医療従事者のためのCOVID-19検査まとめ

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山田 悠史

山田 悠史

埼玉医科大学

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医療従事者のためのCOVID-19検査について、まとめています。 〇目次 「検査の基本」「RT-PCR検査の対象者」「どこから検体を採取するか」「感度・特異度」「検査の費用」 〇Take Home Message 検査の的中率を高めるには「誰に」検査をするかが重要となる。 正確な診断のためには、あらゆる疾患の診療と同様、丁寧な情報収集が重要であるということを肝に銘じる。 COVID-19に対するRT-PCRは特異度は高いものの、感度は限定的。 感度を上げるため、複数箇所から検体を採取する。また、「検査陰性」を用いた疾患の否定はできないことに注意。 胸部CT検査はCOVID-19肺炎に対して感度が高いものの、特異度は低い。

医療従事者のためのCOVID-19検査まとめ

1. 医療従事者のための COVID-19検査まとめ 2020年2⽉29⽇時点 ⼭⽥ 悠史
2. 検査の基本
3. 検査の基本 感度、特異度は「診断ありき」のデータ 診断(+) 診断(ー) 検査結果(+) a c a+c 検査結果(ー) b d b+d a+b c+d a+b+c+d 「検査の精度」として⽰される「診断ありき」のデータ 感度=a/(a+b) 特異度=d/(c+d) 縦⽅向の割合 「診断を知りたい」医師の欲しいデータ 陽性的中率=a/a+c 陰性的中率=d/(b+d) 横⽅向の割合
4. 検査の基本:要点まとめ • 検査固有の感度・特異度(縦⽅向の割合)と、医師の知りたい 的中率(横⽅向の割合)とでは軸が異なる。 • 的中率(横⽅向の割合)は、「事前確率」や対象集団の「罹患 率」に⼤きく左右される。 • よって、的中率を⾼めるには「どの」検査をするかだけでなく 「誰に」検査をするかが重要となる。 • 「事前確率」を最も上げ下げするのは、丁寧な問診である。
5. RT-PCR検査の対象者は?
6. RT-PCR検査対象は? ⽶国CDCによるPUI(Person Under Investigation)の定義 & 臨床的特徴 疫学的リスク (主観的ないし客観的)発熱 OR (咳 や呼吸困難などの)下気道症状・所⾒ AND 発症14⽇以内にCOVID-19確定患者との濃厚 接触歴(*)がある(医療従事者を含む) 発熱 AND 下気道症状・所⾒があり、⼊院 を要する AND 発症14⽇以内に感染流⾏地域への渡航歴が ある 発熱とともに(肺炎、ARDSなどの)⼊院 を要する重度の急性下気道病変があり、イ ンフルエンザなどの代わりの診断がない AND 暴露歴が同定されていない *濃厚接触歴とは a) COVID-19患者の約2m以内に⻑期間滞在(COVID患者のケア、患者との同居、訪問、医 療機関の待合室または部屋を共有) b) (咳をされるなど)COVID-19患者の感染性分泌物と直接的接触 ただし、推奨された個⼈防護具をつけていなかった場合に適⽤される https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-nCoV/hcp/clinical-criteria.html#foot3
7. 感染流⾏地域(⽶国CDC) 持続的な市中感染が⽣じている場所 最低でもLevel 2 Travel Health Noticeが出ている国(2/29/2020現在) • 中国 (Level 3 Travel Health Notice) • イラン (Level 3 Travel Health Notice) ※⼀部地域では、レベル4になっています。 • イタリア (Level 3 Travel Health Notice) • 韓国 (Level 3 Travel Health Notice) • ⽇本 (Level 2 Travel Health Notice) https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-nCoV/hcp/clinical-criteria.html#foot3
8. 厚⽣労働省の指針(⽶国のPUIに加えて) • 37.5°C以上の発熱かつ呼吸器症状を有し、⼊院を要する肺炎が 疑われる者(特に⾼齢者⼜は基礎疾患があるものについては、 積極的に考慮する) • 医師が総合的に判断した結果、新型コロナウイルス感染症と疑 う者 →季節性インフルエンザ検査などの他の病原体検査を提出し陰性 の場合、または陽性でも治療開始後症状増悪時に考慮 検査対象は、各国、地域の流⾏状況によって異なる https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000596426.pdf
9. どこから検体を採取する?
10. PUIに対する検査の推奨内容(⽶国CDC) • SARS-CoV-2の初期の診断的検査として、CDCは上気道(⿐咽頭 AND⼝咽頭)の標本を回収し、RT-PCRに提出することを推奨。 • ⼊⼿可能なら、下気道の標本の検査も推奨。湿性咳嗽のある患 者では、喀痰を採取し、検査すべき。 • ただし、喀痰誘発は推奨されない。 • 気管挿管をされている患者など、臨床的に適応となる場合には 下気道からの吸引やBALによる標本回収も⾏うべきである。発 症時期にかかわらず、PUIと判明した時点ですぐに採取を⾏うべ きである。 https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-nCoV/hcp/clinical-criteria.html#foot3
11. 検体の採取(国⽴感染研) • 「現⾏の病原体検査(PCR)では下記の2検体を検査します。下気 道にウイルス量が多いことが報告されていますので、なるべく 喀痰などの下気道由来検体の採取をお願いします。痰が出ない など、下気道由来検体の採取が難しい場合は⿐咽頭ぬぐい液の みで構いません。 」 検体送付の 優先順位 検体の種類 採取時期 量 1 下気道由来検体 (喀痰もしくは気管吸引液) できるだけ早く (発病後 5 ⽇以内) 1 - 2 mL 2 ⿐咽頭ぬぐい液* できるだけ早く (発病後 5 ⽇以内) 1本 https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9325-manual.html
12. ECDC(欧州CDC)の推奨より追加事項 • 2019 nCoVに対しては、強い疫学的ないし臨床的な疑いがある 患者では、1回の「陰性」結果は、2回⽬の異なる遺伝⼦を ターゲットにしたRT-PCRか、2回⽬の異なる解剖学的場所から 取られたサンプルでの検査で再確認する必要がある。 • 下気道感染を起こしうる他の病原体の共感染も否定し得ないた め、強い疑いの患者に対しては、他の病原体についても丁寧な 原因検索を⾏うべきである。 https://www.ecdc.europa.eu/en/factsheet-health-professionals-coronaviruses
13. 検体採取箇所に関する報告 • 18症例の上気道検体のウィルス量をモ ニタリング • 喉よりも⿐からより⾼いウィルス量が 検出される傾向にあった。 • 無症状(ないし軽症状)患者と症状の ある患者ではウィルス量に⼤きな差は なかった。 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2001737
14. 採取した検体をどうする?
15. 採取した検体は? • 清潔な漏れのない容器に⼊れて、 2-8℃で冷蔵する。 https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-nCoV/lab/guidelines-clinical-specimens.html
16. 検査の感度・特異度は?
17. RT-PCRの感度は低い? • 不適切な検体採取、運搬、取り扱いによって、ウィルス量が不 ⼗分な場合には、偽陰性が⽣じうる。(⽶国CDC) • もしCOVID-19を強く疑っている患者で初期の検査が陰性だった ら、⿐、喀痰、気管内吸引などの複数箇所から標本を採取し、 再検査を⾏うべきである。(WHO) • 初期の検査で陰性が出た後、後⽇陽性反応がでるケースが相次 いで報告されている1)。中国では、7回⽬の検査で初めて陽性と 報告されたケースも報道されている2)。 1) https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/radiol.2020200343 2) https://mp.weixin.qq.com/s/RpXRE8Ow5nHeaLhxIEr-Ng
18. RT-PCRの感度は、CTに劣る? • COVID-19疑いの1014例のコホートでは、RT-PCRと特徴的CT所⾒ (両側すりガラス影を主体としたウィルス肺炎像)の陽性率は、 各々59%(601/1014)、88%(888/1014)であった。 • RT-PCRをreferenceとして、胸部CT所⾒の感度は97%(580/601)で あった。RT-PCRが陰性で、CT所⾒が陽性だった患者(308例)のう ち、48%(147例)が可能性の⾼い症例と再考され、33%(103例)が 総合評価によりprobable caseとされた。 (RT-PCRをreferenceとした) COVID-19に対する胸部CT所⾒の感度・特異度は、97%・25% https://doi.org/10.1148/radiol.2020200642
19. COVID-19のCT所⾒ 81症例を解析した研究で優位に⾒られた所⾒ • 両側性:79% • 末梢性:54% • 境界不明瞭:81% • すりガラス影:65% • ⽚側性→両側性、びまん性に進展 https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(20)30086-4/fulltext
20. RT-PCRは特異度に優れた検査 • MERS-CoV、他HCoV4種類、インフルエンザウィルスを含む多 種の病原体を含む患者からのサンプル297例でRT-PCR検査を⾏っ た結果、偽陽性は0件だった。 • 4例で初期に弱い反応が⾒られたが、再検査で陰性となった。 コンタミネーションなど検体の取り扱いに問題があった可能性 が指摘されている。 hdps://www.eurosurveillance.org/content/10.2807/1560-7917.ES.2020.25.3.2000045
21. 感度・特異度まとめ • COVID-19に対するRT-PCR検査は感度が低く、特異度は⾼い →RT-PCRは感染の診断に有⽤だが、否定に⽤いるのは不適切 • COVID-19(肺炎)に対する胸部CT検査は感度が⾼く、特異度は低い →胸部CT検査は、COVID-19の否定に有⽤かもしれないが、感染の診 断に⽤いるのは不適切(ただし、CT室を介した感染リスクにも留意)
22. 検査の費⽤は?
23. RT-PCR検査費⽤ (保険適⽤となった場合) • 「1万8000円程度」 • ⾃⼰負担(3割の場合):5400円 • ⼤学病院などで検査した場合:1万3500円(⾃⼰負担4050円) • 「厚労省は、当⾯は補助⾦を活⽤するなどして、患者の負担を できるだけ減らす仕組みを検討」 • 臨床医として提出する検査がどのぐらいの規模の公的資⾦を⽤ いるのか知っておくことも重要である。 https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000177579.html
24. その他
25. ウィルスが検出される時期は? • ウィルスは発症1-2⽇前から検出されうる。 • 中等症例では、7-12⽇間、重症例では2週間まで持続。 • ウィルスのRNAは、30%の症例で発症5⽇後から便中にも検出さ れるようになり、中等症例では4-5週間まで持続する。しかし、 どこまで感染⼒があるかは不明で、便⼝感染の役割もまだ⼗分 理解されていない。 https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/who-china-joint-mission-on-covid-19-final-report.pdf
26. 他の病原体検査の重要性 • ⽶国CDCからのCOVID-19が疑われた210例の有症候者の報告で、 nCoV陽性例は11例に⽌まり、30例で他の病原体検査が陽性 であった。 • 「他の病原体」にはインフルエンザやRSウィルスが含まれ た。 https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/mm6906e1.htm?s_cid=mm6906e1_w
27. 開発中の検査 • ウィルスのIgM, IgG, IgM + IgGを測 定する⾎清学的検査も現在開発中 である。 hdps://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/who-china-joint-mission-on-covid-19-final-report.pdf
28. Take Home Message • 検査の的中率を⾼めるには「誰に」検査をするかが重要となる。 • 正確な診断のためには、あらゆる疾患の診療と同様、丁寧な情報収集が重 要であるということを肝に銘じる。 • COVID-19に対するRT-PCRは特異度は⾼いものの、感度は限定的。 • 感度を上げるため、複数箇所から検体を採取する。また、「検査陰性」を ⽤いた疾患の否定はできないことに注意。 • 胸部CT検査はCOVID-19肺炎に対して感度が⾼いものの、特異度は低い。
29. 著者紹介 ⼭⽥ 悠史 埼⽟医科⼤学 総合診療内科 総合内科専⾨医、⽶国内科専⾨医 NewsPicksプロピッカー Twitterアカウント:@YujiY0402 ご質問、修正すべき点など、FacebookやTwitterなどのSNSでのご 連絡もお待ちしております。