テキスト全文
#2.
はじめに 2 健康診断で高LDLコレステロール血症 とりあえずスタチン処方しておくか こんな診療していませんか︖ #3.
はじめに 3 ・これから脂質異常症の勉強を始める専攻医、研修医 対象 ・「とりあえずスタチン」から卒業したい⽅ ・健診後の脂質異常症精査に対して不安のある⽅ #4.
略語に関して 4 本スライドでは以下の略語を⽤いる 略語 LDL-C LDL-コレステロール HDL-C HDL-コレステロール TG 中性脂肪、トリグリセリド Non-HDL-C Non-HDL-コレステロール[総コレステロール ー HDL-C] FH 家族性⾼コレステロール⾎症 #5.
はじめに 5 LDLコレステロールを中⼼に解説 脂 質 異 常 症 に は L D L- C 、 H D L- C 、 T G 、 N o n - H D L- C の 異 常 が 含 ま れ る 。 いずれも動脈硬化性⼼⾎管疾患(虚⾎性⼼疾患、脳⾎管疾患)のリスクとなるが 治 療 介 ⼊ に よ り 予 後 改 善 が 明 ら か に な っ て い る の は L D L- C の み で あ る 。 本スライドでも特に⾔及がなければ 健 康 診 断 で ⾼ L D L コ レ ス テ ロ ー ル ⾎ 症 ( L D L- C ≧ 1 4 0 m g / d L ) が 指 摘 さ れ た 場 合 に 関しての解説を⾏う。 なお他の脂質項⽬は動脈硬化性疾患のリスク評価因⼦として⽤いることがある。 #6. 脂質異常症対応フローチャート 健康診断で脂質異常症 全例に 動脈硬化リスクの確認 □⾼⾎圧 □糖尿病 □慢性腎臓病 □喫煙 □⾼齢 □性別 □肥満 □家族歴 <続発性脂質異常症の確認> □ ネフローゼ症候群 □ 糖尿病 □ 甲状腺機能低下症 □ 薬剤性(利尿剤・β遮断薬・ステロイド・経⼝避妊薬・シクロスポリン) <家族性⾼コレステロール⾎症(FH)の確認> ・⾼LDL-C⾎症(未治療時のLDL-C値 180mg/dL以上) ・腱⻩⾊腫(⼿背、肘、膝、アキレス腱肥厚)あるいは⽪膚結節性⻩⾊腫 ・FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(第⼀度近親者) □ 冠動脈疾患 □ アテローム⾎栓性脳梗塞(アテロームを伴うその他の脳梗塞を含む) □ 糖尿病(耐糖能異常は含まない) □ 慢性腎臓病(CKD) □ 末梢動脈疾患(PAD) 10年間の動脈硬化性疾患発症リスクの確認 https://www.j-athero.org/jp/general/ge_tool2/ ⽣活指導 □⾷事療法 □運動療法 □禁煙 □節酒 □減量 2項⽬該当 あり (⼆次予防) <薬物療法> 薬剤 ⾼強度スタチン (ロスバスタチン) ・⼆次予防 ・超⾼リスク (10年リスク>20%) ・FH ・治療前LDL-C≧190mg/dL あり (⾼リスク) 中強度スタチン (アトルバスタチン) 10%以上 (⾼リスク) 対象者 低強度スタチン (プラバスタチン) ・2型糖尿病 [中強度スタチン推奨] ・⾼リスク (10年リスク≧10%) #7. 脂質異常症対応フローチャート 健康診断で脂質異常症 全例に 動脈硬化リスクの確認 □⾼⾎圧 □糖尿病 □慢性腎臓病 □喫煙 □⾼齢 □性別 □肥満 □家族歴 <続発性脂質異常症の確認> □ ネフローゼ症候群 □ 糖尿病 □ 甲状腺機能低下症 □ 薬剤性(利尿剤・β遮断薬・ステロイド・経⼝避妊薬・シクロスポリン) <家族性⾼コレステロール⾎症(FH)の確認> ・⾼LDL-C⾎症(未治療時のLDL-C値 180mg/dL以上) ・腱⻩⾊腫(⼿背、肘、膝、アキレス腱肥厚)あるいは⽪膚結節性⻩⾊腫 ・FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(第⼀度近親者) □ 冠動脈疾患 □ アテローム⾎栓性脳梗塞(アテロームを伴うその他の脳梗塞を含む) □ 糖尿病(耐糖能異常は含まない) □ 慢性腎臓病(CKD) □ 末梢動脈疾患(PAD) 10年間の動脈硬化性疾患発症リスクの確認 https://www.j-athero.org/jp/general/ge_tool2/ ⽣活指導 □⾷事療法 □運動療法 □禁煙 □節酒 □減量 2項⽬該当 あり (⼆次予防) <薬物療法> 薬剤 ⾼強度スタチン (ロスバスタチン) ・⼆次予防 ・超⾼リスク (10年リスク>20%) ・FH ・治療前LDL-C≧190mg/dL あり (⾼リスク) 中強度スタチン (アトルバスタチン) 10%以上 (⾼リスク) 対象者 低強度スタチン (プラバスタチン) ・2型糖尿病 [中強度スタチン推奨] ・⾼リスク (10年リスク≧10%) #8.
続発性脂質異常症の確認 8 頻度の⾼い原因を確認する 続発性脂質異常症の原因 薬剤性 1 1% 蛋⽩尿(ネフローゼ症候群を含む) 9% 糖尿病 8% 甲状腺機能低下症 1% 原発性胆汁性肝硬変 クッシング症候群、褐⾊細胞腫、閉塞性⻩疸 < 1% データなし * Secondary causes of dyslipidemia Am J Cardiol. 2012 Sep 15;110(6):823-5. ⾼コレステロール⾎症をきたす原因を抜粋し⼀部改変 #9.
続発性脂質異常症の確認 9 内服薬、尿検査、HbA1c、TSHの確認 原因 確認する項⽬ 薬剤性 利尿剤・β遮断薬・ステロイド・経⼝避妊薬 シクロスポリンの内服 ネフローゼ症候群 尿⼀般定性(尿蛋⽩陽性なら尿蛋⽩定量+尿Cr追加) 糖尿病 HbA1c 甲状腺機能低下症 TSH ・ 上 記 検 査 に 該 当 す る 場 合 は そ れ ぞ れ の 治 療 を ⾏ っ た 上 で L D L- C を 再 検 す る ・治療抵抗性の脂質異常症や、他のデータ異常がある場合は 頻度の低い続発性脂質異常症の可能性も検討する #10. 脂質異常症対応フローチャート 健康診断で脂質異常症 全例に 動脈硬化リスクの確認 □⾼⾎圧 □糖尿病 □慢性腎臓病 □喫煙 □⾼齢 □性別 □肥満 □家族歴 <続発性脂質異常症の確認> □ ネフローゼ症候群 □ 糖尿病 □ 甲状腺機能低下症 □ 薬剤性(利尿剤・β遮断薬・ステロイド・経⼝避妊薬・シクロスポリン) <家族性⾼コレステロール⾎症(FH)の確認> ・⾼LDL-C⾎症(未治療時のLDL-C値 180mg/dL以上) ・腱⻩⾊腫(⼿背、肘、膝、アキレス腱肥厚)あるいは⽪膚結節性⻩⾊腫 ・FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(第⼀度近親者) □ 冠動脈疾患 □ アテローム⾎栓性脳梗塞(アテロームを伴うその他の脳梗塞を含む) □ 糖尿病(耐糖能異常は含まない) □ 慢性腎臓病(CKD) □ 末梢動脈疾患(PAD) 10年間の動脈硬化性疾患発症リスクの確認 https://www.j-athero.org/jp/general/ge_tool2/ ⽣活指導 □⾷事療法 □運動療法 □禁煙 □節酒 □減量 2項⽬該当 あり (⼆次予防) <薬物療法> 薬剤 ⾼強度スタチン (ロスバスタチン) ・⼆次予防 ・超⾼リスク (10年リスク>20%) ・FH ・治療前LDL-C≧190mg/dL あり (⾼リスク) 中強度スタチン (アトルバスタチン) 10%以上 (⾼リスク) 対象者 低強度スタチン (プラバスタチン) ・2型糖尿病 [中強度スタチン推奨] ・⾼リスク (10年リスク≧10%) #11.
家族性⾼コレステロール⾎症 早期に診断して⾼強度スタチンを導⼊ ⼀般⼈⼝の300⼈に1⼈程度にみられる常染⾊体優性遺伝形式の疾患1) 未治療では男性で40歳代、⼥性で50歳代で冠動脈疾患を発症するため 早期に発⾒して⾼強度スタチンを含めた薬物治療を⾏う2) 以下の場合は専⾨医への紹介を検討する ・ホモ接合体が疑われる場合(総コレステロール>450mg /dL、LDL>370mg /dL) ・ヘテロ接合体をより強く疑うLDL>250mg /dL+スタチンに反応が乏しい場合 1)成⼈家族性⾼コレステロール⾎症診療ガイドライン 2022 2) Diagnosis and treatment of familial hypercholesterolaemia PMID:23416791 11 #12.
家族性⾼コレステロール⾎症 2項⽬以上を満たす場合に診断する 成⼈家族性⾼コレステロール⾎症の診断基準 ・ ⾼ L D L- C ⾎ 症 ( 未 治 療 時 の L D L - C 値 ︓ 1 8 0 m g / d L 以 上 ) ・腱⻩⾊腫(⼿背、肘、膝、アキレス腱肥厚)あるいは⽪膚結節性⻩⾊腫 ・FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(第⼀度近親者) * 上 記 を 満 た さ な く て も L D L- C ≧ 1 9 0 m g / d L で あ れ ば 薬 物 療 法 を 検 討 *アキレス腱肥厚︓X線撮影で男性≧8.0mm、⼥性≧7.5mm あるいは超⾳波で男性≧6.0mm、⼥性≧5.5mm *⽪膚結節性⻩⾊腫に眼瞼⻩⾊腫は含まない アキレス腱レントゲン1) *早発性冠動脈疾患︓男性55歳未満、⼥性65歳未満で発症した冠動脈疾患 1)成⼈家族性⾼コレステロール⾎症診療ガイドライン 2022 12 #13.
家族性⾼コレステロール⾎症 ⻩⾊腫 13 * 成⼈家族性⾼コレステロール⾎症診療ガイドライン2022 #14. 脂質異常症対応フローチャート 健康診断で脂質異常症 全例に 動脈硬化リスクの確認 □⾼⾎圧 □糖尿病 □慢性腎臓病 □喫煙 □⾼齢 □性別 □肥満 □家族歴 <続発性脂質異常症の確認> □ ネフローゼ症候群 □ 糖尿病 □ 甲状腺機能低下症 □ 薬剤性(利尿剤・β遮断薬・ステロイド・経⼝避妊薬・シクロスポリン) <家族性⾼コレステロール⾎症(FH)の確認> ・⾼LDL-C⾎症(未治療時のLDL-C値 180mg/dL以上) ・腱⻩⾊腫(⼿背、肘、膝、アキレス腱肥厚)あるいは⽪膚結節性⻩⾊腫 ・FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(第⼀度近親者) □ 冠動脈疾患 □ アテローム⾎栓性脳梗塞(アテロームを伴うその他の脳梗塞を含む) □ 糖尿病(耐糖能異常は含まない) □ 慢性腎臓病(CKD) □ 末梢動脈疾患(PAD) 10年間の動脈硬化性疾患発症リスクの確認 https://www.j-athero.org/jp/general/ge_tool2/ ⽣活指導 □⾷事療法 □運動療法 □禁煙 □節酒 □減量 2項⽬該当 あり (⼆次予防) <薬物療法> 薬剤 ⾼強度スタチン (ロスバスタチン) ・⼆次予防 ・超⾼リスク (10年リスク>20%) ・FH ・治療前LDL-C≧190mg/dL あり (⾼リスク) 中強度スタチン (アトルバスタチン) 10%以上 (⾼リスク) 対象者 低強度スタチン (プラバスタチン) ・2型糖尿病 [中強度スタチン推奨] ・⾼リスク (10年リスク≧10%) #15.
薬物療法の適⽤ 15 ⼆次予防患者では全例で薬物療法 冠動脈疾患、アテローム⾎栓性脳梗塞*の既往が ある患者に対する⼆次予防(再発予防)では全例で⾼強度スタチンを開始する ⼼ 筋 梗 塞 後 は 1 0 年 間 の ⼼ 筋 梗 塞 再 発 9 . 4 % 、 ⼼ 疾 患 死 亡 1 0 . 1% 、 総 死 亡 2 0 . 4 % 1 ) と⾮常に⾼い割合であるため、 L D L- C の 値 に よ ら ず ス タ チ ン を 開 始 す る こ と が 推 奨 さ れ て い る 。 *頭蓋内外動脈の50%以上の狭窄、または⼸部⼤動脈粥腫(最⼤肥厚4mm以上)を伴う その他の脳梗塞も含む 1)Current status of the background of patients with coronary artery disease in Japan PMID:16998255 #16. 脂質異常症対応フローチャート 健康診断で脂質異常症 全例に 動脈硬化リスクの確認 □⾼⾎圧 □糖尿病 □慢性腎臓病 □喫煙 □⾼齢 □性別 □肥満 □家族歴 <続発性脂質異常症の確認> □ ネフローゼ症候群 □ 糖尿病 □ 甲状腺機能低下症 □ 薬剤性(利尿剤・β遮断薬・ステロイド・経⼝避妊薬・シクロスポリン) <家族性⾼コレステロール⾎症(FH)の確認> ・⾼LDL-C⾎症(未治療時のLDL-C値 180mg/dL以上) ・腱⻩⾊腫(⼿背、肘、膝、アキレス腱肥厚)あるいは⽪膚結節性⻩⾊腫 ・FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(第⼀度近親者) □ 冠動脈疾患 □ アテローム⾎栓性脳梗塞(アテロームを伴うその他の脳梗塞を含む) □ 糖尿病(耐糖能異常は含まない) □ 慢性腎臓病(CKD) □ 末梢動脈疾患(PAD) 10年間の動脈硬化性疾患発症リスクの確認 https://www.j-athero.org/jp/general/ge_tool2/ ⽣活指導 □⾷事療法 □運動療法 □禁煙 □節酒 □減量 2項⽬該当 あり (⼆次予防) <薬物療法> 薬剤 ⾼強度スタチン (ロスバスタチン) ・⼆次予防 ・超⾼リスク (10年リスク>20%) ・FH ・治療前LDL-C≧190mg/dL あり (⾼リスク) 中強度スタチン (アトルバスタチン) 10%以上 (⾼リスク) 対象者 低強度スタチン (プラバスタチン) ・2型糖尿病 [中強度スタチン推奨] ・⾼リスク (10年リスク≧10%) #17.
薬物療法の適⽤ 17 併存症を確認してスタチンを開始 糖尿病(耐糖能異常は含まない)、慢性腎臓病、末梢動脈疾患の 併存症がある患者は⾼リスクでありスタチンを開始する ・糖尿病 ︓ 全 例 で 中 強 度 ス タ チ ン を 投 与 1) ・慢性腎臓病 ︓Grade3以上(GFR≦59)はスタチン投与で⼼⾎管イベント、全死亡減少 G r a d e 5 ( G F R < 1 5 ) や 透 析 患 者 で は 同 様 の 効 果 は 得 ら れ な い 2) ・ 末 梢 動 脈 疾 患 ︓ ス タ チ ン 投 与 で 全 死 亡 、 ⼼ ⾎ 管 死 亡 率 が 減 少 す る と の 報 告 あ り 3) 『2022年改訂版 末梢動脈疾患ガイドライン』から 無症候性に対してのスタチン投与も推奨されている 1)HbA1c and the risks for all-cause and cardiovascular mortality in the general Japanese population: NIPPON DATA90 2)Meta-analysis of statins in chronic kidney disease: who benefits? PMID:28340216 3)2017 ESC Guidelines on the Diagnosis and Treatment of Peripheral Arterial Diseases PMID:28886620 PMID:23877989 #18. 脂質異常症対応フローチャート 健康診断で脂質異常症 全例に 動脈硬化リスクの確認 □⾼⾎圧 □糖尿病 □慢性腎臓病 □喫煙 □⾼齢 □性別 □肥満 □家族歴 <続発性脂質異常症の確認> □ ネフローゼ症候群 □ 糖尿病 □ 甲状腺機能低下症 □ 薬剤性(利尿剤・β遮断薬・ステロイド・経⼝避妊薬・シクロスポリン) <家族性⾼コレステロール⾎症(FH)の確認> ・⾼LDL-C⾎症(未治療時のLDL-C値 180mg/dL以上) ・腱⻩⾊腫(⼿背、肘、膝、アキレス腱肥厚)あるいは⽪膚結節性⻩⾊腫 ・FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(第⼀度近親者) □ 冠動脈疾患 □ アテローム⾎栓性脳梗塞(アテロームを伴うその他の脳梗塞を含む) □ 糖尿病(耐糖能異常は含まない) □ 慢性腎臓病(CKD) □ 末梢動脈疾患(PAD) 10年間の動脈硬化性疾患発症リスクの確認 https://www.j-athero.org/jp/general/ge_tool2/ ⽣活指導 □⾷事療法 □運動療法 □禁煙 □節酒 □減量 2項⽬該当 あり (⼆次予防) <薬物療法> 薬剤 ⾼強度スタチン (ロスバスタチン) ・⼆次予防 ・超⾼リスク (10年リスク>20%) ・FH ・治療前LDL-C≧190mg/dL あり (⾼リスク) 中強度スタチン (アトルバスタチン) 10%以上 (⾼リスク) 対象者 低強度スタチン (プラバスタチン) ・2型糖尿病 [中強度スタチン推奨] ・⾼リスク (10年リスク≧10%) #19.
動脈硬化性疾患発症リスクの確認 19 ⾼リスクに対してスタチン開始 「動脈硬化性疾患発症予測・脂質管理⽬標設定アプリ」で 10年間の動脈硬化性疾患発症リスクの確認する ⾼リスク(10%以上)であればスタチンを開始する U R L : h t t p s : / / w w w. j -a t h e r o. o r g / j p / g e n e ra l / g e _ t o o l 2 / *今までエビデンスの乏しかった75歳以上の⾼齢者に対しても 有 効 性 が あ る と の 報 告 が 徐 々 に 出 て き て い る 1)2) 余命やリスク、副作⽤等を総合的に踏まえて適⽤を判断する *スタチンの投与基準を20%以上としているガイドラインや参考書もある 1)Association of Statin Use With All-Cause and Cardiovascular Mortality in US Veterans 75 Years and Older PMID:32633800 2)Efficacy and safety of lowering LDL cholesterol in older patients: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials PMID:33186535 #20. 脂質異常症対応フローチャート 健康診断で脂質異常症 全例に 動脈硬化リスクの確認 □⾼⾎圧 □糖尿病 □慢性腎臓病 □喫煙 □⾼齢 □性別 □肥満 □家族歴 <続発性脂質異常症の確認> □ ネフローゼ症候群 □ 糖尿病 □ 甲状腺機能低下症 □ 薬剤性(利尿剤・β遮断薬・ステロイド・経⼝避妊薬・シクロスポリン) <家族性⾼コレステロール⾎症(FH)の確認> ・⾼LDL-C⾎症(未治療時のLDL-C値 180mg/dL以上) ・腱⻩⾊腫(⼿背、肘、膝、アキレス腱肥厚)あるいは⽪膚結節性⻩⾊腫 ・FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(第⼀度近親者) □ 冠動脈疾患 □ アテローム⾎栓性脳梗塞(アテロームを伴うその他の脳梗塞を含む) □ 糖尿病(耐糖能異常は含まない) □ 慢性腎臓病(CKD) □ 末梢動脈疾患(PAD) 10年間の動脈硬化性疾患発症リスクの確認 https://www.j-athero.org/jp/general/ge_tool2/ ⽣活指導 □⾷事療法 □運動療法 □禁煙 □節酒 □減量 2項⽬該当 あり (⼆次予防) <薬物療法> 薬剤 ⾼強度スタチン (ロスバスタチン) ・⼆次予防 ・超⾼リスク (10年リスク>20%) ・FH ・治療前LDL-C≧190mg/dL あり (⾼リスク) 中強度スタチン (アトルバスタチン) 10%以上 (⾼リスク) 対象者 低強度スタチン (プラバスタチン) ・2型糖尿病 [中強度スタチン推奨] ・⾼リスク (10年リスク≧10%) #21.
薬物療法 21 Fire and Forgetの考え⽅を元に解説 ・脂質異常症の治療には⼤きく分けて以下の2つの考え⽅があるが、 本スライドではFire and Forgetの考え⽅を元に解説を⾏う Fire and Forget Tr e a t t o Ta r g e t ・⽶国のガイドラインで採⽤ ・⽇本や欧州のガイドラインで採⽤ ・対象者のリスク・背景を踏まえて ・LDL-Cの⽬標値に到達するように 適切な強度のスタチンを開始することが 重要とする考え⽅ ・LDL-Cの⽬標値は定めていない 薬剤を調整する考え⽅ ・絶対的な⽬標を決めるほどの根拠はなく、 ⽇本のガイドラインでも「努⼒⽬標値」 であるとの記載がある #22.
薬物療法 22 適切な強度のスタチンを決定 ・対象者のリスク・背景を踏まえて適切な強度のスタチンを開始する ・スタチンは複数種類存在するが、 保険適応の範囲で⼗分な効果が期待できるのは以下の3種類のみである 薬剤名 ⾼強度スタチン 中強度スタチン ロスバスタチン (クレストール®) アトルバスタチン 投与量 1回10mg 1⽇1回 *初回投与は プラバスタチン ・⼆次予防 ・超⾼リスク(10年間の動脈硬化性疾患発症リスク>20%) 2.5-5mg 1⽇1回で ・家族性⾼コレステロール⾎症 副作⽤を確認し増量 ・治療前LDL-C ≧ 190mg/dL 1回5-10mg 1⽇1回 (リピトール®) 低強度スタチン 対象者 ・2型糖尿病[中強度スタチン推奨] ・⾼リスク(10年間の動脈硬化性疾患発症リスク≧10%) 1回5-10mg 1⽇1回 (メバロチン®) * Common Diseases Up to date #23.
管理⽬標値 23 ・前述の通り動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版に管理⽬標値(下表)が 記載されているが絶対的な⽬標を決めるほどの根拠はない 参考までにガイドラインに記載の表を転載する リスク区分別脂質管理⽬標値 治療⽅針の原則 ⼀時予防 ⼆次予防 管理区分 *動脈硬化疾患予防ガイドライン2022年版 脂質管理⽬標値(mg/dL) LDL-C Non-HDL-C 低リスク <160 <190 中リスク <140 <170 ⾼リスク <120 <100*1 <150 <130*1 冠動脈疾患または アテローム⾎栓性 脳梗塞(明らかな アテローム*4 を伴う その他の脳梗塞を 含む)の既往 <100 <70*2 <130 <100*2 TG HDL-C <150(空腹時)*3 <175(随時) ≧40 *1)糖尿病において、PAD、細⼩⾎管症(網膜症、腎症、神経障害)合併時、 または喫煙ありの場合に考慮する。 *2)「急性冠症候群」、「家族性⾼コレステロール⾎症」、「糖尿病」、 「冠動脈疾患とアテローム⾎栓性脳梗塞(明らかなアテロームを伴う その他の脳梗塞を含む)」の4病態のいずれかを合併する場合に考慮する。 ・⼀次予防における管理⽬標達成の⼿段は⾮薬物療法が基本であるが、 いずれの管理区分においてもLDL-Cが180mg/dL以上の場合は薬物治療を 考慮する。家族性⾼コレステロール⾎症の可能性も念頭に置いておく。 ・まずLDL-Cの管理⽬標値を達成し、次にnon-HDL-Cの達成を⽬指す。 LDL-Cの管理⽬標を達成してもnon-HDL-Cが⾼い場合は⾼TG⾎症を伴うことが 多く、その管理が重要となる。低HDL-Cについては基本的には⽣活習慣の 改善で対処すべきである。 ・これらの値はあくまでも到達努⼒⽬標であり、⼀次予防(低・中リスク)に おいてはLDL-C低下率20-30%も⽬標値としてなり得る。 *3)10時間以上の絶⾷を「空腹時」とする。ただし⽔やお茶など カロリーのない⽔分の摂取は可とする。それ以外の条件を「随時」とする。 *4)頭蓋内外動脈の50%以上の狭窄、または⼸部⼤動脈粥腫(最⼤肥厚4mm以上) #24.
スタチンの副作⽤ スタチンの強度が上がることでは副作⽤のリスクも⾼まると考えられている ▶横紋筋融解症 ・毎年約2万⼈に1⼈の頻度で発⽣ ▶筋⾁痛、脱⼒ ・スタチン開始から数週間〜数ヶ⽉で発⽣ ・ 発 症 率 2 - 1 1% ・⾎清CKは上昇しないこともある ▶肝機能障害、糖尿病、急性腎障害 ▶催奇形性︓妊婦、妊娠の可能性のある⼥性では禁忌、授乳中も避ける 24 #25. 脂質異常症対応フローチャート 健康診断で脂質異常症 全例に 動脈硬化リスクの確認 □⾼⾎圧 □糖尿病 □慢性腎臓病 □喫煙 □⾼齢 □性別 □肥満 □家族歴 <続発性脂質異常症の確認> □ ネフローゼ症候群 □ 糖尿病 □ 甲状腺機能低下症 □ 薬剤性(利尿剤・β遮断薬・ステロイド・経⼝避妊薬・シクロスポリン) <家族性⾼コレステロール⾎症(FH)の確認> ・⾼LDL-C⾎症(未治療時のLDL-C値 180mg/dL以上) ・腱⻩⾊腫(⼿背、肘、膝、アキレス腱肥厚)あるいは⽪膚結節性⻩⾊腫 ・FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(第⼀度近親者) □ 冠動脈疾患 □ アテローム⾎栓性脳梗塞(アテロームを伴うその他の脳梗塞を含む) □ 糖尿病(耐糖能異常は含まない) □ 慢性腎臓病(CKD) □ 末梢動脈疾患(PAD) 10年間の動脈硬化性疾患発症リスクの確認 https://www.j-athero.org/jp/general/ge_tool2/ ⽣活指導 □⾷事療法 □運動療法 □禁煙 □節酒 □減量 2項⽬該当 あり (⼆次予防) <薬物療法> 薬剤 ⾼強度スタチン (ロスバスタチン) ・⼆次予防 ・超⾼リスク (10年リスク>20%) ・FH ・治療前LDL-C≧190mg/dL あり (⾼リスク) 中強度スタチン (アトルバスタチン) 10%以上 (⾼リスク) 対象者 低強度スタチン (プラバスタチン) ・2型糖尿病 [中強度スタチン推奨] ・⾼リスク (10年リスク≧10%) #26.
動脈硬化リスクの確認 26 他の動脈硬化リスクも併せて管理する 脂質異常症の治療⽬的は動脈硬化性疾患の発症予防である そのため他の動脈硬化リスクも合わせて管理することが重要である ー動脈硬化リスクー □⾼⾎圧 □糖尿病 □慢性腎臓病 □喫煙 □⾼齢 □性別(男性or閉経後⼥性) □肥満 □家族歴 * 動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版 #27.
⽣活指導 27 ⾷事療法 有酸素運動 ・⾷事バランスガイド、 運動療法 筋⼒トレーニング DASH⾷、地中海⾷などを参考に指導 ・⼼筋梗塞後の運動療法は薬物療法と 同等かそれ以上の効果が期待できる Ⓒ⽇本運動疫学会、国⽴健康・栄養研究所、東京医科⼤学公衆衛⽣学分野、厚⽣労働科学研究費補助⾦20FA0601(2021) ⼀部改変 CC BY-NC-SA 3.0を元に提供 禁煙 節酒 減量 #28.
おまけ ・低〜中リスクに対するスタチン ・⾼TG⾎症の対応 ・LDL-Cの測定⽅法 #29.
低〜中リスクに対するスタチン 低〜中リスクの患者にスタチンは使⽤しない M E G A s t u d y 1)の 結 果 と ス タ チ ン の 副 作 ⽤ を 踏 ま え る と 低〜中リスクの患者にスタチンを使⽤するメリットは少ないと考える ⽇本⼈におけるプラバスタチンの冠動脈疾患⼀次予防効果2) (MEGA study) MEGA study 低〜中リスク患者に対してスタチンの有効性を検証 ・⼼筋梗塞発症率はNNTが5.3年間で255 →255⼈へのスタチン投与で1⼈の⼼筋梗塞を予防 ・⼼⾎管死/突然死は有意差なし 1) Primary prevention of cardiovascular disease with pravastatin in Japan (MEGA Study): a prospective randomised controlled trial PMID: 17011942 2)動脈硬化御三家 p.165の表2を転載 29 #30.
⾼ TG ⾎ 症 の 対 応 30 TG≧1000 m g / d L の場合にスタチンを考慮 ・ T G ≧ 1 0 0 0 m g / d L の 場 合 は 膵 炎 を 1 5 - 2 0 % で 発 症 す る 1)た め 薬 物 治 療 を 考 慮 す る ・⼆次性の要素を確認する︓ 肥満、飲酒、喫煙、薬剤(利尿剤、⾮選択性β遮断薬、ステロイドなど ) ネフローゼ症候群、CKD、糖尿病、クッシング症候群、褐⾊細胞腫 ・全例で⽣活指導(⾷事療法、運動療法など)を⾏う ・第⼀選択薬︓スタチン * ⽇ 本 の ガ イ ド ラ イ ン 2)で は フ ィ ブ ラ ー ト が 推 奨 さ れ て い る が 基 本 的 に 使 ⽤ し な い 急 性 膵 炎 が 増 加 し た り 3) 、 ス タ チ ン と の 併 ⽤ で 横 紋 筋 融 解 症 が 増 加 す る リ ス ク が あ る 1)急性膵炎診療ガイドライン2021 第5版 2)動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 3) Lipid-modifying therapies and risk of pancreatitis: a meta-analysis PMID: 22910758 #31.
L D L- C の 測 定 ⽅ 法 31 健診後の初回受診では間接法で評価 L D L- C は 元 々 F r i e d e w a l d の 式 [ L D L- C = T C ー H D L- C ー T G / 5 ] を ⽤ い た 間接法で評価を⾏っていた。 近年、LDLを直接測定する直接法の精度が改善されたため通常診療の範囲であれば 直接法も許容されることとなった。(TG≧1000mg /dLの場合は正確性が担保できない) し か し 既 存 の エ ビ デ ン ス は 間 接 法 の L D L- C を 指 標 と し て い る 。 こ の こ と か ら 筆 者 は 健 診 後 の 初 回 受 診 の 際 に は 間 接 法 で L D L- C の 値 を 確 認 し 薬 物 療 法 の 必要性を検討し、それ以降のフォローが必要な際には直接法を⽤いるようにしている。 間 接 法 測 定 項 ⽬ ︓ 総 コ レ ス テ ロ ー ル 、 H D L- C 、 T G * 保 険 の 関 係 で L D L- C は 測 定 不 可 #32.
健康診断後の脂質異常症の対応⽅法に関してまとめました。 エビデンスの解釈や、 ⼈種による動脈硬化性疾患のリスクが異なるため 各ガイドラインや参考書によって薬物治療の対象や 治療⽬標が⼤きく異なるテーマでもあります。 本スライドの内容を踏まえて各国の診療ガイドライン をぜひ⾒⽐べて学びを深めていただければと思います。 それぞれのセッティングで脂質異常症診療を⾏なうにあたり、 本スライドが参考になれば幸いです。 #33.
参考⽂献 ・動脈硬化御三家(⽺⼟社) ・Common Diseases Up to date(南⼭堂) ・ホスピタリストのための内科診療フローチャート 第2版(有限会社シーニュ) ・動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版(⽇本動脈硬化学会) ・成⼈家族性⾼コレステロール⾎症診療ガイドライン 2022(⽇本動脈硬化学会) 33