テキスト全文
#1.
市中肺炎診療の考え方- ウィズコロナ時代 - 神戸市立医療センター中央市民病院
感染症科 黒田浩一 2020.12.12日本感染症教育研究会(IDATEN)セミナー #2.
COI開示発表者:黒田浩一 発表に関連し開示すべきCOI関係
にある企業などはありません #3.
この講義の内容 市中肺炎の診断
症状・身体所見、胸部X線写真・胸部CTを撮影する適応
市中肺炎の重症度判定と入院適応
原因微生物の推定
- SARS-CoV-2検査の適応
- 喀痰検査(グラム染色・喀痰培養)と血液培養の適応
市中肺炎の初期治療と標的治療
適切なフォローアップ #4.
症例:68歳男性 主訴:発熱、湿性咳嗽(2020年12月12日に来院)
現病歴:生来健康。来院1週間前から湿性咳嗽が出現し、徐々に悪化傾向であった。来院3日前から38.5℃の発熱があり、食欲低下傾向。飲水はできる。咽頭痛、関節痛、頭痛はない。
身体所見:general ぐったり、38.8℃、血圧 120/66 mmHg、脈拍 122 /分 整、呼吸数 22 /分、SpO2 92%、胸部聴診で右下肺野に吸気時のcracklesを聴取 #7.
発熱・咳で来院 鑑別疾患...
急性気管支炎?
市中肺炎(細菌性肺炎)?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)?
インフルエンザ? #11.
アジスロマイシン vsビタミンC 互角 Lancet. 2002;359:1648-54 #12.
アモキシシリン vsプラセボ 互角 Lancet Infect Dis. 2013;13:123-9 #20.
標準予防策の徹底(コロナに限らず) 適切なタイミングの手指衛生
適切な個人防護具の使用
- 吸痰時のサージカルマスク
- 体液に触れる場合の手袋
- 衣服が汚染する可能性がある場合のエプロン/ガウン 20 #21.
感染経路別予防策(対コロナ) 接触予防策
飛沫予防策
空気予防策(エアロゾル発生手技の時に必要) 新型コロナウイルス感染症(COIVD-19) 診療の手引き・第2版
⼀般社団法人 日本環境感染学会. 医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第3版. 21 #22.
COVID-19の可能性のある患者の感染管理 個人防護具
1. 眼・鼻・口を防護するもの
サージカルマスク or N95マスク
ゴーグル or フェイスシールド
2. 長袖ガウン
3. キャップ(必須ではない)
4. 手袋 新型コロナウイルス感染症(COIVD-19) 診療の手引き・第2版
⼀般社団法人 日本環境感染学会. 医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第3版. 22 #23.
N95マスクを使用する状況 エアロゾル発生手技を行う場合
気道吸引 NIV
喀痰誘発 気管支鏡
胸骨圧迫 用手換気
気管挿管・抜管
咳が強い患者の診察(当院) 新型コロナウイルス感染症(COIVD-19) 診療の手引き・第2版
⼀般社団法人 日本環境感染学会. 医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第3版. 23 #25.
COVID-19疑い患者の外来診察前 発熱、呼吸器症状、味覚障害・嗅覚障害がある場合は、事前に連絡を入れてもらう(ホームページに記載、入り口に掲示)
すべての外来患者に、事前問診表(過去2週間の発熱、気道症状、流行地域への移動の有無など)と体温測定を行う
すべての外来患者にマスクを着用してもらう
疑いのある患者の導線を決めておく 25 #26.
COVID-19疑い患者対応のポイント 身体診察(特に聴診)は最小限にする
- 除外できれば、これまで通りの身体診察を行う
鼻咽頭ぬぐい液を採取する場合
- 正面に立たない(患者の右側または左側に立つ)
- 患者にはマスクしてもらう(鼻だけ出す)
気管挿管/吸痰をする可能性がある場合は、N95マスクを使用 26 #27.
COVID-19疑い患者の退室後 十分換気する(換気良好な場所で診察することが望ましい)
環境消毒を行う:患者周辺の高頻度接触環境表面と患者に直接接触した機材(血圧計や体温計)を、アルコール(濃度60-70%以上)または次亜塩素酸ナトリウム溶液(濃度0.1-0.5%)で拭く 日本環境感染学会. 医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第3版 #28.
市中肺炎の診断 (1)病歴と身体所見
(2)画像検査
- 胸部X線写真
- 胸部単純CT #30.
市中肺炎を示唆する病歴 肺炎の可能性を上げる病歴
咳、痰、呼吸困難
発熱、悪寒
認知症の既往(3.4, 0.94)
免疫抑制状態(2.2, 0.85)
肺炎の可能性を下げる病歴
咽頭痛
鼻汁(0.78, 2.4)
喘息の既往(0.10, 3.8)
JAMA 1997;278:1440-1445 ※(陽性尤度比、陰性尤度比) #31.
市中肺炎を示唆する身体所見 肺炎の可能性を上げる身体所見
発熱(4.4, 0.78)、頻呼吸(3.4, 0.78)
頻脈、呼吸音減弱(2.3, 0.78)
crackles(2.7, 0.87)
ヤギ音(E to A change)(8.6, 0.96)
cracklesの有無だけでは肺炎の除外/確定できない JAMA 1997;278:1440-1445 Ann Intern Med. 2003;138:109-118 ※(陽性尤度比、陰性尤度比) #32.
病歴・身体所見の個々の項目
単一で市中肺炎を除外・確定する
ことはできない 「組み合わせる」 #33.
たくさんの市中肺炎予測ツール 煩雑で記憶が困難 Diehr rule Heckerling rule Gennis rule Singal rule #34.
市中肺炎らしさ 以下の組み合わせから、肺炎らしさを検討する
バイタルサインの異常
胸部聴診の異常
臨床医の印象 Ann Intern Med 1990;113(9):664-70 J Chronic Dis 1984;37(3):215-25
Ann Emerg Med 1989;18(1):13-20 J Emerg Med 1989;7(3):263-8
Ann Emerg Med 1991;20(11):1215-9 #35.
バイタルサインの異常が多ければ多いほど肺炎の可能性は上がる #36.
バイタルサイン異常の数と細菌性肺炎 Am J Emerg Med. 2007;25(6):631-6より作成 体温>38℃、脈拍>100 /分、呼吸数>20 /分、SpO2<95% #39.
「確定診断」は困難 急性気道症状で来院した患者において
(画像)検査前確率は
50-70%程度までしか上がらない Ann Intern Med 1990;113(9):664-70
Am J Emerg Med 2007;25(6):631-6 しかし... #42.
症例:68歳男性 発熱、咽頭痛なし、頻脈、頻呼吸、crackles聴取は、肺炎の可能性を上げる。肺炎らしい印象もある。
胸部X線写真の適応と判断した
#43.
2. 画像検査
- 胸部単純X線写真
- 胸部単純CT #44.
すべてを満たさない場合胸部単純X線写真は不要な可能性が高い Ann Intern Med 2016;164:425–34を参考に作成 #45.
胸部単純X線写真 多くの研究でgold standardとなっている
ただし、胸部X線写真の感度が不十分
検査前確率が高ければ、浸潤影がなくても肺炎の可能性は残る
さらに...浸潤影があっても肺炎でないこともある(特異度も十分ではない)
Ann Intern Med 2003;138:109-118 #46.
特に立位がとれない場合 仰臥位での胸部単純X線写真(AP像)
肺炎診断における
- 感度65%
- 特異度93%
→肺炎の除外には使用できない Am J Med 2010;123:88 e1-5 #47.
胸部単純X線写真のPitfall もともと異常がある(心不全・間質性肺炎)
→以前の写真と比較読影
心臓・骨(鎖骨/肋骨)・横隔膜・縦隔と重なる
→左右差を評価(肺門部・肋骨・鎖骨)
→側面像を評価(心陰影・横隔膜と重なる肺野病変)
浸潤影がはっきりしないことがある
脱水、発症から24時間以内、ニューモシスチス肺炎
好中球減少が著明な場合 N Engl J Med 1995;333:1618-1624 #48.
胸部単純CT 胸部CTは
胸部単純X線写真と比較して
肺炎診断における
感度・特異度が高い Intern Med. 2016;55:437-41 Am J Respir Crit Care Med. 2015;192:974-82
Clin Infect Dis. 1998;27:358-63 Am J Emerg Med. 2013;31:401-5 #49.
胸部CTの欠点 コスト
被爆
頻回のf/uに向いていない
合併症の減少、死亡率の低下、入院期間の短縮などの臨床的にインパクトのある効果に結びつくかどうかは評価されていない #50.
呼吸器感染症におけるCTの適応 市中肺炎の「存在」診断は、「原則」胸部X線写真
胸部CTは、主に質的診断を目的に行う
CXRで細菌性肺炎としては非典型的な所見
スリガラス影、結節影、空洞、びまん性陰影など
臨床的に強く肺炎が疑われるが、CXRで異常が指摘できない(存在診断)
血痰がある場合(鑑別と出血源の特定のため)
抗菌薬に対する反応が乏しい
重篤な合併症(肺化膿症、膿胸)が疑われる
#51.
肺結核に注意!! 空気予防策が必要
治療も違う 本当にふつうの細菌性肺炎なのか?
入院前に考えよう #52.
肺結核を疑う状況 咳が2-3週間以上持続し、発熱・血痰・寝汗・体重減少がある場合
結核のリスクが高い患者の2-3週間以上続く咳
HIV感染者の原因のはっきりしない咳と発熱
結核高リスク患者の、7日以内に改善しない市中肺炎
結核のリスクが高い患者が、偶然肺結核らしい胸部レントゲン異常が見つかった場合(症状は無関係) Am J Respir Crit Care Med 2005;172:1169-1227 #53.
肺結核を疑うkeyword 症状:咳が2-3週間以上、体重減少、寝汗、血痰
結核のリスクが高い患者
HIV感染、DM、慢性腎不全、ステロイド
免疫抑制薬、悪性腫瘍、珪肺、最近の結核曝露
7日以内に改善しない市中肺炎
肺結核らしい胸部レントゲン異常
上葉 or S6(上下葉区)の陰影(±空洞・線維化) Am J Respir Crit Care Med 2005;172:1169-1227 #54.
結核を疑った場合 空気予防策を行う
陰圧個室
医療従事者はN95マスク、患者さんはサージカルマスク
喀痰の抗酸菌塗抹・培養検査
3回喀痰を採取、1回はTB-PCRも行う
8-24時間あけて採取する
3回中1回は早朝喀痰を採取する 亀田感染症ガイドライン「結核を疑う時とその対応」
MMWR Recomm Rep. 2005;54:1-141 Clin Infect Dis. 2017;64:e1-e33 #55.
空気感染隔離の解除 基本は、3連痰陰性確認したら解除
喀痰抗酸菌塗抹が3回陰性(3連痰が陰性)の場合、肺結核の可能性は否定できない(肺結核診断の感度が約70%のため)が、肺結核であったとしても感染性は十分低いと判断できる(空洞性病変がある場合は症例ごとに検討する) MMWR Recomm Rep. 2005;54:1-141. #56.
2020-2021COVID-19に注意 発症「早期」に
インフルエンザ
ウイルス性気管支炎
市中(細菌性)肺炎
問診・身体所見のみで鑑別することは難しい #57.
新型コロナウイルス感染症 COVID-19 診療の手引き 第3版 #58.
COVID-19患者の症状 軽症・中等症81%、重症14%、最重症5% 1, 5)
#59.
BMJ. 2020 Oct 23;371:m3862. doi: 10.1136/bmj.m3862. #60.
COVID-19の診断 症状:発熱、咽頭痛、咳、呼吸困難、嗅覚障害、味覚障害、など
曝露歴:家族内、職場、clusterが発生した場所、など
行動歴:clusterが発生しやすい場所(ナイトクラブ、カラオケ、ライブハウス、スポーツジム、大規模イベント)
画像検査:胸部レントゲン、胸部単純CT
PCR検査(鼻咽頭ぬぐい液・唾液)
抗原検査(鼻咽頭ぬぐい液・唾液) #61.
どんな時にCOVID-19を疑う? 症状(嗅覚・味覚障害 ± 発熱 or 気道症状)
症状(発熱 or 気道症状)+曝露歴
症状(発熱 or 気道症状) +高リスクの行動歴
症状(発熱 or 気道症状) +流行期
肺炎(主にスリガラス影)
#63.
重症度判定のツール もともと予後予測のためのツール
入院適応の判断に参考にする
3つ紹介するが、どれもコンセプトは同じ
肺炎診療において注目すべき項目の組み合わせ #64.
市中肺炎の重症度判定 PSI(米国)
CURB-65(英国)
A-DROP(日本) 詳細は、原著をご確認ください
New Engl J Med 1997;336:243-50, Thorax 2003;58:377–382
Respirology 2008;13:731–735 #65.
※ JAMA 2016;315:801-10 #66.
PSIの項目:20項目 年齢 性別 Nursing home入所中
悪性腫瘍 心不全 脳血管疾患
腎疾患 肝疾患 意識障害 呼吸数
心拍数 血圧 体温 pH BUN
Na 血糖 Hct PaO2 胸水 #67.
基本はバイタル 項目はどれもほぼ同じ 意識障害 血圧 脱水 呼吸 年齢 #68.
各ツールの精度の違い ほぼ同等
PSIは20項目で煩雑
CURB-65よりやや精度が高い可能性
A-DROPとCURB-65はほぼ同等 Respirology 2008;13:731–735 Am J Med 2005;118:384-392, QJM 2014;107:595-6 #69.
CURB-65のスコア別の死亡率と推奨される治療場所 Thorax 2003;58:377-82 #72.
入院治療のほうが確実・安全なら入院がよい #75.
重症度判定ツールの有用性 外来で治療できる患者の候補を抽出するのに有用であり、不要な入院を減らすことができる
Clin Infect Dis. 2007;44 Suppl 2:S27-72 Ann Intern Med. 2005;143:881-94 #76.
入院治療のデメリット せん妄(特に高齢者や認知症患者の場合)
認知機能の低下
廃用症候群による日常生活動作(ADL)の低下
耐性菌による院内感染症のリスク
深部静脈血栓症のリスク
コスト #78.
一部の「低リスク群」で外来治療が不適切なことがある #79.
「年齢」の影響が大きい PSIは
- 高齢者が重症に分類されやすい
- 若年者は重症に分類されにくい
「年齢」ポイントが大きい
- 男性 :年齢
- 女性 :年齢-10
- 血圧低下(90未満) :20点
- 頻呼吸(30以上) :20点 #80.
例1:PSI 105点→class IV→重症?? 75歳男性。前立腺癌でホルモン療法施行でcontrol良好。5日前からの咳と2日前からの38℃の発熱で来院。食事と水分はしっかりとれている。比較的元気、意識清明、体温38℃、血圧130/80 mmHg、脈拍 105 /分、呼吸数 18 /分、SpO2 96%(室内気)。胸部単純X線写真で、右下肺野にわずかに浸潤影を認めた。
#81.
例2:PSI 55点→class II→軽症?? 45歳男性。既往歴なし。5日前に発熱と湿性咳嗽が出現し、徐々に悪化したため来院。見た目はややsick、意識清明、血圧100/50 mmHg、脈拍 130 /分、呼吸数 26 /分、SpO2 94%(室内気)。胸部単純X線写真で、左下肺野の大葉性肺炎像を認めた。
#82.
一時点のバイタルサインや検査値異常を使用 重症度判定ツールの各項目の異常が複数あるが、それぞれわずかにcut-off値に達しない場合は、重症度を過小評価してしまう可能性がある
数時間後に状態が悪化して基準を満たすようになることもある
一時点の評価では不十分な可能性がある #83.
基礎疾患やその病態の悪化を考慮していない CURB-65とA-DROP
基礎疾患の項目がない
PSI
- 慢性呼吸器疾患(COPD、喘息)
- 免疫抑制薬使用
- 脳血管疾患以外の神経筋疾患(ALSなど)
などが含まれていない #84.
肺炎の合併症の考慮が不十分 肺炎随伴性胸水
膿胸
肺化膿症 #85.
「重症度」以外の入院を考慮すべき状況 =服薬アドヒアランスが期待できない状況
内服・経口摂取困難(頻回嘔吐、嚥下障害)
社会的な問題が大きい
(ホームレス、高齢者の独居、介護人なし)
認知症、薬物中毒、精神疾患 #86.
治療する場所:入院 or 外来 Ann Intern Med. 2003;138:109-118を参考に作成 安全に在宅で治療できるかどうか検討
慢性呼吸不全(在宅酸素療法中)
精神疾患、社会的な問題が大きい(ホームレス)
内服・経口摂取困難
その上で重症度判定を行う
さらに、バイタルの推移、基礎疾患、肺炎合併症を加味→最終決定 #87.
各ツールの限界を認識していればどれでもよい 結局どのツールを使用する? #88.
症例:68歳男性 血液検査:WBC 15000 /μL, Hb 12.0 mg/dL, Hct 36%, Plt 27万 /μL, AST 30 IU/L, ALT 34 IU/L, ALP 250 IU/L, T. bil 0.8 mg/dL, BUN 26 mg/dL, Cr 1.1 mg/dL
胸部レントゲン:右下肺野に浸潤影あり
A-DROP 1点、CURB65 1点のためスコア上では外来治療可能だが、独居かつ家が病院から2時間離れたところであったことと、本人の希望もあり、短期入院の方針とした #89.
3:原因微生物の推定 1. 患者背景など
2. SARS-CoV-2検査の適応
3. 喀痰検査(グラム染色・喀痰培養)と血液培養の適応
#90.
初期治療を決める要素 疫学
細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別
患者背景
重症度
尿中抗原
喀痰のグラム染色 #92.
Am J Respir Crit Care Med 2013;188:985-995 Intern Med 3013;52:317-324 J Infect Chemother. 2013;19:719-26 最多 数% 数% 数% ①リスクがある時②喀痰グラム染色で見える時に考慮 #93.
細菌性 vs 非定型 臨床的に区別できるのか? #94.
非定型肺炎の鑑別基準 60歳未満
基礎疾患がないまたは軽微
頑固な咳
胸部理学所見が乏しい
痰がないか喀痰グラム染色陰性
WBC<10000 /μL
4項目以上で非定型肺炎(Mycoplasma+Chlamydia)
感度77.0%(除外診断には不向き)、特異度93.0% 日本呼吸器学会「成人市中肺炎診療ガイドライン」2007
Respirology 2007;12(1):104-10 #95.
鑑別基準の欠点 クラミジア肺炎
- 感度が63%と低い
-マイコプラズマ肺炎では83-86%
60歳以上の高齢者では、感度が39%
重症化したマイコプラズマ肺炎では× Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2011;30:439-46 Respirology. 2012;17:1073-9 J Med Microbiol. 2007;56:1625-9 #96.
「非定型肺炎」一括りでよいのか? どの非定型肺炎も臨床像が異なる #97.
Keyword Mycoplasma
Chlamydia
オウム病
レジオネラ 若年者 上気道症状 強い乾性咳嗽 LAMP法 高齢者 上気道症状 確定診断困難 鳥への暴露 高熱 強い頭痛 咳軽度 消化器症状 温泉 高熱 消化器症状 意識障害 血液検査異常 #99.
患者背景 アルコール依存:肺炎球菌、K. pneumoniae, 口腔内常在菌、Acinetobacter spp
COPD/喫煙:H. influenzae、肺炎球菌、緑膿菌
誤嚥:腸内細菌科、口腔内嫌気性菌
トリへの曝露:C. psittaci
インフルエンザ流行地域:インフルエンザ肺炎、肺炎球菌、S. aureus
学校でのマイコプラズマ肺炎の流行:Mycoplasma pneumoniae
気管支拡張症などの肺の構造異常:緑膿菌、黄色ブドウ球菌
温泉・土壌への曝露:レジオネラ #100.
インフルエンザ後の肺炎 肺炎球菌
黄色ブドウ球菌
A群溶連菌
インフルエンザ桿菌
その他の市中肺炎の原因菌 100 MMWR 2011;60(1):1-25 JAMA 2013;309:275-282
Intern Med J 2012;42:755-760 #101.
COVID-19と他の感染症の合併 細菌感染症(主に気道):2.2-7%(ICUに限定:11-15%)1-3,10-12)
血液培養陽性率(院内発症も含む):1.6-1.8% 4,10)
ウイルス感染症:1.6-20.7% 1,2,5,6,10)
非定型肺炎: 0.15% 6)
院内感染:4.3-14.3% 3,11,13)、真菌感染症もありえる 7-9)
:ICUで人工呼吸器管理中の患者では侵襲性肺アスペルギルス症に注意 報告によって、対象とする感染症(気道感染症のみ or すべての感染症)、時期(季節)、気道検体の提出率、重症患者の占める割合が異なるため、報告される細菌感染症合併率に違いが生じている #102. 引用文献
1) Clin Infect Dis. 2020 Jul 1;ciaa902. doi: 10.1093/cid/ciaa902.
2) J Infect. 2020 Aug;81(2):266-275.
3) Clin Microbiol Infect. 2020 Jul 22;S1198-743X(20)30423-7.
4) J Clin Microbiol. 2020;58(8):e00875-20.
5) JAMA. 2020 May 26;323(20):2085-2086.
6) JAMA. 2020 May 26;323(20):2052-2059.
7) Clin Infect Dis. 2020 May 2;ciaa530. doi: 10.1093/cid/ciaa530.
8) Clin Infect Dis. 2020 Aug 29;ciaa1298. doi: 10.1093/cid/ciaa1298.
9) Clin Infect Dis. 2020 Sep 5;ciaa1342. doi: 10.1093/cid/ciaa1342.
10) Clin Infect Dis. 2020 Aug 21;ciaa1239. doi:10.1093/cid/ciaa1239.
11) Clin Microbiol Infect. 2020 Jul 31;S1198-743X(20)30450-X.
12) Open Forum Infectious Diseases, ofaa484, https://doi.org/10.1093/ofid/ofaa484
13) Clin Microbiol Infect. 2020. https://doi.org/10.1016/j.cmi.2020.10.021
#103. COVID-19と細菌感染症 入院が必要なCOVID-19患者は、インフルエンザ入院患者のように、高率に細菌感染症を合併するわけではない(一般病棟 5%未満、ICUでは11-15%)
注意点:どの報告も診断時の気道検体の培養提出率が低いため、市中発症の細菌感染症合併が過小評価されている可能性がある
原因となる細菌は、市中感染・院内感染ともに、それぞれ一般的な細菌であり、SARS-CoV-2患者に感染しやすい細菌は今のところ指摘されていない(市中感染:肺炎球菌、S. aureus、H. influenzae、院内感染:緑膿菌、腸内細菌科細菌、S. aureus、CNS)
Clin Microbiol Infect. 2020 Sep 23;S1198-743X(20)30577-2. Clin Microbiol Infect. 2020 Jul 31;S1198-743X(20)30450-X.
Open Forum Infectious Diseases, ofaa484, https://doi.org/10.1093/ofid/ofaa484 #105.
重症肺炎 肺炎球菌とレジオネラを考慮
インフルエンザシーズン:インフルエンザ肺炎
壊死性肺炎:黄色ブドウ球菌肺炎
細胞性免疫不全:ニューモシスチス肺炎 Clin Infect Dis 2007; 44:S27–72 #108.
以前の米国のガイドラインで尿中抗原検査が推奨されている臨床状況(2007) 1 #109.
最新の市中肺炎ガイドラインでは 肺炎球菌尿中抗原検査の適応
- 重症市中肺炎
レジオネラ尿中抗原検査の適応
- Legionella肺炎のoutbreakや最近の旅行歴などの疫学的因子が存在する場合
- 重症市中肺炎の場合
Am J Respir Crit Care Med. 2019 Oct 1;200(7):e45-e67. #111.
肺炎球菌性肺炎 感度70-80%
特異度90%以上 Clin Infect Dis 2003;36:286–92 Chest 2001;119:243-9 #112.
肺炎球菌菌血症 感度82%
特異度97% J Clin Microbiol 2003;41(7):2810-3 #114.
陰性の場合 感度が不十分→除外に使用できない
肺炎球菌をあえてカバーしない、という状況は基本的に存在しない
肺炎球菌ではない菌による肺炎が強く疑われても、通常、市中肺炎に対して使用される抗菌薬は肺炎球菌をカバーする(一般的に、セフタジジム、シプロフロキサシン、アズトレオナムが選択されることはない)
→役に立たない??? #115.
陽性の場合 必ずしも今回の感染を示しているわけではない
肺炎球菌性肺炎発症1か月後の時点で、70%の患者で尿中抗原が陽性となる Eur Respir J. 2003;21:209-14 #116.
有用な検査であるための条件 結果が
その後のmanagementに影響する! #117.
治療薬の選択に影響する? 「喀痰培養で有意な菌が検出できなかった場合、肺炎球菌尿中抗原陽性という結果で、肺炎球菌性肺炎と診断して、治療薬をペニシリンGに変更できるか?」 #118.
De-escalationは難しい 市中肺炎は複数菌感染のことも多く、その複数菌感染の多くの症例では、肺炎球菌が関与しているので、尿中抗原陽性の場合に、肺炎球菌単独感染症と断言できない Intern Med. 2013;52:317-24 Thorax. 2011;66:340-6 #119.
肺炎球菌尿中抗原の有用性はかなり限定的 #121.
Legionella pneumophila 血清群1 感度80-95%
特異度95-100% Infect Dis Clin N Am 2010;24:229-248
Lancet. 2016;387:376-85 Chest. 2009;136:1576-85 #122.
問題点:感度が低い 感度
数週間から数か月以上陽性のまま
日本ではLp血清1群は全体の約80%
→80%×90%(感度)=72% Infect Dis Clin N Am 2010;24:229-248
Lancet. 2016;387:376-85 Chest. 2009;136:1576-85 #123.
検査陰性によって可能性を「除外」することはできない 曝露歴
喀痰培養(BCYEα寒天培地)
血液検査異常
最近ではLAMP法 日本臨床微生物学会雑誌 2019;29(4):21-24
感染症学雑誌 2018;92(5):701-704 #126.
市中肺炎の経験的治療 重症であってもルーチンの緑膿菌カバーは不要 #127.
患者背景とグラム染色 この2つを必ず検討! 「緑膿菌感染症のリスク」 #128.
市中発症緑膿菌性肺炎のリスク因子 既存の慢性肺疾患
(COPD、気管支拡張症、気管切開後)
30日以内の入院
1年以内の緑膿菌感染症の既往or保菌 Eur Respir J 2018;52(2). pii:1701190. Arch Intern Med 2002;162:1849-58 #129.
N Engl J Med 371:1619-28, 2014, Clin Infect Dis 2007;44:S27-72
Eur Respir J 2018;52(2). pii:1701190. Arch Intern Med 2002;162:1849-58
Am J Respir Crit Care Med. 2019 Oct 1;200(7):e45-e67. #130.
市中肺炎とS. aureus 頻度は数%程度で稀 #131.
経験的治療で抗MRSA薬を考慮すべき状況 喀痰グラム染色でclusterを形成するブドウ球菌が多数みえる場合
気道検体からのMRSA検出歴(目安は1年以内)
インフルエンザ後の肺炎
壊死性肺炎
Am J Respir Crit Care Med. 2019 Oct 1;200(7):e45-e67.
亀田流 市中肺炎診療レクチャー 感染症医と呼吸器内科医の視点から #133.
どんな時にCOVID-19を疑う? 症状(嗅覚・味覚障害 ± 発熱 or 気道症状)
症状(発熱 or 気道症状)+曝露歴
症状(発熱 or 気道症状) +高リスクの行動歴
症状(発熱 or 気道症状) +流行期
肺炎(主にスリガラス影)
#134. SARS-CoV-2検査の適応 検査閾値は低く設定する(異論はあると思います...)
- 感染者をみつけて接触者調査と隔離を早期に行う(感染の拡がりの抑制)
- 早期治療の観点からは発熱数日以内に診断する必要性は低い
COVID-19流行地域において、市中肺炎を疑う病歴(発熱、気道症状など)で来院した患者では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)検査を全例で行う
「流行」の定義で確立したものはないが、日本感染症学会は、その医療機関がある医療圏または都道府県で14日以内にCOVID-19発生例がある場合は、SARS-CoV-2検査を行うことを考慮する、としている 一般社団法人 日本感染症学会. 今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて, 2020. http://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=41 [最終アクセス 2020.10.25] #135.
発症2-9日目のみ 厚生労働省
COVID-19病原体検査の指針 #137.
「良質な喀痰」のグラム染色の診断精度 肺炎球菌またはインフルエンザ桿菌では
感度約60-70%
特異度90%以上 Med Sci Monit. 2008;14:CR171-6 Clin Infect Dis. 2004;39:165-9
Clin Infect Dis. 2000;31:869-74 BMC Infectious Diseases 2014;14:534 #138.
喀痰グラム染色の限界 1. 良質な検体が採取できる可能性が低い
2. 検体採取前の抗菌薬投与によって感度が著しく低下する
3. 染色者または評価者の技術レベルによって左右される
#139.
COVID-19流行期の注意点 喀痰検査を行う場合、十分な感染対策が必要(飛沫予防策、接触予防策、換気のできる個室での採取)
グラム染色は、感染伝播のリスクがあるため、生物学的安全キャビネットの「外」(例えば、救急外来に設置されたグラム染色スペース)で、喀痰グラム染色を行ってはいけない #140.
米国の最新のガイドラインでは 喀痰検査(グラム染色と培養)の適応
①重症市中肺炎の場合(人工呼吸器 or shock)
②MRSAまたは緑膿菌を経験的治療の対象とする場合
③MRSAまたは緑膿菌による感染症の既往
④過去90日間に入院・点滴抗菌薬投与を受けた場合
- 外来管理の患者では行わないことを推奨する
- 入院患者全員に一律に行うことについては言及なし Am J Respir Crit Care Med. 2019;200(7):e45-e67. #141.
喀痰検査の適応(個人の意見) 入院が必要な市中肺炎
フルオロキノロンを使用する場合 #142.
グラム染色で推定できる細菌 肺炎球菌
インフルエンザ桿菌
Moraxella catarrhalis
腸内細菌科細菌(K. pneumoniaeなど)
ブドウ糖非発酵菌(主に緑膿菌)
黄色ブドウ球菌
抗酸菌、Nocardia spp. #143.
菌を見る前に... 喀痰の質を確認する #144.
Miller & Jonesの分類Gecklerの分類 #145.
Miller & Jonesの分類(喀痰の肉眼的評価) #146.
Gecklerの分類(100倍での1視野あたり) J Clin Microbiol 1977;6:396-399 ※G6:気管支鏡検体、好中球減少状態では評価に値すると判断 #148.
卵型またはランセット型と表現される楕円形の菌体が横長に2つ連なっている双球菌のパターンが典型的、莢膜のため、菌周囲が抜けて(不染の透明体)見える 鈴木啓之先生より頂きました 肺炎球菌 #150.
小桿菌、短桿菌
小さいのが特徴 インフルエンザ桿菌 #151.
早野聡先生から頂きました そら豆状のグラム陰性双球菌 Moraxella catarrhalis #152.
Moraxella catarrhalis #153.
西原悠二先生から頂きました 太いグラム陰性桿菌
莢膜が観察されることがある Klebsiella pneumoniae #154.
154 口腔内常在菌も観察される Klebsiella pneumoniae #155.
腸内細菌科に比べ細長くみえることが多い
ムコイド産生する株がある 緑膿菌 #157.
clusterを形成する黄色ブドウ球菌(背景にインフルエンザ桿菌もみえる) 黄色ブドウ球菌 #159.
159 誤嚥性肺炎の患者の喀痰。グラム染色で少数のclusterを形成するブドウ球菌が検出され、培養でS. aureusが検出されたが、カバーしない治療で治癒した。 #160.
160 ESBL産生E. coli肺炎をMEPMで治療中に、一過性酸素化低下(痰づまり)
熱源精査のための喀痰検査 培養MRSAのみ
呼吸状態・画像悪化なし
治療対象としなかった #162.
西原悠二先生から頂きました Gram-ghost #163.
西原悠二先生から頂きました Ziehl-Neelsen染色 #166.
細長い分岐したフィラメント状のグラム陽性桿菌。ビーズ状に不均一に染まる。 #169.
市中肺炎における血液培養陽性率 Eur Respir J. 2015;45:1353-63. Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2005;24:241-9.
Respir Med. 2001;95:78-82. Chest. 1995;108:932-6.
Clin Infect Dis. 2009;49:409-16. Emerg Med J. 2003;20:521-3. #170.
市中肺炎における血液培養の適応 2007 Clin Infect Dis. 2007;44 Suppl 2:S27-72 #171.
市中肺炎における血液培養の適応 2019 ①重症市中肺炎の場合
②MRSAまたは緑膿菌を経験的治療の対象とする場合
③MRSAまたは緑膿菌による感染症の既往
④過去90日間に入院・点滴抗菌薬投与を受けた場合
一般病棟に入院する市中肺炎では...
routineの採取は行わないことが推奨されている Am J Respir Crit Care Med. 2019;200(7):e45-e67. #172.
その他の推奨 欧州のガイドライン
- 入院患者全例
日本のガイドライン
- 重症肺炎の場合 成人肺炎診療ガイドライン2017 Clin Microbiol Infect. 2011;17 Suppl 6:E1-59 #173.
ガイドラインの問題点 実際の臨床現場では、市中肺炎と診断が確定していない発熱患者は多い
発熱患者で、CTで軽度の肺炎像があったとしても、必ずしも市中肺炎のみで患者の状態が説明可能とは限らないため、肺炎の他に菌血症をきたす疾患が鑑別に挙がる場合(特に高齢者の発熱の場合)は、血液培養を採取する必要がある #176.
抗菌薬治療 経験的治療
疫学と重症度(治療場所)から抗菌薬を決定
pathogen directed antimicrobial therapy
喀痰のグラム染色や尿中抗原検査・臨床経過をもとに標的をある程度絞った治療
標的治療
培養結果(菌種・薬剤感受性)から抗菌薬を最適化する Thorax. 2005;60:672-8 #178.
経験的治療治療場所(外来、病棟、ICU)によって区分される #179.
日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017 #180.
経験的治療 Clin Infect Dis. 2007;44 Suppl 2(Suppl 2):S27-72.
日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017
Am J Respir Crit Care Med. 2019;200(7):e45-e67. #184.
一般病棟入院患者 βラクタム系抗菌薬の単剤治療
または
βラクタム系抗菌薬と非定型肺炎をカバーする抗菌薬の併用治療
米国のガイドラインは非定型肺炎routineカバー推奨 Clin Infect Dis. 2007;44 Suppl 2(Suppl 2):S27-72.
日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017
Am J Respir Crit Care Med. 2019;200(7):e45-e67. #186.
ICU入室患者 重症肺炎=緑膿菌カバー、ではない
緑膿菌性肺炎のリスクがある場合に、緑膿菌をカバーする
βラクタム系抗菌薬と、マクロライド系抗菌薬またはフルオロキノロン系抗菌薬、の併用が基本 #189.
症例:68歳男性 グラム陽性双球菌→肺炎球菌の疑い
グラム陰性小桿菌→インフルエンザ桿菌の疑い
初期治療:CTRX
培養:PSSP、BLNAR H. influenzae
標的治療:CTRX
#190.
5:適切なフォローアップ 治療効果判定
治療期間 #191.
治療効果判定 VSと臓器特異的パラメーターを使用
・血圧、脈拍、呼吸数、SpO2(PaO2)
・喀痰グラム染色
・呼吸音、喀痰、咳などの症状
・発熱
・WBC、CRP、胸部X線写真 #192.
典型的経過 まず血圧と脈拍が正常化
→呼吸数とSpO2が改善傾向
→意識変容も改善し、解熱する
→最後に呼吸数とSpO2が正常化する JAMA. 1998;279:1452-7 #193.
各バイタルサイン正常化までの期間 JAMA. 1998;279:1452-7 #194.
重症度別の臨床的安定までの期間 ※1:脈拍100 /分以下、収縮期血圧 90 mmHg以上、経口摂取可能、意識状態がbaseline
※2:PSI class別の臨床的安定化までの期間(中央値、日) JAMA. 1998;279:1452-7 #195.
一般的な経過治療開始3日以内で改善傾向1週間以内に臨床的に安定する #196.
1回目の治療効果判定治療開始72時間後が目安 #197.
改善が遅れる患者群 複数肺葉病変
重症肺炎(PSI class IV or V、ICU入室)
初期治療の失敗
合併症あり(腎不全、心不全、shock、膿胸)
など Clin Infect Dis 2004;39:1783-90 #199.
胸部X線の改善は遅れる 外来/入院患者を合わせた報告
完全な胸部X線の改善:
2週間50.6% 4週間63.7% 6週間73.2%
改善が遅いことを予測する因子
年齢、複数の肺葉病変(性別と飲酒は関係ない)
Consolidationの残存は上記より少ない
2週間で32.1%, 4週間で14.7%で残存
軽度の線状影(stranding)が残るものが多かった Am J Respir Crit Care Med 1994;149:630-5 #200.
胸部単純X線所見の改善は臨床症状の改善より緩徐である #201.
CXR所見の改善遅延に関連する因子 複数肺葉病変
入院時の頻呼吸(>25/分)
高齢
既存の肺疾患
COPDや気管支拡張症 Clin Infect Dis. 2007;45:983-91. J Am Geriatr Soc. 2004;52:224-9
Am J Respir Crit Care Med. 1994;149:630-5. #202.
CXRの治療効果判定における役割 臨床的に改善している場合
臨床的に明らかに改善している場合、胸部単純X線写真の再検は不要
とはいえ、陰影が改善傾向の胸部単純X線写真は、患者さんへの説明に有用 #203.
CXRの治療効果判定のおける役割 呼吸状態が悪化している場合
ドレナージしていない肺炎随伴性胸水がある場合
→頻回に撮影して評価する必要がある #204.
胸部単純X線写真のフォロー時のポイント 浸潤影の変化
胸水の新規出現、または、量の変化(肺炎随伴性胸水、膿胸の評価)
空洞性病変の有無(壊死性肺炎、肺化膿症)
肺水腫(心不全やADRSの合併の評価)
無気肺(痰の喀出はできているか) #207.
6-15% Thorax. 2004;59:960-5. Am J Respir Crit Care Med. 2000;162:154-60.
Arch Intern Med. 2004;164:502-8. Am J Respir Crit Care Med. 1999;160:346-8. #209.
高齢者重症例グラム陰性桿菌 Thorax. 2004;59:960-5. Arch Intern Med. 2004;164:502-8. #211.
感染性と非感染性 胸部画像異常
院内発熱 微生物
宿主(患者)
薬剤 #212.
経験的治療に反応しない場合の鑑別診断 日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017 Clin Infect Dis. 2007;44 Suppl 2:S27-72 #213.
治療反応不良の主な原因 抗菌薬スペクトラム
耐性菌
というより... #214.
重症 or 宿主因子 肺の基礎疾患の存在
喀痰排泄不良
免疫不全状態など #215.
日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017
Clin Infect Dis. 2007;44 Suppl 2:S27-72 Curr Opin Pulm Med. 2005;11:247-52 #217.
医療密度の高い病棟への移動診断的検査治療の変更の検討 #218.
治療無効時に検討する検査 血液培養と喀痰培養の再検
胸部CT
:肺塞栓、胸水、肺化膿症、気道閉塞、肺癌、器質化肺炎などの検索
胸腔穿刺(肺炎随伴性胸水、膿胸)
気管支鏡検査(気管支肺胞洗浄と経気管支肺生検)
他の感染巣の検索
:尿培養などの提出、カテーテル血培養、カテーテル先端培養 日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017
Clin Infect Dis. 2007;44 Suppl 2:S27-72 Clin Chest Med. 2005;26:143-58 #220.
治療終了基準 最低5日間治療
解熱して48-72時間
以下の所見を満たす(1つは許容)
体温≦37.8℃、HR≦100 /分
RR≦24 /分、SBP≧90 mmHg
SpO2≧90% or PaO2≧60 mmHg
(内服可能、意識障害なし) Clin Infect Dis 2007; 44:S27–72 #221.
基本は5-7日間 日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017
Clin Infect Dis. 2007;44 Suppl 2:S27-72 #222.
標準的治療期間 基本:5-7日
黄色ブドウ球菌肺炎+菌血症:2-4週間以上
緑膿菌肺炎:2-3週間以上
空洞性病変/肺化膿症:3-4週間以上
非定型肺炎:7-14日(AZM 3日間) N Engl J Med 2014;371:1619-28, UpToDate2018の上記の項目 #223.
最適な治療期間は不明 重症市中肺炎
- PSI class V
- ICU入室、septic shock、人工呼吸器管理を要する
グラム陰性桿菌による市中肺炎
→目安:7-14日 日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017
Clin Infect Dis. 2007;44 Suppl 2:S27-72 #224.
治療期間延長を検討すべき状況 黄色ブドウ球菌肺炎(菌血症の場合は、4週間以上)
緑膿菌肺炎、グラム陰性桿菌による肺炎
非定型肺炎(7-14日間)
壊死性肺炎(空洞性病変)(3週間以上)、肺化膿症(3週間以上)、膿胸(4週間以上)
肺嚢胞内感染
敗血症性肺塞栓症
髄膜炎、感染性心内膜炎を起こしている場合(肺外合併症がある場合)
endemic fungiやBurkholderia pseudomalleriなどの稀な病原微生物による肺炎
N Engl J Med 2014;371:1619-28 Clin Infect Dis. 2007;44 Suppl 2:S27-72 #226.
退院を考慮すべき状況 臨床的に安定(治療終了基準をすべて満たす)
市中肺炎以外に入院治療が必要な病態がない
内服治療可能
さらなる診断的検査が不要
退院後に安全に治療できる環境が確保されている Clin Infect Dis. 2007;44 Suppl 2:S27-72 Scand J Infect Dis. 2006;38:860-6.
Arch Intern Med. 2002;162:1278-84 #227.
Take Home Messages 症状と所見(バイタルサインと胸部診察)の組み合わせから肺炎の可能性を推定し胸部X線を撮影する
COVID-19流行期は、感染対策を行い、PCR検査の閾値は低くする
肺結核を見落とさないよう注意する
喀痰グラム染色は大切(COVID-19流行期はERで施行不可)
市中肺炎の治療で緑膿菌とMRSAをカバーする状況は少ない
重症度/治療効果判定は、バイタルサインが最重要