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研修医に知ってほしい血ガスの読み方!

投稿者プロフィール
永井友基
Award 2022 受賞者

長崎医療センター

409,805

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概要

血液ガス分析をきちんと解釈できていますか?最近はアプリでも大方の解釈を教えてくれますが、自分でも読めるようになると大きな武器になりますよ。是非習得してくださいね。

大きな目標は以下の二つ

・血液ガス分析を読めるようになろう~混合性酸塩基障害まで読めますか?~

・読んだ結果から、原因を探り当てられるようになろう

みんほす!でも人気のレクチャーの一つです。

是非勉強してみてくださいね。

本スライドの対象者

医学生/研修医

投稿された先生へ質問や勉強になったポイントをコメントしてみましょう!

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テキスト全文

血液ガスの基本と目標設定

#1.

初期研修医に知ってほしい ~血液ガスの読み方~

#3.

今回のテーマ 血液ガス!

#4.

今日の目標 ・血液ガスを読めるようになろう! ・血液ガスの解釈ができるようになろう!

症例紹介と血液検査所見

#5.

さっそく症例をみてみましょう!

#6.

症例:57歳男性 【主訴】 ふるえ 【現病歴】 全身の小刻みな震えが止まらないとのことで救急部よりコンサルト。 アルコール性肝炎の治療中。お酒は3か月飲んでいない。 【現症】 体温:35.3℃、脈拍数:99回/分、血圧:166/110mmHg、 呼吸数:45回/分、SpO2:100%(室内気)

#7.

血液検査所見 血算 生化学 WBC 7360/μl AST 245 IU/l Hb 11.6g/dl ALT 59 IU/l Ht 32.6% LDH 402 IU/l Plt 10.1万/μl ALP 154 IU/l γGTP 417 IU/l T-Bil 1.0 mg/dl BUN 34.6mg/dl Cre 1.08mg/dl Na 139mEq/l K 3.3mEq/l Cl 99mEq/l P 2.3mg/dl Mg 1.5mg/dl Glu 80mg/dl 血清浸透圧 288mOsm/l

#8.

血液検査所見 <動脈血ガス分析> 呼吸数 45回/分、室内気 pH 7.558、pCO2 16.8mmHg、pO2 105mmHg、 HCO3- 15mEq/l 、Lac 18mg/dL

#9.

血液検査所見 <動脈血ガス分析> 呼吸数 45回/分、室内気 pH 7.558、pCO2 16.8mmHg、pO2 105mmHg、 HCO3- 15mEq/l 、Lac 18mg/dL 読んでみましょう!

酸塩基平衡障害の理解

#11.

こたえ AG開大性代謝性アシドーシス 代謝性アルカローシス 呼吸性アルカローシス の混合性酸塩基平衡障害

#12.

AG開大性代謝性アシドーシス 代謝性アルカローシス 呼吸性アルカローシス 読めた人ー? の混合性酸塩基平衡障害

血液ガスの基礎値とお作法

#13.

ちなみにですが、2年目のこの時期の私 え?何のこと言ってるの? どういうこと? ガスを読め?? みんな読めるんですかい? 全然意味が分からないんですけど??

#14.

ちなみにですが、2年目のこの時期の私 え?何のこと言ってるの? どういうこと? 一緒に勉強していきましょう! ガスを読め?? 全然意味が分からないんですけど??

#15.

メニュー 1、血液ガスの基礎値の理解とお作法 2、血液ガスの正しい読み方 3、結果の意味を考える

#16.

メニュー 1、血液ガスの基礎値の理解とお作法 2、血液ガスの正しい読み方 3、結果の意味を考える

血液ガスの正常値とその意義

#17.

酸塩基平衡について

#18.

日腎会誌2001; 43(8):621-630

#19.

肺と腎臓が大切な役割を 果たしている! 日腎会誌2001; 43(8):621-630

#20.

血液ガスの正常値は? 正常値を覚えましょう! pH :7.4±0.05 pCO2 :40±5 Torr HCO3- :24±2mEq/L Anion Gap:12±2mEq/L

動脈血ガスと静脈血ガスの違い

#21.

血液ガスを読む前に… 動脈血ガスと静脈血ガスって違うの? 日腎会誌2001; 43(8):621-630

#22.

血液ガスを読む前に… 動脈血ガスと静脈血ガスって違うの? 日腎会誌2001; 43(8):621-630 静脈血ガスは動脈血ガスに比べて pHはアシデミア pCO2はアシドーシス HCO3-はアルカローシス 傾向に少しだけなる

#23.

血液ガスを読む前に… 動脈血ガスと静脈血ガスって違うの? 日腎会誌2001; 43(8):621-630 酸塩基平衡を大まかにみるなら Vガスでも可! でも、細かく酸塩基平衡をみたいなーとか、 Vガスで取ってなんか変?ってなったら 必ずAガスで評価しましょう!

#24.

血液ガスの所見を述べるときのお作法 ①動脈血 or 静脈血 ②呼吸数 ③酸素の投与方法、投与量

血液ガスの読み方のステップ

#25.

メニュー 1、血液ガスの基礎値の理解とお作法 2、血液ガスの正しい読み方 3、結果の意味を考える

#26.

血液ガスのおおまかな読み方 Step1:アシデミア or アルカレミア Step2:呼吸性 or 代謝性 Step3:Anion Gap(AG)の計算 (Step3’:AG開大あれば補正HCO3-の計算) Step4:代償はできているか

#27.

血液ガスのおおまかな読み方 Step1:アシデミア or アルカレミア Step2:呼吸性 or 代謝性 Step3:Anion Gap(AG)の計算 (Step3’:AG開大あれば補正HCO3-の計算) Step4:代償はできているか

#28.

pHをみよう! ・アシデミア:pH≦7.35 ・アルカレミア:pH≧7.45 ・アシドーシス:体内にpHをさげる病態があること ・アルカローシス:体内にpHをあげる病態があること

#29.

pHをみよう! ・アシデミア:pH≦7.35 ・アルカレミア:pH≧7.45 はい、わかりにくい~ ・アシドーシス:体内にpHをさげる病態があること ・アルカローシス:体内にpHをあげる病態があること

#30.

Step1:アシデミア or アルカレミア pH 7.40 pH 7.20 pH 7.60 アルカレミア アシデミア 絶対値 ベクトル アシドーシス アルカローシス

#31.

Step1:アシデミア or アルカレミア pH 7.40 pH 7.20 pH 7.60 アルカレミア アシデミア 絶対値 ベクトル アルカローシス アシドーシス アルカレミアでも アシドーシスが 隠れてることが ありえる

#32.

血液ガスのおおまかな読み方 Step1:アシデミア or アルカレミア Step2:呼吸性 or 代謝性 Step3:Anion Gap(AG)の計算 (Step3’:AG開大あれば補正HCO3-の計算) Step4:代償はできているか

Anion Gapの計算と意義

#33.

Step2:呼吸性 or 代謝性 呼吸性因子:CO2 代謝性因子:HCO3-

#34.

Step2:呼吸性 or 代謝性 アシドーシス アルカローシス 呼吸性 PCO2↑ PCO2↓ 代謝性 HCO3-↓ HCO3-↑

#35.

血液ガスのおおまかな読み方 Step1:アシデミア or アルカレミア Step2:呼吸性 or 代謝性 Step3:Anion Gap(AG)の計算 (Step3’:AG開大あれば補正HCO3-の計算) Step4:代償はできているか

#36.

そもそもAnion Gapって何? ・細胞外液中の陽イオンと陰イオンは等量存在する。 陽イオン:Na+、測定されない陽イオン(UC) 陰イオン:Cl-、HCO3-、測定されない陰イオン(UA) ・測定されない陰イオンと測定されない陽イオン差を アニオンギャップと呼ぶ。 つまり、AG=UA-UC。正常値は12±2mEq/L。

AG開大の解釈と臨床的意義

#37.

Step3:Anion Gap(AG)の計算 陽イオンと陰イオンは等量 @細胞外液(血管内) UC UA HCO3- Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン

#38.

Step3:Anion Gap(AG)の計算 UC unmeasured cations(UC): K+、Ca2+、Mg2+など。 約11mEq/Lと少なく一定。 UA HCO3- Na+ Unmeasured anions(UA): 蛋白(主にAlb)、硫酸イオン、 硝酸イオン、乳酸イオン、 ケトン体など Cl- 陽イオン 陰イオン 水・電解質と酸塩基平衡 改訂第2版

#39.

Step3:Anion Gap(AG)の計算 UC この図でいうと AGはどーこだ? UA HCO3- Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン

#40.

Step3:Anion Gap(AG)の計算 UC UA HCO3- Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン

#41.

Step3:Anion Gap(AG)の計算 UC UA HCO3- Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン

#42.

Step3:Anion Gap(AG)の計算 UC UA AG HCO3Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン

#43.

Step3:Anion Gap(AG)の計算 UC UA AG HCO3Na+ お気づきでしょうか? Cl- 陽イオン 陰イオン

#44.

Step3:Anion Gap(AG)の計算 UC UA AG HCO3AG=Na+-(HCO3-+Cl-) Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン

AG開大性代謝性アシドーシスの理解

#45.

Anion Gapの補足① ・AGを測定する意味は? →測定できない陰イオンが増えたのか? or Cl-が増えたのか?

#46.

測定できない陰イオンが増えたのか? UC UA HCO3- Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン

#47.

測定できない陰イオンが増えたのか? UC UA HCO3Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン

#48.

測定できない陰イオンが増えたのか? UC UA AG HCO3Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン AG開大 =不揮発酸が 増えている

#49.

AGが開大していれば、 不揮発酸とセットでH+が増えるため、 必ず、AG開大性代謝性アシドーシスが存在する。 鑑別疾患は後ほど。

#50.

Cl-が増えたのか? UC UA HCO3- Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン

低Alb血症とAGの関係

#51.

Cl-が増えたのか? UC UA HCO3- Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン

#52.

Cl-が増えたのか? UC UA AG HCO3- AGは不変 Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン

#53.

少し難しいですが、Cl-が増える理由? 原因疾患の病態的にH+が排出できない or HCO3-が再吸収できない(NaHCO3が排泄される) 体内のH+とセットで干渉物質としてCl-が増える or NaHCO3が失われてHClが残る (体液はNaCl+H2O+CO2でできているため)

#54.

Anion Gapの補足② ・Albが低下するとAGの正常が下がる。 Albが1g/dL下がるごとにAGが2.5mEq/L低下する。

#55.

普通のとき UC UA HCO3- Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン Unmeasured anions(UA): 蛋白(主にAlb)、硫酸イオン、 硝酸イオン、乳酸イオン、 ケトン体など

#56.

低Alb血症のとき UC UA HCO3Alb分のUAが減る Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン

代謝性アシドーシスの鑑別

#57.

低Alb血症のとき UC UA AG HCO3Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン 低Albの人にとっての 正常のAGは、 普通の人より小さい! (AGが12より小さくても AGが開大していることが あり得るということ)

#58.

低Alb血症のとき UC UA AG HCO3Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン 低Albのときの AGの基準値の計算 12-2.5×(4-Alb)±2

#59.

血液ガスのおおまかな読み方 Step1:アシデミア or アルカレミア Step2:呼吸性 or 代謝性 Step3:Anion Gap(AG)の計算 (Step3’:AG開大あれば補正HCO3-の計算) Step4:代償はできているか

#60.

Step3’:AG開大あれば補正HCO3-の計算 ・補正HCO3-:AGが正常と仮定したときの推測のHCO3→代謝性アシドーシス or 代謝性アルカローシスが 合併しているかを判断する ・補正HCO3-=実測HCO3- + ΔAG <22:非開大性代謝性アシドーシスが合併 >26:代謝性アルカローシスが合併

#61.

補正HCO3-とは?を詳しく。

#62.

AG開大性代謝性アシドーシス UC UA HCO3- Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン

#63.

AG開大性代謝性アシドーシス UC UA HCO3Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン

#64.

AG開大性代謝性アシドーシス UC UA UA HCO3- Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン 増えたAG (ΔAG)

呼吸性アシドーシスとアルカローシス

#65.

じゃあ… UC UA UA HCO3- Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン 他に異常がないとき、 ΔAGがないと仮定したら、 HCO3-は減ってないはず!

#66.

じゃあ… UC UA UA 他に異常がないとき、 ΔAGがないと仮定したら、 HCO3-は減ってないはず! HCO3- Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン ΔAGがない場合のHCO3-は?

#67.

じゃあ… UC UA UA 他に異常がないとき、 ΔAGがないと仮定したら、 HCO3-は減ってないはず! HCO3- Na+ Cl- 陽イオン 陰イオン ΔAGがない場合のHCO3-は? 補正HCO3-

#68.

血液ガスのおおまかな読み方 Step1:アシデミア or アルカレミア Step2:呼吸性 or 代謝性 Step3:Anion Gap(AG)の計算 (Step3’:AG開大あれば補正HCO3-の計算) Step4:代償はできているか

#69.

Step4:代償はできているか 1次性の病態 1次性の変化 代償性の変化 代謝性アシドーシス HCO3-↓ PCO2↓ 代謝性アルカローシス HCO3-↑ PCO2↑ 呼吸性アシドーシス PCO2↑ HCO3-↑ 呼吸性アルカローシス PCO2↓ HCO3-↓

#70.

Step4:代償はできているか 高松赤十字病院 モーニングセミナー 腎臓内科 横山倫子

#71.

代償に関する補足 代謝性の代償が起きるのは半日~数日。 呼吸性の代償が起きるのは数分以内。

#72.

もう一回復習です。

症例の再評価とディスカッション

#73.

血液ガスの読み方のおさらい Step1:アシデミア or アルカレミア →pHをみる Step2:呼吸性 or 代謝性 →CO2とHCO3-をみる

#74.

血液ガスの読み方のおさらい Step3:Anion Gap(AG)の計算 (Step3’:AG開大あれば補正HCO3-の計算) →AG=Na+-(HCO3-+Cl-) (補正HCO3-=実測HCO3-+ΔAG) Step4:代償はできているか →代償の式に当てはめて計算

#75.

できそうですか?

#76.

では、先ほどの症例をもう一度。 みんなでやってみましょう!ディスカッションタイム!

#77.

症例:57歳男性 【主訴】 ふるえ 【現病歴】 全身の小刻みな震えが止まらないとのことで救急部よりコンサルト。 アルコール性肝炎の治療中。お酒は3か月飲んでいない。 【現症】 体温:35.3℃、脈拍数:99回/分、血圧:166/110mmHg、 呼吸数:45回/分、SpO2:100%(室内気)

#78.

血液検査所見 血算 生化学 WBC 7360/μl AST 245 IU/l Hb 11.6g/dl ALT 59 IU/l Ht 32.6% LDH 402 IU/l Plt 10.1万/μl ALP 154 IU/l γGTP 417 IU/l T-Bil 1.0 mg/dl BUN 34.6mg/dl Cre 1.08mg/dl Na 139mEq/l K 3.3mEq/l Cl 99mEq/l P 2.3mg/dl Mg 1.5mg/dl Glu 80mg/dl 血清浸透圧 288mOsm/l

#79.

血液検査所見 <動脈血ガス分析> 呼吸数 45回/分、室内気 pH 7.558、pCO2 16.8mmHg、pO2 105mmHg、 HCO3- 15mEq/l、Lac 18mg/dL

#80.

血液検査所見 <動脈血ガス分析> 呼吸数 45回/分、室内気 pH 7.558、pCO2 16.8mmHg、pO2 105mmHg、 HCO3- 15mEq/l、Lac 18mg/dL 読んでみましょう!

血液ガスの結果の解釈

#81.

血液ガスのおおまかな読み方 Step1:アシデミア or アルカレミア Step2:呼吸性 or 代謝性 Step3:Anion Gap(AG)の計算 (Step3’:AG開大あれば補正HCO3-の計算) Step4:代償はできているか

#82.

Step1:アシデミア or アルカレミア pH 7.558 →pH≧7.45なので、アルカレミア。

#83.

Step2:呼吸性 or 代謝性 pCO2 16.8mmHg、HCO3- 15mEq/L →呼吸性アルカローシス

#84.

Step3:Anion Gap(AG)の計算 AG=Na+-(HCO3-+Cl-) =139-(15+99) =25>12 →AG開大あり →AG開大性代謝性アシドーシス →補正HCO3-を計算!

#85.

Step3’:AG開大あれば補正HCO3-の計算 補正HCO3-=ΔAG+実測HCO3=(25-12)+15 =28>26 →代謝性アルカローシスが合併

#86.

Step4:代償はできているか ここまでで3つの酸塩基平衡障害を合併しているため、 計算不要。

#87.

補足 Step3までで以下の4つの酸塩基平衡障害うち、 呼吸性アシドーシス 呼吸性アルカローシス AG開大性代謝性アシドーシス 代謝性アルカローシス AG非開大性代謝性アシドーシス 3つが合併していれば、step4は不要! ※細かいことを言うともっと場合分けができますが、混乱するので今回は簡単にこういう風にしてます。

#88.

こたえ AG開大性代謝性アシドーシス 代謝性アルカローシス 呼吸性アルカローシス の混合性酸塩基平衡障害

AG開大性代謝性アシドーシスの詳細

#89.

できそうですか?

#90.

ここまでは大丈夫ですか? PGY1はここまでついてこれれば十分です! ここまで余裕だし!?ってなっているPGY2のために、 これから少しだけ結果の解釈について述べます。

#91.

メニュー 1、血液ガスの基礎値の理解とお作法 2、血液ガスの正しい読み方 3、結果の意味を考える

#92.

AG開大性代謝性アシドーシス

#93.

AG開大性代謝性アシドーシス 鑑別は、『KUSMALP』 Ketoacidosis ケトアシドーシス Uremia 尿毒症 Salicylate サリチル酸中毒 Methanol メタノール中毒 Acethylsalicylate アセチルサリチル酸 Lactic acidosis 乳酸 Paraldehyde パラアルデヒド

#94.

補足① AG≧25mEq/Lを超える代謝性アシドーシスのほとんどが、 ・ケトアシドーシス(酒、糖、飢餓) ・乳酸アシドーシス(様々) ・毒物(メタノール、エチレングリコール、エタノール、 トルエン、パラアルデヒド、サリチル酸など)

#95.

AG開大性代謝性アシドーシスと診断したら ・Osmolal Gapを計算! Osmolal gap=実測血清浸透圧ー推定血清浸透圧 ※推定血清浸透圧=2×[Na]+[BS]/18+[BUN]/2.8 ・Osmolal gapは、薬物中毒の診断に有用。 Osmolal gap>10mOsm/Lのときに疑う。

#96.

AG開大性代謝性アシドーシス ・Osmolal gap>10mOsm/Lのとき エタノール エチレングリコール 中毒を疑う。 パラアルデヒド ・ただし、アルコール類などは代謝されれば、非浸透圧物質に なるので、Osmolal gapがなくても否定はできない。

AG非開大性代謝性アシドーシスの理解

#97.

AG非開大性代謝性アシドーシス

#98.

AG非開大性代謝性アシドーシス これですね。

#99.

AG非開大性代謝性アシドーシス 鑑別は、『HARD‐UP』 H : hyperalimentation (過栄養) A : acetazolamide (アセタゾラミド)、 Addison's disease (アジソン病) R : renal tubular acidosis (尿細管性アシドーシス) D : diarrhea (下痢) U : ureteroenteric fistula (尿管腸瘻) P : pancreatic fistula (膵液瘻)、parenteral saline (NaCl 大量補液) →まずは、下痢、腎不全の初期の2つを考える。

#100.

AG非開大性代謝性アシドーシス ・鑑別のために尿中AGと尿浸透圧ギャップを計算!

#101.

①尿中AG 尿中AG=尿中Na+尿中K-尿中Cl (正常値20-40mEq/L) ・尿中AG<0のとき:腎臓は正常。 原因:下痢、NaCl補液、近位尿細管性アシドーシス、 DKAの改善期、慢性呼吸性アルカローシスの改善期 ・尿中AG>0のとき:腎臓がダメ or 腎臓OKだけど不揮発酸が増えている 原因:腎不全、遠位尿細管性アシドーシス、ケトアシドーシスの増悪期、 慢性呼吸性アシドーシスの改善期 →鑑別のために尿浸透圧ギャップを測定しよう!

#102.

②尿浸透圧ギャップ(UOG) 尿浸透圧ギャップ=尿実測尿浸透圧 - 計算尿浸透圧 (正常 80mEq/L程度) ※計算尿浸透圧(mosmol/kg) =2 ×(尿Na+ + 尿K+)+尿UN(mg/dL)/2.8+尿Glu(mg/dL)/18 正常な腎臓は、 代謝性アシドーシスに際して NH4+排泄を増やす。

#103.

②尿浸透圧ギャップ(UOG) ・UOG<150mosmol/kg かつ eGFR>25 ml/分 →アシドーシスに対する腎臓の応答が不適切 →RTAの特徴 ・UOG>150mosmol/kg かつ eGFR>25 ml/分 →腎外での重炭酸塩の損失 →下痢やドレーン、回腸瘻など

#104.

尿中AGについて…

代謝性アルカローシスの鑑別

#105.

正常のとき(尿中) 測定されない陰イオンの ほとんどはHCO3- 尿中

#106.

腎臓が正常な非AG開大性代謝性アシドーシスのとき ・腎臓が正常のときは、身体の中が酸性になると、NH4+の排出が増える。 →干渉物質であるCl-もNH4+と同じ量排出される。 →AGが負になる!

#107.

腎臓は正常でAGが正になる非AG開大性代謝性アシドーシス ・不揮発酸が蓄積する →体の中でH+過剰および不揮発酸過剰になる →腎臓の酸排泄能が問題ないから、 NH4+がその分増加して酸を排泄。 普通であればCl-が電気的平衡を保つため増加するが、 不揮発酸が増加しているためCl-は増加しない。 →AGが正になる! ※不揮発酸:βヒドロキシ酪酸・アセト酢酸、馬尿酸(トルエン)、 5-oxoproline(アセトアミノフェン)など。

#108.

腎臓がダメな非AG開大性代謝性アシドーシスのとき ・腎臓の酸排泄能が問題ある →NH4+の排泄を増やせない or HCO3-が再吸収できない(≒測定されない陰イオンの排泄が増える) →尿AGが正になる!

#109.

腎臓がダメな非AG開大性代謝性アシドーシスのとき ・NH4+の排泄を増やせない

#110.

腎臓がダメな非AG開大性代謝性アシドーシスのとき ・HCO3-の再吸収ができない →測定されない陰イオンの排泄が増える →相対的にCl-が減る

#111.

代謝性アルカローシス

#112.

代謝性アルカローシス

呼吸性アシドーシスの解釈

#113.

代謝性アルカローシス ・Cl反応性か? →尿中Clを計算! Cl<20(Cl反応性):脱水、利尿薬 Cl>20(Cl不応性):利尿薬、 RAA系周辺の障害 (アルドステロン薬、Cushing症候群、 心・腎・肝不全)

#114.

呼吸性アシドーシス

#115.

呼吸性アシドーシス ・PCO2の値に関わらず、”2型呼吸不全の傾向がある”。 ・呼吸性アシドーシスがある場合には 「肺胞低換気」 「高度拡散障害などの1型呼吸不全の成れの果て」 を鑑別する。 ・頻呼吸なのに呼吸性アシドーシスのときは要注意! 呼吸性代償ができていないということ!!

#116.

呼吸性アルカローシス

#117.

呼吸性アルカローシス

#118.

補足 呼吸性アルカローシス+代謝性アシドーシスをみたら、 サリチル酸中毒またはSepsisを疑うべし

#119.

じゃあ、最初の症例の結果の解釈は? AG開大性代謝性アシドーシス 代謝性アルカローシス 呼吸性アルカローシス の混合性酸塩基平衡障害

#120.

AG開大性代謝性アシドーシス AG≧25mEq/Lを超える代謝性アシドーシスのほとんどが、 ・ケトアシドーシス(酒、糖、飢餓) ・乳酸アシドーシス(様々) ・毒物(メタノール、エチレングリコール、エタノール、 トルエン、パラアルデヒド、サリチル酸など)

血液ガスの読み方のまとめ

#121.

AG開大性代謝性アシドーシス ・Osmolal gap=6.79<10 ・トライエージ陰性 ・Lac 18mg/dL ・Glu 80mg/dL →薬物中毒は否定的 →乳酸アシドーシスは否定的 →DKAは否定的 血中βヒドロキシ酪酸 5.2mg/dL! アルコール性ケトアシドーシス

#122.

代謝性アルカローシス

#123.

代謝性アルカローシス ・Cl反応性か? →尿中Clを計算! Cl<20(Cl反応性):脱水、利尿薬 Cl>20(Cl不応性):利尿薬、 RAA系周辺の障害 (アルドステロン薬、Cushing症候群、 心・腎・肝不全)

#124.

この症例では、 尿中Cl 18mEq/L。 嘔吐なし、利尿薬使用なし。 おそらく脱水によるもの。

#125.

呼吸性アルカローシス

#126.

血液ガスのおおまかな読み方 Step1:アシデミア or アルカレミア Step2:呼吸性 or 代謝性 Step3:Anion Gap(AG)の計算 (Step3’:AG開大あれば補正HCO3-の計算) Step4:代償はできているか

#127.

最後に覚えておいてほしいのが… これから多忙な中、血液ガスをたくさん読むと思いますが、 覚えておいてほしいことが1つあります! pH<7.30は何かしらあることが多いです! なので、どんなに忙しくても一度立ち止まって、 しっかり評価するようにしてください! (Vガスで取ってたとしてらAガスで再評価してね) 山中からのメッセージ

#128.

Take home message ・血ガスをオーダーしたら毎回読む癖をつけましょう! ・初期研修医の間に血ガスを読めるようになり、 さらには結果を解釈できるようになりましょう!


永井友基さんのインタビュー

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