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百日咳の概要と流行状況
#3. 百日咳菌の特徴 飛沫感染と接触感染 感染形式 麻疹(12-18)と同程度、インフル(2-3)よりかなり高い
*1人の感染者が周囲に感染させる数 高い感染力:基本再生産数*12-17 Pertussis, Dynamed
百日咳の症状と経過
#8. カタル期 最初の1-2週間のフェーズ
上気道感染に一致した非特異的な前駆症状
鼻汁、咳、微熱など Pertussis, Dynamed
#9. 発作期 1-6週間、最大10週間持続することも
発作的咳嗽、吸気時喘鳴、咳嗽後嘔吐が典型的
特に夜間に悪化しやすい
小児だと(特に口唇の)チアノーゼを呈することも
発熱は見られないことが多い Pertussis, Dynamed
#10. 回復期 数週間~最大12週間程度持続
徐々に咳の頻度や強度が減っていく
他の呼吸器疾患により遷延したり悪化したりすることも Pertussis, Dynamed
成人百日咳の特徴と合併症
#11. 非典型例が増えているため注意! 特にワクチン接種例や成人例においては
遷延性咳嗽のみが唯一の症状のこともある
#12. 成人百日咳症例の特徴@日本の一般診療所 成人の遷延性咳嗽(3-8週) PT-IgG抗体価測定 396例 除外:胸部レントゲンで明らかな他疾患あり 気管支喘息による咳嗽と診断 採血希望しない PT-IgG抗体価100以上 926例 530例 52例 日呼吸誌, 7(3): 125-130, 2018 20人に1人が百日咳
(ペア血清での診断を含めていないため、実際はもっと多いかも)
#13. 日呼吸誌, 7(3): 125-130, 2018 3割は発作期の3徴が
どれもみられない 4割は初期から咳嗽のみでカタル症状なし 40代が多いが、
幅広く分布している
#15. 特に乳児では合併症が多く、重症化しやすい 二次性の細菌性肺炎(最多の合併症)
百日咳症例の5%にみられ、6か月未満の乳児だと10-25%にみられる
1-5か月の乳児の百日咳合併肺炎症例において、院内死亡が12.5%であった
無呼吸→乳幼児突然死症候群
ほか肺高血圧症、痙攣、脳症など Pertussis, Dynamed
百日咳の診断方法と検査
#17. 症状だけで確定や除外が難しいので・・・
検査が大事
#19. 培養 鼻咽頭スワブや吸引検体を培養に提出
口腔液はコンタミのため信頼性が低い
検体取得後は、すぐに検査に提出する
感度58%、特異度100%
発症2週間を超えると感度がさらに下がる
年齢が上がるほど感度が下がる(菌量が減るため)
結果が出るのに通常4-5日、最大12日かかる BMJ. 2019 Feb 22;364:l401.
#20. PCR:日本では保険適応なし 鼻咽頭スワブを提出
感度77-97%、特異度88-97%
発症4週間以内が最も成績が良い
BMJ. 2019 Feb 22;364:l401.
#21. LAMP法(Loop-Mediated Isothermal Amplification) Loop-Mediated Isothermal Amplificationの略
遺伝子を増幅させて検出させる方法
栄研化学が商標権を有しており、海外の文献ではほとんど記載が見られない
Real time PCR法に対する相関は、感度が71.4%、特異度が100% ウイルス, 第54巻, 第1号, pp107-112, 2004
診療と新薬 2015; 52 (12) : 1133 - 1140.
#22. IgG測定 発症2-8週の間が成績が良い
感度88-92%、特異度98-99%
ワクチン接種の影響を受けるため、ワクチン接種から1年以内の血清診断は推奨されない BMJ. 2019 Feb 22;364:l401.
百日咳の届け出とマネジメント
#24. 24 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019
#25. 個人的な検査指針まとめ 発症4週程度まで:LAMP法
国内のデータしかないが、培養は時間がかかるしPCRは保険適用外なので
発症4週以降:IgG測定
IgA/IgMやLAMPとの同時算定不可
IgA/IgMは海外では行われてないし、感度も悪い
1年以内のワクチン歴がある人はIgA/IgMの方がいいかも 25
百日咳の治療法と登校基準
#29. 抗生剤の効果は? 臨床経過には影響しないかもしれない
発症初期(特にカタル期)に治療すると症状のある期間や重症度が減るかもしれない
感染拡大を予防する効果はあるかもしれない
抗生剤治療開始から2日すると、感染性がなくなるかもしれない Pertussis, Dynamed
Pertussis infection in adolescents and adults: Treatment and prevention, UpToDate
Pertussis infection in infants and children: Treatment and prevention, UpToDate
#30. 誰を治療すべき?~主に感染拡大防止目的 発症4週以内:全例に対して投与を推奨
乳児、妊婦、医療従事者:発症6-8週後でも投与を推奨 N Engl J Med. 2005 Mar 24;352(12):1215-22.
#31. 治療:AZMが第一選択 アジスロマイシン500mg(小児10mg/kg)分1×3日間
Sanfordなど海外では初回500、2日目から250で計5日間という記載が多い→感染症の専門の先生に聞くと、どちらでも大差はないというコメントが多い(ただしどちらも添付文書外使用で、特に後者は保険で切られるかもしれない)
クラリスロマイシン1000mg(小児15mg/kg)分2×7日間
ST合剤4錠分2×14日間(=トリメトプリム320mg/日)(小児:トリメトプリム換算で8mg/kg/日) 以下を参考に筆者作成
Am Fam Physician. 2013 Oct 15;88(8):507-514.
サンフォード感染症治療ガイド2018
各薬剤添付文書 1か月未満児への投与は推奨されない 1か月未満児への投与は推奨されない
#32. 登校登園基準 特有な咳が消失するまで、または5日間の適正な抗菌薬による治療が終了した後。
AZMを使う場合は、投与開始から5日間は休ませた方が文章との整合性が合わせやすいかも??
百日咳の予防と歴史