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ゆきあかり診療所
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最終更新:2022年7月16日
蕁麻疹 ゆきあかり診療所所長 小林聡史
なぜまとめてみようと思ったか (皮膚科へのアクセスが良好でない環境で)診療所をやっていると蕁麻疹はかなり頻繁に遭遇します。 蕁麻疹は特発性が多いから、ある程度問診してはっきりしないものは特発性として対応してきましたし、それで困った経験はさほどありません。 H1RA+H2RAで改善不良で、皮膚科紹介するべきか迷いつつ短期的にPSLを被せた症例が1例だけあります。幸い著効しました。 ただきちんと診断できるものを見逃してないか?という一抹の不安もあったので、一度しっかり調べてまとめてみることにしました。
概要
蕁麻疹とは? 蕁麻疹診療ガイドライン2018 Dynamed, Acute Urticaria 膨疹(=紅斑を伴う一過性、限局性の浮腫) 真皮の浮腫であり、表皮はintact(=瘢痕なく消失) 一過性:24時間以内に消失 多くは痒みを伴う
蕁麻疹の名前の由来 蕁麻=イラクサ イラクサの葉に触れると発疹が起きることから
蕁麻疹の機序・原因 レジデントのためのアレルギー疾患診療マニュアルより引用
図の解説 何らかの刺激により肥満細胞が活性化されると、ヒスタミンなどケミカルメディエーターが放出され、血管拡張や透過性亢進が起き、蕁麻疹が発生する。 刺激となる因子は、以下のようなものがある アレルゲンや抗体による受容体刺激 活性化した補体 サブスタンスP(ストレス等により放出される神経ペプチド) 脱顆粒を直接刺激する物質(コデイン、バンコマイシンなど) 物理的刺激 肥満細胞を介さずに蕁麻疹が発生することもある ケミカルメディエーターを含む物質(仮性アレルゲン)を直接摂取した場合 NSAIDSを服用した場合(ロイコトリエン産生亢進) 解説文がなかったので スライド作者のオリジナル
疫学 Dynamed, Acute Urticaria Dynamed, Chronic Urticaria Am J Clin Dermatol. 2009;10(4):239-50. 約20%の人が、生涯に1度は蕁麻疹や血管浮腫を経験する。 4割が蕁麻疹のみ、4割は蕁麻疹+血管浮腫、1-2割が血管浮腫のみ 慢性蕁麻疹は女性に多い(約2:1) 発症のピークは20-40代
分類
蕁麻疹診療ガイドライン2018 分類 Ⅲの血管性浮腫は今回割愛
特発性蕁麻疹 蕁麻疹診療ガイドライン2018 レジデントのためのアレルギー疾患診療マニュアル Dynamed, Acute Urticaria Dynamed, Chronic Urticaria 急性蕁麻疹の30-50%、慢性蕁麻疹の80-90%が特発性とされる 急性蕁麻疹の最多の原因は感染症で、28-60%を占める。 特に小児においては、80%以上がウイルスor細菌感染と関連していると幾つかの研究で報告あり。 慢性蕁麻疹の約半分は自己免疫疾患と報告されている IgE受容体やIgEに対する抗体が肥満細胞の脱顆粒を刺激するとされる ただし免疫抑制療法は副作用が強いため、一般的には勧められない
刺激誘発型蕁麻疹
アレルギー性蕁麻疹 蕁麻疹診療ガイドライン2018 IgEを介した即時型アレルギー反応 通常は暴露後数分~1-2時間以内に発症 納豆、一部の哺乳類の肉、アニサキスなどでは、前日摂取の食物により、翌日アレルギー症状が現れることもある
食物依存性運動誘発アナフィラキシーFood dependent Exercise-indused anaphylaxis(FDEIA) 蕁麻疹診療ガイドライン2018 Exercise-induced anaphylaxis: Management and prognosis, UpToDate 特定の食物摂取後、2-3時間以内に運動負荷が加わることで生じる 小麦やエビが原因の食物として多い 全年齢で生じるが、特に10歳代の報告が多い NSAIDSやアルコールにより症状が増悪する 食事とNSAIDSのみで誘発されることも
非アレルギー性蕁麻疹 蕁麻疹診療ガイドライン2018 レジデントのためのアレルギー疾患診療マニュアル アレルギー機序を介さずに生じる蕁麻疹。 脱顆粒を直接刺激する物質:コデイン、バンコマイシン、造影剤 ケミカルメディエーターを含む物質(仮性アレルゲン)を摂取した場合 トマト、ほうれん草、なす、そば、たけのこなど 鮮度の悪い魚介類 ヒスタミンは一度産生されると加熱や冷凍では分解されない
アスピリン蕁麻疹 蕁麻疹診療ガイドライン2018 アスピリンなどのNSAIDSの内服/注射/外用により誘発される蕁麻疹 人工食品着色料、防腐剤などに対しても反応することがある 原因物質暴露後、発症まで数分~数時間と幅がある
物理性蕁麻疹① 蕁麻疹診療ガイドライン2018 機械的擦過:機械性蕁麻疹 シイタケ皮膚炎と鑑別 寒冷暴露:寒冷蕁麻疹 局所性と全身性両方あり。全身性はコリン性蕁麻疹様で、遺伝性のものもある 日光照射:日光蕁麻疹
物理性蕁麻疹② 蕁麻疹診療ガイドライン2018 温熱負荷:温熱蕁麻疹 圧迫:遅延性圧蕁麻疹 数時間~2日程度持続(他の物理性蕁麻疹は数分~2時間程度で消失) 水との接触:水蕁麻疹 水に触れた範囲にコリン性蕁麻疹様の皮疹
コリン性蕁麻疹 蕁麻疹診療ガイドライン2018 「発汗する状況での掻痒性~ピリピリとした痛みを伴う小さな膨疹or紅斑」 発汗or発汗刺激により出現(入浴、運動、精神的緊張など) 好発年齢:小児~30代前半まで 粟粒大~小豆大で癒合傾向のない膨疹or紅斑 膨疹は直径数cmの紅斑に囲まれることもある 掻痒性のことが多いが、ピリピリした痛みのこともある 数分~2時間以内に消退することが多い 口唇や眼瞼に血管性浮腫を伴うこともある
接触蕁麻疹 蕁麻疹診療ガイドライン2018 皮膚粘膜が特定の物質と接触することにより、接触部位に一致して膨疹が出現 通常、暴露後数分~数十分以内に症状が出現し、数時間以内に消退
蕁麻疹関連疾患
蕁麻疹様血管炎 蕁麻疹診療ガイドライン2018 レジデントのためのアレルギー疾患診療マニュアル 個々の皮疹が24時間以上持続 掻痒感よりも痛みを伴うことが多い 皮疹消退後に色素沈着を残す SLEに合併したり移行する例がある
色素性蕁麻疹 蕁麻疹診療ガイドライン2018 あたらしい皮膚科学, 第2版 皮膚の局所にマスト細胞の過剰な集簇と色素沈着を認める 肥満細胞症mastocytosisの一病型 多くは多発性だが単発性のこともある 皮疹部を擦過するとその部位に一致して膨疹(Darier徴候) 乳幼児の場合成長とともに自然消退することもある
Schnitzler症候群/クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS) 蕁麻疹診療ガイドライン2018 自己炎症症候群の一つ 周期性の発熱+関節炎、発疹、眼症状、腹部症状など 一般に抗ヒスタミン薬は無効 Schnitzler症候群:慢性蕁麻疹または蕁麻疹様血管炎の像を呈する CAPS:蕁麻疹に似た多形の皮疹で、掻痒を伴わない
評価
ルーチン検査は不要 蕁麻疹診療ガイドライン2018 急性/慢性蕁麻疹いずれにおいてもルーチンに行うべき検査はない 非典型例や難治性症例においては個々に必要な検査を行うことを考慮
病型に応じた検査項目 病型に応じた検査項目 蕁麻疹診療ガイドライン2018より引用
慢性蕁麻疹において考慮すべき事項 蕁麻疹診療ガイドライン2018 レジデントのためのアレルギー疾患診療マニュアル 慢性蕁麻疹において、下記治療後に蕁麻疹が寛解する例が存在するため、その可能性を検討する(ただしルーチンでは不要) HCV感染 ピロリ菌感染 アニサキス感染 悪性腫瘍 甲状腺機能亢進/低下症 便中の寄生虫や虫卵
治療
蕁麻疹診療ガイドライン2018より引用 原因悪化因子の除去 原因悪化因子を可能な範囲で除去する 症状誘発負荷により寛解を誘導できることもあるが、長く続かないこともある→専門医の指導の下で行うべき
まずは第二世代抗ヒスタミン薬(H1RA) 蕁麻疹診療ガイドライン2018 2倍量までの増量可。また2種類の併用や他剤への変更も可 国際ガイドラインでは他剤の追加よりも単剤の増量が推奨されている Dynamedでは4倍量まで増量可となっている 急性蕁麻疹においては数日以上完全に皮疹出現を抑制した後に中止 効果判定は1-2週間継続内服後に判断することが基本 治療効果出現に3-4日要することがある 内服継続により週単位で症状が継続することもある
不十分ならH2RAなど補助的な薬剤を追加 蕁麻疹診療ガイドライン2018 Dynamed, Acute Urticaria New-onset urticaria, UpToDate H2RA、抗ロイコトリエン薬、漢方薬、トラネキサム酸、抗不安薬グリチルリチン製剤、ジアフェニルスルホン、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液 などが候補 UpToDateやDynamedにはH2RAのことしか書いてない 蕁麻疹への保険適応がないことが多いため留意
それでもだめならステロイドなど 蕁麻疹診療ガイドライン2018 副腎皮質ステロイド(PSL換算<0.2mg/kg/day)内服 60kgの人なら12mg/day 少量、短期間にとどめる その他、オマリズマブやシクロスポリンが用いられることも
予後~大体3種類に分かれる Dynamed, Chronic Urticaria Clinical manifestations, diagnosis, pathogenesis, and natural history, UpToDate 慢性の特発性蕁麻疹は多くの場合自然軽快する(平均2-5年で) 慢性蕁麻疹の患者のうち64%が10年間のうちに寛解を経験 そのうち約半分が発症1年以内に寛解(≒慢性蕁麻疹患者の約3割ほど) 小児の方が若干寛解しやすい 最大で30%ほどの患者は5年以上たっても症状が持続する 1/3は1年以内、もう1/3も2-5年で寛解。残り1/3はその後も持続
まとめ
Take home message 蕁麻疹は24時間以内に瘢痕なく消失する掻痒性の膨疹であり、典型例から外れる症例は蕁麻疹関連疾患等を鑑別する 慢性蕁麻疹においてはHCV、ピロリなどの可能性を考慮し、必要に応じて検査を追加する(ルーチンでは不要) H1RAは倍量投与や2種類の併用も可。効果不良ならH2RAや短期のステロイドも考慮 慢性蕁麻疹の1/3は1年以内、もう1/3も2-5年で寛解。残り1/3はその後も持続