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良性しびれから、しびれ診療をはじめよう。

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246

2020/4/20
2022/9/18 更新

スライドの見どころ

しびれ診療の思考方法が整理できます。解説動画あり。

本スライドの対象者

医学生/研修医/専攻医
山本大介

湘南鎌倉総合病院


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良性しびれから、しびれ診療をはじめよう。

  1. Daisuke Yamamoto Department of Neurology, Shonan Kmakura General Hospital 良性しびれから、 しびれ診療をはじめよう。

  2. Introduction しびれ診療は鑑別疾患が広範であり、背景疾患にはSevereな疾患も含まれており、難しさがあります。また、原因が決め難い末梢神経障害が多いことも、事実であります。 一方、日々の診療で出会うしびれ感は、良性のneuropathyであることも 多いです。 まずは、良性のしびれ疾患(benign neuropathy)の特徴を知り、そのマネジメントが得意になること、また検討を要する重要なneuropathyを、  良性との比較から、区別できるようになることがこのスライドの目的です。

  3. 症状分布の基礎知識 まずは、3つのパターンを理解しましょう。 ① Mononeuropathy     (単神経障害)             ② Mononeuropathy multiplex (多発単神経障害) ③ Polyneuropathy      (多発神経障害)   障害パターンをまずは分類してください。 以下のように言い換えてもいいでしょう。 ① = 一つの神経だけ悪い。 ② = ①が多発している。 ③ = 末梢神経が全体的に悪い。 パターン②

  4. 症状分布の基礎知識 3つのパターン毎に、想定される疾患が異なります。 ① Mononeuropathy     (単神経障害)             原則、圧迫性Neuropathyとして理解してもいいです。 具体的には、手根管症候群など。 ② Mononeuropathy multiplex (多発単神経障害) 原則、血管炎性Neuropathyとして理解してもいいです。 具体的には、ANCA関連血管炎など。 ③ Polyneuropathy      (多発神経障害) 四肢+対称性。全身性の障害を想起して下さい。 具体的には、薬剤性、免疫介在性、代謝性など。        特に、②多発単神経障害パターンで、血管炎を想起することが重要です。

  5. 症状分布の基礎知識 ③ Polyneuropathy     (多発神経障害) まずは、“polyneuropathyパターン”→「良性のしびれの可能性」を理解しましょう。 いわゆる、手袋靴下型です。 Length dependentな障害である、と表現されます。 神経長に依存した障害分布で、四肢遠位優位に症状がでます。 また、下肢>上肢の障害分布になります。 パターン③

  6. 良性しびれの特徴 まずは良性Neuropathyの特徴から 学びましょう。

  7. ・左右対称性である ・Length dependentである(四肢遠位に強調される) ・感覚障害のみ、運動障害はあっても軽微である ・高齢発症である(50歳以上) ・緩徐な進行/もしくは進行がない ・電気生理評価は、「軸索障害型」である。 これらの臨床像に合致するなら、良性しびれらしい、と言えます。 良性しびれの 特徴

  8. CIAP(chronic idiopathic axonal polyneuropathy)とは? ここでCIAPの疾患概念について記載します。 概ね先述した良性のしびれの特徴として報告されています。 CIAPの臨床像 ・発症年齢は50-60歳かそれ以上である。 ・下肢から始まる左右対称性の四肢感覚障害を認める。 ・運動障害は目立たず、あったとしても肢指運動の軽度の脱力のみ。 ・受診3ヵ月以上前からの感覚症状(感覚鈍麻、しびれ感、疼痛)が存在する。 ・末梢神経障害を来たす他疾患が、検査によって否定されている。 ・末梢神経伝導検査の所見は、軸索障害型である。 CIAPを理解すると、しびれ診療をレベルアップできます。

  9. 良性しびれとしては、 糖尿病性ニューロパチー、CIAP(特発性)、薬剤性、アルコール性を想定して下さい。 この場合、神経障害はsmall fiber neuropathyによる症候と考えられます。 感覚障害メインで、運動障害は来たしにくいタイプのneuropathyです。    障害分布を評価し検査を行い、概ねこの臨床像に当てはまるなら、良性しびれの可能性が高い、として考えられます。small fiber neuropathyで頻度の多い、糖尿病既往、 薬剤性の可能性、アルコール性の可能性の病歴を聴取して下さい。 良性しびれの 中身

  10. 良性しびれ らしくない特徴 良性neuropathyの特徴に外れるもの、 として理解可能です。

  11. ・左右非対称性である ・Length dependentでない(四肢近位障害も目立つ) ・運動障害が目立つ ・高齢発症でない ・経過が急性である、進行性増悪が目立つ ・電気生理評価が、「脱髄型」である。   良性しびれの特徴に反するものを考慮すればよいです。これらの場合にはより深い評価が必要です。 良性しびれ らしくない 特徴

  12. 良性らしくない特徴から考えられる疾患は? 左右非対称性である             血管炎性、感染性など。 Length dependentでない          GBS、CIDP、神経叢炎、リンパ腫関連、                                 サルコイドーシスなど。 運動障害が目立つ      GBS、CIDP、多巣性運動ニューロパチーなど。 高齢発症でない      CMTなど遺伝性ニューロパチーなど。 経過が急性である、進行性増悪が目立つ    GBS、傍腫瘍性神経症候群、     免疫介在性ニューロパチーなど。 電気生理評価が「脱髄型」である。      GBS、CIDP、多巣性運動ニューロパチー、      パラプロテイン血症関連ニューロパチーなど。

  13. 良性らしくない特徴から考えられる疾患は? 左右非対称性である             血管炎性、感染性など。 Length dependentでない          GBS、CIDP、神経叢炎、リンパ腫関連、                                 サルコイドーシスなど。 運動障害が目立つ      GBS、CIDP、多巣性運動ニューロパチーなど。 高齢発症でない      CMTなど遺伝性ニューロパチーなど。 経過が急性である、進行性増悪が目立つ    GBS、傍腫瘍性神経症候群、     免疫介在性ニューロパチーなど。 電気生理評価が「脱髄型」である。      GBS、CIDP、多巣性運動ニューロパチー、      パラプロテイン血症関連ニューロパチーなど。 免疫介在性疾患や、血液疾患関連、 悪性腫瘍関連などが鑑別に上がりうる。 より注意深く原因検索がなされるべき疾患を想定する臨床像といえる。

  14. 検査について 末梢神経伝導検査、採血検査。 入り口でひとまず行う評価。

  15. 良性Neuropathy評価のための検査 ①末梢神経伝導検査  結果の解釈を要する検査にはなります。  検査のハードルはやや高いかもしれません。  オーダーのポリシーとしては、良性らしくない臨床像なら、行われるべき。  として理解して下さい。  電気生理検査の結果が、   軸索性障害パターンなら、良性に肯定的。   脱髄性障害パターンなら、良性以外を検討。  neuropathyの評価においては、この検査は重要です。

  16. 良性Neuropathy評価のための検査 ②採血  Neuropathyの採血では、  スクリーニングとしてこれらを検査を検討して下さい。 ビタミンB1、B12、血糖、HbA1C、抗核抗体、血沈、免疫電気泳動、甲状腺ホルモン

  17. ここまでのまとめ まずはしびれ診療の入り口として、良性しびれの特徴がないか?を確認します。良性しびれの臨床像に合わない場合には、背景疾患の詳細な評価が必要ですので、専門診療科への積極的なコンサルテーションを検討して下さい。検査は、採血検査はルーチンで行ってください。末梢神経伝導検査は臨床像が良性らしくない なら、より積極的に行ってください。

  18. 臨床像が良性しびれらしい(特にCIAPとして説明可能と思われる場合、糖尿病性末梢神経障害として説明可能な場合、その他薬剤性やアルコール性として説明可能な場合)と判断した場合には、対症療法を行うかどうか?が患者さんとの相談事項になります。 ここから先は、対症療法の介入の提案、その投薬に ついて勉強していきます。

  19. 対症療法について 治療的介入の提案ができると、診療の幅が広がります。 ぜひ、投薬について検討できるようになりましょう。

  20. 対症療法の介入と、その提案について 神経障害性疼痛 Neuropathic pain に準じて、その方法を用いて治療介入を検討します。患者さんが訴える痛みや異常感覚に対して、投薬介入ができるようになると診療の幅が広がります。是非、投薬について習熟しましょう。  

  21. 対症療法の介入と、その提案について   治療に入る前に 投薬を始める前に、消極的ですが、治療目標のハードルを下げることをまずやったほうがいいと思っています。一般的に100点は目指すことは難しく、効果は部分的です。少しでもよくなればいいと思って治療をうけてしてほしい、という提案は肝要だと思います。時に、非常に奏功して感謝されることもあれば、わずかな改善のみで満足度が低い、という結果になることもあります。投薬介入して効果がある人、効果が乏しい人、それぞれありうることも最初に説明するのがいいと思います。投薬効果によって、最終的な治療継続、中断を検討することになります。

  22. プレガバリンの使い方のコツ 50mg 1Xから始める→100mg 2X →150mg 2X のように少量から増量を行っていく。 有効性を確認しながら、増量を相談する。有効性があるなら、少量ずつ増量を検討。 めまい感や眠気が強く出る人がいます。少量での投与を検討するか、投与自体を中止するかを検討します。少量から開始するほうが、忍容性が高くなると思われます。 「薬が合わないならやめてもらっていいですよ。」と事前に説明しておきましょう。 プレガバリン(リリカ)を 使えるようになろう。

  23. リリカについての説明の仕方 このように説明してみて下さい。 「痛みの刺激は、末梢神経→脊髄→脳の順に伝わり、脳で知覚しています。末梢神経が脊髄に入るところで神経は別の神経に乗換えをしています。 リリカは、この乗換えの部分で、神経刺激の伝達をブロックし、脳で感じる痛みを軽減できると考えられています。神経に傷がついた場合の痛みには、ロキソニンなど一般的な痛みどめは効果が乏しいことになっており、神経痛用の投薬を試みることになります。」 ここをブロック! しびれ感や痛み しびれ感は 脳で感じている。

  24. サインバルタの使い方のコツ 20mg1X から始める。忍容性があれば、しばらく使用してみる。 40mg1X への増量も検討してみる。 眠気や悪心などの出現はありうる。合わない人は合わない薬、として説明しておくのがよい。自分に合わないと思った場合にはすぐにやめて下さい、と伝えましょう。 有効性が高く、QOL上げられるケースもあるので、感覚障害で悩んでいる方には、 使用を検討してみて下さい。 デュロキセチン(サインバルタ:SNRI)を 使えるようになろう。

  25. サインバルタについて説明の仕方 このように説明してみて下さい。 「しびれ感や痛みは、脳で感じているわけですが、脳には、痛みを感じにくくするような機能があります。脳幹抑制系下行路という痛みを感じにくくする疼痛伝達経路があり、この作用を増強する薬がSNRIです。SNRIは脳内のノルアドレナリンという物質を増やす薬剤で、ノルアドレナリンを増やすと、この経路が増強されます。SNRIは抗うつ薬に分類される薬剤ですが、今回はうつで処方しているわけではありません。」 痛み・しびれ感を感じにくくする機能を強化している! しびれ感や痛み しびれ感は 脳で感じている。

  26. ケーススタディ 評価、説明と、対症療法の介入について 具体例を示してみます。

  27. 患者背景をまずは確認してみます。 既往歴:糖尿病あり 内服治療でコントロール良好。その他背景疾患なし。 遺伝歴:遺伝性Neuropathyを疑う家族歴なし。 薬剤投与歴:薬剤性Neuropathyを疑う処方歴なし。 アルコール多飲歴:なし 中毒の可能性:なし 症例:65歳女性  足関節以遠のしびれ感  1年前からの症状で、軽度の悪化あり受診に至った。

  28. ・左右対称性である ・Length dependentである(四肢遠位に強調される) ・感覚障害のみ、運動障害はあっても軽微である ・高齢発症である(50歳以上) ・緩徐な進行/もしくは進行がない ・電気生理評価は、「軸索障害型」である。 良性しびれの 特徴の確認 障害パターンはPolyneuropathyとして評価できそうです。運動障害は目立たず、緩除進行する感覚障害のみ。 採血、末梢神経伝導検査を行うことにしました。

  29. 良性Neuropathy評価のための検査 ①末梢神経伝導検査  伝導速度は運動・感覚神経とも正常。  上下肢施行神経でnormal study。 ②採血  ビタミンB1、B12、血糖、HbA1C、抗核抗体、血沈、免疫電気泳動、甲状腺ホルモン  →HbA1C 6.8%。M蛋白血症なし。 既知の糖尿病以外には、異常所見は指摘できなかった。

  30. 患者説明 症状経過はゆっくりで、しびれ感のみの症状です。診察では運動症状は目立たず症状評価では、悪い末梢神経の病気ではなさそうです。採血・末梢神経伝導検査では目立った検査異常は指摘されませんでした。 これからの症状経過も加味して検討されるべきではありますが、現時点では良性の末梢神経障害として評価してよさそうです。 糖尿病は原因として考えられます。しかし関係ないかもしれません。このように、原因が同定できない、ただし良性経過の末梢神経障害はご本人だけでなく、比較的多くの方に認められます。

  31. 患者説明 根本的な治療はできなくて申し訳ないのですが、少なくとも悪いしびれではなさそうです。そして、「対症療法」ができることとして提案できます。対症療法はとても満足のいく結果にはならない可能性もありますが、今の症状に悩んでいるなら、試してみましょうか。

  32. 処方・臨床経過 外来①:リリカ50mg 1X 夕食後   →20%くらいの症状改善あり 外来②:リリカ100mg 2X 朝夕食後   →30%くらいの症状改善あり 外来③:リリカ150mg 2X 朝夕食後   →あまり変化なし 外来④:+サインバルタ20mg 1X 夕食後 →満足度高く、50%程度の改善あり。 半年程度処方継続。症状の経時的な改善があるとのことで、 投薬は漸減中止した。 その後、外来フォローアップはいったん終了とすることにした。

  33. 「まずはありふれた、良性のneuropathyからはじめよう。」がこのスライドのテーマです。 良性をまずは理解することで、そこから外れた、詳細な評価が必要なものが理解できます。  しびれ診療、neuropathy診療の入り口として、どのように考えていくのか、このスライドが  そのきっかけになれば幸いです。 また、神経障害性疼痛について介入できるようになることも、患者さんにできることが    増えますので、是非、投薬スキルを上げることも試みて下さい。 TAKEHOME MESSAGE!

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