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健康診断で要精査 尿潜血の対応方法

投稿者プロフィール
湯浅駿

順天堂大学医学部附属順天堂医院

94,753

740

概要

新規に指摘された尿潜血に対しての対応方法をまとめました。

フローチャートに沿って対応することで

尿潜血で悩みがちな「泌尿器科と腎臓内科のどちらに紹介すればいいのか問題」を解決できます。

尿潜血診療の入り口としてぜひこのスライドを活用ください。

本スライドの対象者

研修医/専攻医

参考文献

  • 血尿診断ガイドライン2013

  • 「型」が身につく蛋白尿・血尿の診かた・考えかた

  • 誰も教えてくれなかった尿検査のアドバンス活用術

  • ジェネラリストのための内科診断リファレンス

  • 考える技術 第3版

  • 米国家庭医療学会アルゴリズム

  • UpToDate:Etiology and evaluation of hematuria in adults (閲覧日:2022/05/22)

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テキスト全文

健康診断後の尿潜血の対応方法

#1.

健康診断で要精査 尿潜⾎の対応⽅法

#2.

はじめに 2 健康診断後の「尿潜⾎」を診察した際に、 ⽬標 専⾨科への紹介、適切な経過観察を ⾃信をもって⾏えるようになる

尿沈渣による血尿の精査フローチャート

#3.

⾎尿精査フローチャート 健康診断で尿潜⾎ 尿沈渣 ⾚⾎球<5HPF 6週間後に尿沈渣再検 陽性 ⾚⾎球≧5HPF ⽷球体性⾎尿の可能性を評価 □ 尿蛋⽩定性≧1+ □ 変形⾚⾎球>3% □ ⾚⾎球円柱 陰性 □ 腎機能障害(eGFR<50) 該当なし 尿路系悪性腫瘍のリスク確認 □男性≧40歳、⼥性≧50歳 □尿中⾚⾎球≧11個/HPF □喫煙歴 □下部尿路刺激症状 □⾻盤臓器への放射線照射の既往 □化学療法歴 □家族歴 □化学薬品のばく露 □尿路への慢性的な異物留置 陰性 該当なし[低リスク] 腎膀胱エコー、尿細胞診 1つ以上該当 [中リスク以上] 陽性 1年以内に健康診断でフォロー 泌尿器科へ紹介 腎臓内科へ紹介 1つ以上該当

#4.

⾎尿精査フローチャート 健康診断で尿潜⾎ 尿沈渣 ⾚⾎球<5HPF 6週間後に尿沈渣再検 陽性 ⾚⾎球≧5HPF ⽷球体性⾎尿の可能性を評価 □ 尿蛋⽩定性≧1+ □ 変形⾚⾎球>3% □ ⾚⾎球円柱 陰性 □ 腎機能障害(eGFR<50) 該当なし 尿路系悪性腫瘍のリスク確認 □男性≧40歳、⼥性≧50歳 □尿中⾚⾎球≧11個/HPF □喫煙歴 □下部尿路刺激症状 □⾻盤臓器への放射線照射の既往 □化学療法歴 □家族歴 □化学薬品のばく露 □尿路への慢性的な異物留置 陰性 該当なし[低リスク] 腎膀胱エコー、尿細胞診 1つ以上該当 [中リスク以上] 陽性 1年以内に健康診断でフォロー 泌尿器科へ紹介 腎臓内科へ紹介 1つ以上該当

#5.

初回検査 5 尿沈渣で⾎尿かどうかを判断する 健康診断で尿潜⾎陽性となり受診した場合、まず⾏う検査は尿沈渣である 「⾎尿」とは尿沈渣で⾚⾎球5個/HPF以上の状態と定義される *HPF (high power field)︓⾼倍率視野(400倍視野) なお本スライドでは健康診断で要精査となった場合を想定しており 顕微鏡的⾎尿かつ無症状であることを前提に解説を進める ⾁眼的⾎尿の対応は後述する

#6.

⾎尿精査フローチャート 健康診断で尿潜⾎ 尿沈渣 ⾚⾎球<5HPF 6週間後に尿沈渣再検 陽性 ⾚⾎球≧5HPF ⽷球体性⾎尿の可能性を評価 □ 尿蛋⽩定性≧1+ □ 変形⾚⾎球>3% □ ⾚⾎球円柱 陰性 □ 腎機能障害(eGFR<50) 該当なし 尿路系悪性腫瘍のリスク確認 □男性≧40歳、⼥性≧50歳 □尿中⾚⾎球≧11個/HPF □喫煙歴 □下部尿路刺激症状 □⾻盤臓器への放射線照射の既往 □化学療法歴 □家族歴 □化学薬品のばく露 □尿路への慢性的な異物留置 陰性 該当なし[低リスク] 腎膀胱エコー、尿細胞診 1つ以上該当 [中リスク以上] 陽性 1年以内に健康診断でフォロー 泌尿器科へ紹介 腎臓内科へ紹介 1つ以上該当

尿沈渣陰性の場合の再検査と原因

#7.

尿沈渣陰性(⾚⾎球<5HPF)の場合 7 6週間後に尿沈渣を再検する 以下に健康診断で尿潜⾎陽性→尿沈渣陰性となる主な原因を⽰す ⼀時的に⾎液が混⼊した場合 偽陽性の場合 ・尿路感染症 ・ヘモグロビン尿 (⾎管内溶⾎など) ・⽉経 ・ミオグロビン尿 (横紋筋融解など) ・直前の運動 ・直前の泌尿器科的処置 など など

#8.

⾎尿精査フローチャート 健康診断で尿潜⾎ 尿沈渣 ⾚⾎球<5HPF 6週間後に尿沈渣再検 陽性 ⾚⾎球≧5HPF ⽷球体性⾎尿の可能性を評価 □ 尿蛋⽩定性≧1+ □ 変形⾚⾎球>3% □ ⾚⾎球円柱 陰性 □ 腎機能障害(eGFR<50) 該当なし 尿路系悪性腫瘍のリスク確認 □男性≧40歳、⼥性≧50歳 □尿中⾚⾎球≧11個/HPF □喫煙歴 □下部尿路刺激症状 □⾻盤臓器への放射線照射の既往 □化学療法歴 □家族歴 □化学薬品のばく露 □尿路への慢性的な異物留置 陰性 該当なし[低リスク] 腎膀胱エコー、尿細胞診 1つ以上該当 [中リスク以上] 陽性 1年以内に健康診断でフォロー 泌尿器科へ紹介 腎臓内科へ紹介 1つ以上該当

尿沈渣陽性の場合の糸球体性血尿の評価

#9.

尿沈渣陽性(⾚⾎球≧5HPF)の場合 9 ⽷球体性⾎尿の可能性を評価する 以下の⽷球体性⾎尿を⽰唆する所⾒があれば腎臓内科に紹介する ⽷球体性 ⾮⽷球体性 尿蛋⽩定性≧1+ 59% 27.6% 変形⾚⾎球(特に有棘⾚⾎球)>3% 83.3% 24.8% ⾚⾎球円柱 48.9% 0% Am J Kidney Dis. 2008 Aug;52(2):235-41. ・腎機能低下(eGFR<50)を伴う場合も⽷球体性⾎尿を考慮する

#10.

⾎尿精査フローチャート 健康診断で尿潜⾎ 尿沈渣 ⾚⾎球<5HPF 6週間後に尿沈渣再検 陽性 ⾚⾎球≧5HPF ⽷球体性⾎尿の可能性を評価 □ 尿蛋⽩定性≧1+ □ 変形⾚⾎球>3% □ ⾚⾎球円柱 陰性 □ 腎機能障害(eGFR<50) 該当なし 尿路系悪性腫瘍のリスク確認 □男性≧40歳、⼥性≧50歳 □尿中⾚⾎球≧11個/HPF □喫煙歴 □下部尿路刺激症状 □⾻盤臓器への放射線照射の既往 □化学療法歴 □家族歴 □化学薬品のばく露 □尿路への慢性的な異物留置 陰性 該当なし[低リスク] 腎膀胱エコー、尿細胞診 1つ以上該当 [中リスク以上] 陽性 1年以内に健康診断でフォロー 泌尿器科へ紹介 腎臓内科へ紹介 1つ以上該当

尿路系悪性腫瘍のリスク確認と紹介

#11.

尿路系悪性腫瘍のリスク確認 11 1つ以上に当てはまれば泌尿器科紹介 尿路上⽪癌のリスク因⼦ [1つ以上に当てはまる→中〜⾼リスク、当てはまらない→低リスク] □男性≧40歳、⼥性≧50歳 □尿中⾚⾎球≧11個/HPF □喫煙歴 □下部尿路刺激症状 □⾻盤臓器への放射線照射の既往 □化学療法歴 □家族歴(尿路上⽪癌、Lynch症候群) □化学薬品のばく露 □尿路への慢性的な異物留置 *⾎尿診断ガイドライン2023. ライフサイエンス出版, 2013. 「化学薬品暴露」の中でも芳⾹族アミン(ベンジンやβ-ナフタレンなど)が重要である 染料・顔料・ペンキ類を扱う職業のリスクが⾼いため、 職業歴(ペンキ、⾰、⾦属、製紙、ゴム⼯場など)を確認する *膀胱癌:患者さんの⼿引き、ESMO 診療ガイドラインに基づいた患者さん向け情報、⽇本癌治療学会

#12.

⾎尿精査フローチャート 健康診断で尿潜⾎ 尿沈渣 ⾚⾎球<5HPF 6週間後に尿沈渣再検 陽性 ⾚⾎球≧5HPF ⽷球体性⾎尿の可能性を評価 □ 尿蛋⽩定性≧1+ □ 変形⾚⾎球>3% □ ⾚⾎球円柱 陰性 □ 腎機能障害(eGFR<50) 該当なし 尿路系悪性腫瘍のリスク確認 □男性≧40歳、⼥性≧50歳 □尿中⾚⾎球≧11個/HPF □喫煙歴 □下部尿路刺激症状 □⾻盤臓器への放射線照射の既往 □化学療法歴 □家族歴 □化学薬品のばく露 □尿路への慢性的な異物留置 陰性 該当なし[低リスク] 腎膀胱エコー、尿細胞診 1つ以上該当 [中リスク以上] 陽性 1年以内に健康診断でフォロー 泌尿器科へ紹介 腎臓内科へ紹介 1つ以上該当

腎膀胱エコーと尿細胞診の検査特性

#13.

尿路系悪性腫瘍の低リスクの場合 13 腎膀胱エコー、尿細胞診を⾏う 腎膀胱エコー(腹部超⾳波検査) 尿細胞診 <メリット> <メリット> ・⾮侵襲的 ・⾮侵襲的 ・蓄尿時の検査で膀胱内の確認可能 ・特異度⾼い(98%) 膀胱癌の感度72%、特異度91%1) ・腫瘤性病変の有無、結⽯の有無、 ⾎管病変の有無などを評価可能 <デメリット> ・⼩さな尿路上⽪癌は診断困難 1)Clin Radiol. 2008 Dec;63(12):1317-25. 2)J Urol. 2008 Mar;179(3):862-7; discussion 867. 2) <デメリット> ・感度低い(38% ) 2) 膀胱癌以外の感度は更に低い ・⽇本と⽶国で推奨が異なる (次スライドで解説)

#14.

尿細胞診に関して 14 検査の特性を踏まえて使⽤する ⽇本︓推奨する ・尿路系悪性腫瘍が疑われたときは ⽶国︓推奨しない ・感度が低いため 初期から使⽤を推奨 ・顕微鏡的⾎尿で悪性腫瘍のリスク因⼦に 初期からのルーチンでの使⽤は推奨なし ・先にCT尿路造影検査など画像検査を⾏い 該当しない場合、腹部エコーと併せて 陰性であった場合に考慮 尿路系悪性腫瘍の除外にも使える ・検出率を上げるため複数回の実施を推奨 内科医が外来で⾮侵襲的に⾏える検査であるため、 筆者は特性(感度が低いなど)を踏まえつつ必要な症例に対して使⽤している

肉眼的血尿と関連疾患の重要性

#15.

おまけ ・⾁眼的⾎尿 ・押さえておくべき疾患 IgA腎症 ⽷球体基底膜菲薄症候群 ナットクラッカー症候群 15

#16.

⾁眼的⾎尿 16 悪性腫瘍を⾒逃さないことが重要 ⾁眼的⾎尿では顕微鏡的⾎尿(5.4%)に⽐べて 悪性腫瘍のリスクが⾮常に⾼く(20.9%)、 中でも膀胱癌が圧倒的に多い リスクがある患者は積極的に泌尿器科へ紹介して 悪性腫瘍を⾒逃さないように意識する また⼀通り検査が正常でも3年に1%の割合で ⽷球体性⾎尿 10.3% 尿路感染 13.0% 尿管結⽯ 3.2% ⾁眼的⾎尿の 原因疾患 原因不明 52.5% 尿路系悪性腫瘍 20.9% 悪性疾患が⾒つかるとの報告があるため 3年間のフォローアップを⾏う *J rol. 1991 Feb;145(2):335-6. *J Urol. 2000 Feb;163(2):524-7.

IgA腎症と糸球体基底膜菲薄症候群の解説

#17.

Ig A 腎 症 17 透析患者の原疾患(2019年) ⽷球体にIgA優位の沈着がみられる腎炎 糖尿病性腎症 41.6% 腎硬化症 16.4% 慢性⽷球体腎炎は透析新規導⼊疾患の第3位であるが、 慢性⽷球体腎炎 14.9% IgA腎症は慢性⽷球体腎炎の中で約1/3を占め最も多い 予後 ︓不良、約20年で40%程度の症例が末期腎不全に進⾏ 有病率︓3.9-4.5⼈/10万⼈ *遠藤正之:IgA腎症の疫学・症候・予後. ⽇腎会誌2008;50(4):442-7. 症状 ︓無症状で健康診断で指摘(約70%) 上気道感染後の⾁眼的⾎尿で発⾒(約10%) *疾患活動性により⼀時的に⾎尿・蛋⽩尿が陰性化することがある →3回以上の検査が推奨されている理由 診断 ︓腎⽣検

#18.

⽷球体基底膜菲薄症候群 18 ・常染⾊体優性遺伝の予後良好な疾患、有病率5-9% ・⼀般的に顕微鏡的⾎尿(+)、⾁眼的⾎尿(­)、蛋⽩尿(­)、腎障害(­) ・IgA腎症が鑑別となるため家族歴のみで安易に診断するのではなく、 専⾨科の受診を得ての診断が望ましい ナットクラッカー症候群 ・左腎静脈が⼤動脈と上腸間膜動脈に圧迫されて圧が上昇 →⾎尿、蛋⽩尿、側腹部痛、精索静脈瘤などを⽣じる 上腸間膜動脈 ・診断︓早朝尿で尿潜⾎陰性、造影CT検査、腹部エコー ・治療︓⾃然治癒が多いため経過観察、稀に外科的治療 左腎静脈 ⼤動脈

参考文献と関連資料の紹介

#19.

参考⽂献 19 ・⾎尿診断ガイドライン2023 ・「型」が⾝につく蛋⽩尿・⾎尿の診かた・考えかた ・誰も教えてくれなかった尿検査のアドバンス活⽤術 ・ジェネラリストのための内科診断リファレンス ・考える技術 第3版 ・UpToDate︓Etiology and evaluation of hematuria in adults (閲覧⽇︓2022/05/22)

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