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東京医科大学病院
脳卒中の初期診療で用いるNIHSSを詳しく解説し、それに関連した神経診察の発展的な内容についても言及しています。神経診察に対する苦手意識をなくし、脳神経内科の魅力を少しでも感じてもらえればと思います。
【デキレジは“こう動く”】細菌性髄膜炎ー髄膜刺激症候/腰椎穿刺ー
#意識障害 #救急外来 #ER #神経内科 #研修医 #髄膜炎 #脳神経内科 #デキレジ #頭痛 #腰椎穿刺 #頭部CT #細菌性髄膜炎
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女性の救急外来ただいま診断中_女性の腹痛の診方、考え方
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健康診断で要精査 尿潜血の対応方法
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膠原病におけるステロイドの使い方
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【神内ローテ前必見】ルンバールを確実にキメるための7step
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【デキレジは“こう動く”】けいれんーepilepsy/seizure/convulsionー
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【デキレジは“こう動く”】脳梗塞のみつけ方ーらしさ/らしくなさー
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【デキレジは“こう動く”】超急性期脳梗塞ーt-PA/血栓回収の適応ー【改訂版】
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意識障害と神経所見~AIUEO TIPS以外で意識障害の鑑別をしよう~
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内科医のための脳出血とくも膜下出血
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入門 急性疾患の患者中心のケア 人工呼吸器は一度つけたら外せない?
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どんなときに糖尿病専門医へコンサルトすれば良い?
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聞こえと難聴の耳寄りな話 小児難聴から補聴器まで〜難聴について相談された時どうします?
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夜に跳ねる!むずむず脚症候群の診察をマスターしよう
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米国内科、循環器内科専門医からのメッセージ 米国臨床留学を考えている君へ〜米国臨床留学に興味がある医学生、研修医、医師へ〜
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乳幼児健診でよく出会うこどものあざ
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【公式】Antaa Slideの投稿方法
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NIHSS から始める神経診察 東京医科大学病院 脳神経内科 菊野 宗明
Take Home Message- NIHSS 最重要ポイント - 意識・眼5つ、運動5つ、その他5つ! 麻痺側の失調は0点! 臨床現場では、グループで所見の共有を!
神経診察は好きですか? 2011年日経メディカル社Cadetto「診療科イメージランキング 」より引用 「モテそうな科」 第1位:循環器内科 「友達が多そうな科」 第1位:総合内科 「細かそうな科」 第2位:神経内科 他、入賞なし... ・・・
入院患者数 モテる循環器にも勝ってる? 平成23年 患者調査 (単位:千人) 114.9 + 172.2 = 287.1 = 1位! 入院数No.1の看板は 今日限り おろしてもらう!
外来患者数 歯科が健闘... 平成23年 患者調査 (単位:千人) 神経系は多くない?
外来でも多い神経系 “主訴” A病院 総合診療科 総計3824名 B病院 救命救急センター 総計4380名
神経診察で一歩進んだ デキレジに! 【Neurological Examination】 Mentality Consciousness:, Orientation Time:, Place:, Person: Mood and Emotional Reaction:, General information and judgment: HDS-R: /30points, Speech Dysarthria:, Understanding:, Writing:, Reading: HCF Agnosia:, Aphasia:, Aplaxia: 〔Cranial Nerves〕 Olfactory N.:, Visual acuity:, Visual fields:, Pupils size:, shape:, anisocorea:, accomodation:, Light ref: /, Eye position:, EOM:, Smooth pursuit:, Saccade movement:, Convergence:, Oculo-cepharic reflex:, Ptosis:, Double vision:, Nystagmus:, Facial sense. Pain and temp:, Touch:, Corneal reflex:, Jaw movement:, Facial palsy; Palpebral fissure:, Nasolabial fold:, Mouth angle:, Wrinkle forehead:, Eye close:, Mouth close:, IVM:, Hearing loss:, Rinne:, Weber:, Position of uvula:, Soft palate elevation:, Gag reflex:, Tongue atrophy:, fasciculation:, Protrusion:, Wriggling:, SCM and Trapezius strength:, atrophy:, 〔Motor System〕 Muscletonus:, Muscle volume:, Fasciculasion: Muscle Strength
NIHSSとは? 1989年、脳卒中の神経学的重症度を客観的に測定するため臨床試験で用いられたのが、National Institute of Health Stroke Scale (NIHSS)。 改訂を経た15項目の観察事項。 →意識・眼5つ、運動5つ、その他5つ! Brott T, et al. Stroke 1989; 20:864-870
意識・眼5つ 運動5つ その他5つ
NIHSS と ASPECTS 項目上は42点、実際は39点満点。点数が高いほど重症! →画像評価のASPECTSは10点満点で、低いほど重症! Pexman JH, et al. AJNR 2001; 22:1534-1542
批判もある... 神経学的障害の重症度評価には有用だが脳卒中の診断そのものには役立たない。 “A stroke is never a stroke until it has received 50 of D50.” Laurence M.Tierney “stroke mimics” →けいれん、脳腫瘍、低血糖等の代謝異常、電解質異常、感染、大動脈解離、偏頭痛、ヒステリー...etc.
批判もある... 脳神経項目が少なく、椎骨脳底動脈系の障害は評価不十分。 言語機能の配分が高く失語を伴う優位半球の障害で、より高く。 項目ごとに重みがなく、同じ点数でもADLの程度は全く異なる。 意識障害が存在すると高く、JCSⅢ‐300では35点以上に。
“Measurement of acute cerebral infarction: a clinical examination scale” simplicity (簡便性) → 6.6 ± 1.3 minutes 【t-PAアルゴリズム】 t-PA当番にCall! そしてNIHSS! Brott T, et al. Stroke 1989; 20:864-870 日本脳卒中学会医療向上・社会保険委員会rt-PA静注療法指針部会より
t-PAアルゴリズムの実際 救急外来では3人組を形成! 1人が末梢血管を確保して同時に採血(凝固系の採血が、t-PAの律速段階となることが多い)。 1人は問診で、発症時刻や形式、禁忌事項の確認などを行う。 最後の1人がNIHSSで神経診察をする。 以上を、10分以内で! 無論、マンパワーがあれば大勢で!
“Measurement of acute cerebral infarction: a clinical examination scale” reliability (信頼性,再現性) →誰がいつやっても、同じ結果! validity (確実性,相関性) →CTでの病巣サイズや臨床上の予後と合致する! Brott T, et al. Stroke 1989; 20:864-870
Rules 必ずリストの順に試行し、直後にその結果を記録する。 患者がしたことを評価し、患者ができると医師が推測したことを反映していけない。 患者を誘導してはいけない。 実施されなかった項目がある場合、理由を明確に説明する。
1a. 意識水準 気管内挿管、言語的障壁、あるいは口腔の外傷などによって評価が妨げられたとしても、患者の反応をどれか一つに評価選択すること。痛み刺激を加えられた際に患者が反射的姿勢以外には全く運動を呈さないときのみ3点とする。 0:完全に覚醒している、的確に反応する。 1:覚醒していないが簡単な刺激で覚醒し、命令に従ったり、答えたり、反応することができる。 2:覚醒していなくて、注意を向けさせるには繰り返し刺激する必要があるか、あるいは意識が混濁していて(常同的ではない)運動を生じさせるには強い刺激や痛み刺激が必要である。 3:反射的運動や自律的反応だけしかみられないか、あるいは完全に無反応、弛緩状態、無反射状態である。
1b. 意識障害−質問 今月の月名および年齢を尋ねる。返答は正解でなければならず、近似した答えには点を与えない。失語症または昏迷の患者には2点を与える。気管内挿管、口腔外傷、強度の構音障害、言語的障壁あるいは失語症によらない何らかの問題のために患者が話すことができない場合には1点とする。最初の応答のみを評価することが重要であり、検者は 言語的あるいは非言語的な手がかりで患者を助けてはならない。 0:両方の質問に正解 1:一方の質問に正解 2:両方とも不正解
1c. 意識障害−従命 「目の開閉」を命じ、続いて「手を握る・開く」を命じる。もし手が使えないときは他の 1 段階命令に置き換えてもよい。実行しようとする明らかな企図がみられるが、筋力低下のために完遂できないときは点を与える。もし患者 が命令に反応しないときはパントマイムで示してみせる。外傷、切断または他の身体的障害のある患者には適当な 1 段階命令に置き換える。最初の企図のみを評価すること。 0:両方とも遂行可 1:一方だけ遂行可 2:両方とも遂行不可
advanced 意識水準 “ 見る → 呼び掛ける → 刺激する ”は意識確認の黄金則! JCS, GCS BLS, ACLS RASS NIHSS
Emergency Coma Scale; ECS 日本神経救急学会、日本脳神経外科救急学会開発
2. 最良の注視 水平眼球運動のみ評価する。随意的あるいは反射的(oculocephalic)眼球運動を評価するが caloric test は行わな い。共同偏視を有しているが、随意的あるいは反射的にこれを克服できるときは 1 点とする。単一の末梢性脳神経 (I、IV 、V I)麻痺があるときは 1 点とする。注視は全ての失語症患者で評価可能なはずである。眼外傷、眼帯、病前からの盲、あるいは他の視野視力障害を有する患者は反射的運動あるいは適切な方法で評価する。視線を合わせ、 患者の周りを横に動くことで注視麻痺の存在を検知できることがよくある。 0:正常 1:部分的注視麻痺。注視が一側あるいは両側の眼球で異常であるが、固定した偏視や完全注視麻痺ではないとき。 2:「人形の目」手技で克服できない固定した偏視あるいは完全注視麻痺。
Doll’s eye(Oculocephalic reflex) Bateman DE, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2001; 71(supple I):i13-i17 上記の正常反射がなかったり、左右差があると異常所見
3. 視野 視野(上下 1/4)を対座法で動かしている指あるいは threat で検査する。患者を励ましてもよいが、動いている指の方を適切に向くのなら正常とする。一側眼の盲や単眼の場合は健常側の視野を検査する。1 /4 盲を含む明らかな左右差が認められたときのみ1点とする。もし全盲であればどのような理由であっても3点とする。この時点で両側同時刺激を行い消去現象があれば1点とし、その結果は項目 1 1 の評点に用いる。 0:視野欠損なし 1:部分的半盲 2:完全半盲 3:両側性半盲(皮質盲を含む全盲)
こういうこと 部分的半盲 完全半盲 両側性半盲
対座法 Broadway DC, et al. Comm Eye Health 2012; 25:66-70
visual threat (menace reflex) Quitt PR, et al. J Feline Med Surg 2019; 21:537-543 眼前に異物が来ることで、瞬目が起こる。 視神経を求心路、顔面神経を遠心路とする。
advanced 注視&視野 意識障害の患者の神経診察では、観察と反射が重要! “ 意識障害があるので、神経診察できません ”...だと...
意識障害がある患者への神経診察 瞳孔所見 脳幹反射 筋トーヌス、腱反射 病的反射 痛み刺激 Pashaei-Marandi A, et al. Can J Opthalmo 2019; 54:e300-e302 Papierniak ES, et al. Atlas of Emergency Medicine Procedures pp 261-268 Ambesh P, et al. J Neurol Sci 2017; 372:477-481
4. 顔面麻痺 歯をみせるか笑ってみせる、あるいは目を閉じるように命じるかパントマイムで示す。反応の悪い患者や理解力のない患者では痛み刺激に対する渋面の左右差でみる。顔面外傷、気管内挿管、包帯、あるいは他の身体的障壁のため顔面が隠れているときは、できるだけこれらを取り去って検査する。 0:正常な対称的な動き 1:軽度の麻痺(鼻唇溝の平坦化、笑顔の不対称) 2:部分的麻痺(顔面下半分の完全あるいはほぼ完全な麻痺) 3:完全麻痺(顔面上半および下半の動きが全くない)
5 & 6. 上肢及び下肢の運動 上下肢を適切な位置に置く:上肢は 9 0 度(坐位のとき)または 4 5 度(仰臥位のとき)、下肢は 3 0 度(必ず仰臥位)。 上肢は 1 0 秒間維持できないとき、下肢は 5 秒間維持できないときに下垂と評価する。失語症患者には声やパントマイムで示すが、痛み刺激は用いない。各肢は順に検査するが最初は非麻痺側から検査する。切断肢や肩あるいは股関節の癒合のときのみ9点とし、検者は9点とつけた理由を明確に記録しておく。 0:下垂なし。9 0 (または 4 5 )度を 1 0 秒間保持できる。 1:下垂する。90(または45)度を保持できるが、10 秒以内に下垂してくる。しかしベッドを打つ ようには落ちない。 2:重力に抗しての動きがみられるが、9 0 (または 4 5 )度の挙上または保持ができない。 3:重力に抗しての動きがみられない。ベッド上に落ちる。 4:全く動きがみられない。 9:切断、関節癒合
上下肢を適切な位置に置く:上肢は 9 0 度(坐位のとき)または 4 5 度(仰臥位のとき)、下肢は 3 0 度(必ず仰臥位)。 上肢は 1 0 秒間維持できないとき、下肢は 5 秒間維持できないときに下垂と評価する。失語症患者には声やパントマイムで示すが、痛み刺激は用いない。各肢は順に検査するが最初は非麻痺側から検査する。切断肢や肩あるいは股関 節の癒合のときのみ9点とし、検者は9点とつけた理由を明確に記録しておく。 0:下垂なし。3 0 度を 5 秒間保持できる。 1:下垂する。30 度を保持できるが、5 秒以内に下垂してくる。しかしべッドを打つように落ちる ことはない。 2:重力に抗して動きがみられる。下肢は落下するが、重力に抗する動きが認められる。 3:重力に抗しての動きがみられない。即座にベッド上に落ちる。 4:全く動きが見られない。 9:切断、関節癒合 5 & 6. 上肢及び下肢の運動
advanced 運動麻痺 Charcot (1823-1895) Babinski (1857-1932) Chaddock (1861-1936) Hoover (1865-1927) 師弟関係 師弟関係 神経内科・近代史 -History of Neurology-
ヒステリー VS 神経診察 Babinski 屈股現象 ・・・両手を胸に当て起き上がらせる。病側では股関節から屈曲するが、心因性では寧ろ健側が動く。 Hoover 徴候 ・・・両踵の下に検者の手を入れ、一方を挙上させ他方に加わる力を感じる。病側を上げると健側に強い力が。 前脛骨筋現象 ・・・患者の膝に力を加え、股関節・膝関節を屈曲させると、底屈すべき足が、病側では回内・背屈する。 Souque 指徴候 ・・・両手を挙上させると、病側の方が手指が伸展し、開いている。 Wartenberg 徴候 ・・・片手で患者の手首を押さえて、もう一方の手で母指以外の4本の指の引っ張り合いをする。錐体路障害で、患者の母指が著しく内転・屈曲する。早期から出現。 膝屈曲試験 ・・・立位のまま膝を曲げずに指で床を触らせると、病側の膝が屈曲する。 “ dyssynergia ” (協働収縮異常症)を見つけることが重要!
7. 運動失調 この項目は一側性の小脳損傷に関する症候を評価するものである。検査は開眼で行う。視野障害がある場合は健常側で検査を行う。指-鼻-指試験と踵-脛試験は両側で行い、運動失調は、筋力低下の存在を割り引いても存在するときのみ有りと評価する。理解力のない患者、片麻痺の患者では失調は無いと評価する。切断肢や関節癒合のときのみ 9点とし、検者は9点とつけた理由を明確に記録しておく。全盲の場合は伸展位から鼻に触れることで検査する。 0:なし 1:1肢に存在 2:2肢に存在 9:切断、関節癒合
Finger-Nose-Finger test Krishna R, et al. J Neuroeng Rehabil 2019; 16:31 小脳
advanced 運動失調 失調の診察法は多彩で、SARAなど評価スケールもある! 本来は膝踵試験も、丁寧に繰り返させ診る! Krishna R, et al. J Neuroeng Rehabil 2019; 16:31
8. 感覚 知覚または検査時の pinprick に対する渋面、あるいは意識障害や失語症患者での痛み刺激からの逃避反応により検 査する。脳血管障害に帰せられる感覚障害のみを異常と評価し、半側感覚障害を正確に調べるのに必要なできるだけ多くの身体部位(手ではなく前腕、下肢、体幹、顔面)を検査すること。重篤あるいは完全な感覚障害が明白に示された時のみに2点を与える。従って昏迷あるいは失語症患者は恐らく1または0点となる。脳幹部血管障害で両側の感覚障害があるときは2点とする。無反応あるいは四肢麻痺の患者は2点とする。昏睡患者(項目1a=3)は2点とする。 0:正常。感覚障害なし。 1:軽度から中等度の感覚障害。pinprick をあまり鋭くなく感じるか障害側で鈍く感じる。あるいは pinprick に対する表在感覚は障害されているが触られているということは分かる場合。 2:重度から完全感覚脱失。触られているということも分からない。
advanced 感覚 顔…三叉神経 上肢…頚椎 体幹…胸椎 下肢…腰椎 dermatomeは、四つ足にしてみる! Yearwood TL, et al. Pain Physician 2010; 13:321-335
9. 最良の言語 これより前の項目の検査を行っている間に言語理解に関する多くの情報が得られている。絵カードの中で起こってい ることを尋ね、呼称カードの中の物の名前を言わせ、文章カードを読ませる。言語理解はここでの反応および前の神経学的検査の際の命令に対する反応から判断する。もし視覚障害によってこの検査ができないときは、手の中に置かれた物品の同定、復唱、発話を命ずる。挿管されている患者は書字するようにする。昏睡患者(項目1a=3)は3 点とする。昏迷や非協力的患者でも評点をつけなければならないが、患者が完全に無言か、1段階命令に全く応じない場合にのみ3点を与えることとする。 0:失語なし。正常 1:軽度から中等度の失語。明らかな流暢性・理解力の障害があるが、表出された思考、表出の形に重大な制限を受けていない。しかし、発話や理解の障害のために与えられた材料に関する会話が困難か不可能である。例えば、患者 の反応から検者は答えを同定することができる。 2:重度の失語。コミュニケーションは全て断片的な表出からなっていて、聞き手に多くの決めつけ、聞きなおし、 推測がいる。交換される情報の範囲は限定的で、聞き手はコミュニケーションの困難性を感じる。検者は患者の反応から答えを同定することができない。 3:無言、全失語。有効な発話や聴覚理解は全く認められない。
絵カードと呼称カード
文章カードと単語カード (構音障害)
10. 構音障害 もし患者が失語症でなかったら、前出のカードの音読や単語の復唱をさせることから適切な発話の例を得なければならない。もし患者が失語症なら、自発語の構音の明瞭さを評価する。挿管、発話を妨げる他の身体的障壁があるときのみ9点とし、検者は9点とつけた理由を明確に記録しておく。患者にこの項目の検査の理由を告げてはならない。 0:正常 1:軽度から中等度。少なくともいくつかの単語で構音が異常で、悪くとも何らかの困難は伴うものの理解し得る。 2:重度。構音異常が強いため、検者が理解不能である。 9:挿管または身体的障壁
advanced 失語&構音障害 NIHSSでは無言・全失語と、その他を区別することが重要 失語の鑑別は流暢性、言語理解、復唱、呼称、書字・文字理解等で評価する!
11. 消去現象と注意障害(無視) これより前の項目の検査を行っている間に無視を評価するための充分な情報を得られている。もし 2 点同時刺激を行うことを妨げるような重篤な視覚異常がある場合、体性感覚による 2 点同時刺激で正常なら評価は正常とする。 失語があっても両側に注意を向けているようにみえる時、評価は正常とする。視空間無視や病態失認の存在は無視の証拠としてよい。無視は存在した時のみ有りと評価されるので、この項目は検査不能のはずはありえない。 0:異常なし 1:視覚、触覚、聴覚、視空間、あるいは自己身体に対する不注意、あるいは1つの感覚様式で 2 点同時刺激に対する消去現象。 2:重度の半側不注意あるいは2つ以上の感覚様式に対する半側不注意。一方の手を認識しない、または空間の一側にしか注意を向けない。
1a. 意識水準が3点(昏睡)だと… 35点以上が確定
感覚様式 視覚 触覚 聴覚 視空間 優先
advanced 消去現象と注意障害 反側空間無視の本質は、注意障害!
症例提示 NIHSSは、とりあえず... やって覚える!
症例 1 公園で楽しく友人とテニスをしていた河村さん(50歳)。 熱い試合で水分補給も忘れてしまった。 あれ?左手が動かない? 歩いて救急外来を受診。
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症例 2 町内会でサッカーをしていた三杉さん(78歳)。 微笑ましい試合展開、急にうめき声を上げて倒れたキャプテン三杉さん。そういえば、“心房細動”という持病が... 直ぐに救急車で搬送!
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補足 4.顔面麻痺や10.構音障害は、検者による評価のばらつきが大きい。 “Measurement of acute cerebral infarction: a clinical examination scale”でも、1人の検者と3人の観察者のグループで所見をとったことで,再現性が改善されたと指摘される(疲労や慣れによる患者の変化の影響を除外しやすい)。
Take Home Message- NIHSS 最重要ポイント - 意識・眼5つ、運動5つ、その他5つ! 麻痺側の失調は0点! 臨床現場では、グループで所見の共有を!
優れた神経診察は、時にCTやMRIの感度を超えます。 また新しい診察法を創造することも、求められています。 カッコよくて使える神経診察を、どんどんやってみてください!
For Further Study <1次文献> Brott T, et al. Measurement of acute cerebral infarction: a clinical examination scale. Stroke. 1989; 20:864-870. Lyden P, et al. Using the National Institute of Health Stroke Scale. Stroke. 2017; 48:513-519. <2次文献> 田崎義昭他著、『ベッドサイドの神経の診かた』、 2010年、南山堂 日本救急医学会他監修、『ISLSコースガイドブック2013』、2013年1月、へるす出版 峰松一夫監修、『脳卒中レジデントマニュアル』、2013年3月、中外医学社 黒田泰弘他編、『Intensivist 特集 神経集中治療』、2013年7月、メディカル・サイエンス・インターナショナル Up to date; “Use and utility of stroke scales and grading systems” <Visual Aid> Youtube; NIH Stroke Scale Training →NIH Training DVD Youtube; NIHSS トレーニング →京都ISLS
このスライドをつくったひと 東京医科大学病院 脳神経内科 助教 日本神経学会 神経内科専門医 日本脳卒中学会 脳卒中専門医 日本脳神経血管内治療学会 専門医 日本脳神経超音波学会 認定検査士・評議員 医学博士 より良い脳卒中診療と神経診察の実践と普及を目指しています!
脳神経内科 Neuro-Science 寄り添う医療 総合医療 救急医療 脳血管障害、てんかん、神経免疫 感染症、膠原病、漢方、 循環、呼吸、栄養 EBM、臨床研究、神経病理、脳科学 変性疾患、認知症、精神、 リハビリテーション 、緩和ケア 急性期から慢性期まで、全身と人生を診る科!