#4.
降圧の目標値 ✔ 下記に加えて、リスクに応じて降圧目標が違う 理想的には 全ての人が正常血圧 ・家庭血圧で 115/75 mmHg 未満 ・診察室血圧では 120/80 mmHg 未満 現実的には 高血圧をコントロール ・家庭血圧で 135/85 mmHg 未満 ・診察室血圧では 140/90 mmHg 未満 ※ 国の目標としては 2022 年までに国民の収縮期血圧を平均 4 mmHg 下げる (男性 138 → 134 mmHg、女性 133 → 129mmHg)であった (健康日本21(第二次))
#5.
リスク別の降圧目標 高血圧診療ガイドライン2019 75歳未満 : < 130/80 mmHg 糖尿病患者 : < 130/80 mmHg CKD患者(尿タンパク陽性): < 130/80 mmHg 75歳以上の高齢者 : < 140/90 mmHg ※ 忍容性があれば75歳以上でも 130/80 mmHg 未満という記載あり → 厳密な研究がなかったり、過降圧のデメリットがあるので、このあたりが落とし所ととらえている
#6.
患者に正しい血圧測定方法を 高血圧診療ガイドライン2019 上腕部(上腕カフ血圧計による) 朝:起床後1時間以内、排尿後、朝の服薬前、座った姿勢で1〜2分間安静にした後 晩:就床前(飲酒や入浴の後)、座った姿勢で1〜2分間安静にした後 2回測定して平均値 朝晩各1回以上 週に5日以上 ✔ これをサボっている人が多い → 降圧に達していない場合や過降圧のデメリットがある
#7.
RAA系を使うべき患者像(各種ガイドラインから) 糖尿病 → どのステージでもメリットがあると考えられる CKD(たんぱく尿あり) → たんぱく尿を伴わないCKDに対してはデータが不十分 心筋梗塞後 → 抗血小板薬、β遮断薬、スタチンと並んでキードラッグ 心不全の既往 → こちらもRAA系がキードラッグの1つ EF低下例 ※ ARNI:アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬 MRA:ミネラルコルチコイド(アルドステロン)受容体拮抗薬 → 循環器専門医が関与すると思うが、β遮断薬、ARNI、MRA、SGLT2阻害薬という流れになりつつある 左室肥大 → ただし、胸部写真?心電図?左室重量係数?左室肥大の定義に対しては明確には述べられていない 心肥大に対してRAA系 → 心肥大が改善の報告は多数ある ✔ 上記に該当しない場合にはRAA系を敢えて使わないのもあり(挙児希望、認知症、ADL低下例など)
#8.
実践的降圧薬選択方法 1st Line 高血圧 患者 <140/90mmHg を 達成できたか? CCB [Ca拮抗薬] 2nd Line 3rd Line サイアザイド (半量) MRA ARB (ARNIをにらんで) ✔ 合剤でアドヒアランス↑ β遮断薬 → 合剤に移行できるものを 選ぶのは良いと思う Yes ACEi [ACE阻害薬] No (コスト重視) ARNI → 糖尿病、CKD(たんぱく尿)、心筋梗塞後、左室肥大 ただし、CCB+RAA系+サイアザイドで 目標に達しない場合に一度専門医へ紹介 した方が良い 心不全の既往、心機能低下例 利尿薬の使い方も参考に RAA系を追加するべき患者か?は常に意識 8
#9.
実践的なRAA系導入方法 RAA系薬 ¼量で開始 2週間 No K・Crをチェック Cr↑>10%か? Yes 増量or ARB→ARNI or 別のクラス ・ K↑は吸着薬で凌ぐ(後のスライドも参照) ※ ACE、ARBはできる限り増量が 望ましいとされる (MRAについては増量の効果は不確か) 撤退 ・別のクラスから選んでみる (ACEi、ARB、MRA) 個人的な工夫 2週間後に再診!と言うより 再診日の2週間前くらい前から内服と薬袋に書くと楽 Ex 5/28再診 「5/15から内服」 9
#10.
RAA系を使うのは分かってるけれど… ✔ RAA系を使う症例を見極める ✔ K値をどこまで許容するか? → 危ない高K血症はこう見分ける ✔ K値の調整方法(入院/外来) → 入院させての対応方法、外来ではK吸着薬がメイン 10
#11.
高K血症の患者側のチェックポイント(私見) ✔ 危険な人を見極めてから、モニタリングする 尿が出ているか? (特に脱水や心不全がないか?) 糖尿病があるか? (糖尿病はK値が上がりやすい) CKDステージ (高い方が不利) RAA系が入っているか? (入っていると不利、複数入っているとより不利) NSAIDsが入っていないか?(入っている場合には注意) 体格 (小さい方が不利) アシドーシスがあるか? (Cl が 110 mEq/L を超えているとリスクが上がる) 11
#12.
どのK値まで許容するか?まずは患者を診る! ✔ 患者が元気なら慌てない ✔ 採血や直前の食事、嗜好品の影響を強く受けて、0.5-1.0 mEq/L は上振れする ✔ 尿がでているか?脱水がないかの確認の方が重要 → NSAIDs が処方されている場合も注意 ✔ 基本的にRAA系を中止しつづけると各種イベントが増える報告が多い 継続できないか?を考える
#13.
危ない高K血症 ✔ 下記があるときには入院が無難 失神 徐脈 心電図異常(テント状T波 → P波消失 → 左脚ブロック) → 前の心電図と比べる必要はあるが、P波がない場合やQRS幅が広い場合には入院させた方が無難 (前医から心電図を取り寄せてる時間があったら対応した方が患者のためになる) 「元気でピンピン」は外来ではまず大丈夫
#14.
RAA系を使うのは分かってるけれど… ✔ RAA系を使う症例を見極める ✔ K値をどこまで許容するか? → 危ない高K血症はこう見分ける ✔ K値の調整方法(入院/外来) → 入院させての対応方法、外来ではK吸着薬がメイン 14
#15.
許容できない高K血症を外来だったらこうする RAA系の一時中止 → 血圧が高くなるような場合はCCB(カルシウム拮抗薬)追加 OS-1などの経口補水液 1-1.5 mL/kg/日(脱水予防) フロセミド(Cr 値 × 20 mg) → 深い意味はないが、十分使わないと効かないため 果物は再診まで中止 K吸着薬の使用 → ロケルマⓇが使いやすいが、使い分け参照 3-7日後に再診してKをチェックする
#16.
K吸着薬の使い分け ケイキサレートⓇ(ポリスチレン酸Na) ✔ 散剤、ドライシロップあり ✔ 散剤:注腸ができる(今時することは少ないはず) ✔ ドライシロップ:宣伝ほどは飲みやすくない カリメートⓇ (ポリスチレン酸Ca) ✔ 経口液:水の携帯が不要 ✔ アーガメイト:顆粒、ゼリー ✔ 一生懸命差を出そうとするが大して変わりはない、 普通に考えて高Ca血症になるほどは飲ませない。 (症例報告などはある) ✔ ポリスチレン系はお腹の中で膨れる! → イレウスや腹部手術の既往は要注意 → 実は一般名で出すことになり、消えゆく名前 (一生懸命フレーバーを宣伝するがどれも大して美味くない) ロケルマⓇ ✔ 急性の高K血症では 10g×3回×2日間 → 5g×1回へとスイッチ ✔ 基本は5g 1日1回 ✔ 上の薬と比べてイレウスなどの懸念は少ない。 しかし高い! 16
#17.
尿がでるか分からない→入院 グルコン酸カルシウム 1A i.v. (5-10分) → Ca濃度↑で静止膜電位があがる → 不整脈予防とされる ただし正Ca血症や高Ca血症の時は有効かは議論がある。作用時間も1時間程度と短く、 患者に害をなす可能性が少ないので入れる事が多い GI療法 HR 5単位+50%ブドウ糖 50mL (5-10分) → これは施設で色々な流儀がある。メインはインスリンで細胞内にKを押し込む(低血糖に ならない様にブドウ糖を入れる)作用、最近はインスリン少なめが流れ メイロン 1 mEq/kg を15分くらいで → 細胞内にKを押し込む作用を期待。ただし、どれだけ効果があるかは不明確 β2刺激薬(吸入) → サルブタモール、プロカテノールなど。海外では使われている印象。細胞内にKを押し込む。 頻脈に注意。日本では保険適応が認められている薬はないことに注意 ※ここまでで体内のKの総量は変わっていない 以上を10分以内にして、次は“尿が出るか”のマネージメント
#18.
尿がでるか? バイタルが悪い → 立て直す 脱水 → 補液 心不全 → 心不全の治療 → 尿量↓は心不全による腎臓の障害である事もある! RAA系阻害薬 + NSAIDs → いったん両方中止 尿閉 → 尿道カテーテル、ダメなら泌尿器科コンサル検討 → Antaaスライド「尿道カテーテルのコツ」は読んでおくと良い もし高K血症で心停止 → 心臓マッサージ 血圧が良く、体液量が正常から溢水 → フロセミド 20-200mg i.v. 30分で利尿が得られなかったら → 血液透析を考慮
#19.
RAA系の効果判定 効果判定 ✔ 血圧は1〜2週間かけてじわじわと下がる → 急に下がるようなときは脱水や腎動脈狭窄を懸念する ✔ その後、尿タンパクがじわじわと下がっていく。ただし月単位、変動が大きい 食事指導 ✔ 「果物、野菜食べないで」というより、このままの食事でロケルマⓇを飲ませる方が うまく行く事が多い(最近は果物・野菜の効果が見直されている) → 食事指導のスライドも参考
#20.
RAA系使うときのちょっとしたコツ ✔ 血圧 < 110 mmHg の時・ご飯を食べられない時はスキップ → コメントを入れて薬袋に書く、訪問看護指示書を書く ✔ ACEi + MRA、ARB + MRA で少量ずつの組み合わせが好み ✔ ACE + ARBは避けた方が無難 ✔ 減塩を加えるとRAA系の効きが良くなる → サイアザイド半量も効果的、食事指導のスライドも参考
#21.
Q&A どの薬がいいですか? Q. どの ACEi がいいですか? A. 長時間作用型が飲みやすい ✔ カプトプリル → 1日3回なのでまず飲ませない(検査で使う事が多い) ✔ 個人的にはリシノプリルを使う事が多い(深い意味はない) ✔ その他、エナラプリル(授乳中も使える)、タナトリル(1型糖尿病の糖尿病性腎症で適応あり) Q. どの ARB がいいですか? A. どれでもよい ✔ ただし、ARNIを入れるならばバルサルタンとなる Q. どの MRA がいいですか? A. エプレレノン、エサキセレノン が副作用が少ない、使えない人が スピロノラクトン ✔ 保険上の禁忌に注意 ✔ フィネレノンも近々使えるようになる見込み
#22.
Q&A RAA系の再開時期は? ✔ 元気になったら仕切り直しでOK → 退院して次の外来から再開のイメージ ✔ RAA系を中止し続けると、心血管イベントが増える [J Am Soc Nephrol. 2021;32(2):424-435.)、Am J Kidney Dis. 2022 Jan 24;S0272-6386(22)00034-8] ✔ RAA系を中止しないと、K値が下がらない [Clin J Am Soc Nephrol. 2021;16(3):365-373] ✔ K吸着薬を上手く使いながらRAA系を使っていくのが妥当