#4.
病態 Ismail A, et al. Cureus. 2023; 15:e38794 ①危険因子や喫煙、感染や炎症などに長期に晒されることで内皮障害が生じる。 ②透過性の亢進した内皮が白血球増加や単球の癒着を来たす。 ③マクロファージが活性化
し線維性被膜が形成、被膜
が肥厚して粥腫が安定化し
血栓が形成される。 ④マクロファージと平滑筋
が脂質を取り込む。 ⑤平滑筋が急速に増生して、
泡沫細胞が形成され、細胞外
マトリクスが沈着する。
プラーク破綻による塞栓性、
血流低下による血行力学的な
脳梗塞の一因となる!
#5.
疫学 59研究のメタ解析では、2020年時点の50-79歳の世界人口の無症候性の頚動脈狭窄(≥50%)の推定有病率は、男性1.68-6.93%、女性1.01-4.26%であった。
Song P, et al. Lancet Glob Health. 2020; 8:e721-e729
本邦の吹田研究では、 50-79歳の無症候性の頚動脈狭窄(≥50%)は男性7.9%、女性1.3%に認めた。
Mannami T, et al. Stroke. 1997; 28:518-525
『脳卒中データバンク2021』では、症候性頚動脈狭窄や頭蓋内動脈狭窄によるアテローム血栓性脳梗塞は脳梗塞全体の31.5%と最多の病型であった。
国循脳卒中データバンク2021編集委員会. 中山書店, 2021; 20-21.
#6.
狭窄率の評価法 Area法 ECST法 NASCET法 PSV法 B A B - A / B D D m/s 狭窄率は概ねArea > ECST > NASCETで評価される、
それぞれの測定法は病変の特徴に応じて、一長一短。
#7.
頚動脈エコーの実際 – 短軸像 - 総頚動脈 外頚動脈 甲状腺 内頚動脈 頚動脈分岐部 内頚静脈 椎骨動脈 椎骨静脈 気管 *写真は著者の頚動脈 Ning MM, et al. N Engl J Med. 2013; 369:1736-1748
#8.
頚動脈エコーの実際 - 長軸像 - 内頚動脈 総頚動脈 外頚動脈 頚動脈分岐部 椎骨動脈 椎骨静脈 上甲状腺動脈 椎体 *写真は著者の頚動脈 内膜中膜複合体厚
Intima-media thickness; IMT 正常≤1mm
肥厚から頚動脈狭窄に
#9.
Brinjikji W, et al. J Neurosurg. 2016; 124:27-41 頚部血管エコー MRA MPRAGE(T1強調BB法) TOF(MRA原画) プラークイメージング-狭窄率以上に不安定性の評価も重要!-
#10.
Polyvascular disease-冠動脈や下肢動脈の精査も重要!- 頚動脈狭窄では冠動脈疾患や末梢動脈疾患を20-60%に合併し、包括的な検査や治療戦略の重要性が報告される。
Avoyans V, et al. Eur J Vasc Endovasc Surg. 2018; 55:305-368
Polyvascular diseaseを有する患者の心血管イベント再発率は高く、糖尿病や心不全との併存下でより高く、7年間の累積で60%程とする報告もある。
Bonaca MP, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2018; 6:934-943
Verma S, et al. Circulation. 2018; 137:2179-2183
Fujisue K, et al. Medicine. 2019; 98:28 頚動脈狭窄 虚血性
心疾患 末梢動脈
疾患
#11.
Carotid web-特殊な病態もある- Carotid webは内頚動脈起始部から突出する膜様組織で、血流鬱滞による血栓形成を介し、塞栓性脳梗塞を来たし得る。
Choi PM, et al. AJNR. 2015; 36:2134-219
前方循環系の原因不明の脳梗塞 53例について、対照に比べCarotid webを多く認めた(9.4 vs 1.0 %, P=0.032)。
Coutinho JM, et al. Neurology. 2017; 88:65-69 40代女性 再発性MCA閉塞
#12.
治療方針 無症候性の頚動脈狭窄には高血圧、脂質異常症、糖尿病といった動脈硬化リスクの管理、禁煙指導などが脳梗塞1次予防として勧められる。
高度狭窄(NASCET≥70%相当)については、内膜剥離術(CEA)で5年以内の同側脳卒中が低減し、またCEA標準から高リスク症例については頚動脈ステント留置術(CAS)の非劣性を示す臨床試験もあり、治療選択肢となる。
#13.
アクセスルートとは? 脳血管内治療における、動脈穿刺部から病変に至るまでのカテーテルの通行路となる血管内腔のこと。その障害は、血管内治療を困難にすることがあり、穿刺部の変更やCEAのような外科手術の選択を要することがある。
例えばCASに関して、通常の大腿動脈穿刺ではなく、上腕動脈穿刺の選択が、大動脈プラークによるコレステロール塞栓症の予防に有用であったとする報告もある。
Oomura M, et al. Interan Med. 2014; 53:1017-1021
末梢動脈疾患 大動脈瘤
大動脈解離 大動脈プラーク
ステントグラフト 高度動脈硬化
(Bovine archや
type Ⅲ archなど)
#14.
頚動脈狭窄症の臨床研究
#15.
内科治療 動脈硬化リスク因子の管理と共に、高度無症候性病変や症候性病変では抗血小板療法、LDL-Chol <70 mg/dlを目標とした脂質の治療、降圧療法が推奨される。
以前は無症候性中等度狭窄の同側脳卒中の発症率は年間1-3%、TIAも含めると3-5% 程度とされていたが近年では内科治療の進歩に伴い、0.5-2%程まで低下していると報告される。
Abbott AL, et al. Stroke. 2009; 40:e573-e583
Abbott AL, et al. J Vasc Surg. 2020; 71:257-269 Gurbel PA, et al. Circulation 2019; 139:2170-2185 症候性病変の急性期には、抗血小板薬を複数用いた上で、
アルガトロバンなどの抗凝固薬も併用することもある。
#16.
頚動脈内膜剥離術Carotid endarterectomy; CEA 皮膚から筋肉まで層ごとに切開を加え頚動脈を露出し、狭窄近位の総頚動脈、遠位部の内頚動脈と外頚動脈を遮断してシャントチューブを併用の上、狭窄部のプラークを内膜ごと剥離して縫合する。病因となるプラークを完全摘出する治療が可能である。
NASCET試験において、120日以内にTIAか後遺症のない脳梗塞を来たした症候性高度内頚動脈狭窄(NASCET 70-99%)について、24ヶ月以内の同側脳卒中の発症はCEA群で内科治療単独群に比べ有意に少なかった(26% vs 9%, P<0.001) 。
NASCET Trial Collaborators, et al. N Engl J Med. 1991; 325:445-453 CEAの術中所見
#17.
頚動脈ステント留置術Carotid artery stenting; CAS 狭窄遠位部にフィルターやバルーンによる塞栓予防のプロテクションを行った上で、狭窄部にバルーンとステントによる拡張を行う。ステントは屈曲病変に適したOpen cell、不安定プラークに有用なClosed cell、両方の特徴を兼ね備えたDouble layerがあり、全身麻酔を要さず病変の特性に応じた治療が可能である。
CREST試験において、2502例の症候性及び無症候性の中等度から高度内頚動脈狭窄症を対象として、脳卒中、心筋梗塞、全死亡について、CASとCEAで4年間の推定イベント発症率に有意差はなかった(7.2% vs 6.8%, P=0.51)。術後30日以内の脳卒中はCASで多く(4.1% vs 2.3%, P=0.01)、心筋梗塞はCEAの方で多く(1.1% vs 2.3%, P=0.03)、それ以降のイベント発症率に有意な差は認めなかった。
Brott TG, et al. N Engl J Med. 2010; 363:11-23 Boston Scientificホームページより TERUMOホームページより
#18.
過灌流症候群 長く低灌流に晒されていた脳組織は、狭窄の拡張、切除後に増加する脳血流に耐えられず、痙攣や脳出血を来たすことがあり、過灌流症候群と呼ばれる。
約1%の頻度で起こり、特に脳血流低下の代償として、血管床の拡張による脳血流増加のstage 1のみならず、脳組織の酸素摂取量が増加するのstage 2相当の虚血が起きている症例では過灌流症候群のリスクが高い。
過灌流症候群の予防として降圧、鎮静が有用である他、先ずバルーンによる血管形成術のみ行い、その後にステント留置を追加して2段階で血流増加を試みるstaged angioplastyという手法も提唱される。
Yoshimura S, et al. Neurosurgery. 2009; 64:ons122-129
Hayakawa M, et al. J Neurosurg. 2019; 18:1-11 60代男性 右内頚動脈閉塞による
アテローム血栓性脳梗塞 術前は脳組織の重度の低灌流あり。 先ず頚部及び錐体部の内頚動脈の血管形成を
行い、待機的にCASをし過灌流症候群を予防。
#19.
Transcarotid artery revascularization; TCAR-頚動脈狭窄の新たな治療- 鎖骨上小切開から総頚動脈にシースを留置し、大腿静脈へと逆血させプラークのデブリスを回収した上で、ステント留置術を行う。CEAよりも低侵襲で、CASよりも塞栓症リスクが低減する。
2016年9月から2019年4月にアメリカとカナダでTCARか経大腿動脈のCASが施行された症候性及び無症候性の頚動脈狭窄について、それぞれ3286例で傾向スコアマッチングを行い、院内脳卒中・死亡(1.6% vs 3.1%, p<0.001)、脳卒中(1.3% vs 2.4%, p=0.001)、全死亡(0.4% vs 1.0%, p=0.008)といずれもTCAR群で有意に少なく、術中の放射線照射時間や造影剤使用も少なかった。
Schemerhorn ML, et al. JAMA. 2019; 322:2313-2322
本邦でもENROUTE経頚動脈ステントシステムが導入予定で、十分なCEA施行経験のある脳神経外科医と十分なCAS施行経験を有する血管内治療医が、プログラムを受講した上で協働し行う。 SILK ROAD MEDICALホームページより
#20.
Tailor madeの頚動脈治療 最良の内科治療
Best Medical Treatment 頚動脈
ステント留置
CAS 頚動脈
内膜剥離
CEA 低侵襲性 根治性 症候性
≥50% 無症候性
≥70% 内科治療
抵抗性 抗血小板薬 スタチン リスク因子管理 禁煙 TCAR ?
#21.
70代男性 右内頚動脈狭窄 経過 末梢動脈疾患や大動脈プラークなし 冠動脈も石灰化のみ プラーク不安定性や石灰化なし 過灌流現象は低リスク 抗血小板薬やスタチン導入、リスク管理を行って、
対側の脳梗塞発症3ヶ月後に無症候性の高度狭窄に対して、頚動脈ステント留置術を施行した。
#22.
Take Home Message
同じ狭窄率でも測定法の違いで、大きく意味は異なる!
全ての基本は内科治療! 進化するその成績は無視できない!
症例ごとに内科治療単独、頚動脈ステント(CAS)、内膜剥離(CEA)、ベストの治療を考える!
#23.
このスライドをつくったひと 東京医科大学病院 脳神経内科 助教
東京医科大学病院 脳神経外科 脳血管内治療班
日本内科学会 総合内科専門医
日本神経学会 神経内科専門医
日本脳卒中学会 脳卒中専門医
日本脳神経血管内治療学会 専門医
日本脳神経超音波学会 認定検査士・評議員
医学博士 より良い脳卒中診療の実践と普及を目指しています!
#24.
拙著紹介 頚動脈狭窄からTIA、血栓回収、脳出血やくも膜下出血など脳卒中診療の重要トピックを網羅!
各章には「超目標」としてポイントが明示され、研修医や指導医のキャラクターと楽しく学べる!
初期研修医、脳神経系の専攻医だけでなく、他診療科や医学生、コメディカル、指導医まで幅広い対象を想定!