPC ◎A群β溶連菌
#41.
5原則を見直す ①コントロール不良の糖尿病のある55歳女性
②骨盤内
③ A群β溶連菌(Streptococcus pyogenes)
④ PCG , ABPC(±嫌気性菌カバー)
⑤治療期間2週間を目処に、場合によっては内服抗菌薬へのスイッチも検討される
#42.
抗菌薬治療開始後、経過良好であり第12病日に退院 TAZ/PIPC+MINO SBT/ABPC CRP 46.6 40.9 44.8 21.5 11.4 3.95 0.48 起因菌・感受性判明しde-escalation
#43.
症例2 74歳女性
既往歴:卵巣癌術後再発疑い、甲状腺摘出術後
受診3日前に39度台の発熱で救外受診、身体所見異常なく血液培養採取し対症療法で帰宅
血培でGNR 2セット陽性であり、発熱継続していたため再度救外受診。
受診時バイタル:BT 38.3℃ HR 90bpm , BP 118/59mmHg
身体所見では異常所見認めず
造影CTにて増大傾向の骨盤内腫瘤(腸管浸潤+)と右水腎症(2週間前も指摘あり)を認め、入院加療の方針となった
#44.
まずは5原則 ①卵巣癌術後再発疑い、血培陽性の高齢女性
②骨盤内、尿路
③PEK , PMSEC , Pseudomonas aeruginosa
Bacteroides spp.などの嫌気性菌
#45.
PMSEC PMSECはAmpCが染色体上にあり
・セファロスポリン
・セファマイシン(セフメタゾールなど)
を分解、in vitroではクラブラン酸で
阻害されないのがESBLsとの違い
(タゾバクタムは一定の効果あり)
#46.
Pseudomonas aeruginosa 緑膿菌は耐性化しやすく、
様々な耐性機序を取りうるので
症例ごとに感受性チェックも大事
アンチバイオグラムも確認する
(カルバペネムの感受性率が低い)
#47.
5原則に当てはめると ①卵巣癌術後再発疑い、血培陽性の高齢女性
②骨盤内、尿路
③PEK , PMSEC , Pseudomonas aeruginosa
Bacteroides spp.などの嫌気性菌
④TAZ/PIPC , CFPM
⑤広域抗菌薬での治療になるため、菌種・感受性が判明したら速やかなde-escalationを
膿瘍がなければ治療期間2週間が目安
#48.
生えたのは、、、 2セット中2セット(嫌気) 獲得耐性あり(βラクタマーゼ産生)
→第一選択:CMZ ◎ Bacteroides fragilis
#49.
5原則を見直す ①卵巣癌術後再発疑い、血培陽性の高齢女性
②骨盤内、尿路
③Bacteroides fragilis+α(複数菌種であることが多い)
④CMZ
⑤膿瘍形成がなければ感受性のある抗菌薬投与2週間投与
#50.
TAZ/PIPC CMZ 16.89 5.91 2.11 7.59 7.89 8.6 手術 ・抗菌薬開始後、経過は良好であった。(第8病日に卵巣癌手術施行) 起因菌・感受性判明しde-escalation 退院
#51.
最後に、、、おすすめツール オフラインで見れる資料がオススメ!
#52.
Take home massage 感染症診療の5原則と抗菌薬選択の3pointを頭に叩き込みましょう
起因菌や第一選択薬を意識して診療を行いましょう
(わからないことはすぐに調べられるようにしておく)
See one , do one , teach one!
#53.
参考文献 レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版
感染症診療のベーシック・アプローチ
抗菌薬の考え方、使い方 Ver.4
感染症プラチナマニュアル 2020
日本語版サンフォード感染症治療ガイド−アップデート版