#4.
世間の低Na血症への色々なアプローチ ⮚ アメリカ・・・体液量から ⮚ ヨーロッパ・・・尿Na濃度から ⮚ 私はいいとこどりすればいい、と考えている こっちがクラシックなアプローチ、JAMA. 2022 Jul 19;328(3):280-291 デメリット:所見がとれない人は良く間違う。微妙なところは正解がない Eur J Endocrinol. 2014 Feb 25;170(3):G1-47 デメリット:利尿薬や補液で修飾される,あくまでスポット尿なのでどれだけ病態を反映するか?は悩ましい どちらかしかアプローチできない状況が想定できない。(さぼっている人は沢山いるが)
#5.
疫学 ⮚ ICU 20%? ⮚ 一般病床は 5-10% ⮚ 一般住民では明らかではない 私のイメージは ・具合が悪い人に多い ・高齢者に多い ・心不全、CKD、肝硬変に多い ・ポリファーマシーに多い
#6.
臨床症状 ⮚ 吐き気、嘔吐、頭痛が多い ⮚ 急速に進行した場合などは意識障害や痙攣もある ⮚ 軽度の場合には、余り分からない(転びやすかったり、 JCS=1程度の意識障害などがある) 上記の症状に加えて、具合悪くて水ばっかり飲んでいた、とか、他の病院で点滴を受けたなどがあると、 「低Na血症かな?」という気になる。
#7.
Na代謝の全ての要素を把握するのは不可能 体液量(容量)調整系 浸透圧調整系 Na代謝 水代謝 圧受容体 視床下部 口渇 RAA:renin-angiotensin-aldosterone HANP:human atrial natriuretic peptide 頚動脈、腎臓、心臓 ADH 両方の調整を受けるが 体液量>>浸透圧 に注意 RAA系 HANPなど 交感神経
#8.
臨床上一番重要なこと→病歴 体液量減少を示唆するサイン 病歴(食思不振、嘔吐下痢、+/-利尿薬など) 身体所見(体重↓、血圧↓、心拍数↑、リフィリング時間↑) 体液量減少→尿は濃縮尿(これがuNa↑の理由) UA↑、TP↑など 体液量過剰を示唆するサイン 病歴(心不全、肝硬変、CKDなど、、、) 身体所見(血圧高値、浮腫など) 浮腫は間質のNa過剰である 体液量過剰→尿は希釈尿 私は病歴で想定した体液量を検査で確認する イメージ
#9.
低Na血症をみたときの思考回路 希釈性の低Na (心不全、肝硬変) 体液量 ここはない 一部の高血圧 SIADH これもみたことな い 便宜上境界線をつくったが 実際には ・臨床症状 ・どのスピードで変化しているか? の要素が極めて重要 低張性脱水 (いわゆる)脱水 Na濃度 ここを見たときにどう考えるか?と言う話 病名にこだわりすぎると上手にできない
#10.
体液量過剰の低Na血症 H2Oの蓄積>Naの蓄積 大体は 心不全、腎不全、肝硬変 体液量の 正常範囲 H2O Na 実際のNaがどれだけ蓄積しているか?は分からない 大体はNaも蓄積していることがほとんど 大事な点は、この場合は通常希釈尿が出ている 希釈尿:尿比重<1.010 尿Osm<270mOsm/kg のはず
#11.
体液量過剰の低Na血症→水を追い出す 余っているH2Oを追い出す →低張尿が出ていれば放っておけば治る 体液量の 正常範囲 ループ利尿薬は等張尿から低張尿がでるので、治 りが早くなる H2O H2O Na Na トルバプタンは必ず低張尿がでるので、Naは上 がるが、急激な変化になるために私は勧めない 異所性のADH分泌は超激レア だいたいは ADH>15-20pg/mL この場合はモサバプタンを使うが、専門家の範疇
#12.
体液量減少の低Na血症 Naの喪失>H2Oの喪失 これをみたら大体は嘔吐、利尿薬 サイアザイド系利尿薬が多い 体液量の 正常範囲 これ以外は実はほとんどない。 大体の体液は低張なため (涙液や胆汁などは等張から高張だが、大量に喪失しない) H2O Na 大事な点は、この場合は通常高張尿が出ている 希釈尿:尿比重>1.010 尿Osm>270mOsm/kg のはず
#13.
体液量減少の低Na血症の治療戦略 細胞外液で十分(NaもH2Oも補充) 体液量の 正常範囲 腎臓がうまく調整してくれるから適当で良い (心臓、腎臓悪いときは少し気にする) この場合に低張液が不可な理由 H2O H2O Na Na 体液量減少でもADHは分泌されるため、この状態で余分なH2Oを 負荷すると再吸収され低Na血症になる。 低張性脱水+低張液で「体液量が正常に戻ったのに、低Na血症が 持続します。」というのは医原性の偽SIADH (これを腎臓内科に相談するのはセンスがない)
#14.
体液量異常を伴う低Na血症はイメージを持って治療 図5 H2O H2O H2O Na H2OとNaを補充して正常範囲に Na Na H2OとNaを抜いて正常範囲に
#15.
ADHの分泌調整 こちらの方が鋭敏 体液量減少の小さな変化でADHがでる 体液量減少 ADH分泌 体液量正常 体液量過剰 血清浸透圧 Kidney Int. 1976 Jul;10(1):25-37を改変
#16.
ADHをふまえた尿の見方 ⮚ 濃縮尿・・・水を再吸収している ⮚ 希釈尿・・・水を排泄している ではNaやKは?となるが、スピード的には水の再吸収で尿の濃さがきまる。 ビールたくさん飲めば飲み会中にトイレが近くなって(こちらは水利尿) 〆のラーメン食べたら次の日まで浮腫んでいる(Na利尿) のイメージ
#17.
何故体液量が重要か? ⮚ SIADHで特に大事な点 • 体液量が正常(脱水がないことが重要) • 副腎不全がない • ADHによる水の再吸収がおきている
#18.
SIADHの診断基準の解説 ⮚ 脱水がない! ↑が全て、付随して(脱水によるADHの分泌をまず除外) • Na<135mEq/L→当たり前 • sOsm<280mOsm/kg→高血糖、極端な高TG血症などのpseudohyponatremiaの除外 • ADHが抑制されていない→「脱水ではなく」 • uOsm>100mOsm/kg→心因性多飲の除外 • uNa>20mEq/L→次頁で解説 • 腎機能正常→そうなると、CKDにSIADHは存在しないことになるが、、、ここではAKIなどではないことだと捉えれば良い • 副腎皮質機能正常→副腎不全を除外
#19.
uNa<20mEq/Lは体液量減少を示唆 細胞外液減少のときはuNa<20mEq/Lで良いだろうという研究が多い。 Am J Med 1987;83:905–908 J Clin Endocrinol Metab. 2008;93(8):2991-7 Am J Med 2013;126(10 Suppl 1):S1-42 Eur J Endocrinol. 2014;170(3):G1-47 ※少なくとも腎臓はまともで体液量減少に見合ったNa再吸収ができている。ととらえると良い SIADHでも塩分をたくさんとればuNa>30-40mEq/Lとなる。 uNa>30mmol/Lだから体液量過剰だとは言っていない! • 臨床の印象としては 「uNa>20-30mEq/Lあれば脱水はまずないよね(利尿剤飲んでなければ)」となる。 →脱水がない!という主徴候をサポートする所見 SIADHはあくまで水利尿不全
#20.
ADHの分泌刺激 • • 体液量減少 高浸透圧(Na↑) 上記がメインだが ・薬剤(三環系、四環系、SSRI、SNRIなどが多い印象、ただし全ての薬剤で起こりえる、ST合剤は多 い印象) ・痛み刺激(採血の痛みくらいでもでるらしい) ・頭蓋内圧↑(髄膜炎、SAHなど) ・腹腔内圧↑ ・胸腔内圧↑(気胸など) ・膀胱内圧↑(尿道カテーテル) などでも起こりえる
#21.
具合が悪い→ADHの分泌刺激 • 生命が危機的な状況だとADHがで易い 何故かはわからないがそういうモノ • 入院中で具合が悪いときは容易に低Na血症になること は認識しておくべき これに加えて低張液がやおかゆで再吸収される真水を 負荷していることが多い • 補液が下手だと簡単に低Na血症になる
#22.
オマケ:偽性低Na血症 • 高TG血症 TG=1500mg/dLでNa=130mEq/L、 Kidney Int Rep. 2019;4(3):491–493. T-Cholesterol 1340mg/dl、Na=119mEq/L、DOI:10.4158/ACCR-2018-0309 T-Cholesterol 4000+mg/dl、Na=101mEq/L、Int J Hematol 82, 362–366 (2005) • 大量の蛋白(異常蛋白含む) 多量の TG 蛋白 ニセモノ H2O K chain 550mg/dl、Na=128mEq/L IgA 22g/d、Na=126mEq/L Paraprotein 3g/dl、Na118mEq/L いずれもBMJ Case Rep. 2015; 2015: bcr2015212838. などがある、Naは大きな問題ではない Na
#23.
低Na血症の基本 第1章2章から 3章Na異常に強くなろう 1 低Na 血症 Na 異常はNa とH2O のバランスの問題だ 2 低張性脱水と高張性脱水 要は体液量とNa 異常の組み合わせ 3 まずは体液量を判断しよう 臨床医のアルファでありオメガ 4 低Na 血症の臨床症状 臨床で最も多く出会う電解質異常 5 低張性脱水のマネージメント 安易な輸液はNG 6 高張性脱水のマネージメント 水が多く抜けた脱水 7 難しい低Na 血症とは(主にSIADH) sNa×2<uOsm は難敵 8 SIADH とCSW の見分けかた わかり合えない壁がある 9 高Na 血症に出会ったら 非生理的状況なので背景を考える
#24.
低Na血症について腕試しどうぞ 低Na血症を用意しております。 5 Na総論──細胞外液の主役はNaである 6 低Na血症──体液量別に捉えよう力試しにどうぞ Case 1 嘔吐・下痢を伴う低Na血症の70歳代女性 Case 2 尿量が多いため輸液されていた低Na血症の50歳代男性 Case 3 肝硬変・CKDで低Na血症を来している70歳代女性 Case 6 低Na血症だが自覚症状のない70歳代女性 Case 7 強い倦怠感を伴う低Na血症の30歳代女性 Columnにも ・ 最近アツいぞ低Na血症界隈 ・ 塩の振り方と体液量 ・ ブルース・リーと低Na血症 ・ 恐怖の高Na血症 ・ 何かと話題の皮膚のNa