テキスト全文
パーキンソン病と相性の悪い薬の概要
#1. TIPS
パーキンソン病と
相性の悪い薬は? Daisuke Yamamoto
Department of Neurology, Shonan Kamakura General Hospital みんなの脳神経内科実践編
―神経診療が楽しくなる、明日から使えるACTION TIPS―
#2. みんなの脳神経内科実践編
―神経診療が楽しくなる、明日から使えるACTION TIPS― 私たちの行動を変える・支える「言葉」があります。
知識はAIが教えてくれます。
TIPSの価値は、知識でなく、「生きた言葉」を伝えることです。
行動を変えるACTION TIPSを伝えていきます! Daisuke Yamamoto
Department of Neurology, Shonan Kamakura General Hospital
併用薬の注意点と問題点
#3. TIPS
パーキンソン病では、
必ず「相性の悪い薬剤」を確認する
:PPI・鉄剤/ SNRI・トラマドール
#4. 症例 70歳男性。1年で進行する歩行障害と無動を認め、パーキンソン病と診断した。レボドパを少量から開始する方針とした。患者は慢性腰痛に対して前医の整形外科からトラマドールを、逆流性食道炎に対して内科からランソプラゾール(PPI)を処方されていた。
さて、この患者に抗パーキンソン薬(レボドパやMAO-B阻害薬)を導入するにあたり、既存の併用薬のどこに注意し、どのように処方を調整すべきだろうか? みんなの脳神経内科 実践編
神経診療が楽しくなる、明日から使えるACTION TIPS!!
#5. さて、パーキンソン病の治療開始しようとする段階には、
まずは併用薬に注意しましょう。 パーキンソン病治療で注意すべき併用薬とその問題点 みんなの脳神経内科 実践編
神経診療が楽しくなる、明日から使えるACTION TIPS!!
PPIと鉄剤の影響と対策
#6. PPI まず、PPIがレボドパ吸収に影響を及ぼす点についてです。レボドパは主に小腸上部で吸収されますが、PPIにより胃酸分泌が抑制されると胃内pHが上昇し、レボドパの溶解性や胃からの排出動態に影響が生じます。その結果、小腸での吸収開始が遅延し、血中濃度の低下や吸収遅延を来す可能性があります。
臨床的には、レボドパ効果の立ち上がりが遅れ、「wearing-off」様症状や日内変動の増悪として現れることがあります。 みんなの脳神経内科 実践編
神経診療が楽しくなる、明日から使えるACTION TIPS!! Miyaue N, et al. J Neurol Sci. 2024;465:123202.
#7. 鉄剤 次に鉄剤についてです。鉄剤もレボドパの吸収を低下させることが知られています。その主な機序は、鉄剤による消化管内でのキレート形成によります。レボドパはカテコール構造を有するため鉄イオンと結合しやすく、難吸収性の複合体を形成します。これにより血中濃度低下や薬効減弱、delayed-onを生じることがあります。特に同時または近接した時間での服用で影響が強くなるため、2時間以上の内服間隔をあけることが推奨されます。 みんなの脳神経内科 実践編
神経診療が楽しくなる、明日から使えるACTION TIPS!! Campbell NRC, et al. Br J Clin Pharmacol. 1990;30:599–605.
MAO-B阻害薬とトラマドールのリスク
#8. MAOB-I 次に、MAO-B阻害薬(セレギリン、ラサギリン、サフィナミド)との併用薬剤に関する問題です。パーキンソン病では抑うつ症状や不安を合併しやすく、SNRI(デュロキセチンなど)が使用されることがあります。また、慢性疼痛に対してSNRIが用いられる場合もあります。しかし、MAO-B阻害薬とSNRIの併用によりセロトニン活性が過剰となり、まれながらセロトニン症候群を発症するリスクがあります。そのため、薬剤ごとの添付文書上もMAO-B阻害薬とSNRIについて、「禁忌」あるいは「併用注意」とされている組み合わせが多く、十分な注意が必要です。 みんなの脳神経内科 実践編
神経診療が楽しくなる、明日から使えるACTION TIPS!! Nemet M, et al. Cureus. 2023;15:e38295.Panisset M, et al. Pharmacotherapy. 2014;34:1250–1258..
#9. トラマドール さらに、トラマドールとの併用にも注意が必要です。トラマドールはオピオイド作用に加え、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有しています。このため、MAO-B阻害薬との併用によりセロトニン活性が過剰となり、セロトニン症候群を引き起こすリスクがあります。特に高齢のパーキンソン病患者では、慢性疼痛(腰痛や変形性関節症など)に対してトラマドールが処方されることが多く、注意が必要です。 みんなの脳神経内科 実践編
神経診療が楽しくなる、明日から使えるACTION TIPS!! Baldo BA. Arch Toxicol. 2018;92:2457–2473.
パーキンソン病患者の行動ルール
#10. このTIPSを元に、以下を行動ルールにしてください。
パーキンソン病患者さんでは、併用薬剤に気を付けるべきポイントがあり、
知識としてしっかり覚えておく必要があります。 POINT
#11. パーキンソン病の治療薬を開始する前に、 常用薬を確認する:PPI・鉄剤・SNRI・トラマドール。
これらの薬剤が中止できないかどうかを
処方医と議論することも必要。
ACTION
#12. TIPS
パーキンソン病では、
必ず「相性の悪い薬剤」を確認する
:PPI・鉄剤/ SNRI・トラマドール