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感染症診療の基本的な考え方と血液培養の重要性
#1. 感染症診療の基本的な考え方 - 血液培養とその界隈 - 済生会横浜市東部病院 高野 哲史 総合内科
#2. executive summery / 血液培養は診断でも治療でも重要である // 血液培養の採取はお作法が全てである /// 血液培養は陰性を喜ぶ検査である
#3. おしながき / 血液培養の基本事項 - 診断における重要性 - 治療における重要性
血液培養の基本事項と採取方法
#4. 血液培養の基本事項 / ⾎液培養はいつ必要か︖
#5. 血液培養の基本事項 / ⾎液培養はいつ必要か︖ 病態の全てを説明するに⾜る診断がついた場合 (例: COVID-19,RSウイルス感染症など) 菌⾎症を含む侵襲性感染症が完全に除外された場合 を除くすべての場合 発熱なし・白血球増多なし・CRP上昇なしは免罪符にならない
#6. 血液培養の基本事項 / ⾎液培養は?セット以上提出する
血液培養のセット数と陽性率の関係
#7. 血液培養の基本事項 / ⾎液培養は2セット以上提出する - 1セットでは感度が不⼗分 → 1セット: 73.2%, 2セット: 93.9%, 3セット: 96.9% - 感染性⼼内膜炎などの⾎管内感染症では3セット → ⾎管内感染症は⾎液中の菌量が少ない - 1セットでもよいとされるケースはごく限られる
#8. 血液培養の基本事項 (表1) 小児における体重と血液培養セット数・採血量の関係 患者体重 推奨血液培養セット数 (kg) (セット) 1 1.1 - 2 2.1-12.7 12.8-36.3 > 36.3 1 2 2 2 2 推奨採血量(mL) 1 セット目 2 セット目 2 - 2 2 4 2 10 10 20※ 20※ 使用するボトル 小児用ボトル 1本 小児用ボトル 各1本 成人用好気ボトル 各1本 成人用好気・嫌気ボトル 各2本 ※ 好気ボトル・嫌気ボトルへ各10mLずつ分注する (J A. Kellogg, et al. J Clin Microbiol. 2000 Jun; 38(6): 2181-2185をもとに筆者作成)
#9. 血液培養の基本事項 / ボトルには⼗分量の⾎液を接種する - ⼗分量の⾎液が⼊って初めて培地として完成する - メーカにより異なる場合があるので⾄適量を確認 // ⾎液量が⾜りなければ好気ボトルを優先 - 可能な限り取り直すこと
#10. 血液培養の基本事項 (表2) 採血量と血液培養陽性率との関係 採血量 陽性率の上昇幅 2mL → 20mL 30-50% 10mL → 20mL 30% 30mL → 40mL 7% 10mL → 30mL 47% 採血量が1mL増える毎に3-5%陽性率が上昇する
血液培養による菌血症の診断と重要性
#11. 血液培養の基本事項 ‒ 診断における重要性 / 最も簡便に採取できる「無菌検体」である - 陽性となれば⼀部除き原則治療対象である 「1セットのみ陽性」の場合にコンタミを疑う菌種は︖
#12. 血液培養の基本事項 ‒ 診断における重要性 / 最も簡便に採取できる「無菌検体」である - 陽性となれば⼀部除き原則治療対象である 微生物 Cutibacterium acnes Corynebacterium spp. コンタミの可能性 100% 96.2% CNS 81.9% Bacillus cereus 91.7% (Weinstein MP, et al. Clin Infect Dis. 1997; 23(4): 584-602をもとに筆者作成) この4菌種は頭文字で“CCCB”と記憶しておく
#13. 血液培養の基本事項 ‒ 診断における重要性 / ⾎液培養は菌⾎症を診断する唯⼀の⽅法である - 菌⾎症は⼀般に治療期間の延⻑を要する 例) Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌) - 菌⾎症の存在は播種病変の存在の可能性を暗⽰する // 診断の誤りに気づくツールとしても極めて有⽤ - 「誤嚥性肺炎だと思ったら⼤腸菌菌⾎症だった」 → この場合,誤嚥性肺炎の診断が間違っている可能性がある
血液培養の治療における重要性と効果判定
#14. 血液培養の基本事項 ‒ 治療における重要性 / 治療効果判定に使⽤可能である - 特定の微⽣物は⾎液培養の陰性を以て治療期間を規定 → ︖ - 特定の疾患・状況でも陰性の確認が望ましい → 感染性⼼内膜炎,化膿性脊椎炎,薬剤耐性菌感染症 - 持続菌⾎症の存在は未知の病巣に気づく契機に
#15. 血液培養の基本事項 ‒ 治療における重要性 / 治療効果判定に使⽤可能である - 特定の微⽣物は⾎液培養の陰性を以て治療期間を規定 → ⻩⾊ブドウ球菌,カンジダ属(,ブドウ糖⾮発酵菌) - 特定の疾患・状況でも陰性の確認が望ましい → 感染性⼼内膜炎,化膿性脊椎炎,薬剤耐性菌感染症 - 持続菌⾎症の存在は未知の病巣に気づく契機に
ミニマム血液培養のまとめ