#4.
初めての病気、希少難病に出会ったときの対処法、遺伝性早老症の治療の実際について学ぶ
#5.
遺伝性早老症の診療の実際 患者さんとの出会い
ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群について
PRFについて
新しい治療法について
残された課題
講演内容
#6.
患者さんとの出会い
#7.
症例:3ヵ月(初診時) 7 主訴:皮膚の硬化
現病歴:37週6日2576g、身長47㎝、頭囲31㎝、Apgar 8/9で出生。生後1ヵ月すぎ頃から下肢の皮膚が硬くて光沢があるのに気づいた。生後2ヵ月時に近医に検査入院し、皮膚生検にて新生児皮膚硬化症類似の所見を認め、ハッチンソン・ギルフォード症候群を疑われ紹介された。 身長54.4cm(-2.5SD) 体重4.85kg(-1.6SD) 頭囲38.8cm(-0.6SD)
前胸部から下半身にかけて光沢のある皮膚硬化を認める
小顎、大きい目
呼吸音 清、心音 異常なし、腹部 平坦、軟追視あり、あやし笑いあり、定頸あり
筋トーヌス正常、筋力正常、股関節・膝関節が軽度屈曲位で拘縮あり(伸展不良)
#8.
8 小児科内での専門領域はどこに?
強いて言えば遺伝診療科だが、自施設にはない
誰かが診る必要があるのでとりあえず担当することに
診療経験のある人は周りにはいない
超稀少疾患なので文献・Webで検索:先ずは徹底した情報収集
Progeria Research Foundation のホームページを見つけた
早速メールで連絡し、患者情報を登録。
遺伝子診断をしてもらえることになった 診断まで
#9.
9 米国Progeria Research Foundation(PRF)に検査を依頼
遺伝子検査
Lamin A遺伝子 エクソン11 c/1824c>t, hererozygous
Hutchinson-Gilford-Progeria症候群の確定診断(生後5ヵ月)
経過
治療法は特になく対症療法のみ。
日本の症例報告を探して主治医の先生に連絡。患者さんご家族を紹介していただき、家族同士での情報交換。家族会はなかったが、2家族とつながり、米国の治験に参加されている方の情報も
治験参加を希望したがすぐには入れず待機。
診断時にPRFから診療ハンドブックを提供していただき参考になった。
皮膚科、整形外科、口腔外科、耳鼻科、眼科と共同でフォロー
関連診療科の先生ともハンドブック内容を共有
診断と経過(1)
#10.
10 1歳2ヶ月ころから頭髪の脱毛が始まった。
著明な成長障害。
独歩は1歳5ヶ月、知的発達は正常。
4歳11ヶ月時に渡米してロナファルニブの治験に参加。アスピリン内服も開始。
治療開始後しばらくは、吐き気や下痢などの副作用があったが、対症療法で継続。約5ヶ月後からは副作用はほとんどなく経過している。
6歳 普通小学校へ進学。就学前の環境調整(机、椅子、ランドセル)。
7歳半、骨密度低下に対してビタミンD開始。
8歳から2年間は、エベロリムスを併用した国際治験に参加。
10歳からはロナファルニブ単剤。 経過(2)
#11.
11 12歳からは治験を終了し、Managed Access Programで無償提供された
ロナファルニブを輸入し、治療を継続。
12歳 中学校は特別支援学校へ進学。
通常中学校への進学を希望していたが、小学校からの引継ぎ時期が遅く、受け入れ中学の環境調整が間に合わなかった。
13歳 外傷性股関節脱臼のため手術。
14歳 高血圧を発症し、降圧剤を開始。
経過(3) 患者さんや家族の困りごとは訊かないとわからないことが多い。
患者さんが気軽に相談できる雰囲気づくりも大切。
#12.
2019年8月よりロナファルニブの製造元Eiger社*が世界中の患者さんのために登録した地元の医師による処方ができるように薬剤を無償提供するプログラム(MAP)を開始。
治験に参加しない患者さんも利用可能となった。
日本でも、施設の「未承認・新規医薬品導入評価委員会による倫理審査」での承認を受け、2022年よりMAPを利用して治療の継続が可能となった。
* 現在はSentynl Therapeuticsへ事業継承済み
Managed Access Program
#13.
14歳
身長102.5cm(-9.9SD)
体重12㎏ (-4.6SD) ロナファルニブ
#14.
レントゲン検査(13歳時)
#15.
ハッチンソン・ギルフォード・
プロジェリア症候群について
#16.
ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS) 発症数
出生児400万人に1名。世界で約140名。
発症要因
典型的な遺伝子型HGPSは、ヘテロ接合性のLMNAの病的変異c.1824C>Tを有する(HGPSの約90%)。
非典型的遺伝子型HGPSは、HGPSの特徴的な臨床的症状をもち、LMNAのエクソン11又はイントロン11にあるプロジェリンを産生するヘテロ接合性の異なる病的変異を有する(HGPSの約10%)。
所見
出生時の外見は正常だが、生後1年以内に発育不全を示し、生後1~3年の間に特徴的顔貌(下顎形成不全、くちばし様の細い鼻)と早老徴候がみられる。平均寿命は約14.5歳とされる。 出典 Hennekam RC. Am J Med Genet A 2006;140:2603-2624.
Progeria Research Foundation. PRF By The Numbers(https://www.progeriaresearch.org/wp-content/uploads/2023/04/PRF-By-the-Numbers_-March-2023-FINAL.pdf)(2024年4月閲覧)
Gordon LB et al. GeneReviews® 2003(最終更新2023年10月9日) 16
#17.
17 写真提供:Progeria Research Foundation HGPS症例
#18.
HGPSとプロセシング不全性のプロジェライド・ラミノパチーの臨床症状および診断基準 HGPSの臨床症状 18 監修:大分大学 医学部 小児科学講座 教授 井原 健二 先生 HGPSとプロセシング不全性のプロジェライド・ラミノパチーの診断基準 <Definite> Aのうち1つ以上、かつCを認めるもの
<Probable> Aの4項目、かつBの2項目を認めるもの *エクソン11のc.1824C>T(p.Gly608=:コドン608[GGC] > [GGT] )を意味する。
**エクソン11またはイントロン11のエキソンイントロン接合部周辺の点変異であり、c.1822G>A (p.Gly608Ser), c.1968+1G>A, c.1968+2T>A, c.1968+5G>Cなどが報告されている。
#19.
19 Benedicto, I., et al. (2022).. Expert Opinion on Therapeutic Targets, 26(5), 393–399. HGPSの発症機序
#20.
患者会についての質問 1.これまでに患者会の活動にかかわったことがありますか?
①はい
②いいえ
2.機会があれば患者会に積極的にかかわりたいとおもいますか?
①はい
②いいえ
3.患者会にかかわるのを負担に感じることがありますか?
①はい
②いいえ
20
#21.
PRFについて:患者家族会の力の偉大さ
#22.
Progeria Research Foundation (PRF) 1999年Huchnson-Gilford Progeria症候群(HGPS)の患者Samの両親である小児科医 Leslie Gordon医師とScott Berns医師らにより早老症研究の推進と治療法の開発を目的に設立
#23.
国際患者登録
診断テストプログラム
医学研究データベース
細胞・組織バンク
研究資金助成
科学ワークショップ
市民の意識啓発活動・患者家族支援
治療薬開発のための臨床試験
ハンドブック
募金活動 PRFの事業
#24.
#25.
国際患者登録
診断テストプログラム
医学研究データベース
細胞・組織バンク
研究資金助成
科学ワークショップ
市民の意識啓発活動・患者家族支援
治療薬開発のための臨床試験
ハンドブック
募金活動 PRFの事業
#26.
国際患者登録 診断プログラムも提供
自然歴の収集、Progeriaの医療記録や放射線検査の記録の集積による
医学研究データベースや国際臨床試験に貢献
51ヵ国196人
HGPS 144人、その他52人( 2023年12月末まで)
#27.
#28.
#29.
国際患者登録
診断テストプログラム
医学研究データベース
細胞・組織バンク
研究資金助成
科学ワークショップ
市民の意識啓発活動・患者家族支援
治療薬開発のための臨床試験
ハンドブック
募金活動 PRFの事業
#30.
#31.
遺伝子検査による診断を提供
プロジェリンの定量
治療効果・予後との関連
診断プログラム Circulation 2023
#32.
国際患者登録
診断テストプログラム
医学研究データベース
細胞・組織バンク
研究資金助成
科学ワークショップ
市民の意識啓発活動・患者家族支援
治療薬開発のための臨床試験
ハンドブック
募金活動 PRFの事業
#33.
世界中の研究者に患者のcell lineを研究材料として提供
線維芽細胞
リンパ芽球
iPS細胞
Cell lines in the PRF Cell & Tissue Bank: 212
#34.
研究助成 Grants funded: 85, totaling $9.3 million
#35.
国際患者登録
診断テストプログラム
医学研究データベース
細胞・組織バンク
研究資金助成
科学ワークショップ
市民の意識啓発活動・患者家族支援
治療薬開発のための臨床試験
ハンドブック
募金活動 PRFの事業
#36.
国際科学ワークショップ 2020年第10回国際ワークショップ(Web) 2022年第11回国際ワークショップ 2−3年ごと基礎・臨床の最先端の世界中の研究者が結集して意見交換
#37.
国際患者登録
診断テストプログラム
医学研究データベース
細胞・組織バンク
研究資金助成
科学ワークショップ
市民の意識啓発活動・患者家族支援
治療薬開発のための臨床試験
ハンドブック
募金活動 PRFの事業
#38.
臨床研究の推進
#39.
39
#40.
JAMA. 2018;319(16):1687–1695.
#41.
国際患者登録
診断テストプログラム
医学研究データベース
細胞・組織バンク
研究資金助成
科学ワークショップ
市民の意識啓発活動・患者家族支援
治療薬開発のための臨床試験
ハンドブック
募金活動 PRFの事業
#42.
プロジェリア ハンドブック 日本語版:厚労省研究班・佐賀大学小児科訳
#43.
目次 プロジェリア:基本事項
PRFプログラムとサービス国際患者レジストリ診断試験プログラム医学研究データベース細胞・組織バンク研究資金科学ワークショップ啓蒙活動ボランティア&募金活動
PRF薬物治療試験
診断、遺伝学、および遺伝カウンセリング
心臓の健康/心臓病学
脳/神経/脳梗塞
救急医療/集中治療
8.気道管理/麻酔
9.アイケア/眼科学
10. 口腔ケア/歯科
11.皮膚/皮膚科
12.骨/整形外科
13.理学療法(PT)
14.作業療法(OT)
15.フットケア/足病学
16.栄養
17.思春期のプロジェリア女性における変化
18.正常生体機能
19.プロジェリアとの生活:両親からのアドバイス
20.学校へ行くこと
21.プロジェリアと老化
#44.
44
#45.
新しい治療法について
#46.
早老症治療用剤
ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤
ロナファルニブ製剤 薬価基準収載 医薬品リスク管理計画対象製品 46 市販直後調査
2024年5月~2024年11月
#47.
47 開発の経緯-海外編- 1990年代 シェリング・プラウ社がロナファルニブを合成
1997年 悪性腫瘍治療薬としての開発開始(シェリング・プラウ社)
1999年 米国にてプロジェリア財団(Progeria Research Foundation)発足
2007年 07-01-0007試験開始[HGPS・PDPL対象単独試験](ボストン小児病院主導):日本人患者1名参加
2009年 09-06-0298試験開始[HGPS・PDPL対象3剤併用/単独試験(ボストン小児病院主導):日本人患者2名参加
2011年 米国でOrphan薬指定を受ける
2018年 Eiger BioPharmaceutical(以下Eiger社)が、メルク社よりロナファルニブの権利を得る
米国で画期的治療薬(Breakthrough Therapy)指定を受ける
Eiger社が米国でロナファルニブの製造販売申請
2020年 米国で製造販売承認を受ける
2021年 仏国でATU*での承認
2022年 欧州連合で製造販売承認を受ける
英国で製造販売承認を受ける
2024年 Sentynl Therapeuticsへ事業継承 *一時的使用承認(Authorization Temporary Use)
#48.
作用機序 出典 Gordon LB et al. JAMA 2018;319:1687-1695.
Marcelot A et al. FEBS J 2021;288:2757-2772.
European Medicines Agency. Assessment Report 2022 Zokinvy 48 ラミンAは、正常ではファルネシル化を受けた後に、ZMPSTE24 遺伝子によってコードされるメタロプロテアーゼにより切断され、成熟ラミンAとなる(左図)。
HGPSでは、LMNA 遺伝子の変異により、ファルネシル基の切断を受けないため、ファルネシル化された変異プレラミンA(プロジェリン)が蓄積する(中央図)。
プロセシング不全性のPLでは、LMNA 遺伝子にHGPSとは異なる点変異を持つ病型、及びLMNA 遺伝子は正常で、切断に寄与するZMPSTE24 遺伝子に変異のある病型(右図)があり、いずれもファルネシル化された変異プレラミンAが蓄積する。
#49.
有効性 ― 観察コホート生存試験 一部承認外の成績が含まれますが、承認時評価資料のためご紹介します。 49
#50.
重大な副作用 適正使用ガイド (1)胃腸障害 ProLon1(28例)において下痢、嘔吐、悪心の投与期間ごとの治療と関連する有害事象発現率を下図に示しました。
最初の4カ月間の投与期間中の治療と関連する有害事象は、下痢が23例(82.1%)、嘔吐が19例(67.9%)、悪心が10例(35.7%)と、投与開始から4カ月間において発現率が高くなりました。
HGPS又はプロセシング不全性のPLを対象とした本剤単独投与(ProLon1※1及びProLon2※2)の63例において、嘔吐(85.7%)、下痢(77.8%)、悪心(38.1%)が副作用として報告されています。また、臨床試験において下痢又は嘔吐から脱水に至った症例が認められています。
※1 ProLon1:HGPS又はプロセシング不全性のPL患者を対象に、ロナファルニブの単剤投与の治療効果を評価する第Ⅱ相、非盲検、単群、用量漸増試験(海外試験)
※2 ProLon2:HGPS又はプロセシング不全性のPLの小児患者を対象に、ロナファルニブの治療効果を評価するための第Ⅱ相、非盲検、単群試験(海外試験) 50 TRAE:治験関連有害事象
#51.
残された課題
#52.
ゾキンヴィの登場により何が変わるか? 心血管系の合併症(脳血管障害を含む)の発症を抑制
患者QOLの向上
延命効果
国内の患者さんへの適切な診断・治療の提供
疾患認知度の向上による患者さんの生活環境の改善、支援の充実
疾患の治療研究の加速 52
#53.
患者・家族を取り巻く環境 超稀少疾患であること、特異な外見に伴う個人情報の問題
複数の診療科間の連携の必要性
医療者のなかでの認知度もまだ低い
日本での患者会はない
地域社会、学校での支援体制構築についてもノウハウがまだ不足
⇒ アドボカシー活動が必要
患者本人への疾患告知の問題
医療費助成:小児慢性特定疾病・指定難病制度が利用可能 53
#54.
残存するunmet medical needsは? 外観、体格など骨格系の問題、関節拘縮などに対する効果は乏しい
心血管系に対する効果もまだ限定的
心血管系の合併症(脳血管障害を含む)の管理
⇒ 他の専門医との連携が必要
延命効果:更なる検証が必要
延命に伴う新たな問題:老化進行による予期せぬ合併症 54
#55.
情報収集はやる気次第
患者家族会の情報も有用
専門家や他科との連携は大切
包括的な診療の大切さ
病気ではなく患者さんを診ること
#56.
幸せな人生のための私の哲学 #1. あなたが最終的にできないことがあっても
大丈夫です。
できることはたくさんあるからです。
#2. 自分がいてほしい人たちに囲まれる。
#3. 前進し続ける。
Presented by Sam Berns
at TEDxMidAtlantic
October 26, 2013
#57.
57 ご清聴ありがとうございました