#4.
治療介⼊の⽬安 1. 来院時にも 明らかなけいれん が続いている 2. 明らかなけいれんはないが、 30分以上意識障害 が続いている ⽬安︓乳幼児⽤ JCS 3(⺟と視線が合わない)以上が続いている状態 3. 来院までにけいれんを 複数回 繰り返している 4. 髄膜刺激徴候や⼤泉⾨の膨隆、深部腱反射の亢進などの明らかな 神経学的異常所⾒を認めている 5. 全⾝状態や Vital sign の崩れ、脱⽔がある
#5.
けいれんが持続しているのかの評価 - 基本ポイント - - 要注意ポイント - p 四肢の筋緊張亢進 p 眼球 の偏位 p 間代性の運動 p 瞳孔 の散⼤ p 開眼の持続 p 過度な 頻脈 (160-200 bpm) p 酸素化不良・チアノーゼ p 刺激に対する反応がない • 発作後の眼球偏位や体の⼀部が動く状態は2つの可能性がある ① 部分発作の持続 ② けいれん収束後 • 鑑別には 脳波の確認 が必要であり、疑わしい場合は治療介⼊を考慮する
#6.
そのけいれんは偽物かも 不要な介⼊を防ぐために、けいれんとの鑑別を理解しておく パターン① 悪寒戦慄(シバリング) ・1秒間に5-10回くらいとけいれんより早いスピードでブルブル細かく震える ・通常、⼿⾜は冷たく、顔⾊もやや悪いことが多い ・意識はあるため、声掛けへの反応や視線を合わせることが可能 パターン② 熱せん妄 ・⾼熱に伴い「⾍がいる」「おじさんがいる」などの異常⾔動や、突然⼤きな声で 叫んだり、⾛り回る、ぼーっと⼀点を⾒つめるなどの異常⾏動がみられる ・問いかけへの反応は、はっきりしないこともある ・通常は数分で落ち着く。⻑くても60分以内でそれ以上続く場合は脳症を疑う
#7.
原因のあるけいれんのルールアウト 原因のあるけいれん = 熱性けいれんではない 体調不良に起因するもの 基礎疾患に起因するもの その他 • 低⾎糖 • てんかん • 頭部外傷 • 電解質異常 • 代謝異常症 • 脳腫瘍 • 中枢神経感染症 • 虐待 • 低酸素⾎症 • 憤怒けいれん • 胃腸炎関連けいれん • 薬物中毒 来院時に意識がほぼ清明であれば、ほとんどの疾患が否定でき、検査不要となる
#8.
part.5 対応フローチャート 熱性けいれん診療ガイドラインを参照に⼀部改変 ⽣後 6〜60か⽉の 有熱時発作 来院時 (5分以上) けいれんが続いている 髄膜刺激徴候・JCS 3 以上など あり 中枢神経感染を疑う所⾒ 全⾝状態不良・脱⽔所⾒ 明らかに意識清明 発作から30分以上経過 + ⾎液検査 あり モニター装着 ルート確保 異常 あり 熱性けいれんについて説明し、帰宅 *ジアゼパム坐薬については後述 酸素投与開始 必要に応じて ・頭部画像検査 JCS 1まだ 30分 2 未満 気道確保 ・⼩児科コール ・髄液検査 30-60分程度 経過観察 ・薬剤投与 異常 あり ・⼊院の準備
#9.
薬剤投与(以前のガイドライン) 熱性けいれん診療ガイドライン 2015、⼩児けいれん重積治療ガイドライン 2017を参考に⼀部改変 けいれんが持続 静注薬使⽤不可 ・⼆次医療施設へ搬送 ・ジアゼパム坐剤 0.4 mg/kg 挿肛 1st Line → 5分以上あけて同量を1回追加可 (計2回まで) ・ミダゾラム (MDL) 0.15 mg/kg 静注 ・ジアゼパム (DZP) 0.3-0.5 mg/kg 静注 5-10分 反応なし 5-10分 反応なし *ルート確保困難な場合 ミダゾラム (MDL) 0.3 mg/kg 筋注/頬粘膜 、0.2 mg/kg ⿐腔 *現在は欧州の第⼀選択薬であるロラゼパム (LZP) も使⽤可能だが、国内ではまだ位置付けが定まっていない。 2nd Line ・ホスフェニトイン (fos PHT) 22.5 mg/kg 7.5分以上かけて 3rd Line ・フェノバルビタール (PB) 20 mg/kg 10分以上かけて (レベチラセタム (LEV) 20-60 mg/kg 15分以上かけて) 反応 なし 昏睡療法 ミダゾラム (MDL) バルビツレート 持続静注
#10.
薬剤投与 熱性けいれん診療ガイドライン 2023、⼩児けいれん重積治療ガイドライン 2023 を参考 けいれんが持続 静注薬使⽤不可 ⼆次医療施設へ搬送 ・ジアゼパム坐剤 0.4 mg/kg 挿肛 ・ミダゾラム⼝腔⽤液 頬粘膜投与 1st Line → 5分以上あけて同量を1回追加可 (計2回まで) ・ミダゾラム 0.15 mg/kg 静注 ・ジアゼパム 0.3-0.5 mg/kg 静注 5-10分 反応なし 5-10分 反応なし ・ロラゼパム 0.05 mg/kg 静注 *ルート確保困難な場合 ・ミダゾラム ⼝腔⽤液 規定量 ・ミダゾラム 0.3 mg /kg 筋注 0.2 mg /kg ⿐腔 2nd Line ミダゾラム ⼝腔⽤液 (ブコラム®) 7ヶ⽉-1歳︓2.5 mg 1-5歳︓5 mg 5-10歳︓7.5 mg 10-18歳︓10 mg ・ホスフェニトイン 22.5 mg/kg 7.5分以上かけて 3rd Line ・フェノバルビタール 20 mg/kg 10分以上かけて (レベチラセタム 20-60 mg/kg 15分以上かけて) 反応 なし 昏睡療法(ICU管理) ・バルビツレート ・ミダゾラム持続静注
#11.
変更ポイント① ミダゾラム⼝腔⽤液(ブコラム®) の追加 病院前(開業医など)・ルート確保前(困難時) 速やかな薬物投与が可能になった * ポイント Ø 頬粘膜投与(⻭ぐきと頬の間) *横向きで下側に注⼊、必要に応じて事前に⼝腔内吸引 Ø 年齢ごとに設定された投与量(体重計算が不要) Ø てんかん重積ハイリスク児は保護者や保育⼠が ⾃宅(家庭) や 保育所などでの投与 も可能 *主治医の指⽰、及び救急要請も⾏うことが前提 ⻭ぐきと頬の間 唾液・吐物が多い場合 事前に吸引が必要 ミダゾラム⼝腔⽤液 投与量 (⾊分けされている) 7ヶ月-1歳 : 2.5 mg
#12.
変更ポイント② ロラゼパム(ロラピタ®)静注 の追加 ミダゾラム・ジアゼパムとほぼ同列の第⼀選択薬 ミダゾラム=ロラゼパム≧ジアゼパムくらい * ポイント Ø 体重計算がしやすい(希釈液を0.05 mL/kg) Ø 海外では以前から第⼀選択薬だった Ø 呼吸抑制はあるが、ジアゼパムよりやや少ない ロラピタ 1バイアル 2 mg(1 mL) 同量の⽣⾷や注射⽤⽔、 ⼜は5%Tzで希釈して使⽤ → 1 mg /mL として 0.05 mL/kg 投与
#13.
使⽤する薬剤の特徴︓1st Line ミダゾラム(MDL) → 10 kgでは ミダフレッサ® 1.5 mL 静注 が⼀般的 ドルミカム® 静注 0.15 mg /kg ミダフレッサ® 静注 0.15 mg /kg → 0.15 mL/kg 筋注 0.3・⿐腔 0.2 mg /kg 10 mg 2 mL/A 原液 0.05 mg /mL 静注する際は⽣⾷ 8 mLで希釈し 1 mg /mL で使⽤することが多い ミダフレッ ブコラム® 2.5〜10 mg(年齢別) 頬粘膜にゆっくり注⼊ 10 mg 10 mL/V 原液 1 mg /mL 重積状態に適応あり 静注では第⼀選択の病院が多い 病院外やルート確保前に使⽤可能 ・けいれん重積状態に対する適応の問題で、静注はミダフレッサ®が望ましい ・筋注/⿐腔はドルミカム®を使⽤(適応外)するが、負担や適応からブコラム®が望ましい
#14.
使⽤する薬剤の特徴︓1st Line ロラゼパム(LZP) ジアゼパム(DZP) 10 kgで ロラピタ®希釈液 0.5 mL 静注 10 kgで ホリゾン® 0.6 mL 静注 ロラピタ® ホリゾン/セルシン® 静注 0.05 mg /kg 静注 0.2-0.4 mg /kg 注腸 0.3-0.5 mg /kg ロラピタ 2 mg 1 mL/V 同量の⽣⾷・注射⽤⽔・5%Tzで希釈 1 mg /mLとなり、0.5 mL/kg を静注 体重 x 0.5 mLで慌てていても計算は容易 10 mg 2 mL/A MDZ・LZPと基本的には同等の効果 院内採⽤状況や医師の好みで選択が可能
#15.
使⽤する薬剤の特徴︓2nd Line ホスフェニトイン(fos PHT) → 10 kgでは下記希釈液 10 mL 投与 ホストイン® 静注 22.5 mg /kg 7.5分以上かけて投与 フェノバルビタール(PB)︓ノーベルバール® → 10 kgでは下記溶解液 20 mL 投与 ノーベル d 250 mg/V ⽣⾷ 25 mLで溶解(10 mg/mL) 15-20 mg/kg 10分以上かけて投与 ホストイン 750 mg 10 mL/V ・意識状態への影響が少なく、脳炎・脳症を 否定できない熱性けいれんで扱いやすい ・本剤 6 mL+⽣⾷ 14 mLで希釈すると、 22.5 mg /mL となり、体重計算が容易 適応は 2歳以上 だが、適応外で使⽤することもある ・鎮静作⽤が強いことに注意が必要 → 脳炎・脳症の鑑別に影響を与える可能性がある レベチラセタム(LEV) ︓ イーケプラ® 500 mg 5 mL/V ⽣⾷ 100 d mLで希釈(5 mg/mL) 20-60 mg/kg 15分かけて投与 国内では ⼩児のけいれん重積に適応がないこと に注意
#16.
ジアゼパム坐薬の予防投与 ジアゼパム(DZP)坐薬︓ダイアップ坐剤® *投与量︓0.4-0.5 mg /kg 規格︓4・6・10mg *37.5 ℃ 以上の発熱で1回、8時間後に熱が続く場合 1回追加 • 主に 熱性けいれんの予防⽬的 で使⽤される • 有効⾎中濃度に達するのに 約30分間 必要 → すでに起こっているけいれんを⽌めるためには適切ではない • 鎮静やふらつきなどの有害事象に注意が必要であり、ルーチンでは不要 • けいれん予防効果は⾼く、搬送後に意識の回復が確認できれば、 同⼀機会の再燃を防ぐための使⽤は、ある程度は許容される 例︓⾃宅が遠⽅、不安、救急混雑/コロナ陽性などで対応困難など 予防投与の基準 ①・②いずれかを満たす ① けいれん重積の既往 ② 以下 2つ以上を満たす けいれんの反復 1. 部分発作または 24時間以内に反復 2. 神経学的異常・発達遅滞 3. 家族歴 4. 12か⽉未満での発症 5. 発熱から1時間未満の発作 6. 38℃未満での発作
#17.
抗てんかん薬の予防投与 - ポイント 良性疾患であり、抗てんかん薬の継続的内服は 原則推奨されない ジアゼパム坐剤では 予防が困難な場合 や 間に合わない場合 に考慮 抗てんかん薬を使⽤する場合 (ジアゼパム(DZP)坐剤は併⽤しない) Ø DZP坐剤を予防投与しても15分以上の発作・繰り返しの発作がみられる Ø DZP坐剤の使⽤が間に合わず、繰り返し発作がみられる *選択される薬剤の例(いずれの薬剤も副作⽤に注意しつつ、1-2年程度継続する) ・バルプロ酸(VPA)︓20-30 mg /kg /day 分2 ・フェノバルビタール(PB)︓3-5 mg /kg /day 分1-2 ・カルバマゼピン(CBZ)︓有効性は低く、副反応も⾼率に認め、有⽤性は低い ・トピラマート(TPM)︓VPAやPBが使⽤できない場合のみ使⽤が考慮される
#18.
part.6 家族への説明 - ポイント ・基本的には 良性疾患 であり、観察が⼤切 ・けいれんが反復した場合には、 スマホで動画撮影 • ⼦どもが熱性けいれんを起こした際の 家族の不安は⾮常に強い まずは落ち着いて、熱性けいれんは良性疾患であることを説明する • 「⾆を噛まないように」⼝の中にタオルや指を突っ込んで噛まれる⽅もいるが むしろ、窒息や感染のリスクが⾼いことを説明する必要がある • ⼀連の動きを確認したくても、覚えていないことも多い。冷静になるという 意味でも、けいれんが反復/再燃した場合は 動画を撮ること を勧めている
#19.
実際の指導例 *7枚⽬のスライドのような典型的な症例(1歳6か⽉男児・初発・単純型熱性けいれん) お⼦さんが突然けいれんされ、とても不安だったと思います。少なくとも、今は けいれんも⽌まっており、ご家族を認識できているようなので安⼼してください。 熱性けいれんは、7%くらいの⼦が1度は起こす、基本的に後遺症などの⼼配はない 良性疾患です。5歳くらいまでは脳の回路が未熟で、急に熱が上がったときにけいれん を起こすと考えられています。通常は5分以内に⽌まり、30分くらいで意識も戻ります。 けいれんが⻑く続く場合や、何回か繰り返す、意識がなかなか戻らない場合は原因を 確認する必要がありますが、〇〇さんは今の所は問題なく、検査や治療は不要です。 帰宅後にけいれんした場合は、まずは落ち着いて周囲の安全を確保して下さい。⼝の 中に物や指を⼊れる必要はありません。余裕があれば、動画を撮影していただけると、 診療の参考になります。救急⾞は呼んでいただいて問題ありません。 今後も繰り返す可能性はありますが、現時点では予防薬は不要と考えます。ただし、 ご⼼配であれば、明⽇かかりつけ医で相談して下さい。 *説明・指導に関しては、無料アプリ「教えて︕ドクター」もおすすめです
#20.
part.7 その他 Q&A ① Q. ⼊院の⽬安は︖ A. 抗けいれん薬を使⽤した場合や複数回けいれんしている場合、髄膜刺激徴候や 意識障害を伴う、全⾝状態不良や脱⽔がある場合などでは⼊院を考慮する。 ただ、施設や地域、家庭の状況によっても⼊院適応を検討 する必要がある。 Q. 頭部CT/MRIは必要か︖ A. ルーチンでは不要 である。発達遅滞や神経学的異常所⾒を伴う場合、遷延性 の発作などの場合には、基礎疾患や脳炎/脳症の評価のために検査を⾏う。 なお、多発外傷の痕など虐待などが疑われる場合にも検査は考慮される。
#21.
その他 Q&A ② Q. 解熱剤は使⽤しても良いか︖ A. 解熱剤でけいれんを増やすことはないため、問題なく使⽤は可能 である。 坐薬を使⽤したい場合は、ジアゼパム坐薬の吸収を妨げる可能性があるため、 30分以上間隔をあける 必要がある。 Q. 予防接種は受けても良いか︖ A. 現⾏の予防接種は、全て接種可能 である。接種までに経過観察期間を設ける 施設も多いが、基本的に特別に期間をあける必要はない。周囲の流⾏状況を 考慮し、副反応や対策を説明した上で接種することが望ましい。 *副反応による発熱でけいれんする可能性もある → 以前は2-3か⽉程度という記載があったが、2023年版から期間の記載はなくなった
#22.
Take Home Message • けいれんの判断は、バイタルサイン・意識状態・眼に着⽬︕ 200 bpm 近い頻脈 や 開眼・散瞳 が続く場合は介⼊を考慮する • 再燃した場合は、養育者に動画を撮ってもらおう • ロラゼパム や ブコラム® など、新しい薬の選択肢も理解しておこう
#23.
ちなみに • 医学⽤語として正式名称は「熱性けいれん・熱性発作」ですが、 ⼩児科以外では「熱性痙攣」の⽅が馴染みがあるようです。 • 専⾨家による適切な解説は、基本的に「熱性けいれん」と記載 されますが、SNSなどで広く伝えたい場合、⾮医療従事者でも ⾒つけやすいよう両⽅併記するなど⼯夫が必要かもしれません。
#24.
参考⽂献 • 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン 2023 • ⼩児けいれん重積治療ガイドライン 2023 • ⼩児科診療ガイドライン -最新の診療指針- 第4版 総合医学社