#4.
クリニカルクエスチョン ・COVID-19暴露後の予防はあるか?
・BCGワクチンの有用性はどうか?
・2020年5月時点でのワクチン開発の状況は?
#5.
COVID-19暴露後の予防はある?
#6.
暴露後の予防について
#7.
暴露後の予防について ・感染源となる微生物に暴露したあと、薬剤を内服する ことで2次感染拡大予防となることがある。 例)侵襲性髄膜炎菌のリファンピシンの内服、インフルエンザハイリス ク患者のオセルタミビル内服など。
・COVID-19は家庭内感染が15%、近距離での濃厚接触 による感染が10%と報告あり。 暴露後の予防法の確立が待たれる。 Use of Antiviral Drugs to Reduce COVID-19 Transmission
https://www.thelancet.com/journals/langlo/article/PIIS2214-109X(20)30114-5/fulltext
#8.
暴露後の予防について ・COVID-19の暴露後の予防に対して 有効とわかっている薬剤はない。(2020年5月現在)
・一方で、抗ウイルス薬を内服すれば、気道分泌液に含まれる ウイルス量が減少し、周囲への感染性も低くなるのでは、と 示唆するレポートもある。
・アメリカをはじめ世界中で、予防法をめぐり 安全性と有効性を確認するRCTが進行中。
Use of Antiviral Drugs to Reduce COVID-19 Transmission
https://www.thelancet.com/journals/langlo/article/PIIS2214-109X(20)30114-5/fulltext
#9.
A Randomized Trial of Hydroxychloroquine as Postexposure Prophylaxis for Covid-19
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2016638 暴露後のヒドロキシクロロキン予防内服
#10.
暴露後のヒドロキシクロロキン予防内服 アメリカとカナダの一部で行われた821人の「濃厚接触者」を対象とした二重盲検RCT。
家庭内や仕事で6フィート(≒約1.8m)以内で10分以上、 COVID-19陽性者とマスクもアイシールドもせず接触した人(高リスク)、マスクだけしてアイシールドはせず接触した人(中リスク)を対象とした。
暴露されて4日以内にヒドロキシクロロキン800 mgを1回内服した後、6〜8時間後に600 mgを内服し、その後、600 mgを1日1回連続4日間内服する群とプラセボ群にわけた。
一次アウトカムはCOVID-19のPCR陽性と症状の出現率。 A Randomized Trial of Hydroxychloroquine as Postexposure Prophylaxis for Covid-19
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2016638
#11.
ヒドロキシクロロキン内服とプラセボ群の結果に有意差なし 不整脈や死亡例はフォローアップ期間中にはみられなかった。 A Randomized Trial of Hydroxychloroquine as Postexposure Prophylaxis for Covid-19
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2016638 暴露後のヒドロキシクロロキン予防内服
#12.
暴露後のヒドロキシクロロキン予防内服 「発症」した大半の患者が自己申告によるものであり、実際のCOVID-19がどのぐらい含まれたかは定かではない。
特に介入群で、アドヒアランス不良が申告されている。
比較的「低リスク」の人が参加者の大半を占めている。
この研究を持って結論づけることは難しいが、現在進行中の60もの「予防内服」の研究へ様々な側面で課題や疑問を投げかける内容となった。 A Randomized Trial of Hydroxychloroquine as Postexposure Prophylaxis for Covid-19
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2016638
#13.
現在進行中の臨床試験 ・アメリカとカナダで、18歳以上の3000人を対象にRCTを施行中。
・ヒドロキシクロロキン800 mgを1回内服した後 6〜8時間後に600 mgを内服し、その後、600 mgを 1日1回連続4日間内服する群とプラセボ群にわけて 暴露後の予防内服の臨床試験を行なっている。
・患者、コメディカル、治験責任医師、分析者の4重盲検。
Post-exposure Prophylaxis / Preemptive Therapy for SARS-Coronavirus-2 (COVID-19 PEP)
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04308668
#14.
対象は以下にあてはまる人 Post-exposure Prophylaxis / Preemptive Therapy for SARS-Coronavirus-2 (COVID-19 PEP)
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04308668
#15.
現在進行中の臨床試験 ・一次アウトカムは、14日間でCOVID-19の無症候だった人が 症候性になる確率と、症候性患者の重症度の変化。
・ヒドロキシクロロキンの有害事象として出現しうる網膜疾患の
ある人やQT延長に関連する薬剤を内服している人は
除外されている。 Post-exposure Prophylaxis / Preemptive Therapy for SARS-Coronavirus-2 (COVID-19 PEP)
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04308668
#16.
ここまでのまとめ ・現在暴露後の予防は推奨されていない。
・現在RCTが行われており、結果待ち。
#17.
症例の続き さらに後輩Drより質問を受けた。
「日本人は子供のころ BCGワクチンを接種しているので、 COVID-19の死亡者が少ない、という話もありますね。 実際のところどうなんでしょうか? 」
#18.
BCGワクチンは予防効果はある?
#19.
なぜBCGワクチンが脚光をあびたのか 2020年3月末にプレプリントで「BCGワクチン接種政策とCOVID-19の罹患率・死亡率の減少は相関する」という論文が掲載された。
#20.
なぜBCGワクチンが脚光をあびたのか ・BCGワクチン接種を全国民に行っていない国(イタリア、オラ ンダ、アメリカ、レバノン、ベルギー)の死亡率と罹患率は、 BCG接種を全国民に推奨している国(日本や中国など)より 高いようにみえた。
・BCGワクチンには、非特異的な免疫反応を誘導し、 種々のウイルスや細菌感染への保護的な効果が、以前から 期待されていた。
Correlation between universal BCG vaccination policy and reduced morbidity and mortality for COVID-19: an epidemiological study
https://doi.org/10.1101/2020.03.24.20042937
#21.
一方で以下の指摘もあった ・個人のデータではなく人口に基づいて解析しており、 交絡因子が多い。
・何十年も前の小児期に接種したBCGが、COVID-19を 改善するとは考えにくい。
・BCGワクチンのオフターゲット効果(結核以外の感染症に効果 をもたらすこと)が他のワクチンによって 変更されている可能性があるのではないか。
Correlation between universal BCG vaccination policy and reduced morbidity and mortality for COVID-19: an epidemiological study
https://doi.org/10.1101/2020.03.24.20042937
#22.
観察研究@イスラエル
#23.
観察研究@イスラエル ・イスラエルでは、1955年から1982年にかけてすべての新生児 を対象にBCGワクチンを接種していた。
・1982年、全国民のカバー率90%を達成したことから制度を 変更。以降、結核の有病率が高い国からの移民のみ BCGワクチンを接種してきた。
SARS-CoV-2 Rates in BCG-Vaccinated and Unvaccinated Young Adults
http://jamanetwork.com/article.aspx?doi=10.1001/jama.2020.8189
#24.
観察研究@イスラエル ・イスラエルで、BCGワクチン接種がルーチンに行われていた 1979年-1981年生まれ(現39歳-41歳)と、制度変更後の BCGワクチン接種をルーチンにしていない群1983年-1985年 (現35-37歳)での観察研究。
SARS-CoV-2 Rates in BCG-Vaccinated and Unvaccinated Young Adults
http://jamanetwork.com/article.aspx?doi=10.1001/jama.2020.8189
#25.
観察研究@イスラエル 両群の差は1.3%(95% 信頼区間は−0.3% から 2.9%) BCG接種 vs 非接種では統計学的な有意差なし! SARS-CoV-2 Rates in BCG-Vaccinated and Unvaccinated Young Adults
http://jamanetwork.com/article.aspx?doi=10.1001/jama.2020.8189
#26.
観察研究@イスラエル ・BCGは結核感染予防だけでなく、非特異的に免疫システムを 強化していることが示唆されているものの、 今回の研究からBCG接種の有効性は示唆されなかった。
・この研究のlimitationにはイスラエル生まれでない ワクチン接種歴も不明な人が全人口に含まれていること等が ある。今後もデータの蓄積が期待される。
SARS-CoV-2 Rates in BCG-Vaccinated and Unvaccinated Young Adults
http://jamanetwork.com/article.aspx?doi=10.1001/jama.2020.8189
#27.
国際的なスタンス ・WHOは2020年5月末現在、COVID-19予防目的の BCGワクチン接種は推奨していない。
・世界各国で医療従事者に対してBCG投与を行い、 死亡率や重症率を減らすかどうか評価するためのRCTが進行中。 WHO ホームページ
https://www.who.int/news-room/commentaries/detail/bacille-calmette-gu%C3%A9rin-(bcg)-vaccination-and-covid-19 Considering BCG vaccination to reduce the impact of COVID-19
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31025-4
#28.
進行中の前向きな研究@オランダ ・1500人が対象のRCT、四重盲検試験。
・0.1mlのBCGワクチン vs 0.1mlの生理食塩水(プラセボ)で比較。
・一次アウトカムは最大180日間でCOVID-19患者と 直接接触した医療従事者の欠勤を減らせるかどうか。
・2020年10月末に終了予定。
Reducing Health Care Workers Absenteeism in Covid-19 Pandemic Through BCG Vaccine (BCG-CORONA)
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04328441
#29.
進行中の前向きな研究@南アフリカ ・500人が対象のRCT、二重盲検試験。
・0.1mlのBCGワクチンvs0.1mlの生理食塩水(プラセボ) で比較。
・一次アウトカムは最大52週間での医療従事者の COVID-19による入院率。
・2021年4月末に終了予定。
BCG Vaccination for Healthcare Workers in COVID-19 Pandemic
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04379336
#30.
進行中の前向きな研究@エジプト ・100人を対象にしたケースコントロールスタディ。
・ツベルクリンテスト陽性のCOVID-19患者とツベルクリンテスト 陰性のCOVID-19患者に対し、一次アウトカムを 肺炎の重症度、ICU入室の必要性で設定。
・2020年の6月末に終了予定。 Outcome of COVID-19 Cases Based on Tuberculin Test: Can Previous BCG Alter the Prognosis ?
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04347876
#31.
進行中の前向きな研究@オーストラリア ・10078人を対象にしたRCT、四重盲検試験。
・0.1mlのBCGワクチン vs 0.1mlの生理食塩水(プラセボ)で比較。
・参加者はスマートフォンのアプリによるフォロー、採血を受ける。
・一次アウトカムはCOVID-19の罹患率と重症になる割合。
・2022年の3月末終了予定。
BCG Vaccination to Protect Healthcare Workers Against COVID-19 (BRACE)https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04327206
#32.
進行中の前向きな研究@アメリカ ・1800人が対象のRCT、二重盲検試験。
・0.1mlのBCGワクチン vs 0.1mlの生理食塩水(プラセ ボ)で比較。
・一次アウトカムは最大6ヶ月のCOVID-19発生率。
・2021年4月末に終了予定。
BCG Vaccine for Health Care Workers as Defense Against COVID 19 (BADAS) https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04348370
#33.
ここまでのまとめ ・BCG接種によるCOVID-19予防のエビデンスは 2020年5月末時点では確認されていない。
・各国でBCGに対するRCTが進行中。
#34.
症例の続き 再び、後輩Drより質問を受けた。
「ワクチンの開発状況っていまどうなんでしょうか? 第2波は必ず来るなんていう人もいますし、 早く世の中に広まってほしいです・・・ 」
#35.
2020年5月時点でのワクチン開発の状況は?
#36.
2020年5月末でのワクチン開発の状況 ・現在、mRNAワクチン、DNAワクチン、不活化ワクチン、 タンパク質組み換えワクチンなど様々なワクチン候補の 開発・評価が行われている。
・ワクチンの種類によって安全性や免疫原性、生産スピードや 生産費用など世界的な需要を満たすために必要な特徴が異なる。 Up to date
https://www.uptodate.com/contents/coronavirus-disease-2019-covid-19-epidemiology-virology-clinical-features-diagnosis-and-prevention
#37.
2020年5月30日時点の臨床試験 10種類のワクチンで臨床試験が行われている。 これに加えて約120種類のワクチンが臨床試験の候補としてあがっている。
#38.
基礎知識:ワクチンの種類と違い
#39.
アデノウイルスベクターワクチン@中国
#40.
臨床試験①アデノウイルスベクターワクチン@中国 ・中国・武漢で健康な成人(18歳から60歳)計195名に対し、 アデノウイルスベクターのワクチンを低用量、中等量、高用量 の3つのグループに分けて投与。
・単一施設、オープンラベル、非ランダム化比較試験の 第1相試験。
・一次アウトカムはワクチン接種後の7日目までの有害事象。
Safety, Tolerability, and Immunogenicity of a Recombinant Adenovirus type-5 Vectored COVID-19 Vaccine: A Dose-Escalation, Open-Label, Non-Randomised, First-In-Human Trial
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31208-3
#41.
注射部位の有害事象 Safety, Tolerability, and Immunogenicity of a Recombinant Adenovirus type-5 Vectored COVID-19 Vaccine: A Dose-Escalation, Open-Label, Non-Randomised, First-In-Human Trial
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31208-3
#42.
全身の有害事象 発熱、頭痛、疲労感は用量に関係なく30%以上の症例で確認 Safety, Tolerability, and Immunogenicity of a Recombinant Adenovirus type-5 Vectored COVID-19 Vaccine: A Dose-Escalation, Open-Label, Non-Randomised, First-In-Human Trial
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31208-3
#43.
臨床試験①アデノウイルスベクターワクチン@中国 SARS-CoV-2に対する中和抗体をday14とday28に測定したところ、day14に上昇し始め、day28にピークとなった。
抗体価は高用量を注射したグループで高く、day28までに高用量グループの75%、中用量と低用量のグループの50%で4倍の増加を認めた。
Safety, Tolerability, and Immunogenicity of a Recombinant Adenovirus type-5 Vectored COVID-19 Vaccine: A Dose-Escalation, Open-Label, Non-Randomised, First-In-Human Trial
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31208-3
#44.
臨床試験②mRNAワクチン@アメリカ ・mRNAワクチンを開発しているモデルナは第1相試験の 中間報告を公表。
・開発中のmRNAワクチンを少量から高用量接種した 参加者8人全員で結合抗体と中和抗体の産生を認めた。
・Grade 3以上の有害事象は、高用量接種した1名に 紅斑を認めただけだった。
・フェーズ3を2020年6月に開始する予定。 https://investors.modernatx.com/news-releases/news-release-details/moderna-announces-positive-interim-phase-1-data-its-mrna-vaccine
#45.
JAMA viewpointから
#46.
JAMA viewpointから ・革新的な治療法が見いだされるまで数ヶ月かかり、 ワクチンを生産するのには1年かかる。
・2020年5月末現在、12カ国以上で10のワクチンの候補の 臨床試験と100以上の前臨床試験が行われている。
・コロナウイルスの脅威は世界共通であり、ワクチンや 治療の開発には国際的な協力が必要である。 The Equitable Distribution of COVID-19 Therapeutics and Vaccines
http://jamanetwork.com/article.aspx?doi=10.1001/jama.2020.6641
#47.
まとめ ・アデノウイルスベクターワクチン、mRNAワクチンの 第1相試験結果が報告されている。
・ウイルスベクターワクチン・核酸ワクチンに今のところ重篤な 副作用は報告されておらず、抗体の産生が確認されている。
・通常ワクチンの開発には年単位を要し、 世界各国の協力が不可欠である。