テキスト全文
#2. 目次 1.気管切開の適応と目的
2.気管切開の種類と手順
3.気管切開後の管理
#3. 目次 1.気管切開の適応と目的
2.気管切開の種類と手順
3.気管切開後の管理
#4. 気管切開 tracheotomy ●気管を切開し
カニューレを挿入する
気道確保方法のひとつ ●気管切開はICUで
広く行われている手技である
Laryngoscope2008;118:1597–60
#5. 気管切開の適応・目的 ① 長期人工呼吸器管理
② 気道分泌物が多い
③ 上気道閉塞 ●経口・経鼻気管挿管で
既に人工呼吸管理されている
場合が多い
#6. ICUでの気管切開の適応 ●多発外傷(顔面骨の手術予定あり)
●上気道クリアランス低下・嚥下障害
●長期の人工呼吸管理
●蘇生後脳症(意識障害遷延)
etc…
※長期生存の可能性が高い場合のみ…
#7. 気管切開の利点・欠点 ●口腔内を清潔に保てる 感染のリスク↓
●呼吸仕事量の減少
●鎮静・鎮痛薬が減量できる
●病棟管理が容易になる ●手術時の合併症(出血・感染・気胸)
●術後後期の合併症
(無名動脈損傷・気管ー腕頭動脈瘻)
#8. 気管切開のタイミングは…? 早期? or 後期?
#9. 気管切開を考慮するタイミング
日本集中治療学会専門医テキスト引用 ●人工呼吸器からの離脱が早い
●ICU在室日数が短い
●早く鎮静薬を中止できる
早期に有効なリハビリの介入が可能
※十分なエビデンスがないという意見も 初めから長期人工呼吸が必要と判断された
時には初期に施行される!
…しかし、見極めは難しい事も多い ●2-3週間以上の長期人工呼吸管理の後
●長期の気道確保が必要と考えられる時
#10. 早期の気管切開が推奨される理由
早期(≦3日) vs 慢性期
●人工呼吸器からの離脱が早い
●ICU在室日数が短い
●早く鎮静薬を中止できる
早期に有効なリハビリの介入が可能
※十分なエビデンスがないという意見も ●生命・神経学的予後に差はなし?
●肺炎リスクの減少のエビデンスは不十分 引用:J Neurosurg Anesthesiol.
2014 Crit Care.
#11. 早期の気管切開で鎮静薬は減量
早期 vs 慢性期(15日以上) RCT研究結果
引用:Trouillet JL,et al.Ann Intern Med. 2011 Mar 15;154(6):373-83. ミダゾラム プロポフォール
#12. PADISガイドライン2018
成人ICU患者に対する鎮痛・鎮静・せん妄管理ガイドライン改訂版 ●早期より浅鎮静
●早期のリハビリテーション
●早期に離床
早期気管切開は近年のICU管理のトレンドにあっていそう
#13. 早期の気管切開で長期死亡率も低下
早期(4日以内) vs 慢性期(10日間以降) RCT研究結果
引用:Trouillet Hosokawa K, et al Crit Care. 2015 Dec 4;19:424 長期死亡率の低下(OR 0.83)
※本当は気管切開が不要であった患者さんが含まれている可能性も
#14. 気管切開の適応と目的まとめ ●気管切開の適応には、上気道クリアランス
低下や嚥下障害、長期人工呼吸管理がある
●気管切開を行うことで呼吸仕事量の減少や
鎮静薬の減量が期待できる
●早期気管切開が望ましいという意見もあるが
それぞれの患者さんに合わせて適応を考慮
#15. 目次 1.気管切開の適応と目的
2.気管切開の種類と手順
3.気管切開後の管理
#16. 気管切開の種類 外科的気管切開 経皮的気管切開 経皮的気管切開
#19. 外科的vs経皮的 外科的(ST) 経皮的気管切開 経皮的(PT) ●異常血管を視認しながらできるため大出血の合併症は
STの方が少ない傾向。STは緊急時にも施行しやすい
●STとPTは合併症や死亡率では同等
気切孔の感染症に関してはSTの方が多い
Journal of Critical Care 38 (2017) 304–318 ●最新のST vs PTのmeta-analysis
①気切孔の感染・炎症:PT<ST ②術後出血:PT<ST
③処置時間、難易度:PT<ST
Critical care (2014)18:544
#20. 頭頚部外科25(3):297-301, 2015
気管切開 成人-小児 平林秀樹 気管切開の頭頚部解剖 ●輪状甲状穿刺と気管切開部は異なる
#21. 頭頚部外科25(3):297-301, 2015
気管切開 成人-小児 平林秀樹 気管切開の頭頚部血管解剖 ●上甲状腺動脈の輪状甲状枝に注意
特に緊急時!
#22. 頭頚部外科25(3):297-301, 2015
気管切開 成人-小児 平林秀樹 外科的気管切開の体位
甲状腺体位 ●十分に伸展しないと
皮膚から気管までが深くなってしまう
#23. 外科的(ST) 経皮的気管切開 経皮的(PT) ●気道トラブルに備え,かつては酸素濃度を
100%とすることが推奨されていた。
●電気メス使用時の気道熱傷の報告が相次いでおり、
使用時には酸素濃度をできるかぎり低くすべき
であると勧告されている。
・大上研二,杉本良介,酒井昭博ほか.
気管切開中の電気メスによる引火,気管熱傷症例.日気管食道会報 2011;62:551-5.
・日本救急医学会ホームページ.電気メスを用いた気管切開について.
Accessed Sep・’4,2012. 外科的気管切開 術中の適切な酸素投与は?
#24. 頭頚部外科25(3):297-301, 2015
気管切開 成人-小児 平林秀樹 外科的気管切開の皮切
横切開と縦切開 ●横切開の方が美容的に◎
●正中を常に意識しながら鈍的に剥離
#25. 頭頚部外科25(3):297-301, 2015
気管切開 成人-小児 平林秀樹 外科的気管切開
甲状腺の処理 ●筋層を剥離すると甲状腺が出てくる
●上下によけられることも多いが、
難しい場合は切離する
#26. 頭頚部外科25(3):297-301, 2015
気管切開 成人-小児 平林秀樹 外科的気管切開
逆U字フラップ作成 ●気管前面に逆U字フラップを作成
その後に糸にかける
⇒気切チューブを入れる穴
#27. 執刀してみて感じた
外科的気管切開の注意点・ポイント ●何度も正中を触れながら剥離をすすめる
●血管の処理には慣れておく…
●気管に糸をかけると挿管チューブのカフに
穴が開いてリークが起こることを想定
●逆U字フラップはメスだけでなく形成剪刀
も使って形成(気管壁は意外ともろい!)
●固定するときはYガーゼを入れる隙間を意
識して
#29. 外科的(ST) 経皮的気管切開 経皮的(PT) 参考:COVID-19気管切開の対応ガイド
(2020 年 4月3日版) 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学 COVID陽性確定例 ローリスク地域: 現時点での(当該都道府県での)COVID-19 患者が 0-9 名
ハイリスク地域: 現時点での(当該都道府県での)COVID-19 患者が 10 名以上
#30. 外科的(ST) 経皮的気管切開 経皮的(PT) COVID陽性不明・未確定例 ローリスク地域: 現時点での(当該都道府県での)COVID-19 患者が 0-9 名
ハイリスク地域: 現時点での(当該都道府県での)COVID-19 患者が 10 名以上 参考:COVID-19気管切開の対応ガイド
(2020年4月3日版) 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学
#31. 目次 1.気管切開の適応と目的
2.気管切開の種類と手順
3.気管切開後の管理
#32. 外科的(ST) 経皮的気管切開 経皮的(PT) ●痩孔が完成する術後7~10日の間に行う。
●交換時の皮下軟部組織などへのチューブ迷入を避ける
●その後のチューブ交換は2週間に1回の頻度で行う。
・気管切開患者の管理 Intensivist 2012;4:765-768 気管切開後の管理 最初の気管切開チューブ交換は?
#33. 外科的(ST) 経皮的気管切開 経皮的(PT) ●低酸素状態
●気管切開孔周囲の損傷
●口腔内容物の誤嚥
●患者間の交叉感染
・気管切開患者の管理 Intensivist 2012;4:765-768 気管切開後の管理 気管切開チューブ交換時に留意すべき点
#34. 外科的(ST) 経皮的気管切開 経皮的(PT) ●酸素化で場合分けして冷静に対応する!
・SpO2:OK →慌てず同じサイズのチューブ挿入
・SpO2:低下→瘻孔から酸素投与、改善したら再挿入
・内科レジデントの鉄則 第3版 気管切開後の管理 気管切開チューブの自己抜去は超緊急!! 外科的(ST) 経皮的(PT) ●酸素投与しても改善しない場合…
→瘻孔を指でふさいでバック換気・気管挿管考慮
#35. 外科的(ST) 経皮的気管切開 経皮的(PT) ●チューブの内径は呼吸仕事量の観点から
初期はなるべく太いものをチョイス
※7.0mmと8.0mmを比較すると、前者が後者と同じ換気量を得るには呼吸仕事量が約70%増えることになる(Hagen-Poiseuilleの法則)
●呼吸器離脱後に意識状態がよい患者では、
カフ付き気管切開チューブをサイズダウン
気切孔の閉鎖をはかりつつスピーチチューブに交換
・気管切開患者の管理 Intensivist 2012;4:765-768 気管切開後の管理 気管切開チューブのサイズ選択は?
#36. 外科的気管切開 外科的(ST) 経皮的気管切開 経皮的(PT) 明確なエビデンスはないものの…
●5-10例
the American Thoracic Society
the European Respiratory Society
●20例
the American College of Chest Physicians
Journal of Critical Care 38 (2017) 304–318 単独で安全に、気管切開を施行するには
最低何症例必要か?