テキスト全文
病棟での輸液の基本と目的
#1. 研修医/Nsに知ってほしい~病棟での輸液~ レクチャー動画
あります
#2. Lecture for junior residentsの目標 ・内科病棟管理の「基本」を症例ベースで学ぶ。
・全体を通しての目標
PGY1:
病棟急変などを状況を正確に解釈し、理解できるようになる
PGY2:
病棟急変などを自分でマネジメントできるようになる
輸液オーダー時の考慮事項
#4. では、質問です。 輸液をオーダーするときに
色々考えながらオーダーしてるよー。
って人ー?
#5. では、質問です。 3号液つないどけば
どうにかなるやろーって思って
オーダーしてる人ー?
#7. 目標 ・輸液の基本を理解しよう。
・適切に輸液を選択できるようになろう。
#8. メニュー ①輸液の基本
~細胞外液/細胞内液について~
②病棟での輸液の考え方
③浸透圧比について
#9. メニュー ①輸液の基本
~細胞外液/細胞内液について~
②病棟での輸液の考え方
③浸透圧比について
#10. 輸液ってたくさんありすぎる!! 日腎会誌 2008;50(2):100-109
細胞外液と細胞内液の理解
#11. 輸液の基本を理解するためには…
細胞外液(生食や乳酸リンゲル液)と細胞内液(5%ブドウ糖液) 他の輸液は
この2つの輸液の
組み合わせです! 自由水ともいう
#14. つまり! 1号液
3号液 1 : 1
1 : 3 K入り
#15. 輸液についてお話する前に… 体液の組成を覚えていますか?
#16. 輸液についてお話する前に… 体液の組成を覚えていますか?
#17. では、質問です。 ・細胞外液(生食や乳酸リンゲル液)は、輸液すると
どこに分布するでしょうか?
#18. では、質問です。 ・細胞外液(生食や乳酸リンゲル液)は、輸液すると
どこに分布するでしょうか? 細胞外液の補充に有用
#19. では、もう一つ質問です。 ・細胞内液(5%ブドウ糖液)は、輸液するとどこに分布する
でしょうか?
#20. では、もう一つ質問です。 ・細胞内液(5%ブドウ糖液)は、輸液するとどこに分布する
でしょうか? 細胞内液の補充に有用
脱水の種類と輸液の補正方法
#21. では、応用編です。 3号液 1000mlを投与すると、
どこにどういう風に分布しますか?
#22. 3号液は、細胞外液:細胞内液=1:3の組成でしたね。
つまり、ラクテック 250mlとブドウ糖 750mlですね。
#23. つまり、3号液を1000ml投与すると… 細胞内液 750ml(細胞内に500ml+細胞外に250ml) 細胞外液 250ml こういう風に
分布しますよ~
#24. 細胞外液/細胞内液って何で気にしなきゃ?
体液量を考慮した輸液を考えるときにとっても大事!
メジャーなものとして、脱水を例に挙げると…
#25. 脱水とは? 細胞外脱水(Hypovolemia) 細胞内脱水(Dehydration)
#26. 細胞外脱水(Hypovolemia) ・みなさんが『脱水』という言葉でよく表現するもの。
身体の中から塩水が喪失されている状態。
例) 熱中症、出血性ショック
#27. 細胞外脱水(Hypovolemia) ・みなさんが『脱水』という言葉でよく表現するもの。
身体の中から塩水が喪失されている状態。
例) 熱中症、出血性ショック
#28. 細胞外脱水(Hypovolemia) より理解を深める体液電解質異常と輸液 改訂3版 p35
#29. 細胞内脱水(Dehydration) ・塩分は減っていないが自由水だけが喪失されている状態
例) 飲水行動ができない高齢者
※大抵の場合はdehydrationの人はhypovolemiaを伴っている。
#30. 細胞内脱水(Dehydration) ・塩分は減っていないが自由水だけが喪失されている状態
例) 飲水行動ができない高齢者
※大抵の場合はdehydrationの人はhypovolemiaを伴っている。
脱水の所見と診断の難しさ
#31. 脱水を示唆する所見 JAMA. 1999 ; 281 : 1022. 細胞外脱水
#32. 脱水を示唆する所見 JAMA. 1999 ; 281 : 1022. 細胞内脱水
#33. 脱水を示唆する所見 JAMA. 1999 ; 281 : 1022. 両方
#34. 脱水を示唆する所見 JAMA. 1999 ; 281 : 1022. 脱水の身体所見に特異的なものはない!
Hypovolemiaとdehydrationを見分けるのはなかなか難しい!
#36. 救急外来でよくある場面… Lac上昇してる! 吐血/下血してる!
やばい! 血圧やばい! 急性腎障害ある!(腎前性っぽい)
#39. 救急外来でよくある場面… Lac上昇してる! 吐血/下血してる!
やばい! 血圧やばい! 急性腎障害ある!(腎前性っぽい) 血管内が足りてない!!!!
#40. つまり! 救急外来セッティングではほとんどの場合、
細胞外液を使う! ※アルブミンとHESが1stになることはほぼない
輸液の速度と使用する液体
#41. ただし、
浮腫性疾患(心不全、ネフローゼ、肝硬変、腎不全)が
明らかにある場合には、
細胞外液の低下があっても輸液は少なめに! 早めに昇圧薬の使用の検討を!
#42. 輸液の速度 救急外来では、細胞外液を
使えばいいってのは分かったけど、
じゃあ、実際どのくらいの
速度で点滴つなげばいいの?
#44. 輸液の速度 バイタルが安定する
まで1-2Lは全開で! 不足分を50~100ml/hrで Treatment of severe hypovolemia or hypovolemic shock in adults, up to date
#45. 0.9%生理食塩水? or 乳酸リンゲル液? ・重症細胞外脱水の患者において、
0.9%生理食塩水 or 乳酸リンゲル液の大量輸液をしたときに
死亡率や急性腎障害が起こる確率は0.9%生理食塩水の方が
わずかに高いと報告している文献もある。
・しかし!
メタ解析では明らかな有意差はなかった。 Treatment of severe hypovolemia or hypovolemic shock in adults, up to date
#46. 0.9%生理食塩水? or 乳酸リンゲル液? ・つまり、
基本的にはどっちでも良いが、リンゲル液が好まれる傾向あり
・ただ、生理食塩水を大量投与すると
高Cl性代謝性アシドーシスを起こす可能性があることに注意。 Treatment of severe hypovolemia or hypovolemic shock in adults, up to date
#47. メニュー ①輸液の基本
~細胞外液/細胞内液について~
②病棟での輸液の考え方
③浸透圧比について
#48. 病棟での輸液を考えるときの3step
Step1:1日に必要な維持液を考える
Step2:過去の不足分を考える
Step3:今後の喪失分を考える
#49. 病棟での輸液を考えるときの3step
Step1:1日に必要な維持液を考える
Step2:過去の不足分を考える
Step3:今後の喪失分を考える
#50. Step1:1日に必要な維持液を考える
①1日に必要な水分量を考える。
②1日に必要な電解質量(Na、K)を考える。 今回は基本だけなので
これ以外の電解質/栄養は
基本的に考えないです
過去の不足分の考慮と補正
#51. Step1:1日に必要な維持液を考える① 1日の水分のOUTの量は、
不感蒸泄:10mL/kg/日
(不感蒸泄 15mL/kg/日-代謝水 5mL/kg/日)
尿量維持:20mL/kg/日
(最低でも10mL/kg/日は必要) より理解を深める体液電解質異常と輸液 改訂3版
#52. Step1:1日に必要な維持液を考える① 1日の水分のOUTの量は、
不感蒸泄:10mL/kg/日
(不感蒸泄15mL/kg/日-代謝水5mL/kg/日)
尿量維持:20mL/kg/日
(最低でも10mL/kg/日は必要) つまり、
体重×20~30mL/日
の水分量が必要!
#53. Step1:1日に必要な維持液を考える② 目安として、
Na:食塩 6g(60-100mEq/日)
K :KCl 3g(40-60mEq/日)
#54. 病棟での輸液を考えるときの3step
Step1:1日に必要な維持液を考える
Step2:過去の不足分を考える
Step3:今後の喪失分を考える
#55. Step2:過去の不足分を考える
①輸液を組む時点までで、すでに不足している
細胞外液量/細胞内液量を考える。
ex.嘔吐や下痢、食事摂取不良など
②不足している電解質量(Kなど)を考える。
#56. 細胞外脱水の補正は? ・細胞外液で補正を行う。
・細胞外脱水を疑う所見:
血圧低下、頻脈、腎前性腎不全、尿量低下など
・不足している外液量を測定する目安はなく、
バイタルや尿量、腎機能をみながら外液の補正を行う。
#57. 細胞内脱水の補正は? ・5%ブドウ糖液で補正を行う。
・細胞内脱水を疑う所見:
口喝、腋窩乾燥、皮膚ツルゴール低下、高Na血症、体重減少
・不足している細胞内液の量の目安
細胞内液欠乏量(L)=(血清Na濃度-140)÷140×体重×0.6
・上記を3~5日間で補正する。 より理解を深める体液電解質異常と輸液 改訂3版
#58. Step2:過去の不足分を考える② ・低K血症など電解質不足を合併している場合には補正を行う。
#59. ここで、Kの投与の仕方について少し。 ・末梢から使用できるK製剤には色んな制限がある。
・必ず覚えておきましょう!
・ちなみに、K 1mEq上げるためには100~200mEq必要。
#60. 具体的には… 低K血症があるから、
できるだけたくさんKを
補充したいな~。
何をどれだけ入れれば
いいんだっけ…。
今後の喪失分の予測と補正
#61. ラクテックにKを混ぜるとしたら… KCL 20mEqを
1キット これを30分以上かけて投与。
1日に×6セットまで投与可。
#62. ラクテックにKを混ぜるとしたら… アスパラギン酸カリウム
10mEqを2A これを30分以上かけて投与。
1日に×6セットまで投与可。
#64. 3号液にKを混ぜるとしたら… 元々
K 10mEq/500ml
入ってるよ~
#65. 3号液にKを混ぜるとしたら… KCL 20mEqを
0.5キット これを30分以上かけて投与。
1日に×6セットまで投与可。
#66. 3号液にKを混ぜるとしたら… アスパラギン酸カリウム
10mEqを1A これを30分以上かけて投与。
1日に×6セットまで投与可。
#67. 意外と末梢点滴からKの補充できない… ・本気でKの補充をしたい場合は、
中心静脈ルートを取ったり、内服で追加補充したり、
Mgの補充を検討したりしましょう! 1包 4mEq 1錠 8mEq
#68. 病棟での輸液を考えるときの3step
Step1:1日に必要な維持液を考える
Step2:過去の不足分を考える
Step3:今後の喪失分を考える
#69. Step3:今後の喪失分を考える ・今後も発熱、嘔吐や下痢、多尿、ドレーンからの排液が続くか
を検討し、続く可能性がある場合には、
予測して補うか、追っかけで補うかを検討する。
・基本的には、喪失する体液と同等の成分の輸液(水分量、電解質量)
で補いたい。
・ただし、補正量が適切かは分からないため、
バイタルや、尿量、血液検査でフォローしながら
適切かを日々判断する必要がある。
#70. Step3:今後の喪失分を考える
①今後喪失し得る細胞外液量/細胞内液量を考える。
②今後喪失し得る電解質量(Kなど)を考える。
喪失する体液の
水の量
Na/Kなどの組成が大事
浸透圧比の計算と重要性
#71. Step3:今後の喪失分を考える① ・発熱:
体温1℃上昇で不感蒸散量(12~15mL/kg)が15%上昇
・下痢や多尿の病態、ドレーンからの排液が続く場合:
喪失量を予測してあらかじめ輸液負荷
or
喪失量を次の日に追っかけて補正する
#72. Step3:今後の喪失分を考える② ・嘔吐や下痢、ドレーンからの排液の場合、
電解質も一緒に喪失するため、
あらかじめ喪失分を予測して補正する必要がある。
NGチューブやイレウス管も
#73. 体液の電解質組成 単位はmEq/L より理解を深める体液電解質異常と輸液 改訂3版
#74. 病棟での輸液を考えるときの3step
Step1:1日に必要な維持液を考える
Step2:過去の不足分を考える
Step3:今後の喪失分を考える
#75. 病棟での輸液を考えるときの3step
Step1:1日に必要な維持液を考える
Step2:過去の不足分を考える
Step3:今後の喪失分を考える ただし!
#76. 病棟での輸液を考えるときの3step
Step1:1日に必要な維持液を考える
Step2:過去の不足分を考える
Step3:今後の喪失分を考える この考え方だと輸液が多めに…
実際は×0.8~1.0くらいの量を
投与することが多い。
#77. 病棟での輸液の組み方 3stepのまとめ Step1:1日に必要な維持液を考える
水分量→体重×20~30mL/日
Na→60~100 mEq/日
K →40~60 mEq/日
Step2:過去の不足分を考える
細胞外脱水:外液で補正
細胞内脱水:5%Gluで補正
電解質 :Na、Kなど
Step3:今後の喪失分を考える
発熱、下痢、嘔吐、ドレナージなどがあれば補正 やや多めになるので
×0.8~1.0くらいを
目安に調節!
#78. メニュー ①輸液の基本
~細胞外液/細胞内液について~
②病棟での輸液の考え方
③浸透圧比について
#79. 浸透圧比とは ・定義:
0.9%生理食塩水の浸透圧 285mOsmを『浸透圧比1』とする。
※血液の浸透圧≒0.9%生理食塩水の浸透圧
・末梢から投与できる輸液は浸透圧比3(約900mOsm)まで。
浸透圧比3以上だと、静脈炎のリスクが! 自分で輸液を作るときには浸透圧比も計算してみよう!
#80. 例えば、 ・3%生理食塩水の浸透圧比は?
0.9%食塩水(1) 400ml + 10%塩化ナトリウム(10) 120ml
=(400ml×1+120ml×10) / (400+120)
=3.07
→ぎりぎり末梢からの投与OK!
症例を通じた輸液の実践とまとめ
#83. 症例:80歳女性 【主訴】
発熱
【現病歴】
認知症がある施設入所中、ADLほぼ全介助の高齢女性。
来院2日前に38℃の発熱を認めた。
来院当日に発熱継続していたため前医を受診した。
尿検査で膿尿、細菌尿を認めたため尿路感染症と診断され、
入院加療目的に当院へ搬送された。
#84. 入院後経過 尿路感染症の診断でCTRX 2g+生食 100ml q24hrで加療を
開始した。
発熱によって意識レベルがあまり良くなかったため、
絶食輸液管理として入院とした。
入院後から翌日の朝までラクテック 80ml/hrを投与した。
#85. 入院翌日のデータ 【現症】
身長:150cm、体重:40kg
意識:E3V3M5(普段通り)
体温:38.0℃、血圧:121/76mmHg、脈拍数:120回/分、
SpO2:99%(RA)
尿量:15ml/hr(直近)
口腔内軽度乾燥、CRT>2sec
下痢や嘔吐はなし
#87. 今後の予定 ・これまでむせがあったようで、明日嚥下機能評価を行う予定。
それまでは絶食輸液管理で。
・抗菌薬は継続。
・ちなみに既往は何もないこととします。
#88. さあ!今日の輸液はどうしましょう? Let’s Discuss!
#89. 病棟での輸液を考えるときの3step
Step1:1日に必要な維持液を考える
Step2:過去の不足分を考える
Step3:今後の喪失分を考える
#90. 病棟での輸液を考えるときの3step
Step1:1日に必要な維持液を考える
Step2:過去の不足分を考える
Step3:今後の喪失分を考える
#91. Step1:1日に必要な維持液を考える ①水分量
体重×20~30mL/日→800~1200mL/日
②電解質
Na→60~100mEq/日
K →40~60mEq/日
#92. 病棟での輸液を考えるときの3step
Step1:1日に必要な維持液を考える
Step2:過去の不足分を考える
Step3:今後の喪失分を考える
#93. Step2:過去の不足分を考える ①水分量
頻脈傾向、CRT延長、腎前性腎不全、Lac上昇
→細胞外脱水がありそう
②電解質
低Kはない
#94. 病棟での輸液を考えるときの3step
Step1:1日に必要な維持液を考える
Step2:過去の不足分を考える
Step3:今後の喪失分を考える
#95. Step3:今後の喪失分を考える ①水分量
発熱が持続しているので不感蒸泄が増えているはず。
治療開始24時間くらいなので、解熱までもう少し時間が
かかりそう。
体温1℃上昇で不感蒸散量(12~15mL/kg)が15%上昇するので、
150~180mlが今後喪失され得ると予想される。
②電解質
不感蒸泄が亢進しているのみなので、電解質の喪失は考えない。
#96. 今回の症例をまとめると… Step1:1日に必要な維持液を考える
①800~1200ml/日
②Na→60~100mEq/日、K→40~60mEq/日
Step2:過去の不足分を考える
①細胞外脱水がありそう、②なし
Step3:今後の喪失分を考える
①150~180ml/日の喪失、②なし ①水分量の計算
②電解質の計算
#98. 主な輸液 維持液として3号液を使ってみよう。
#99. 維持液+喪失分 不足分 ×2日分くらいかなぁ
#100. 維持液+喪失分 不足分 水分量:1100ml
Na:50.4mEq
K:20mEq ×2日分くらいかなぁ
#101. 維持液+喪失分 不足分 水分量:1100ml
Na:50.4mEq
K:20mEq ×2日分くらいかなぁ
#102. 維持液+喪失分 不足分 ×2日分くらいかなぁ
#103. 維持液+喪失分 不足分 水分量:1100ml
Na:85.9mEq
K:40mEq ×2日分くらいかなぁ
#104. 維持液+喪失分 不足分 水分量:1100ml
Na:85.9mEq
K:40mEq ×2日分くらいかなぁ
#106. ちなみに浸透圧比は、 ソルデム3A(1) 500ml+10%NaCl(10) 20ml+アスパラK(6) 10ml
=(500×1+20×10+10×6)/(500+20+10)
=1.433 <3なのでOK!
#108. あれ???っていうか… 水分量も電解質量も
結構幅あったよね?
50mlとか
10mEqまで
細かく輸液の調整
しなきゃなの?
#109. すごい細かい調整は不要です! ただし、
高度腎不全、重症心不全、肝硬変、
重症病態などでで代償機構が働きにくい人は、
厳密に管理をするかを検討しましょう。
#110. しかし!!! 残念ながらこれで終わりでは
ありません。
#111. 明日確認したい所見は?(現症、血液検査など) ちょっとだけ考えてみてください。
#112. 確認する所見 ・バイタル
頻脈、血圧、尿量、体重
・身体所見
口腔内乾燥、浮腫
・血液検査(必要に応じて採血をしよう)
腎機能、電解質
#113. 輸液を考えるときに大切なのは! ・日々、所見をフォローすること。
・カルテの前で計算だけしていても患者さんは
助けられません。
#115. 症例:40歳男性 【主訴】
嘔吐
【現病歴】
腹部手術歴があるが、それ以外の既往がないADL自立した男性。
来院前日から嘔吐を繰り返し、飲食ができない状態が持続した。
そのため、来院当日に救急外来を受診した。
#116. 来院時のデータ 【現症】
身長:170cm、体重:60kg
意識:E4V5M6
体温:36.0℃、血圧:121/76mmHg、脈拍数:120回/分、
SpO2:100%(RA)
口腔内軽度乾燥あり、CRT>2sec
#118. 経過 ・癒着性腸閉塞の診断で胃管挿入を行った。
・保存的加療として絶飲食、輸液管理を行う方針となった。
・胃管からは勢いよく排液が出ている。
#119. さあ!今日の輸液はどうしましょう? 少し考えてみましょう。
#120. 病棟での輸液を考えるときの3step
Step1:1日に必要な維持液を考える
Step2:過去の不足分を考える
Step3:今後の喪失分を考える
#121. 病棟での輸液を考えるときの3step
Step1:1日に必要な維持液を考える
Step2:過去の不足分を考える
Step3:今後の喪失分を考える
#122. Step1:1日に必要な維持液を考える ①水分量
体重×20~30mL/日→1200~1800mL/日
②電解質
Na→60~100mEq/日
K →40~60mEq/日
#123. Step1:1日に必要な維持液を考える ①水分量(必要量)
体重×20~30mL/日→1500mL/日
②電解質(必要量)
Na→60~100mEq/日
K →40~60mEq/日 ×1 混注 3A 1500mLだと水分量1500mLだが
Na 52.5mEq, K 30mEqとちょっと足りない
10%NaCl 20mLとアスパラK 1A追加すると
合計Na 86mEq, K 40mEqとなりいい感じ
#124. 病棟での輸液を考えるときの3step
Step1:1日に必要な維持液を考える
Step2:過去の不足分を考える
Step3:今後の喪失分を考える
#125. Step2:過去の不足分を考える ①水分量
頻脈傾向、CRT延長、腎前性腎不全
→嘔吐による細胞外脱水がありそう
②電解質
K 3.3とやや低め
#126. Step2:過去の不足分を考える ①水分量
頻脈傾向、CRT延長、腎前性腎不全
→嘔吐による細胞外脱水がありそう
②電解質
K 3.3とやや低め 細胞外液+K 20mEq ×2日分くらいかなぁ
#127. 病棟での輸液を考えるときの3step
Step1:1日に必要な維持液を考える
Step2:過去の不足分を考える
Step3:今後の喪失分を考える
#128. Step3:今後の喪失分を考える ①水分量
入院後すぐなので、胃管排液が持続しそう。
②電解質
胃液の中にはNa、Kも含まれているため、電解質が喪失される。
#129. 体液の電解質組成 単位はmEq/L より理解を深める体液電解質異常と輸液 改訂3版
#130. 体液の電解質組成 単位はmEq/L より理解を深める体液電解質異常と輸液 改訂3版
#131. 体液の電解質組成 単位はmEq/L より理解を深める体液電解質異常と輸液 改訂3版 1号液
とか
3号液に
近い
#132. Step3今後の喪失 追っかけ(例) 尿量や排液を8時間毎にカウントし、前の8時間に出た排液量を
次の8時間で追っかける。
指示の例:排液量が
0-500ml/8hrのとき→負荷なし
501ml-1000ml/8hrのとき
→ソルデム3A 500mlを次の8時間かけて側管から負荷
1001-1500ml/8hrのとき
→ソルデム3A 1000mlを次の8時間かけて側管から負荷 4時間毎でやる時もあり ちょっとoutbalance管理の例
#133. 輸液を3stepで組んだら、 必ず最後に
Kと浸透圧比をチェック!
#134. 今回の症例では 維持液 不足分 喪失分 8時間毎におっかけ ×2日分くらいかなぁ ×1 混注 ×1 混注
#135. Take home message ・これからは考えながら輸液をオーダーしてみよう!
・経過をフォローすることを忘れずに。 症例問題はあくまで1例です
提示したものが絶対正解とかではないですからねー
よく考えて日々輸液を組んでみてください
#136. みんほす!勉強会 Twitter
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